放送内容

2010年10月21日(木) 再放送:10月28日(木)
キラキラ40 母と私 あなたの悩みにこたえます

内容

40代の女性たちの生き方を応援するキャンペーンキラキラ40。
10月は「母親との関係」を取り上げました。
40代は「仲良し親子第一世代」とも言われますが、今回、私たちが行ったアンケート調査では、母親とのつきあい方についての悩みを抱える女性たちの姿が、浮かび上がりました。
とくに目立ったのは、こちらの3つです。

  • “インナーマザー”の悩み
  • 介護の悩み
  • シングル女性の悩み

そこでシリーズ2日目は、この3つの悩みをテーマに専門家がお答えする番組をお送りしました。

インナーマザーの悩み

まず番組では、45歳の女性から寄せられた悩みをご紹介しました。

少女時代、母親にとても厳しく育てられました。母を喜ばせたいと一生懸命勉強しても、ほめてもらうこともほとんどなく、やがて「自分はこうしたい」「こう思っている」という自己主張も、してはいけないのではないかと言葉を飲み込んで育ってきました。その後、結婚し、母とは別居しましたが、思わぬ出来事が・・・。
二人の子どもを育てる中で、少女時代のつらい思い出が脳裏に鮮明にうかんでしまう。
たとえば、食事時、失敗した話など無邪気に話す子どもの姿を見て、「自分はこんなことは出来なかった」と思い返してしまったり、胸が締めつけられたり・・。
母とのつらい思い出が一生消えないというか、こんなに引きずるとは思わなかったです。

ポイント1 「母へのつらい思い」を人に聞いてもらう

スタジオゲストの信田(のぶた)さよ子さん(臨床心理士)によると、この女性のように「子どもの中に自分自身を見て」記憶がフラッシュバックする現象は、決して珍しいことではないといいます。その記憶が原因で、子どもへつらく当たったり、虐待の原因になる場合も。
この悩みの対処法として、信田さんが勧めるのが「周りの人に話を聞いてもらう」こと。自分の生育歴をたどりながら母の言動やその時感じた気持ちを話すことで、気持ちが整理され、心のわだかまりを解放する効果があるそうです。

ポイント2 各自治体の男女共同参画センターや女性センターを活用

もし、周りの人に聞いてもらうだけでは心の整理がつかない方は、精神科医や臨床心理士といったプロの治療、カウンセリングが必要となります。
信田さんが勧めるのが、自治体の「男女共同参画センター」や「女性センター」を利用すること。その多くが、無料カウンセリングを行っており、最近では「母娘の問題」も大事なテーマとして相談にのっています。本人の希望があれば、医療機関を紹介してくれるシステムを持っていることも魅力です。

介護の悩み

まず、NHKに手記を寄せてくれたある女性の体験談を、ドラマ形式でご紹介しました。

子どものころから母親と大の仲良しで、成人しても夫から「一卵性母子」と冷やかされるほどだったAさん。しかし、母親の持病が悪化し、介護が必要になった時から二人の関係は一変します。母親は、Aさんにつきっきりで介護することを求めました。母親と父親が不仲だったこともあり、Aさんは遠方から実家に通い献身的に介護をします。
しかし、母親の要求がエスカレートする中で、仕事、子育てといった自分の生活もままならない事態に陥り、仲良しだった母親とぶつかり、心の溝が深まっていきました。

スタジオでは、このほかにも寄せられた悩みの声を紹介しました。

ガンの母を支えています。あまりに細かい口出しにイライラすることが多いです。
母は自分の物忘れを私のせいにするので過剰反応してしまい、落ち着けない時があります。どう接すればよいでしょうか。

母が病気になったとき、電話せずにいたら「もう親のことを心配していい年なのに!」と怒られてしまいました。何でも話せて何でも許し合える仲だと思っていたのに…とまどっています。

スタジオでは、介護をする家族のサポートを実践してきた牧野史子さん(NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン 理事長)にも加わっていただき、話を進めていきました。

ポイント1 父親に参加してもらう

母親と「一卵性母子」関係であった場合、その親密性に圧されて、父親が蚊帳の外になってしまってしまうケースがよく見られます。まず、「母のパートナー」である父親に介護の一部を肩代わりしてもらっては?
これによって、「ほかの人に頼る」ことを経験でき、ほかの社会資源を利用しやすくなるメリットもあります。

ポイント2 自分・家族だけで介護を抱え込まず、「マネジメント役」を心がける

父親にはぜひ介護に参加してもらうべきですが、父親もまた高齢者であり、負担をかけると今度は娘が二人の介護をしないといけない事態に陥ってしまいがちです。
介護は、家の中の閉じた世界で行うのではなく、近所の人、公的サービスなどの社会資源とつながり、娘はあくまでもこれをうまく管理する「マネージャー」の立場でいるべきです。

シングル女性の悩み

母は子離れができていなく、よく口を挟んできます。日ごとに弱っていく母を見て覚悟をしつつも、暗い気持ちになり、いろんなことを考える自分がいやです。どうしたらいいですか。

ポイント1 すでに「介護は始まっている」と自覚を

ゲストの牧野史子さん(NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン 理事長)は、「介護は感情労働」という言葉を紹介してくれました。手足をつかった実質的な介護をしていなくても、老いゆく母親の相談を受け、先行きどう支えていくか思い悩む、その行為はすでに介護状態である、というのです。

ポイント2 意識的に親と距離をとる

では実際どうしたらよいのか。意識的に親から距離をとることが大切だと牧野さんは言います。会ったり、電話をする機会を減らしていく。それが、際限なく娘に依存してくる母親へのひとつのサインになります。

ポイント3 母のコミュニティーづくりに協力する

しかし、寂しい気持ちを抱える母親と本当に距離がとれるのか。そこで牧野さんが提唱するのが、地域の敬老会の活動など母親が参加できるコミュニティーの情報をインターネットなどで探してあげることです。ポイントは伝えっぱなしにしないこと。まず、娘の自分がひとりで行って体験してみる。その後、体験談を話して母親を誘導し一緒に参加する。その上で、母親に一人で参加してみるよううながす。「母の自立」は、こうした戦略が必要です。

ポイント4 親離れは親孝行だと思え

どうしても、母と距離をとることに罪悪感を感じてしまう40代女性たちへ。
スタジオゲストの信田さよ子さん(臨床心理士)はこんな言葉を送ってくれました。
「“親離れは、親孝行”を合言葉に、娘は100パーセント母親の要望に応えるべきという思いこみから離れ、母は母、娘は娘、それぞれの人生を充実させる道を模索する。」
そのためには、40代シングル女性たちも、居心地のよい母のそばから離れ、自分のコミュニティーを探す努力をすべきかもしれません。


出演者

信田(のぶた)  さよ子さん(臨床心理士)
牧野 史子さん(NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン)



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ハートネットホームページ:http://www.nhk.or.jp/heart-net/

【臨床心理士・信田さよ子さんの近著】
(家族関係を鋭く分析した著書を多数出されています)

「ザ・ママの研究」(よりみちパンセ 理論社)
「母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き」(春秋社)

【NPO法人介護者サポートネットワーク・アラジン】
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電話:03−5368−1955
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