2010年9月1日 11時24分 更新:9月1日 11時38分
【ワシントン草野和彦、古本陽荘】オバマ米大統領は31日夜(日本時間1日朝)、イラク駐留米軍戦闘部隊の任務終了を宣言したが、演説では何度もアフガニスタンに触れ、「もう一つの戦争」へ傾注する意思を鮮明にした。しかし、アフガンでは駐留米軍の撤退計画がずれ込むのは確実。さらにテロ対策は世界各地に拡大しており、米国は見通しのきかない「戦い」にはまりこんだままだ。
「イラクで兵力が削減されたことにより、その分の資源を攻撃に振り向けることができるようになった」
オバマ大統領は演説で、テロ組織との戦いが世界中でこれからも続くとの認識を強調した。
3万人増派完了で約10万人となるアフガン駐留米軍について、オバマ大統領は、「来年夏、アフガンへの権限移譲を始める。米軍撤退のペースは現地の状況により決まる」と明言。しかし、コンウェイ海兵隊総司令官は8月24日、アフガン治安部隊への権限移譲は「数年かかると思う」と語っている。
総司令官の発言は、間もなく始まる南部カンダハルでの総攻撃の困難さを見越したものだ。カンダハルは、イスラム原理主義の反政府組織タリバンの発祥の地で、総攻撃が双方に大きな犠牲を伴うのは確実だ。
現在のアフガン治安部隊(軍・警察)は約25万人。北大西洋条約機構(NATO)軍の計画では、来年10月末までに30万5000人に増強する計画だ。
目標まであと5万5000人だが、計画を総括するコールドウェル陸軍中将によると、アフガン兵の離脱率などを考慮した場合、今後14万超の採用が必要という。また、治安部隊の識字率は14~18%。薬物使用率は約10%に上り、治安部隊の「質」改善は急務だ。
ブッシュ前政権の国務副長官(01~05年)のアーミテージ氏は、パキスタンでの無人機による攻撃強化を含め、「イラク以外で、オバマ政権はブッシュ前政権のテロ対策を拡大している」と語る。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、オバマ政権が無人機や特殊部隊による攻撃、軍事支援、情報活動など、「戦争」以外のテロ対策を行っているのは、北部アフリカから中央アジアにかけての12カ国に及ぶという。イラクから戦闘部隊が撤退してもなお、米国がテロ対策に足を取られる状況に変わりはない。