書斎魔神推薦 このミステリを読め!

ホームページ

書斎魔神が2ちゃんねるで発表した「スペシャルコメント付き作品リスト」です。
映像作品は書斎魔神推薦 この映画を観ろ!にまとめました。

目次

007シリーズ || 87分署シリーズ || 鮎川哲也追悼記念読書ガイド(決定版) || 江戸川乱歩全短編・中編ガイドブック || 江戸川乱歩長篇読書ガイド || 日本SF作家クラブ員が選んだオールタイム・オールジャンル・ベスト作品 || 大藪春彦 || 刑事コロンボ(小説) || 決定版初学者向き時代小説お薦め秘蔵リスト || コーヒーブレーク その1 || コーヒーブレーク その2 || コーヒーブレーク その3 (エヴァン・ハンター) || コロンボ好きに薦めるミステリー その1 || コロンボ好きに薦めるミステリー その2 || 佐野洋 || 生涯最高の10冊 || 土屋隆夫 || 法月綸太郎の功績 || パトレイバー(小説) || ハマ・ミステリ倶楽部のビッグ5のベスト作品(長編のみ) || ハマ・ミステリ倶楽部海外ミステリ公式見解 || 秘蔵・決定版 ミステリ板住人が選ぶ、これがサイエンス・フィクションだ! || フロスト警部シリーズ || ポプラ社 || 松本清張 || ミステリ以外の読書 || 結城昌治 || 横溝正史 || 吉村昭

007シリーズ

この夏、本家イアン・フレミングの007シリーズを読破してみた。
(番外編「私を愛したスパイ」を除く)
下記は、備忘録的なものである。
 1 カジノロワイヤル     C
   ストーリー自体は地味。
   処女作でもあるせいか、ボンドのキャラに映画との落差が大きい作品。
   愛した女の死に涙するボンド。

2 死ぬのは奴らだ      B
   終盤の海洋アクションシーンは惹き込まれるものがある。
   漫画ちっくな映画と異なり、細部の情景・心理描写も丁寧で、
   妙にリアリティがあるもいい。
 
3 ムーンレイカー      B
  地味ながら、これも原爆絡みの作品。
  ラスト、女にふられるボンド、映画では想像出来ないシーンだ。
  末尾の1行も文学してる。
  
4 ダイヤモンドは永遠に C
   これは駄作と言わないまでも失敗作であろう。
   敵側がアメリカのギャングなので、いつもの007シリーズのような
   洒落た雰囲気を欠く、本作については映画の方が良い出来かもしれない。

5 ロシアから愛をこめて   B
   映画化作品は、シリーズ最高傑作との評価がある。
   映画007シリーズにしては、漫画ちっくな作風を抑え気味にした
   シリアスなタッチの仕上がりである。原作は、映画以上に地味な展開である。
   ただし、スメルシュの女ボス、殺し屋、ボンドの相棒のトルコ支局長等
   のキャラは詳細に書き込まれていてそれぞれに印象深いものがある。
   しかし、ラストのボンドはカッコ悪すぎる。


40 名前:書斎魔神 投稿日:02/08/30 (金) 00:16

6 ゴールドフィンガー    A
   物語のスケールはシリーズ中最高かも。
   映画には無い大量虐殺のシーンあり。ただし黄金の美女は会話に出てくる
   だけで直接のシーンは無い。

7 サンダーボール作戦    B
   原爆絡みのそれなりにスケールのある作品だが、どこか漫画ちっくなのが
   緊迫感を欠く。

8 女王陛下の007 A
  最後の1行が完全に文学している。
  映画の評判が悪かったが、原作はシリーズ最高傑作という話しを
  どこかで読んだ記憶があるが、なるほどと納得のいくものがある。


9 007は2度死ぬ B
   評価は高くないが、日本を舞台とした異色作。
   ボンドと宿敵ブロフェルドとの最終決戦が、九州の島とは
  なんか楽しい感じだ。突き放すようなクールなタッチの幕切れもいい

10 黄金銃を持つ男 D
   007シリーズの長編最終作だが、これは失敗であろう。
   話し全体にボリューム感が無く、御都合主義も目につき過ぎる。
   敵役スカラマンガ(映画のクリストファーリーよりずっと若いイメージである)
   は、まるで西部劇(マカロニウエスタンの方かも)のガンマンのようで、
   キャラ立ちしており印象に残る程度。

作品集 オクトパシー
   意外に楽しめた作品集である。
   △「オクトパシー」
   007番外編とも言っても良い一編。クールな幕切れが秀逸である。
   △「所有者はある女性」
   これといった感想はないが、オークションネタという異色作品。
   ○「ベルリン脱出」
   いかにも原作のボンドらしさが良く出た遺作(だと思う。)
   ボンドのこれぞ片思いの極致というストーリー。



87分署シリーズ

カリプソ     
     サディスティックな部分のみ目立つ凡作。筆者は中学生の頃50年代、
     60年代に書かれた初期の87分署シリーズ(「ハートの刺青」「被害者の顔」等)
     を愛読したが70年代以降の同シリーズは通俗を通り越して下品な感じを受ける。
幽 霊    
     ホラーブームに便乗した幽霊ネタをあつかつたこれもまた凡作。
     初期のような切れ味を求めるのは無理か。
熱 波     
     つまらない作品。事件も地味、最近の87分署シリーズの常でスチーブ ・ キャレラ
     刑事の一人舞台で群像劇の面白さもない。(バート・クリング 刑事も本作の主要
     人物だが本筋にはあまりからまない。)

*ハリーシリーズのファンは次の作品もチエックされたい。

     ポップ1280  J・トンプスン    扶桑社     レンタル
     宝島社の「このミステリーが面白い2000年版」の海外部門第1位に
     選ばれた作品で期待して読んだが完全にはずされた。三文小説としか思え
     ない。ハメット、チャンドラーさてはドストエフスキーとの比較まで持ち
     出された書評にはただ唖然とするほかない。近年の過大と思える再評価に
     一番驚いているのは故トンプスン自身かもしれない。
     

鮎川哲也追悼記念読書ガイド(決定版)


追悼記念として、私が鮎のスレに書き下ろした読書ガイド(決定版)を
このスレにもアップしておくこととする。

鮎川哲也長篇ランキング

(A) 「黒いトランク」
   鮎川アリバイ破り小説の総決算として最後に読むべき
   作品。かなり緻密で複雑なプロットであり、初心者向き
   ではない。
   「りら荘事件」「朱の絶筆」
   パズル好きにはたまらない2作品だが、星影もの等の
   短編集でウオーミングアップ後に仕上げとして読むの
   が無難。

B  「黒い白鳥」「憎悪の化石」「砂の城」「偽りの墳墓」
   「死のある風景」「鍵孔のない扉」「風の証言」
   「戌神は何を見たか」「沈黙の函」「王を探せ」「死びとの座」
   この辺はどれもいいが、私的には「風の証言」が印象に
   残る。最後の4作は鬼貫ファンは少しガクッかな。
   「ペトロフ事件」「宛先不明」「準急ながら」「積木の箱」
   分量的には軽量級だが水準以上の出来映え。
   「死者をむち打て」
   ワラタ。超異色作。本格ではないので注意。

C  「白の恐怖」
   失敗作、以上。だがその心意気良し。

E  「人それを情死と呼ぶ」
   清張の通俗長篇の線を狙ったのだろうか?駄作。
   つらいが逝って良し!

