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腰痛対策にリフト導入…「抱きかかえ」職員は重労働

 高齢者介護の現場では、腰痛対策が欠かせない。ベッドから車いすへの移乗にリフトなどの福祉用具を活用することで、職員の腰痛予防に加えて、介護の質の向上につなげる取り組みが広がっている。(内田健司、写真も)

ベッドから車いすへの移乗に介護リフトを使うと、腰痛負担が軽減される(東京都日の出町の「日の出ホーム」で)

 東京都日の出町の特別養護老人ホーム「日の出ホーム」では、自力で立ち上がることができない4人の利用者が、毎日、介護リフトを使ってベッドと車いすの間を行き来している。

 利用者の体をネットでくるんだ後、介護者がリフトのボタンを操作すると、利用者はネットごとつり上げられて移動する。宙に浮いているのは1、2分ほど。

 「よっこいしょ」と職員が抱きかかえるようにして移動させていた時は、時折不安そうだった利用者も、リフトで移動中は安心しきった表情を見せる。

 リフトを導入したのは2005年。その後も都の補助金などを使って買い増し、今年1月からは浴室にも設置した。

 ネットの装着などわずか数分の手間を嫌がる声も当初はあったが、作業療法士の森谷陽一さんは、テクノエイド協会のリフトリーダー養成研修で習得した成果などを同僚らに説明。現在は、リフトの利用をケアプランに書き込むことで、約9割の介護職員がリフトを操作できる体制を整えた。

 慢性的な腰痛に悩まされた経験がある介護福祉士の福田英男さんは「小柄な女性に限らず、男性にとってもリフトは使い慣れると便利だ」と評価する。施設では今年、「持ち上げない介護」をテーマに据え、職員アンケートも行っている。

人材確保へ

 リフトの利用がさらに進んでいるのが、東京都目黒区の特養「東山ホーム」だ。

 21ある4人部屋と三つの浴室すべてにリフトを常設し、毎日約50人が利用する。

 萩尾映子施設長は「職員が健康で余裕がなければ介護サービスはよくならない。利用者への目配りが増え、質の向上が期待できる」と指摘する。自分で立ち上がれない人は、いつでもリフトで移乗できるようにした。

 「コストはかかるが、介護現場の人材を確保するためにも、経営者は積極的に導入すべきだ」と萩尾さんは言う。

国の助成も

 北欧では、介護職員が1人で高齢者を持ち上げてはいけないなどの決まりがあり、リフトの導入が進んでいる。

 職場における腰痛の発生状況について、厚生労働省が08年に公表した調査によると、「移乗介助中」が64%を占める。これを受け、同省は09年、介護作業者の腰痛予防対策チェックリストや、社会福祉施設での安全衛生対策を作成。腰痛予防対策を促進するためのモデル奨励金を創設し、リフトやベッドなどの介護福祉機器を導入し、一定の改善が見られた場合、300万円を上限に助成を開始した。

 神戸学院大の古田恒輔教授(作業療法学)によると、1回のトイレ誘導で必要な移乗は計4回(ベッド→車いす→トイレ→車いす→ベッド)。食事の誘導なども含め、1人1日平均40回とすれば年間で1万4600回、移乗介護をしている計算になる。

 古田さんは「1回たりとも転倒などの失敗は許されないわけで、人の手による介護が安全で確実とは言い切れない。リフト以外にも、体の下に敷いて体を横滑りさせる『スライディングシート』などがある。『抱える介護』で介護者を疲弊させないためにも、職場全体の意識改革が大事だ」と話している。

 ◆介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/090706-1.html

 ◆労働安全衛生総合研究所による介護者のための腰痛予防マニュアル(http://www.jniosh.go.jp/results/2007/0621/manual.pdf

 ◆介護労働者設備等整備モデル奨励金の照会は、各都道府県労働局へ。

2010年10月26日 読売新聞)

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