2010年8月29日 2時33分
日中両国の主要閣僚が経済課題を話し合う「第3回日中ハイレベル経済対話」が28日、北京で開かれ、環境・省エネなど5分野・7項目で協力関係を強化することで合意した。しかし、ハイブリッド車の性能向上などに不可欠なレアアース(希土類)輸出を中国が規制していることについては、年1回の次官級協議で検討対象とすることに合意したものの、中国側は日本側が求める規制の緩和には応じなかった。次回会合は来年、日本で開催される。【立山清也、北京・浦松丈二】
日本からは、共同議長を務める岡田克也外相のほか、野田佳彦財務相、直嶋正行経済産業相ら6閣僚と3副大臣が、中国側は共同議長の王岐山副首相のほか閣僚級8人が出席した。岡田外相は終了後の記者会見で「双方が戦略的互恵関係をさらに深めることで合意した」と述べた。
会合では、省エネ・環境協力や次官級会合の開催のほかに、中国国内の物流や流通環境の改善▽人材育成▽民間レベルでの食品安全に関する情報交換や交流活動の強化--で合意した。また、世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンドの推進や保護主義抑制、産官学による日中韓自由貿易協定(FTA)の共同研究を積極的に進めることでも一致。偽ブランドによる知的財産侵害問題でも取り組みをさらに強化することになった。
一方、日本側が強く求めたレアアースの輸出規制の緩和については、中国側が「環境保護と資源枯渇の懸念」などを理由に規制は必要との認識を示し、結論は先送りされた。また、中国国内の日系企業で賃上げを求める労働争議が相次いだことから、日本側は法整備を要請したが、中国側は「国が発展する途上で労働争議が深刻化する時期はある」と応じるにとどまった。
経済対話の主要テーマの一つは、中国のレアアース輸出規制だった。直嶋経産相は「輸出枠削減がレアアース不足をもたらし、世界の産業に重大な影響が出る」と懸念を表明。中国側が求める環境技術の移転などを提示して譲歩を引き出そうとしたが、中国側の姿勢は硬いままだった。
レアアースは、磁石の原料となるネオジム、耐熱性を高めるジスプロシウムなどに代表される希少金属の総称。ハイブリッド車や携帯電話部品の性能向上、液晶のガラス基板の研磨剤などに不可欠で、中国が世界生産量の9割を占める。
中国は7月上旬にレアアースの輸出を昨年比で約4割削減すると発表。輸出規制が続けば日本のハイテク関連企業に影響が出かねず、大手電機メーカーからは「価格が上がりつつある」と懸念の声が上がっている。
しかし、中国側は対話の中で、採掘に必要な大規模開発の環境負荷が大きいことを挙げたほか、「資源保護と国の安全保障上、規制はやむを得ない」と強調した。「レアアースを求める外国のハイテク企業を中国に呼び寄せ、高い加工技術を移転させる」(外交筋)ことが真の狙いともいわれており、簡単に譲歩に応じる気配はない。
一方、協力関係の強化で一致した模倣品による知的財産権の侵害問題については、中国製模倣品による日本企業の被害は年間約9兆円に達するともいわれているだけに、中国側の対応への期待感は強い。だが、「模倣品の工場が地方の雇用の受け皿となっているなど国内事情もあり、政府の掛け声だけで簡単に解決できる問題ではない」(日本政府関係者)という見方もあり、解決にはまだ時間がかかるとみられる。
両国の経済関係の閣僚級が一堂に会し、経済課題を協議する場。経済面での「戦略的互恵関係」を具体的に展開する狙いがある。主要課題を包括的に協議する場として設けられ、07年12月に北京で第1回、09年6月に東京で第2回が開かれた。背景には、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝などで冷え込んだ日中関係を改善しようとする両国の意図もあった。