2010年9月1日 10時58分 更新:9月1日 12時57分
【ワシントン草野和彦】オバマ米大統領は31日夜(日本時間1日朝)、ホワイトハウスの大統領執務室から国民向けのテレビ演説を行い、イラク戦争について「米国の戦闘任務が終了したことを宣言する」と語った。イラク軍訓練などを主任務として残る5万人のイラク駐留米軍についても、「来年末までに撤退する」と改めて確認した。
イラク戦争は03年3月、旧フセイン政権の大量破壊兵器所持疑惑を理由に開戦。当時、開戦に反対したオバマ大統領は演説で、「イラクを武装解除するための戦いが、武装勢力との戦いになってしまった」と長期化の原因を指摘した。
一方で旧フセイン政権を倒し、イラクの治安安定に貢献してきた米軍を称賛。テロが激減したことや、米軍が取り組んだイラク治安部隊の能力向上が、戦闘任務終了につながったことを強調した。
今年3月の総選挙後、政治的空白が続くイラクの指導部には「緊張感を持って」組閣に取り組むよう求めた。
さらに「米国の安全保障上、(国際テロ組織)アルカイダとの戦い以上に重要なものはない」と述べ、アフガニスタン戦争継続への理解を求めた。
大統領は演説前、ブッシュ前大統領に電話したことを明らかにし、開戦を巡る立場の違いを認めた上で「ブッシュ氏の米軍への支援、愛国心、米国の安全への決意を疑うものはいない」と前大統領を気遣った。
また米国が財政赤字に苦しむ中、巨額の戦費をつぎ込んできたことを指摘した上で、「最も喫緊の課題は米経済の再生だ」と述べるなど、11月の中間選挙を控え、政治色が濃い演説となった。
開戦以来の米軍死者数は4400人を超え、民間団体の調査では、イラク人の死者数は約10万人。また米国の戦費は7400億ドル(62兆円)を超えている。