2010年10月27日0時3分
1ドル=80円台に突入した為替レートは、じり高を続け70円台をもにらむ情勢であり、反転は全く期待できそうにない。たまった円高のマグマが、鉄鋼や化学など素材産業の製品価格暴落という形で噴出するのも間近だと思われる。素材を使う企業の多くは輸出依存度の高い製造業であるが、彼らの輸出事業はこの異常な円高下では全く成り立たない。
一方、輸入原料を使用している素材メーカーのコストは円高で明らかに下がっている。つまり国内のユーザーはコストよりもかなり高く素材を買っている。ただし、リーマン・ショック以降、再度輸出拡大に活路を見いだしてきた素材メーカーも同様にこの円高で苦しんでおり、国内販売の黒字で輸出の赤字を吸収し、辛うじて勘定を合わせているのが実態である。
だが、これまで仕入れの安定性を大事にしてきたユーザーも背に腹は代えられず、生死をかけて値下げを迫るだろう。この際国内の販売シェアを上げようなどと考えるメーカーが値下げに応じれば、瞬く間に業界全体が値下げ競争の渦に巻き込まれる。当然海外からの安い素材も今まで以上に入ってくる。それやこれやで、もう間もなく一挙に値崩れを起こすことは間違いない。
その行き着く先に待ち受けるのは何か。かつてプラザ合意後に見た製造拠点の閉鎖統合などのリストラ悪夢の再現か。だが仮にそうして生産能力をそいで輸出をあきらめ、国内向け販売に集中してみても、この為替レベルではコスト面でしょせん海外企業に伍(ご)していけない。
素材メーカーにとっても、その素材を必要とするユーザーにとっても、残された道は我が国を捨て海外に逃れることしかないのだろうか。(啄木鳥)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。