2010年10月25日23時31分
【宝鶏(中国陝西省)=峯村健司】中国陝西省第二の都市、宝鶏市で24日にあったデモでは、「反日」のスローガンに交じって「反政府」が公然と叫ばれた。急ピッチで進められる開発の陰で、汚職や不動産価格の上昇は深刻化しており、中国が抱える問題の縮図が垣間見える。頂点に達した市民の不満は一気に爆発した。
市中心部の公園に24日午後、小雨が降る中、若者ら数百人が集まった。「日本製品をボイコットしろ」「釣魚島(尖閣諸島の中国名)をかえせ」と赤い布に書かれたスローガンに交じって、緑と青の布に記されたものがあった。
「腐敗官僚を倒せ」
「住宅が高すぎる」
参加者によると、最初にデモを呼びかけたのは市内の大学生だったという。しばらくすると数千人の工場労働者や会社員らが加わり、取り締まる警察と大混乱になった。政府批判のスローガンを掲げた参加者はすぐに警察に連行されたという。
再発を恐れた地元当局は25日朝、市内の大学を封鎖。学生らを自由に外出できないようにした。大学関係者によると、デモに参加したら除籍処分にすることなどを通知したという。
市内の女子大生(21)は、日中関係や政治には興味がないが、同級生に誘われてデモに加わった。一緒に反日を叫んだが、不満と不安を抱くのは就職の問題だ。「地方大学出身者の働き口は少なく、特に女子の就職率は2割にも満たない。将来が見えない」
20代の男性は、不動産価格の上昇に不満を抱いてデモに参加した。「一般市民には手も出ないぐらい高騰しているのに政府は何も手を打たない。反日デモは不満をぶつけられる貴重な機会だ」と話す。
省都西安から西に約170キロに位置する宝鶏市は人口376万人で、鉛生産が主力の工業都市。かつて高層ビルはほとんどなく、幹線道路も3本しかなかった。内陸部の経済発展を重点的に進める政府の「西部大開発」が始まった10年ほど前から、街は一気に様変わりした。