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【格闘技】

西岡 5度目防衛 「パパは誰にも負けない」

2010年10月25日 紙面から

5度目の防衛に成功し、娘の小姫ちゃんを抱いて声援に応える西岡利晃=両国国技館で(川柳晶寛撮影)

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◇WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦

(24日・両国国技館)

 パパは誰にも負けないぞ−。WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチは、王者西岡利晃(34)=帝拳=が、最強の挑戦者レンドール・ムンロー(30)=英国=を3−0の大差判定で下し、5度目の防衛に成功した。序盤から右ジャブ、ボディーで展開を作り、終盤は得意の左ストレートを交えラッシュ、ラッシュ。連続KO防衛は「4」で止まったものの、指名試合をクリアした。また、WBA世界ライトフライ級暫定王座決定戦は、前ミニマム級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が2回KO勝ち。無敗での2階級制覇となった。

 セコンドに髪の毛をつかまれ、首をグキッと曲げられた。12ラウンド直前のインターバル。西岡は「痛ぇーよ!」と叫んだ。だが、視線の先、リングサイドには妻・美帆さん(29)、まな娘・小姫ちゃん(4)が座っていた。セコンドがささやく。「お前の家族が見てるんだぞ」。「ヨッシャー」。気合を入れて臨んだ最終ラウンド。千手観音のような20連打をさく裂させ、最強挑戦者を棒立ちにさせた。

 試合後、小姫ちゃんをリングに上げて抱き上げた。これが父娘4カ月ぶりの再会だった。「パパは誰にも負けない!」。娘のコメントに王者はニッコリほほ笑んだ。西岡はこの瞬間を夢見てリングに上がっている。

 「娘が(前回同様に)カゼひいちゃって、調整失敗かと思ったけど(笑)。点滴打たせて、なんとか万全の体調で…」

 父として期するものがあった。08年からボクシングに集中するため妻子を実家に帰し、東京−尼崎の別居状態。今月上旬、小姫ちゃんにとって幼稚園で初めての運動会があった。試合直前のパパは当然欠席。ダンスとリレーに出場したまな娘の晴れ姿を見ることなく、練習に明け暮れた。「来年はパパも来てくれたらいいな」。娘の言葉に「見たかったな、残念やな」と唇をかんだ。すべてはこの日の勝利のためだった。

 約10年ぶりとなるサウスポーとの対決。カギとなるのはリードブローの右ジャブだった。初回45発。2回50発。3回には71発。序盤から徹底的に繰り出し、相手に「右」を意識させ続けた。“宝刀”左ストレートを放つためのカムフラージュ。「倒したかったけど、思い通りのボクシングができました」。事前の作戦を実行してみせた。

 34歳。今なお進化し続けている。「ファイタータイプに対してこれまでで最高の試合をしたと思う」と胸を張った。両拳を痛め、左中指からは出血。試合中はそぶりも見せず、角度を変えて拳をたたき込んだ。ベテランならではの技術だった。

 今後は長谷川穂積を4回TKOで沈めたWBC・WBOバンタム級王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)とのビッグマッチが浮上している。「望むところ。ぜひやりたいですね」。西岡の夢は、まだまだ終わらない。 (森合正範)

 

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