351 名前:書斎魔神 投稿日:02/09/27 (金) 05:25

Eランクの1冊は除いてすべて読む価値のある作品ばかりだ。
しかし現在鮎川氏の作品は短編も含めて非常に入手しにくい
ものが多い。昔は角川文庫から大量に出ていたが角川春樹と
同様に逝って良し状態になってしまった。(泣
他社で復刊されたものもほぼ壊滅状態である。
とにかく古本屋や図書館で見つけたら即ゲットすべきである。
2割5分から8分は確実に打つアベレージヒッターの如く
この人の本はハズレが極端に少ない。

42 :名無しのオプ :2001/05/23(水) 22:38
スマン、1冊追加する。
Bランクで「翳ある墓標」
異色作だがこれは本格。結構楽しめる。
15,6年前に小田原の本屋で入手した。勿論今行っても無い。

とにかく短編集も含めて鮎川作品は乱歩、正史に比較しても
初刷りからして少ないから、他に買おうとしてるヤツがいたら
殴り倒してもゲットすべきだ。金が無ければ万引もひとつの
手だ。しかし、後どうなっても俺の知ったことではない。

江戸川乱歩全短編・中編ガイドブック

434 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/07 (金) 21:48

さて、これから文学板住人の皆さん宛てに
乱歩先生の全短編・中編のガイドブックを行ってみたいと思います。
ミステリ板住人であるわたくしが、文学板住人の皆さんに向けて、
文学板住人が読んで面白いか否かを、3段階で評価してみるという
2ちゃんでもちょっと珍しい異色な企画です。
評価基準は、○→お薦め △→読んでもいい ×→文学板住人向きにあらず
です。
乱歩先生の係累である松村善雄氏が書かれた「乱歩おじさん」(晶文社・絶版)
の巻末の作品目録に従い発表順に評価して行きます。
いろいろ、文学板住人の方の御意見もお聞かせください。


435 名前:吾輩は名無しである 投稿日:03/02/07 (金) 22:10

>>434
余計なお世話。お前こそミステリー板で勝手にほざいてろ。

446 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/07 (金) 23:03

大正12年(1923年)
・ 二銭銅貨 △
記念すべき乱歩の公式デビュー作です。
作り込まれた暗号トリックを作品の主眼とした短編ミステリですが、
過去ログを読むと文学板住人にも好評なようなのが意外です。
貧乏書生が登場するなど戦前の純文学の雰囲気と共通するものがあるからでしょうか。
ぎりぎりボーダーで×から△へというところでしょうか。
・ 一枚の切符 ×
短編ミステリの名手乱歩の手腕が良く発揮された作品ですが、
謎解き面白さのみしかなく、文学板住人向きではありません。
・ 恐ろしき錯誤 △
結構迫力がある心理ドラマです。読んでみてもいいでしょう。

大正13年(1924年)
・ 二廃人 ○
ミステリ仕立て純文学として読んでいただきたい暗い哀愁が漂う一編です。
・ 双生児 ○
ミステリという色眼鏡無しで、「ある死刑囚が教かい師にうちあけた話」
として文学板住人に読んで欲しい作品です。


447 名前:吾輩は名無しである 投稿日:03/02/07 (金) 23:09

ミステリ板住人は、言葉の一つ一つで「論拠」を示せ。
○×の論拠がどこにも書いてないぞ。
おまえの感想なんかどっちでもいい。


448 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/07 (金) 23:24

ミステリとして書かれてしまうと論拠まで記すのは無理ぽ。
ネタバレになり著しく読書欲をそぐ結果にもなりかねない。
本当は作品名と○×△だけでもいいくらいだ。
まあ、ぼちぼち行きましょう。
本は春陽堂を使用してます。


464 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/08 (土) 14:32

大正14年(1925年)
・ D坂の殺人事件 ×
名探偵明智の記念すべきデビュー作ですが、文学板住人にはさほど興味が無い
ことかと思います。過去ログの評判も芳しくないようですが、
謎解き短編ミステリとしての魅力以上のものは無いです。
・心理試験    ×
ミステリとしてだけ読むならこういうのも有りでしょうが、それ以上のもの
ではありません。乱歩短編の代表作ですが、文学板住人の向きではないです。
・黒手組     ×
暗号ネタのミステリに過ぎず、読む必要は無いです。
・赤い部屋    △
過去ログでの評判はそこそこかと思います。
小技トリックネタてんこ盛りなミスヲタ好みの作品ですが、
ラストはどこか文学的でもあります読んで見てもいいでしょう。
・ 算盤が恋を語る話 ○
猟奇性皆無のコントのような物語で、ミステリ板では黙殺されがちな作品ですが、
こういう人生の断片をさっと切り取ったような小品こそ文学板住人にお薦め
したいです。


465 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/08 (土) 14:33

・日記帳      ○
ミステリオタには物足りないかもしれない作品ですが、ゆえに文学板住人に
お薦めしたい哀切なラストが印象的な小品です。
・幽霊       ×
 ホラータッチでミステリに過ぎずお薦めできません。
・盗難       △
若干の文学的感興が感じられる地味ながら読んでみてもいい作品です。
・白昼夢      ○
非常に短い作品ですがお薦めです。乱歩文学の結実ここにありです。
・指環       ×
単なるコントで読む必要無しです。
・夢遊病者の死   △
もっと文学的に書けたであろう一編です。読んで見てもいいでしょう。
・ 百面相役者    ○
意外に文学的な感興もあり、文学板住人にお薦め出来る作品です。
・屋根裏の散歩者  ○
過去ログでも好評な名作。ミステリを越えた乱歩文学の頂点にある作品です。
絶対のお薦め。
・ 一人二役     ○
人生の妙味を感じさせる文学的興趣に富んだ小品です。ぜひ一読を。
・疑惑       ○
お薦めです。ミステリ趣向の文学と言ってもいいくらい人間心理が良く
書けています。
・人間椅子     ○
ぎりぎり○かと。オチが無い方がいいと見るのが文学板住人、オチが効いてると
見るのがミスヲタでしょう。両者の見解はっきり分れるところかと思います。
・ 接吻     ○
これも人生の断片を巧みに描いた文学板住人にお薦め出来る作品です。


467 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/08 (土) 14:51

ざっとレスを読んでますが、乱歩作品について書けない荒らしによる煽りのレスより
>>461のレスがネタバレを狙った悪質なものです。
僕のミステリー板への誘導も無視し、このスレでミステリについて語ろうとしているDQNです。

次回は、大正15年〜昭和元年です。


537 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/08 (土) 19:51

大正15年〜昭和元年(1926年)
・ 闇に蠢く     ○
先に記しましたが、文学板住人を戦慄せしめるであろう中編。
乱歩文学の極致です。絶対のお薦めです。
・湖畔亭事件    ×
あまりにミステリしていて文学板住人にはお薦め出来ない中編です。
・ 踊る一寸法師   ○
過去ログでも高評価もうなずけるものがある小品ながら、
猟奇文学の佳作です。
・毒草       ○
洒落た外国文学の短編を思わすようなお薦め品です。
・ 覆面の舞踏者   ○
「毒草」と同じく文学板住人好みのツイストが効いた作品です。
・灰神楽      ×
洒落た犯罪コントに過ぎずお薦めできません。
・火星の運河    ○
地味ながら乱歩文学のひとつの形です。お薦めです。
・モノグラム    △
ミステリらし過ぎるのが惜しまれる一編。まあ読んでもいいでしょう。
・お勢登場     ○
男の妄執を描ききった佳作です。読む価値十分あり。
・人でなしの恋   ○
過去ログでも好評の一編。乱歩の持味が十二分に発揮された作品です。
・パノラマ島奇談  ○
文学板住人には文句無しにお薦めです。過去ログでの絶賛は当然でしょう。
・鏡地獄      ○
これも一押し。黙って読めばいいかと。
・木馬は廻る    ○
 ラストに文学的感興がある文学板住人好みの作品です。


549 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/08 (土) 21:27

さて、お気に入りのスレとか書きながらコテハン叩きのレスしか書かない(書けない?)
人たちがいるね。
スレタイに関係無いことしか書いていないレスの連発→人これを荒らしと呼ぶ!

昭和3年(1928年)
・陰獣   ×
 この年は、この一作のみ。あまりにミステリであり文学板住人には薦め難いものがある。


564 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/08 (土) 22:18

私の雑談スレにおける謝罪にもかかわらず、
いっこうにコテハン叩き荒らしはおさまりません。
乱歩に興味がある賢明な文学板住人は、真実がおわかりになったと思います。
スレタイに無関係なレス、自作自演と騒ぎ立てるレス、
これ全てスレ荒らし自体を目的とするものであります。

昭和4年(1929年)
・ 芋虫  ○
ミステリとは言い難いゆえに、文学板住人に強く推す変態恋愛小説とも言う
べき作品です。
・ 押絵と旅する男 ○
乱歩の代表作でありながらミステリではありません。幻想文学の傑作中の傑作。
ゆえに安心して文学板住人にお薦めします。
・虫   ○
ミステリというよりは、鬼気迫るようなクライムノベルです。
△ という評価をする人もいるでしょうが、あえて○で推します。
・何者  ×
ラストシーンをっはじめ、結構洒落たミステリですが、
それ以上のものではないです。


