きょうの社説 2010年10月27日

◎エコツーリズム 「グリーン」との違い明確に
 石川県と県観光連盟は「エコツーリズム研究会」を28日に発足させる。自然資源を活 用した体験型観光のモデル商品の開発をめざすことになっているが、気掛かりの一つは、これとよく似た名称で「グリーンツーリズム」の普及活動が農林水産省主導で早くから実施されており、一般の人がネーミングだけでその違いを区別するのが難しいことだ。その違いを分かりやすくアピールする一方、共通する部分で連携する必要もあり、エコツーリズムの推進体制や推進手法についてもよく研究してもらいたい。

 エコツーリズムは、地域の自然環境や歴史文化を体験、学習し、その保全にも努める観 光と定義づけられており、能登島のイルカウオッチングは代表例である。国土交通省・観光庁は新しい形態の観光(ニューツーリズム)の一つとして力を入れている。

 一方、グリーンツーリズムは休暇を農山漁村の農家などで過ごし、自然や農作業、郷土 料理などを楽しむ観光とされる。エコツーリズムより先に、県内でも能登地区を中心に取り組まれており、県グリーンツーリズム推進協議会も組織されている。このようにエコツーリズムとグリーンツーリズムは区別されるが、例えば、里山里海での自然・生活体験ではほぼ同一であり、取り組みは当然、歩調を合わせなければなるまい。

 政府・自治体は観光推進のため「産業観光」や「ヘルス(健康)ツーリズム」といった 新しい観光形態を次々提唱している。そうした積極的な観光政策の展開は歓迎すべきである。ただ、新しい概念が理解不足のまま先行している印象も否めず、その意味するところをまず周知させることが大事な観光施策といえる。

 エコツーリズムは国交省だけでなく、環境保全意識を高める観点から環境省も力を入れ 始め、ツアーガイドの育成方針などを打ち出している。観光は「総合産業」ともいわれ、施策の展開に当たり、縦割り行政の弊害が生じるようなことがあってはならない。エコツーリズムとグリーンツーリズムを総合的に推進する体制づくりも課題に挙げられる。

◎学童保育の事故調査 規模の適正化を早めたい
 厚生労働省が先ごろ、放課後児童クラブ(学童保育)で起きた重傷事故の集計結果を公 表した。事故原因を分析し、今後の学童保育の安全管理に生かさなければならないが、重傷事故の背景には、厚労省のガイドラインを上回る大規模な学童保育がまだまだ多いことがあり、規模の適正化に一層努める必要がある。

 共働き家庭などの小学生が放課後に通う学童保育の事故に関し、厚労省が調査結果を公 表するのは初めてである。それによると、今年3月下旬から9月末までの約半年間に自治体から報告があった重傷事故(全治1カ月以上)は105件(105人)で、骨折が93件と大部分を占めている。

 厚労省が同時に発表した学童保育の実施状況によると、5月1日現在のクラブ数は約1 万9900カ所で前年より1400カ所以上増加した。学童保育も待機児童の多さが課題であり、クラブ数の増加は歓迎される。しかし、規模別にみると、同省がガイドラインで適正規模とする「概ね40人程度」以下のクラブは半分ほどにとどまる。早期解消が求められる「71人以上」のクラブは前年より900カ所以上減少したものの、なお1200カ所以上に上る。

 厚労省調査は都道府県別の数値を公表していないが、全国学童保育連絡協議会の5月1 日時点の調査では、石川、富山県の学童保育設置率(小学校数に対する割合)はそれぞれ109%、101%といずれも全国平均(88%)を大きく上回り、上位にある。それでも71人以上のクラブが石川で14カ所、富山で28カ所を数える。

 厚労省のガイドラインに法的拘束力はないが、国民生活センターの調査では、規模の大 きい学童保育ほど、通院・入院日数の長い事故が増える傾向にあるといい、出来るだけ早く適正な規模に是正してもらいたい。

 学童保育の待機児童はクラブ数の増加で、3年連続で減少している。ただ、不況による 保護者の失業や経済的負担の重さから学童保育をやめた家庭も少ないとみられており、潜在待機児童の存在に留意する必要がある。