【ローマ藤原章生】イタリア南部ナポリ周辺で、2年前に一度は収束したはずのゴミ問題が再燃している。欧州連合(EU)の欧州委員会は23日、ベルルスコーニ政権に、ナポリ周辺の路上などに放置されている家庭ゴミなど約2400トンを除去しなければ制裁を科すと通告した。08年の対策が問題の根本解決につながらず、政権のイメージ向上のための「ゴミ隠し」に過ぎなかったことが明るみに出た形と言える。
ナポリがあるカンパニア州には1カ所ゴミ処理場があるが、すでに満杯。このためナポリからベスビオ火山をはさんだ東約12キロの町テルツィーニョに新たな処理場の建設が計画されている。しかし、これに反対する住民約2000人が9月末から抗議デモを繰り返し、一部は暴徒化。警官隊への投石などで23日までに少なくとも20人の警察官が負傷した。
ベルルスコーニ首相は22日、テルツィーニョの住民に1400万ユーロ(約15億円)の補償を表明し、建設受け入れを促したが、住民側は応じていない。
ロイター通信によると、欧州委は、十分なゴミ処理場を備えていないイタリア政府に解決を求め、今月末にも調査団を派遣する。
カンパニア州では07年、処理場不足でナポリなどの路上にゴミがあふれ、観光や住民の健康に影響を与えるとして問題になった。08年5月に発足したベルルスコーニ政権は早期解決を約束し、同年秋までに路上のゴミを一掃した。しかし、地元の環境団体「レガンビエンテ」は、政権は約5万トンのゴミを未処理のまま無人の地に埋めただけで、処理能力を向上させる根本的な解決策をとらなかったと指摘している。
毎日新聞 2010年10月25日 東京夕刊