591 名前:吾輩は名無しである 投稿日:03/02/09 (日) 00:58

いまさら言うのもなんだが、Yahooに登録されているような大手乱歩サイトの
紹介文に比べて稚拙すぎる…


602 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/09 (日) 10:24

昭和6年(1931年)
・目羅博士の不思議な犯罪  ×
過去ログでは私的べスト作品に挙げている人もいますが、
スリリングなミステリ以上のものではありません。
・地獄風景    ×
中途半端なパノラマ主義の冒険ミステリ。失敗作です。
読む必要はありません。
・ 鬼       ×
乱歩好きなミスオタ以外には縁が無いミステリという感じです。
 昭和7年(1932年)
・火縄銃     ×
習作に手を入れて完成度を高めたミステリという以上のものでは
ありません。
昭和9年(1934年)
・石榴      ×
結構オーソドックスなミステリというに過ぎない作品です。
昭和25年(1950年)
・断崖     △
ほぼ全編が会話体により進行するという乱歩作品中では異色作です。
ラストに文学的感興が無いでもないので、読んでみてもいいかもしれません。
昭和29年(1954年)
・凶器     ×
良くまとまったミステリというに過ぎず、読む必要はないです。
昭和30年(1955年)
・月と手袋   ×
大変にスリリングなミステリですがそれだけです。
・防空壕    ○
過去ログでも好評ないかにも文学板住人好みの作品。
ライダー・ハガード作品を想起させる傑作です。
昭和31年(1956年)
・ 堀越捜査一課長殿 ×
ミステリとしての趣向が面白い作品に過ぎません。


603 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/09 (日) 10:27

昭和32年(1957年)
・妻に失恋した男  ×
文学的な素材がミステリとして処理されてしまい残念な作品です。
読む必要はありません。
昭和34年(1959年)
・ぺてん師と空気男  △
軽いタッチで書かれたようでいて、人生の哀歓のようなものも感じさせる部分も
持つ中編です。読んでみてもいいでしょう。
昭和35年(1960年)
・ 指         ○
遺作にして乱歩唯一のスーパーナチュラルなホラーです。
文学板住人にはお薦めです。


江戸川乱歩長篇読書ガイド

369 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/02/01 (土) 14:18

文学板住人があまり手に取ることはないと思われの乱歩長編の読書ガイド
をアプしておきましょう。

江戸川乱歩長篇読書ガイド

A 「孤島の鬼」
  全編に妖気漂う日本ホラーミステリの最高傑作。
  京極氏もこの作品を前にしては失禁状態だろう。

B 「盲獣」「闇に蠢く」
  2作とも乱歩の本領発揮の必読作。
  「白髪鬼」「幽鬼の塔」「三角舘の恐怖」
  いづれも海外小説の翻案であり、オリジナリティは欠くが
  一読巻を置かせぬ面白さは保証する。特に「白髪鬼」の
  哀切なムードは印象的。
  「十字路」
  共作であり、オリジナリティは欠くが十字路における死体の
  ・・・・や死体の・・・のシーンの鬼気迫る描写は白眉。
  「ぺてん師と空気男」
  飄々とした軽妙な味わいが出色。
  「一寸法師」「蜘蛛男」「黒蜥蜴」「影男」
  明智冒険談は上記作品が御薦め。「影男」は地味だが
  スマートな洒落た作品で捨てがたい。


370 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/02/01 (土) 14:19

C 「化人幻戯」
   全体的に迫力を欠く凡作。
  「大暗室」
   趣味に走りすぎた失敗作
  「緑衣の鬼」「幽霊塔」
   翻案(後者の原典は黒岩氏だが)の失敗作。読むのタルイ
   自家薬籠化に失敗。
  「猟奇の果て」「魔術師」「人間豹」「悪魔の紋章」「暗黒星」
  明智冒険談でも比較的出来の悪い作品群。

D 「吸血鬼」「黄金仮面」
  明智冒険談の紙芝居化を象徴する愚作。
  「幼虫」
  同じく紙芝居化した愚作。

E 「恐怖王」
  読者を愚弄した駄作。逝って良し!

結論としてAのは必読。Bは「盲獣」「闇に蠢く」は必読。
翻案の3作は御薦め程度。明智シリーズは肌に合わなければ
読まなくてもいい。
C以下は読む必要は無い。


371 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/02/01 (土) 14:23

簡単にジュブナイルについても

A 「青銅の魔神」
  このシリーズの基本パターンがこの作品に結実。
B 「怪人二十面相」
  第1作のみが持ち得るフレッシュな雰囲気が魅力
C 「透明人間」「怪奇四十面相」「宇宙怪人」「黄金豹」
  「夜光人間」
  この辺は読んでもいいかも。
D Eランク作品を除くその他の作品。
E 「鉄人Q」「電人M」
  明かに少年読者を愚弄した作品。逝って良し!絶版を希望!


日本SF作家クラブ員が選んだオールタイム・オールジャンル・ベスト作品

401 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/26 (木) 19:51

ミステリ板住人と申します。
初めに、「おまいにSFを語る資格があるのか、ゴルァ!」という御質問に対しては、
「ある」とだけお答えしておきましょう。
なぜなら、わたくしは、
日本SF作家クラブ員が選んだオールタイム・オールジャンル・ベスト作品の
ほとんどを、読破等しておるからであります。
簡単なコメントを記しておきましょう。

海外編
1 夏への扉 R・A・ハインライン
  この作品が一位になるのが定番のようだが、毎回不思議な気がしている。
  SF仕立てのラブロマンスかファンタジーに過ぎないような。
  国内編一位の「果しなき流れの果に」と比較しても、見劣りし過ぎ。

2 地球の長い午後 B・オールディス
  太古のイメージの鮮烈さに魅了されるSFヲタの気持ちは理解出来るが、
  小説として読んだ場合は退屈である。

3 ソラリスの陽のもとに S・レム
  コンパクトにまとまった作品だが、共産圏の作家に有りがちな理屈に走り過ぎで、
  物語の興を殺いでいるのが残念。

4 火星年代記 R・ブラッドベリ
  つまらない。時代に恵まれた、実態はファンタジーの過大評価され過ぎな作品。
  キャンベルスクールの落ちこぼれの次善の策といったあたりが妥当な評価だと思う。

5 幼年期の終り A・C・クラーク
  深遠な思想性を感じさせる作品だが、刺激に乏しく退屈な面もある。
  宇宙人の真意が最後まで読めない気がするのも難。


402 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/26 (木) 19:51

6 2001年宇宙の旅 A・C・クラーク&S・キューブリック
  正直言って、映画は凝り過ぎの失敗作。
  説明を省略して、観るものに正確に意図が伝わらないのでは意味無し。
  

7 虎よ、虎よ! A・ベスタ―
  これも過大評価されている作品。実態は、劇画タッチのスペースオペラ。
  例えば、漫画「スペースコブラ」と比較しての優位性を見つけるのも困難。

8 スター・ウォーズ G・ルーカス
  くだらない。世紀末から新世紀にかけてスペースオペラ見て喜んでいるようでは、
  アメリカ人も日本人も、どうにもしょうもない。
  アメリカ映画の内容面における衰退を感じさせるシリーズである。

 9 宇宙船ビーグル号  A・E・ヴォクト
   正直言って好きな作品。
   少年時代にビッグフットに会いたくて、徹夜して待っていたというヴォクトの怪獣好き
   が感じられる微笑ましい作品。

10 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? F・K・ディック
   映画化作品「ブレ―ドランナー」の方が面白い。
   原作は、理屈に走り過ぎて、折角のスリリングなシチュエーションが十分に
   生きていない。


403 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/26 (木) 19:53

国内編

1 果しなき流れの果に  S・小松
  これぞ「センス・オブ・ワンダー」そのものと言って良い大傑作。
  起承転結がしっかりした物語構成はもちろんのこと、S先生の巧みな筆使いは、
  読者を思うままに、時空を飛び回らせて、厭きさせない。
  快感のあまり、思わず射精してしまったSFヲタもいるのでは?

2 百億の昼と千億の夜  R・光瀬
  つまらなかった。というか、作品が持つ世界観にはまれなかったというか。
  本作を評価する人も、「果しなき…」よりは、大分、見劣りすることは認めざるをえない
  事実だと思う。

3 宝石泥棒  M・山田
  実態はユーモア小説である。そのジャンルでの評価は別としても、SF作品のランキングで
  何故、こんな上位に来るのか不思議である。

4 マイナス・ゼロ M・広瀬
  アイデアは良いが、いかんせん、もう古い。
  本作が、いつまでもランキング上位に来ているようでは、
  SF界の現状、SFヲタの問題意識が危ぶまれる。

5 おーい でてこーい S・星
  本作が、星SSのベストというわけでもないだろうが、代表する形でということなら、
  納得。日本のSFを語る場合、やはりいつの時代にも、星新一は落とせない。
  ハイテク社会が持つ不気味さを予言したかのような長編「声の網」でもいいとは
  思うのだが。


404 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/26 (木) 20:03

6 妖星伝  R・半村
  伝奇小説。ジャンル違い。

7 ハイブリッド・チャイルド M・大原
  未読です。

8 幻想の未来  Y・筒井
  残念ながら未読です。「霊鳥類南へ」短編「睡魔のいる夏」より上なのだろうか?

