きょうのコラム「時鐘」 2010年10月27日

 中国の反日デモが収まらず、矛先が中国政府に向けられ始めたという。当局が「一定の理解はできる」としながら強力な抑え込みに転じた理由もそこにある

反日をスローガンにすれば破壊行為も許されるのを「愛国無罪」と呼んだ。かつて日本の全共闘運動が好んだ「造反有理」を思わせるスローガンである。元々は「水滸伝」のエピソードに由来するのが「造反有理」である

それが革命運動の中で、目的が正しければ暴力で民主主義を破壊するのも許される意味に転化した。ストレートに「革命無罪」と表現することもあった言葉が、時代とともに「造反有理」から「愛国無罪」へと変わってきたのだった

表現がいくら変わろうとも、一党独裁の矛盾が変わることはない。貧富の格差や自由が規制されることの不満の源は自国政府にあることが、過激なデモの中であぶり出される。大衆を扇動することの危険性と言ってもいいだろう

過去に身勝手な論理を振りかざして来た者は、自らの過去に逆襲される。「造反有理」と叫んでのし上がってきた日本の市民運動出身の政治家も、ひとごとではない。