2010年8月30日 11時29分 更新:8月31日 0時51分
日銀は30日、臨時の金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和策を決めた。政策金利と同じ超低金利(年0.1%)で資金を供給する「新型オペ」の総供給額を、現行の20兆円から30兆円に増額する。従来の貸出期間3カ月の20兆円に加え、貸出期間6カ月の新型オペ10兆円を新設する。菅直人首相も同日中に日銀の白川方明総裁と会談し、追加経済対策の基本方針を1日前倒しで決定する考えを表明。政府・日銀が足並みをそろえて対策を打ち出すことで、一体となって円高・株安に対処する姿勢を示す。【清水憲司、谷川貴史】
日銀は、政策金利(無担保コール翌日物)は現行の年0.1%に据え置くことも全員一致で決めた。新型オペ拡充には須田美矢子委員が反対した。白川総裁が同日午後2時半から記者会見を開き、追加緩和の理由などを説明する。
白川総裁は29日夕、出張先の米国から予定を1日繰り上げて帰国した。訪米中には米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長らと、米国経済の先行きなどについて意見交換。菅首相が27日、日銀の追加緩和に期待感を表明したことも踏まえ、9月6、7日に予定される定例会合を待たず、できる限り早く追加緩和を打ち出すべきだと判断したとみられる。
会合後の声明文では、足元の景気判断は従来の「緩やかに回復しつつある」、景気の先行きは「回復傾向をたどる」との見方を維持した。ただ、最近の円高・株安を踏まえ、「米国経済を中心に先行きをめぐる不確実性がこれまで以上に高まっており、為替相場や株価は不安定な動きを続けている」と景気の下振れリスクへの警戒感を示した。
追加策は、新型オペを拡充し、日銀の緩和姿勢を明確にすることで、長めの期間の金利を一段と低下させ、円高抑制効果を狙う。ただ、市場では「具体策が新型オペ拡充だけでは、失望感を生みかねない」(アナリスト)との厳しい見方がある。
今月10日の決定会合で、日銀が金融政策の現状維持を決めた直後、FRBが事実上の緩和策を打ち出したことで、市場では「日米の金融政策のスタンスの違いが鮮明になった」と受け止められ、円高が進行。一時は15年ぶりの1ドル=83円台となり、日経平均株価も9000円の大台を割り込んだ。それでも対策を打ち出さない日銀に対し、政府・与党や市場から風当たりが強まっていた。
一方、政府は30日午後、菅首相と白川総裁が会談した後、臨時の経済関係閣僚委員会を開催し、政府の追加経済対策の基本方針を決定する方針だ。
政府は31日に経済対策の基本方針を決定する予定だったが、日銀の追加緩和策決定に合わせて1日前倒しし、連携姿勢を強調する。
経済対策は、約9000億円が残っている経済危機対応の予備費を活用。新卒者の就職支援などの雇用対策や、住宅エコポイントの拡充などの環境対策などが柱となる見通し。
■追加の金融緩和策のポイント
▽新型オペの資金供給量を20兆円から30兆円に引き上げ
▽融資期間6カ月を新設し、10兆円を供給
▽3カ月の供給量は20兆円を維持
▽無担保コール翌日物金利の誘導目標を年0.1%程度に据え置き