9 風の谷のナウシカ H・宮崎
  SF仕立ての美少女萌えアニメに過ぎない。なぜ、ここにランクインするのか疑問。

10 産霊山秘録  R・半村
   だから、これも伝奇小説だっちゅーの。

563 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 01:08

では、オールタイム・オールジャンル・ベストの40位までにも、簡単にコメントして
おきましょう。まずは、海外編から。

11 アルジャーノンに花束を(長編版) D・キイス
   未読です。でも、これってSFなの?
12 発狂した宇宙  F・ブラウン
   多次元宇宙アイデアだけで読ませる作品。
   面白いが、短編で十分に処理可能な内容だと思われ。
13 ハイぺリオン(四部作)D・シモンズ
   未読です。
14 リングワールド R・ニーヴン
   軽快過ぎて重みを欠くのが、この人の難点。
15 結晶世界 J・G・バラード
   結晶化して滅びる世界、退廃的なイメージは魅力的だが、それだけでは・・
16 タイム・マシン H・G・ウエルズ
   古典だが侮れないものがある。「宇宙戦争」以上に読み継がれて行くのは、
   この作品かと思う。
17 都市と星 A・C・クラーク
   SFらしい気高く壮大なイメージが味わえるが、この作者特有の退屈さも兼ね備えた
   作品。
18 ニューロマンサー W・ギブスン
   未読です。
19 デュ―ン砂の惑星 F・ハーバート
   未読です。
20 ブレードランナー 
   前に書いたが、映画>>原作、かと思う。

564 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 01:09

21 アルジャーノンに花束を(短編版) D・キイス
   これも未読です。
22 フェッセンデンの宇宙 E・ハミルトン
   スペースオペラの作家というイメージがあったハミルトンに対する認識を一変させた
   作品。ラストは、まさにS・O・Wだ!
23 ブラッド・ミュージック G・ベア
   未読です。
24 ハイぺリオン D・シモンズ
   未読です。
25 竜の卵   R・L・フォワード
26 カエアンの聖衣 B・J・ベイリー
   25と26は、ファンタジーやろ
27 スラン A・E・ヴァン・ヴォクト
   古い。ビーグル号と比べると見劣りする。
28 星を継ぐもの H・ホーガン
   文句無しの傑作、この作品をこの程度にしか評価出来ないSFヲタの認識を疑われ
   ていい。
29 闇の左手 A・K・ル・グィン
   これは違うだろ(w
30 接続された女 J・ティプトリー・JR
   なんか安手のハリウッド映画っぽいのが難。

565 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 01:09

31 渇きの海 A・C・クラーク
   これぞハードSF。しかし、決して読みやすい本ではない。
32 タイタンの妖女 カ―ト・ヴォネガット・JR
   笑うしかないかも。スタージョンやアシモフが無くて、なんでこれ?
33 バベルー17 S・R・ディレイニ―
   未読です。
34 銀河ヒッチハイクガイド D・アダムズ
   脱力すますた。
35 ゲド戦記 A・K・ル・グィン
   これはないだろうに、違うよ
36 重力の使命 H・クレメント
   古典。直球勝負のハードSF。やはり落とせないかも。
37 光の王 R・ゼラズニイ
   未読です。
38 スローターハウス5 カート・ヴォネガット・JR
   この作者が、SF作家なのか、いまだに疑問だ。
39 ヴァ―ミリオン・サンズ J・G・バラード
   未読です。
40 月は無慈悲な夜の女王 R・A・ハインライン
   ハインラインの思想性が、一番良く出ている作品。
   読み応え十分。もっと上にランクインするべきものである。
41 人間の手がまだ触れない R・シェクリイ
   ギリギリでランクインだが、物語の面白さは一級品。

620 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 22:02

好評につき、国内編11位から40位までを、Uプします。

11 ゴルディアスの結び目 S・小松
   読み始めて、つまらないので途中でやめました。
   「果しなき…」と比較してしまうせいか、アラばかりが目に付きます。   
   いつまでもS・小松頼りのSFヲタに、強い憤りを感じてしまう今日この頃です。

12 脱走と追跡のサンバ  Y・筒井
   本来、Y・筒井は、短編の名手です。本作はドタバタが過ぎるスラプスティック
   に見えず、ランクインそのもの疑問です。
   SFヲタは、いい加減、S・小松、T・筒井の両巨頭頼りは、やめたまえ。

13 ウルトラQ      円谷プロ
   勿論、面白い作品が多いのは間違い無いのだが…
   アンタ、言うに事欠いて…、最後を締めた「あけてくれ」の印象が強いのかなあ。

14 太陽風交点    A・堀
   この人が大成しなかったのが、SF界にとっても、SFヲタにとってもイタかったね。
   この作品のランクインには文句無し。もっと上でもいいくらいだと思う。

15 神狩り M・山田
   未読です。手に取って買うのをやめた記憶がある。

624 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 22:16

16 ボッコちゃん S・星
   ここにも、困った時の巨匠頼りというSFヲタの悪い面が見られる気がする。

17 石の血脈  R・半村
   だから、伝奇小説だっちゅーの

18 家畜人ヤプー S・沼
   これは諷刺小説として読むのが正しい。

19 デビルマン  G・永井
   難しいところだが、伝奇ものという考え方(笠井説)もある。

20 あなたの魂に安らぎあれ C・神林
   知らん。未読。

626 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 22:18

21 鉄腕アトム  O・手塚
   笑いました。アトムという作品ではなく、本作をランクインさせるSFヲタをです。

22 ドグラ・マグラ K・夢野
   これも違う。敵(ミステリ)から、助っ人借りて来て、どうすんの?(w

23 機動戦士ガンダム Y・富野
   ワラタ!それだけ、だから、アンタたちねぇ(w

24 ゴジラ
   だからこれは怪獣映画でしょうが…それが悪いというわけでなくて

25 第四間氷河期  K・安倍
   この辺の作品を、もう少し推さないと駄目しょ。しっかりせい!SFヲタ!

26 銀の三角  M・萩尾
   脱力すますた…

27 ハイウェイ惑星 F・藤原
   ここまで無理して40作にする必要は無いと思うのだが・・

28 日本アパッチ族  S・小松
29 継ぐのは誰か   S・小松
   だから、もう巨匠頼りばかりはやめれ!
   28は、SF風諷刺ユーモア小説であり、
   29は小松作品の中でも、決して出来が良いものではない。

30 AKIRA K・大友
   最早、古典と言っても良いし、ランクインは当然だとも思うが…


627 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 22:18

31 たそがれに還る R・光瀬
   SFマガジン版の方?ランクイン、順位、共に妥当な評価かと思う。

32 美亜に贈る真珠 S・梶尾
   未読。知りません。

33 幻詩狩り C・川又
   未読です。

34 街の博物誌 河野典生
   ハードボイルドミステリのパイオニアがSFを書いてるの?
   勿論、未読です。

35 ウルフガイ・シリーズ K・平井
   幻魔じゃなくて、なぜこっち?オリジナリティの問題か?

36 虚船航団 Y・筒井
   やはり、困った時の巨匠頼りの感を否定出来ない。
   はだって、なぜこの作品かと小1時間(以下略)
   「馬の首風雲録」あたりを、スペースオペラと称してランクインさせた方が
   まだ、いくらか面白い気がする。

37 銀河英雄伝説 Y・田中
   唖然。SFヲタは自戒すべし、そして、じっと我が手を見るべし。

38 午後の恐竜 S・星
   だから、困った時の巨匠頼りは、いい加減にせいと、
   何度同じ事を言ったらわかるんだ!

