軍部と親和性が高い習近平
もちろん、江沢民がしたように、胡錦濤が権力維持のために中央軍事委主席に留任する可能性もあり得る。しかし、江沢民は留任の際、中央軍事委委員の「推挙」を受ける形を取った。いまだに軍を掌握しているかどうかに疑問符がつく胡錦濤に、そうした真似ができるだろうか。
おそらくその可能性は低いだろう。なぜなら、習近平が中央軍事委副主席に就任したことによって、軍の支持が習近平に急速に傾斜する可能性があるからだ。
江沢民、胡錦濤にまったく軍歴がなかったのに比べれば、習近平は軍部に対して親和性が高い。父の習仲勲は、彭徳懐が第1野戦軍の司令員だった時の政治委員であった。彭徳懐とは、朝鮮戦争に参加した中国人民志願軍を指揮した人物だ。
鄧小平が第2野戦軍の政治委員を務めたことで軍に対して大きな影響力を持ったように、父親の習仲勲の威光が現在でも軍の長老を中心に残っているとしてもおかしくない。
しかも習近平自身、79年から82年にかけての短期間とはいえ、中央軍事委弁公庁秘書を「現役軍人」として務めている。国防部長も務めた耿(コウ)ヒョウ・元副総理の秘書も務めた。たとえわずかな期間といえども軍歴があるのだ。
新華社の公表している習近平の履歴を見ても、軍との関わりが深いことが分かる。夫人は軍に所属する有名な歌手で少将の階級を持つ彭麗媛である。
今後の焦点は次期党大会の人事権
第18回党大会における人事権は、その大会で総書記を辞任する胡錦濤にある。第16回党大会では、辞任する江沢民が、自分の息のかかった「上海閥」を大量に政治局常務委員に送り込み、中央軍事委の人事も主導した。
しかし、胡錦濤に江沢民のような真似ができるかどうか。
習近平サイドが第18回党大会までの2年間で、胡錦濤政権の弱体化、レームダック化を推し進め、人事における主導権を握りたいと考えるのは当然だ。
現状を見ると、中国各省指導部では共青団人脈の台頭が顕著に見られるものの、党中央指導部、中央軍事委では、今なお江沢民の人事で選ばれた連中が多数居座っている。
今回の人事で習近平が後継者としての地歩を堅固にした結果、胡錦濤のレームダック化はもはや避けられまい。次期指導部人事をめぐり、第18回党大会まで中国の権力葛藤から目が離せない。
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