高齢者不明:国の対策進まず 個人情報保護法などが壁

2010年8月29日 19時53分

 高齢者の所在不明問題に対する国の対策は、個人情報保護法の壁や省庁間の連携不足などから遅々として進んでいないのが実情だ。国が手をこまぬく中、長崎県で今年200歳の男性が、大阪市では120歳以上が5125人も戸籍上は生存とされていることが発覚し、問題は深刻さを増すばかりだ。

 6日の関係5閣僚会合後、長妻昭厚生労働相は「介護保険の利用履歴を所在確認に使えるよう法整備を検討したい」と述べた。原口一博総務相らも「連携して実態把握や問題の洗い出しを急ぐ」と申し合わせたという。だがその後、法整備に向けた協議は事務レベルでも持たれていない。

 法整備が困難な背景には個人情報保護法がある。個人情報には国が法律で管理するものと、市区町村が条例で管理するものがある。介護保険の利用履歴は市区町村の情報で、これを所在確認に使うことが条例の「目的外利用」に当たるかは、それぞれの条例や首長の判断に委ねられる。

 今回の長妻発言は市区町村の情報を国の管理下に置くことを意味する。だが総務省行政管理局担当者は「法律と条例をガラガラポンしてもう一度制定し直すのは、現実的には不可能。総務相から『法整備を検討してくれ』という指示もない」と話す。厚労省老健局担当者も「厚労相の発言は直接聞いていない。法律については総務省が検討すること」と話し、連携作業が行われていない現状を明かす。その後の関係5閣僚会合でも顕著な進展はない。【篠原成行】

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