39 グイン・サーガ K・栗本
   笑いました。SFヲタも苦しいな。


628 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/28 (土) 22:23

ひとつとっておきの作品を落としてました「火の鳥」(O・手塚)。
ストーリーに矛盾を来たし、未完に終ったのが残念ですが、
物語の完成度を除いては、匹敵するSFは、S・小松の「果しなき・・」のみ
です。

大藪春彦

ここで大藪春彦必読作品リストを紹介する。
順不同
1 「野獣死すべし」
  暗い情念に彩られた青春ハードボイルド。第1作のみが
  持ち得る新鮮な感性が魅力を放つ。
  映画化作品はすべて逝って良し!
2 「蘇える金狼」
  ボリュームがあり読み応え充分なリーマンアクション。
  松田優作主演の映画もまあまあ良かった。
3 「戦士の挽歌」
  これもリーマンアクションだが2より娯楽性が強い。
  読み応えは充分。
4 ウインチェスターM70
  問答無用のピカレスクロマン。凄すぎ。
5 「長く熱い復讐」
6 「黒豹の鎮魂歌」
7 「傭兵たちの挽歌」
  いずれもA・クイネルも失禁するリベンジャーものだが
  特にスケールの大きい7がいい。
8 「凶銃ルガー08」
  拳銃放浪談の傑作。ある意味異色作。阿部寛主演の
  ビデオは逝って良し!
9 「みな殺しの唄」「凶銃ワルサ―P38」
  マカロニウエスタンを凌駕する殺しのバラードが炸裂

10 「獣たちの墓標」
   西条もの最高傑作。
   「ちゅらさん」もぶっ飛ぶ沖縄アクション

番外「赤い手裏剣」
   異色時代ハードボイルド。結構いい。
   市川雷蔵主演の映画は逝って良し!

個人的御薦め
「死はわが友」「奴に手錠を」
暗い情念が苦手な人向き。気軽に読める娯楽アクション。

女豹シリーズは逝って良し!大藪春彦は女性読者に媚びる
必要は無かったのに残念。
あの間抜けな主人公には引いた。

中期の処刑シリーズ以降の集団アクションものもいただけない。
大藪春彦の主人公は悪霊を守護神にひとりで戦い続けるのが
いいのだ。


刑事コロンボ(小説)

「死者の身代金」の放送回に関する誤り失礼しました。スマソ。

週末に二見文庫のコロンボシリーズを2冊読みましたので、
簡単に感想を記してみたいと思います。

・刑事コロンボ 殺しの序曲  W・リンク、Rレビンソン  二見文庫
本を読んで、TV版も見たことがあるのを思い出した。
IQの天才ばかりが集まるクラブ内での殺人というストーリーは期待させる
ものがあったが、旧シリーズも後期の作品であり、出来映えは芳しくない。
登場人物に天才が多いわりには、犯人の殺人の方法もクラブの会員たちの
推理もお粗末な感じがする。
爆竹を使ったトリックには、ほんとに萎えた。

・刑事コロンボ 13秒の罠  アルフレッド・ローレンス  二見文庫
未映像化作品。ライターが違うせいか、コロンボのキャラに少し違和感がある。
大学で犯罪捜査の講演をして好評を得るようなタイプではないように思うのだ。
ストーリー自体はトリック(とまで言えるかも疑問)も小粒で、
設定の御都合主義も見え見えで、正直、いまだに映像化されていないのが
納得出来る駄作である。


決定版初学者向き時代小説お薦め秘蔵リスト

244 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/08 (日) 18:52 ID:o34vt++k

いまだに、時代小説初学者向きブックガイドがアップされていないのは、
このスレッドの欠陥のひとつと言えるでありましょう。
そこで、「決定版初学者向き時代小説お薦め秘蔵リスト」を御紹介しましょう。

長編の話題が多いですが、時代小説初学者は、短編小説から読み始めるのがよろしいでしょう。

1 司馬遼太郎の短編集
  長編作家のイメージが強いが、歴史・時代小説を読み慣れない初学者が、
  いきなり彼の大河小説に挑むのは大変な面がある。
  新潮文庫「人斬り以蔵」、文春文庫「故郷忘じがたく候」「幕末」「木曜島の夜会」
  講談社文庫「最後の伊賀者」「アームストロング砲」等の短編・中編集で、
  多彩な司馬氏の世界に親しむのがよろしいでしょう。

2 池波正太郎の短編集
  鬼平犯科帳、仕掛人藤枝梅安、剣客商売(*私は好きではないです)の短編主体の
  3大シリーズを読んでみるのもいいが、ノンキャラの作品を集めた短編集に
  面白いもの多数。
  「にっぽん怪盗伝」(角川文庫)「仇討ち」(角川文庫)「仇討群像」(文春文庫)の
  3冊は特に推す。池波先生は、仇討ち小説の名手でもあるのだ。
  その緊迫感は、一読巻を置かせぬものがある。

3 山本周五郎・藤沢周平
  このスレッドでも話題の周五郎の「樅ノ木は残った」、周平の「漆の実のみのる国」等を
  いきなり読むより、やはり、最初は短編がお薦め。
  2人とも、木村拓也のようなアベレージヒッターなので、キャラもの、ノンキャラもの
  を問わず、新潮文庫の短編集なら、どれを読んでも間違いはなかろう。


245 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/08 (日) 18:53 ID:o34vt++k

4 柴田錬三郎
  まず、眠狂四郎無頼控全5巻(新潮文庫)を薦めるが、
  新潮文庫収録のノンキャラの短編集。「剣鬼」「邪法剣」「一の太刀」「無念半平太」
  「孤独な剣客」といった剣豪ものが、重厚かつ迫力満点で意外に面白い。
  併せてお薦めしておく。

5 白石一郎
  このスレでは、「秘剣」くらいしか話題に出ていないが、作品数は多い。
  海洋小説の書き手として有名だが、長編より短編の方が面白いものを書く人である。
  文春文庫「幻島記」「島原大変」「蒙古の槍」「オランダの星」「海峡の使者」
  新潮文庫「秘剣」「天上の露」「幽霊船」等の短編集は、
  どれも時代小説の醍醐味を満喫出来る粒揃いである。

6 松本清張
  「かげろう絵図」「天保図録」等の大作もある文芸における各分野をまたがる巨匠だが、
  時代小説のジャンルでも、短編集がお薦め。
  角川文庫「無宿人別帳」、新潮文庫「佐渡流人行」。
  捕物帳なら、「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」の2冊は必読。  
  綺麗ごとではないリアルな江戸がここにある。

250 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/08 (日) 21:27 ID:xv2aqRQX

続けましょう。

7 笹沢左保
  木枯し紋次郎シリーズが有名だが、初期作品は良い出来栄えなのだが、
  中期以降は、出来・不出来が激しい。
  むしろ、紋次郎シリーズの周辺に存在する作品集に面白いものが目白押しだ。
  紋次郎シリーズの原型とも言える短編を集約した
「見かえり峠の落日」(講談社大衆文学館)や「雪に花散る奥州路」(文春文庫)は、
 笹沢股旅ワールド全開の傑作揃い。
 紋次郎シリーズの姉妹編とも言うべき連作小仏の新三郎を主人公とした
「地獄をわらう日光路」(文春文庫)、紋次郎に比肩する笹沢股旅ものの代表作である
 無宿人御子神の丈吉シリーズ全4巻(徳間文庫)は必読。
 光文社文庫の作品集「旅鴉」「夢剣」もいい。

8 岡本綺堂
  正直言って、捕物帳は綺堂の半七捕物帳に始まり、そして終ったと言っても過言ではない。
  半七捕物帳全6巻(光文社文庫)は必読。
  その格調と汲めども尽きぬ江戸情緒は、他に比肩するものが無いのだ。
  また、光文社文庫の「鎧櫃の血」「影を踏まれた女」「白髪鬼」は、
  収録作品すべてが時代小説ではないが、読み出したらやめられないホラー短編集。
 (ちゅーか怪談)


251 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/08 (日) 21:41 ID:xv2aqRQX

9 山田風太郎
  ミステリ作家としては、短編の名手として今でも根強い人気を持つ。
  時代小説作家としては、忍法帳シリーズをはじめとした長編で有名だが、
  第一作「甲賀忍法帳」を上回る作品は無い。
  このスレッドで紹介された作品、「伊賀忍法帳」「江戸忍法帳」「柳生忍法帳」
  「魔界転生」等々、仕掛けは派手になれど、作品の出来栄えは、今ひとつである。
  むしろ、かって角川文庫に収録されていた忍法帳シリーズの短編集(「忍者月影抄」等)が、
  奇抜なアイデアストーリーの連発で楽しめるものがある。

254 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/08 (日) 22:06 ID:xv2aqRQX

長編の歴史小説を書く作家では、吉村昭先生は落とせない。
一応、江戸時代までを舞台にした作品では、下記のものは絶対のお薦め。

・ 新潮文庫
「冬の鷹」
解体新書の実質的な翻訳者である前野良沢の不遇な人生を描き、万感胸に迫るもの
がある。
「漂 流」
まさに日本のリアルロビンソンの決定版。迫力満点。
「破 船」 
コンパクトだがショッキングで鬼気迫るような作品。
「長英逃亡」
これぞ和製「逃亡者」。息も吐かせぬスリルに富んだ逃避行の中に、
江戸情緒等の情景描写も十二分に書き込まれた傑作。
「桜田門外ノ変」(上・下)
テロルとそれに続く逃亡のスリルとサスペンスを描いて間断するところがない傑作。
井伊暗殺をテーマにした最良の作品かと思う。

