70円台突入は必至!“異常円高”でトヨタが吹き飛ぶ

2010.10.15

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輸出企業各社の想定為替レート【拡大】

 円高が止まらない。1995年4月19日に付けた史上最高値1ドル=79円75銭を更新し、「77〜78円台まで進む」との専門家の見立てが現実味を帯びている。急激な円高は企業業績を直撃。トヨタ自動車は本業のもうけである営業利益がすべて吹き飛びかねない情勢だ。日本経済は緊迫の度合いを増している。

 ロンドン外国為替市場では14日、ついに1ドル=80円台に突入。市場関係者からは「とうとう危険水域に入ってきた」(銀行筋)との声も聞かれた。円高は企業業績に大きなダメージを与えるからだ。

 たとえば、トヨタ自動車。今期(2011年3月期)の想定為替レートは1ドル=90円で、1円の円高で営業利益が300億円目減りする。

 81円の水準では、2700億円の減益要因に。11年3月期通期の連結営業利益見通しは3300億円だから、1ドル=79円になると利益がすべて吹き飛ぶ計算になる。

 底なし沼のように円高ドル安が進行する最大の要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)が11月に追加金融緩和策を実施するとの観測が根強いこと。

 追加緩和を実施すると米国の金利が低下する。金利が低下すれば、ドル資金での運用が不利になるので、ドルを売って円など他国通貨を買う動きが強まる。

 ただ、日銀も今月5日の金融政策決定会合で、ゼロ金利導入など包括的な金融緩和策を決定したばかり。本来ならば円が売られてもよさそうなものだが、それをあざ笑うかのように円高が進行している。

 その背景について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士主任研究員は「米国の追加金融緩和期待で円高ドル安が進んでいるということは、裏を返せば、日銀の緩和が不十分ということ」と指摘する。

 日銀の緩和策ではゼロ金利のほか、総額35兆円の基金を創設し、ETF(指数連動型上場投資信託)、Jリート(上場不動産投信)なども買い入れて市場に資金供給することなどを決めたが、為替市場ではこれが評価されていないわけだ。

 先の片岡氏は「日銀は“道具”を手に入れただけで、これから思い切った政策が実行できるかがポイント。円高を止めるには、政府の為替介入と日銀の追加緩和を合わせて実施すべきだ」と提言する。

 では、円高ドル安はどこまで進むのか。

 クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストは「市場はいったん1ドル=79円台をみないと納得しないだろう。77〜78円程度まで進む可能性もある」と指摘。

 9月15日に為替介入に踏み切った政府・日銀が再び介入を実施するかどうか注目されるが、各国が為替相場に神経をとがらせるなか、「今後の介入実施は困難」と白川氏はみている。

 一方、マネックス証券の村上尚己チーフ・エコノミストは「今起きているのは円高ではなくドル安。そのドル安も限界にきている」として、これ以上の円高には進みづらいとみる。

 トヨタの営業利益が吹き飛ぶような円高は確かに異常。経済界は固唾をのんで為替動向を見守っている。

 

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