レームダック化する胡錦濤政権

ますます地歩を固める習近平、権力葛藤がヒートアップか?

2010.10.26(Tue) 阿部 純一

中国

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改革派と保守派の権力葛藤がますます先鋭化する

 昨年の「17期4中全会」で習近平の中央軍事委副主席就任が見送られたのは、胡錦濤が早期の「レームダック」(死に体、役に立たない政治家)化を避けたかったからだろう。

 とりわけ昨年は建国60周年であり、胡錦濤が自らの権威を確保し、高揚する上でも後継指名を先延ばししたかったものと思われる。

 こうした文脈で考えれば、今回の習近平の中央軍事委副主席就任の背景にも、就任を推進する勢力と、さらに先延ばししようとする勢力との間で、葛藤があったはずだ。

 確かな証拠と言うには少々物足りないが、中国共産党人事の予想では定評のあるメディア「多維新聞網」が10月14日の段階で、「習近平の後継者としての地位に変わりはない」と強調しつつも、「習近平の軍事委入りは見送り」と記事にしたところを見ると、就任先送りの動きがあったことが分かる。

 ただし、記事の予想は見事に外れ、今回は就任推進派が勝利を収めたことになる。

 結果としてそうなったのは、習近平の中央軍事委副主席就任をさらに先延ばしすることで、権力葛藤が一層熾烈になることを避けたかったという観測もある。そうだとすれば、一種の妥協人事というわけだ

 しかし、この妥協は「休戦」を意味するものではない。問題はむしろこれからだ。

 片や、レームダック化を避け、政治的求心力を維持したい胡錦濤、および胡錦濤を代表格とする「団派」(改革派)。

 片や、胡錦濤の求心力を低下させ、次期党大会での人事主導権を握りたい習近平、および習近平を代表格とする「太子党」や、江沢民・曾慶紅に連なる上海グループ(保守派)。

 これら改革派と保守派の権力葛藤が、ますます先鋭化する可能性は否定できないのである。

「科学的発展観」の党規約入りは早すぎた?

 江沢民は、総書記ポストから退くことが決まっていた2002年秋の「第16回党大会」をターゲットに、2000年2月から「3つの代表」の大キャンペーンを展開した。「中国共産党は、生産的な社会生産力の発展の要求、先進的文化の前進の方向、最も広範な人民の根本的利益の3つを代表する」というキャンペーンである。

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