作品集では、「島抜け」「敵討」(いずれも新潮社)がお薦め。
どちらも面白さは保証する。

コーヒーブレーク その1

私の読書ノートの一部を紹介しておこう。   

ロッキード裁判批判を斬る(3分冊) 立花 隆    朝日文庫
      刑事訴訟法や憲法の話題が満載の裁判ネタの本だが、そのわりには、
      一気に読める。
      論理学・論争術の教科書という、著者自身による謳い文句はどうかと思うが、
      かたい話題をそれなりに面白く読ませる著者の手腕はさすがである。
      受託収賄罪に関する職務密接関連行為の定義、刑事訴訟法の証拠能力と
      証拠の証明力の違い等勉強になる点は多い。
      しかし、読後一番印象に残るのは、ロッキード裁判批判を展開した
      文壇知識人・法曹関係者等の言説の「いいかげんさ」である。
      いまだ、立花氏に対する説得力のある反論は無いようであり、まさに慄然
      とせざるをえない。

     読書欲・編集欲       津野海太郎     晶文社
     オンライン書店について書かれた章が面白い。
     著者のような超ベテラン編集者の話しを直接聞けるはずもなく、
     その点では面白い本である。

     数学嫌いな人のための数学 小室直樹     東洋経済新報社
    期待し過ぎた感じである。数学そのものの話しより、歴史・思想関係の
    話しが多い。これはこれで面白いのだが、人後に落ちない数学嫌いの私とし
    ては、肩透かしの感の方が大きい。
    数学と経済学について書かれた最終章も、易しく書かれたマクロ経済学の本が、
    多く出版されている現在では、特筆すべきほどの内容はない。
    

     医学部残酷物語      保阪正康     中公新書ラクレ
     もっと医学界及び医療の現場に踏み込んだレポートがあればよかったように
     思うが、200頁程度の新書ではこの程度かなという気もする。
     中公が読売新聞社の傘下に入ったせいか、読売の記事の引用が目につく気が
     するが、これは穿った見方だろうか。
     2ちゃんねる宣言  井上トシユキ・神宮前.org  文 春
     前半の2ちゃんねるに関する分析と2ちゃんねる管理人のインタビューは、
     結構読ませるものがあり面白い。
     しかし、後半の対談は2ちゃんねるに直接関係しない話題も多く、
     お座なりでいただけない感じだ。
     
     ボーダーランド      マイク・ダッシュ  角川春樹事務所
     ミステリー現象万歳ではなく、なるべく客観性を持たせようとしている点は、
     好感が持てる。これは著者が、ケンブリッジ大とロンドン大で歴史を学んだ
     インテリのせいも大きいかと思う。
     しかし、謎の呈示→真相の究明という点では、と学会の本の面白さには、
     及ばない。
     
     SF入門        日本SF作家クラブ編 早川書房
     とりたてて特色も感じられない本である。急ごしらえの感もあり。

コーヒーブレーク その2

コーヒーブレークにしましょう。
再度、私の読書日記を御紹介します。

狼たちの野望      大下英治      廣済堂出版
この小説に描かれたネットビジネスの世界に生きる企業家のダイナミックな
生き様に圧倒されてしまう。
私はネットにはうといため、事業内容について書かれた部分は、ほとんど
理解できなかったが、ひとつ確実に言えるのは、IT業界で成功するのは
やはり特殊なタレントを持つ人間たちらしいということだ。
あえて苦言を呈すると、2ちゃんねるの創始ヒロユキについて一言も言及が
ない点である。

幻の漂泊民サンカ     沖浦和光      文 春
いまさら言うまでも無いが、現実にロマンチックな要素は無いという
ことを痛感させる。
三角寛のサンカ小説も入手済みだが、先にこの本を読んでよかった。
小説家の筆責というものについても考えさせるものがあるが、
サンカ小説を読んでみたい気持ちも捨てきれず。

貸本小説         末永昭二      アスペクト
滅びゆく(滅びた?)文化「貸本小説」について書かれた非常に
面白い本である。

新・トンデモ超常現象56の真相 皆神龍太郎他  太田出版
面白い。と学会とその関係者による著作も多数を数えるようになったが、
いつも一気に読んでしまう。
本書では、筆者の子供時代の世界の謎的本では、
メアリーセレスト号事件(この事件も本書で紹介されている)定番だった
バルバドスの動き回る棺事件が紹介されているのが懐かしい。
しかし、子供時代には世界の謎とミステリーの類の本を読み漁った筆者
には、と学会の本は、謎を謎のまま紹介したものではなく、謎解きの本
であり、趣旨は全く異なるとも言えるのだが、なぜか読んでいてとても
懐かしい感じがする。
あの子供時代の夢幻の昼下がりが思い出させられる。
本書について言えば、97年の「トンデモ超常現象99の謎」と重複する
部分が一部あること(本書中で明記はされているが)、日本ではほとんど
知られていない人物・事件が紙数合わせのためか取り上げられていること、
2000年に話題になった岐阜県富加町のポルターガイスト事件の謎解き
 が、今一歩弱い感じを受けることである。
 ただし、この事件に関しては、もう少し時間をかけた検証が必要なのかもしれない。
 
六枚のとんかつ      蘇部健一       講談社ノベルス
予想外の面白さだった。真面目にやるよりこのくらい遊んでしまう方がいい。
シリアスに不自然で突飛な設定が多い最近のミステリーへのアンチテーゼとも言える

風の王国         五木寛之       新潮文庫
筆者は、三角寛のサンカ小説には批判的なようだが、所詮この
小説もサンカ社会をロマンティックに描いた絵空事に過ぎない感じを受ける。

Yの悲劇        エラリイ・クイ―ン   H・M文庫
誰もが知る名作であり、勿論犯人は既知。
しかし、テンポも良く1日で読破した。これも名作たる所以か。
アメリカには珍しい暗い重厚な本格ミステリーである。
人物の陰影をもっと書き込めば文学的な香気さえ漂う作品になりえただろう。
余韻の残るラストも秀逸である。
これが稀代のパズラークイーンの良い意味での潔さ、あるいは限界か。

古本でお散歩      岡崎武志        ちくま文庫
最初の方は、ちょっと固めの古書ファン入門という感じで、「あれっ」
という感じなのだが、頁が進むに従い、いつもの楽しい岡崎節全開となり、
古本ワールドに惹き込まれる。

鏡の中は日曜日     殊能将之        講談社NV
最近のミステリーにしては鎌倉・金沢の両古都や都心の情景も丁寧に書き込まれている点は評価できる。
トリックは一種の叙述トリックであるが、そう大したものではない。

本棚探偵の冒険     善国雅彦        双葉社
期待して読んだ一部で評判のエッセイ集。
だが、自分にはこの人の文章が駄目、受けつけない。
こればかりは、理由と言われても困る。こういう文体が好きという人もいるだろうから。まあ、こういうこともあるわけである。
    


戒厳令の夜(上)    五木寛之        新潮文庫
戒厳令の夜(下)    五木寛之        新潮文庫
さすがに、かっては現代の語り部と言われただけに、
五木氏のストーリーテリングには確かなものがあり、一気の読ませる。
しかし、現在という視点から見るとやはり大時代的な印象がぬぐえない
作品であり、山人(いわゆるサンカ)、海人に関するエピソードも
ロマンティックに傾き過ぎているようだ。
事実の持つリアルな面白さには及ばないというか。

宇宙からの贈りもの   金城哲夫       朝日ソノラマ
あらためて金城氏の優れたストーリーテラーぶりに脱帽する傑作シナリオ集
である。セブン最終回が収録されていないのが残念だが、
ウルトラQとウルトラセブンの未映像化シナリオと怪奇大作戦の前段階のシナリオ
がそれぞれ一編ずつ収録されているのが拾いものだ。


510 名前:ミステリ板住人 ◆4fRH2jyw 投稿日:02/06/28 (金) 23:01 ID:Lhv5AT0N

動かぬ証拠    蘇部健一       講談社NV
前作「六枚のとんかつ」と比較しても、
ミステリ色はぐっと薄まった軽いコント集・小ネタ集という感じがする。
最後の謎解きは、一枚の絵(というより漫画)だけというのは、面白い趣向だとは思う。
名探偵役の半下石刑事は、段々古畑仁三郎っぽくなってくるのが笑える。

