【ベルリン=松井健】ドイツ連邦銀行の理事がイスラム系移民やユダヤ人に対する差別的な発言を繰り返し、激しい議論を呼んでいる。ホロコーストなどナチス時代の教訓から民族差別に敏感な同国では、連銀に対し解任要求が強まり、理事会は2日、解任を進める方針を決めた。一方、国民からは共感の声が出ており、移民の増加に対する根強い不安と反発が表れた形だ。
連銀のザラツィン理事は8月30日、「自壊していくドイツ」という著書を発売し、「トルコやアラブなどイスラム圏からの移民の就業意欲や教育レベルは低く、ドイツ社会に溶け込もうとしない」「ドイツ人が自分の国の中でよそ者になるかもしれない」などと主張した。さらに、発売前後にメディアの取材に対し、「ユダヤ人やバスク人は特定の遺伝子を持っている」などと発言した。
これに対し、メルケル首相が「まったく容認できない」と発言するなど、政界や主要メディアからは批判が集中。野党の社会民主党も党員のザラツィン理事を除名する方針を打ち出している。
同銀は「連銀はザラツィン理事の差別的発言とは明確に見解を異にしている」とコメント。2日の理事会でウルフ大統領に解任を提案することを決めた。
ドイツではトルコや旧ユーゴスラビアなどからの移民が以前から多く、移民の社会への統合が常に課題になっている。経済成長につながると歓迎される一方、犯罪増をもたらすなどの警戒感が国民にあることも否定できない。ザラツィン理事は以前から同様の主張をしており、今回の発言も確信犯的だ。ナチスによる民族差別の歴史を持つドイツではこうした発言はタブーとされてきた。だが、今回の発言にはネット上で「多くのドイツ人が考えていること」などと共感する声も出ており、ニュース専門局のアンケートでは「解任の必要はない」との回答が多数を占めた。