社説

「仙山」地銀統合へ/「台風の目」になれるか

 東北の金融地図がまた、塗り変わろうとしている。
 仙台銀行と、きらやか銀行(山形市)がきのう、来年10月の経営統合に向け協議入りすることで基本合意した。県境という垣根を越え、それぞれ宮城、山形を地盤とする第二地方銀行同士が経営の一体化を目指す。
 広域統合が実現すれば、東北では荘内銀行(鶴岡市)と北都銀行(秋田市)の統合で1年前に誕生したフィデアホールディングスに続き2例目になる。
 その背景にあるのは、地方経済の地盤沈下が進む中、比較的規模の小さい地銀にとって、単独での生き残りは難しいという厳しい現実だ。県境を越えても規模拡大を図り、スケールメリットを生かして経営基盤を強化する。今回の動きも、それが最大の眼目である。
 とはいえ、東北の金融界に与えるインパクトは小さくない。成長が見込める最大の市場・仙台に立脚する銀行が一方の相手方であり、隣り合う山形市とは「仙山圏」を形づくり、経済交流を含め圏域の一体化が進む。そうした魅力ある市場を背景に「台風の目」になる可能性があるからだ。
 統合メリットを生かして経営基盤をどう強化し、どんな金融サービス戦略を描くのか。経営統合に向けた両行の体制・成長戦略づくりに注目したい。
 基本合意によれば、両行は共同持ち株会社を設立し本社を仙台市に置く。両行はその傘下に入って銀行名を変えずに営業を続けるという。
 地域ブランドを維持しつつ、ほぼ倍増する営業網と顧客を共有することで相乗効果を高め、取引企業のマッチングを含めて融資やコンサルタント業務を拡大していく考えのようだ。地域密着路線をより強めてほしい。
 ただ、統合による展望を開くためには、まずは財務基盤を強化しなければなるまい。
 仙台銀は業績が伸び悩む中、今年9月の中間連結決算で経営破綻(はたん)した消費者金融大手関連の債券の損失処理を含め24億円を超す赤字に転落する見通しだ。一方のきらやか銀は去年秋に経営基盤強化を目的に、返済しなければならない公的資金200億円の資本注入を受けている。
 事務部門や基幹システム統合による経費削減効果と併せ、いかに財務状況を好転させるか。統合協議で知恵を絞りたい。その成否がひいては東北最大の市場・仙台圏で統合銀行の存在感を高める鍵になるからだ。
 自動車産業の集積も期待される仙台圏は東北唯一の成長センターといえる。都銀や他県の地銀の進出攻勢もあり「仙台金融戦争」は激化しそうだ。だが、それは顧客にとっては金融サービスの充実にほかならない。
 金融機関には競争に必要な基礎体力の強化が求められている。地域経済の疲弊を背景に収益源の柱である中小企業向け融資が伸び悩む。人口減に伴う将来の市場規模の縮小も見据えれば、東北でさらなる金融再編があっても何ら不思議はない。今回の動きはそうした現実をあらためて示したともいえる。

2010年10月27日水曜日

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