長野・上越新幹線四時間三十分の壁 蘇部健一  講談社NV
こちらはあきらかに鮎川哲也を意識したアリバイトリック破りの作品である。
2時間ドラマの原作なら十分に及第点という感じの作品。
その程度の作品とも言える。
しかし、結構面白く読めた。ある意味ケレン味の無い作風は好感が持てる。
少しはしゃぎ過ぎな感じはするけれども。

警察署長 上   S・ウッズ       早川NV
警察署長 下   S・ウッズ       早川NV
警察小説というよりは、南部大河小説。
舞台は1920年代から60年代初頭なので関係無いように見えて、
80年代に書かれた作品のせいか、やはり古い感じを受けるのは否めない。
やはり執筆時の時代の空気というものが微妙に影響するのだろう。

論理トレーニング 野矢茂樹        産業図書
日常生活にすぐに応用というわけにもいかないだろうが、
それなりに面白く読んだ。法学部生・司法試験受験生に読ませたい1冊。
論理の妙味のようなものが感じられる。

五人姉妹     菅 浩江        早川書房
表題作と「夜を駈けるドギー」という収録作品のみ読んで肌に合わず

医療崩壊     保阪正康        講談社
最新医療現場レポートのような内容を期待したのだが、著者の提言が多い。

井上靖短篇集 第6巻           岩波書店
収録作「崑崙の玉」を読みたくて思いレンタル。
しかし、井上靖のシルクロードものは、話は面白いのだが、
この文章の読みにくさ、なんとかならなかったのだろうか。

賭博者    ドストエフスキー    新潮文庫
文豪の中編でもあり、特に感想もない。
ドストエフスキーと2人の女性について書かれた「あとがき」が一番面白い
かもしれない。

スペードの女王  プーシキン       新潮文庫
表題作を読もうとレンタル。
一昨年に岡本綺堂訳で既読であったのを思い出した。
訳者が違うと作品の雰囲気が変わるような感じもする。

流血の魔術 最強の演技       ミスター高橋   講談社
新日本プロレスの元レフェリーによる著作。
プロレスはショーであると明言すべし、と言うのが著者の提言だが、
ショーであることを明言した段階で、ファンが付いてくるかどうか疑問を感じる。
今でも皆ショーと知りながら、その中に一抹の真剣勝負の瞬間を期待して見てる
のではないかと思うのだ。
マッチメーキングの裏話も面白いが、昭和40年代前半日本プロレス時代の裏話を
読みたい。ユセフトルコかジョー樋口が書いてくれないだろうか。

一ドル二00円で日本経済の夜は明ける 藤巻健史   講談社
そこそこ売れた本らしいが、日本経済についての提言は前半のみ。
後半は著者のホームページに連載されたエッセイ風の身辺雑記である。
どうもこの人のユーモアが私には合わない感じでのれなかった。
また、1ドル=200円という著者の主張がある種のレトリック的もの
に過ぎないとしても、低所得者はこれではやっていけない。
貧乏人が不景気でもなんとかやっていけるのは、デフレのおかげであるのは、
一面の事実なのである。

黒い仏              殊能将之     講談社NV
ある種のバカミス。突っ込むのは野暮というものだろう。

小僧の神様・城の崎にて      志賀直哉     新潮文庫
もう何回読んだだろうか。
この文豪の文章はいい。私の感性にぴったり合う感じだ。

UNKNOWN       古処誠二     講談社NV
もう少しリアリスティックな筆致で書いて欲しい気がする。
さすれば、もっと臨場感のある小説になったのではないかと思う。
ミステリとしてのトリックは平板。

グルーム          J・ヴォートラン  文春文庫
期待して読んだが外れた。途中から流し読み。

国際弁護士         池田節雄     平凡新書
それなりに興味深く読める。著者は国際弁護士といっても、
アンチダンピング法(これがイマイチわからないが)専門の一匹狼的人物であるようだ。
少し特殊な分野の人が本を書いてしまった感じがする。

物語の旅          和田 誠     フレーベル館
なんかいつもの和田誠調の絵柄と違うオ―ソドックスなイラストが添えられた
読書エッセイ集。衒いが無く、気軽に楽しく読めた。
 

定年教授は新入生    島 健二     集英社
適度な渋いユーモアが散りばめられており楽しく読める。
しかし、教える方はやりにくいだろうな。
受験やキャンパスライフとは直接には関係ない遍路の話や
母親の介護の話が、なかなか読ませるものがある。

国語辞典で腕だめし  武藤康史        ちくま文庫
クイズ形式でなかなか楽しめた。知らない言葉が多いのに反省大。

「考える力」をつける本 出口 汪       三笠書房
受験本なのか、一般のハウツウものか判然としない感じのする本である。

小説 外資       高杉 良       光文社
話題のベストセラー経済小説で期待して読んだが、読後感は、今ひとつという感じだ。
1 会話体の文が多く、人物・情景等の細部の書き込みが足りない感じがする。
  このため作品全体に長さのわりに重厚さを欠く結果になっている。
2 主人公の情事、恋愛、娘との交流等プライベートな描写に頁を割き過ぎな感がある。
  もっとカット、省略が可能で、作品全体を短くまとめる事も可能だったと思う。
  経済小説としての本筋のテンポを落としているように見えるのが残念。
3 作品半ばで、主人公が作品の舞台になっている金融業界から離れてしまい、
  後はラストまで傍観者としての視点に終止。
  このため読者も、主人公と共に火中に身を置くような臨場感、
  サスペンスを味あうことが出来ず、傍観者にとどまるのが、エンターティメント
  ととしては難があるように思う。

一橋大学ビジネススクール 知的武装講座 伊丹敬之他 プレジデント社
一橋大学の若手教授4人による講義調のビジネス書。
執筆者各自の専攻分野を書いているため、統一感を欠くが、
学者の書いたものにしては、雑誌連載をまとめたもののせいか、読みやすく、
ユーモアに富む。
本の構成のせいか、トンデモ本シリーズを連想させるのがおかしい。


お楽しみの埋葬   エドマンド・クリスピン  早川H・M文庫
丁寧な英国の田園の情景描写が雰囲気の盛り上げに効果的で、予想外に楽しめる一編。
犯人も意外性に富む。しかし、短めの作品のせいもあり、重量感は欠く。
作者と読者の知恵比べという凝った構成でもない。
田園の雰囲気にゆったり身をひたしながら、
探偵役のオックスフォード大英文学教授という奇人フェンの推理に耳を傾けるのが、
この作品を楽しむための良策と言えよう。
ただし、この作者は、動物には酷な感じを受ける。
この作品に登場する取柄の無い豚クンや「消えた玩具屋」に登場する犬にしても、
可哀想過ぎる気もする。
このあたりは、動物好きには気になることころかもしれない。

私が愛した名探偵    新保博久編著     朝日新聞社
これが名探偵と首をかしげざるをえない部分もあるが、
まあ、これはご愛敬か。気軽に楽しく読めるエッセイである。
編者の解説がミステリガイドとして有益と思う。

愛は血を流して横たわる  エドマンド・クリスピン 国書刊行会
テンポ良く読ませるが、「お楽しみの埋葬」ほどの面白さもウイットも感じられないのが
残念。フェンはロリコン気味か?

白鳥の歌         エドマンド・クリスピン 国書刊行会
カー的なトリックを使用した作品だが人物描写が弱い。      

     
マーケティング原理  F・コトラー、G・アームストロング 
定評あるマーケティングの名著だが、
言うまでも無く、具体例が全てアメリカの事例であり、
この点に臨場感と日本の読者に対するアピール度を欠く。
しかし、大部だが、読みやすさは抜群、こういうテキストが日本でも作れないのだろうか。

ビジネス・エリートの推す924冊 植村修介・編  徳間書店
それなりに興味深いのだが、読みたいと思う本が無いのが不思議だ。


議論のレッスン     福澤一吉     NHK生活人新書
論理学の本を読み議論に備える時間が無い人には最適なコンパクトな書。
本書に書かれている事を最低限押えておけば、どんな議論もそう大きく的を外したもの
にはならないだろう。

サム・ホーソーンの事件簿U E・Dホック   創元推理文庫
このシリーズを読むたびに、なぜか綺堂の半七捕物帖を思い出してしまう。
殺人事件(それも凄惨なものが多い)を多く描きながら、
アメリカのミステリ―には珍しくホンワカした暖かいムードが本シリーズ
の大きな魅力である。
マンネリを避けるためか工夫を凝らした作品が多い。
特に「八角形の部屋の謎」は、構成の妙は勿論のこと、文学的な香りさえ漂う気がする。
サム・ホーソーンシリーズではないが、特別付録エドガー賞受賞作「長方形の部屋」などを読んでも、ホックはパズル色の強い短編の名手にとどまらず、人生の妙味を感じさせるような作品も書ける才人だとあらためて再認識した。
第2集ということもあり、当時の社会状況を取り入れたノースモント年代記
という感じにもなって来ている。しかし、サムとエイプリルの関係は不思議だ。

紙表紙の誘惑      尾崎俊介     研究社
ペーパーバックの歴史すなわち出版社の攻防史が、現代の出版事情
にも通じるものがあるような気がして、とても面白く読んだ。
ただし、著者が強く思い入れ、本書を書くきっかけにもなった
フラナリー・オコナ―という作家に私自身は馴染みが無いので、
今ひとつ乗れない部分もある。

コーヒーブレーク その3 (エヴァン・ハンター)

ここでコーヒーブレークにしよう。
87分署シリーズの原作者エド・マクベインが、エヴァン・ハンター名義で書いた
短編集の紹介だ。
ダーティハリージリーズのようなテイストの作品が好きな人には、絶対にお薦め。
脚色してハリー作品のエピソードに取り入れたいような作品もある。
まずは、書評から。

5△犬嫌い         エヴァン・ハンター   H・M
    エヴァン・ハンターこと87分署シリーズで有名なエド・マクベインの
    ミステリー以外の短編集である。
    純文学でデビューした著者だけに、いずれも小品ながら人生の哀愁が
    溢れたものばかりだ。
    「小さな小さな欲望」
    いやらしさより、無性に物悲しさを感じさせる短い作品。
    「馘首」
     リストラばやりの昨今、身に沁みる一編。
    「誕生パーティ」
     クリスマスが誕生日の男の小さな悲劇とも言える物語。
     これもおかしくも物悲しい。
    「映画スター」
     キム・ノヴァックに似たOLの人生喜劇。
     女優名を変えれば、現代でも十分に成立する作品だ。
    「犬嫌い」
     最後の1行が効いている収録作品中、一番ミステリー風の作品。
    「モーテル」
     どうということない中年の男女の浮気話なのだが、巧みな語り口で
     人生の断片のようなものが見事に浮き彫りになる。
     登場する男女の心理もリアルに描けている。
    「真夜中のドアベル」
     ミステリータッチの一編で雰囲気も良い作品なのだが、締めがよくわからない。

少しマクベインのエヴァンハンター名義について説明しておこう。
詳しくは、「犬嫌い」の解説を読んで欲しい。
ペンネームとしてはエヴァンハンターが先に使用されている。
この名義で書かれたのが、映画化もされた有名な「暴力教室」。
これは広義の青春映画のジャンルに入るのだろうが、
テイストとしては、社会性とエンタメの融合という点において、
ハリーシリーズに共通するものがあり見落とせないものがある。
主演は校内暴力に立ち向かう青年教師にグレンフォード、
黒人の優等生にシドニーポワチエ、白人の不良学生にビックモンロー(*ネタ)だ。
主題歌は当時一世を風靡したビルヘイリーJRの「ロックアラウンドザクロック」。
アメリカのロックシーンは、この曲から始まったと言っても過言ではない。
ハリーシリーズのBGMにはジャズ風のものが多いが、ロック風のものも面白いかも
しれないね。
                              つづく

さて、エヴァンハンター名義の「暴力教室」は原作・映画共に
大ヒット。ハンターの一躍有名作家となった。
ミステリ好きだったハンターは、87分署シリーズの執筆にとりかかり、
第1作「警官嫌い」、この作品はハリーシリーズの原作には一押し。
動機不明の警官連続殺人と見事な謎解き、ミステリとしてきちんと定石
を踏まえているのがいい。
この作品の発表段階になり、ここにひとつの問題が起きた。
                            つづく

出版社としては、エヴァンハンターを純文学作家の新星として
売り出したかったんだな。
純文学の若手がミステリを書くのは名を汚すことになる、
ハンター名義の使用は禁止されてしまった。この感覚は、日本でも今も同じだな。
しかし、長篇「暴力教室」に限らず、「犬嫌い」の収録された短編を読んでもらえば、
わかると思うけど、日本人の我々の感覚で読むと、ハンターの作品は結構俗っぽい
感じがするけど、アメリカではこれで十分に純文しているらしい。
とにもかくにも、ここでミステリ作家エドマクベイン名義の誕生とあいなるわけだ。

次回は、87分署の作品リストを一挙にアップする予定だ。

コロンボ好きに薦めるミステリー その1

740 名前:ミステリ板住人 投稿日:02/08/12 (月) 04:59

コロンボ好きに薦めるミステリー

あくまで、まだ読んでいなければという前提である。
・ エラリークイーン「Yの悲劇」
古典中の古典だが、探偵が個性的で、もし犯人を知っていても推理の展開
(この辺がコロンボシリーズと同様な興趣がある。)を十分に楽しめる。
相棒のサム警部も「怪奇大作戦」の町田警部を想起させるタフでラフな男で、
印象的。

・ 松本清張「点と線」「火と汐」「数の風景」
「点と線」は有名。
主人公の刑事のキャラはコロンボファンにはたまらないものがあるだろう。
「火と汐」は、日本人が書いたミステリーでは、
作品の雰囲気含めて最もコロンボシリーズのテイストに近いものがある作品。
これだけでも是非読んで欲しい。
「数の風景」は、清張長編ミステリーでは一押しの作品。
時代性とスケールの大きさは秀逸だ。

・ 横溝正史「本陣殺人事件」
コロンボファンと横溝ファンはあまりかぶらないのが残念。
横溝正史生誕100年でもあり、この作品だけでも読んで欲しいものだ。

007シリーズについて触れたレスがあったので、完全に余談だが、
一言、原作を是非読んで欲しい。
ボンドのキャラ(あんな超人ではない)等映画とは相当異なる。
粋な大人の読物である。


741 名前:奥さまは名無しさん 投稿日:02/08/12 (月) 06:14

↑ 007以外全部読んでるので今度読んでみます。


742 名前:ミステリ板住人 投稿日:02/08/12 (月) 06:42

>>741
本家イアンフレミングの作品を優先的に読んでいただきたい。
第1作「カジノロワイアル」から順番に読んで行くのもいいが、
あえて1冊なら、個人的には「ドクターノオ」がお薦め。
正直言ってショボイ展開の映画より数段面白い。
参考
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/8597/007-006.html

最後にコロンボネタに戻すと、コロンボに原作があったら映像化にあたり、
カッコ良く脚色された可能性が高い。
映像化作品のイメージを保持するノヴェラはこの点安心して読める。
映画「ブリッコ」には原作があるが、読めばマックイーンとの落差にビクーリするよ。


コロンボ好きに薦めるミステリー その2

654 名前:ミステリ板住人 投稿日:02/10/17 (木) 13:45

この機会に、コロンボ好きのテイストに合いそうなミステリを厳選して
紹介しておこう。文句は、ぜひ読んでから言ってほしい。
・ 海外編
1 ギリシア棺の秘密  エラリー・クイーン ハヤカワ・ミステリ文庫
  田園小説の趣が強いものが多いクリスティ、オカルティズムを多用する
  カーと比較して、クイーン作品は都会的でコロンボファンにはお薦めである。
  錯綜した筋立てのわりには、テンポも良く読みやすいのも特徴。
  本作は、NYのド真中の邸宅における富豪の変死を、
  クイーン探偵(本書中ではまだ無名に近い若者という設定)が、
  試行錯誤しつつ論理を駆使して解決して行く。
  同じNYを舞台にした名作「Yの悲劇」が、宿業を絡めた古風な舞台設定
  であるのに対して、より都会的で洗練された国名シリーズ最高傑作の声が
  高い本作をこそコロンボファンにはお薦めする。
  なお、創元推理文庫からも「ギリシア棺の謎」というタイトルで翻訳されて
  いるが、ハヤカワの宇野利泰氏の訳が読みやすくてお薦め。
2  サム・ホーソーンの事件簿T・U  エドワード・D・ホック 創元推理文庫
   短編集だが、ゲーム感覚の謎解きの興趣溢れる好短編集。
   Uは原書は無く、日本でオリジナルに編集されたものである。
   このことからも、本シリーズの人気がわかるというものだ。
   出来の好い短編は、これでコロンボ1本撮れるくらいである。
   とにかく、Tから順番にご覧あれ
3  男の首・黄色い犬    ジョルジュ・シムノン  創元推理文庫
   コロンボのドラマ性に惹かれる諸君にお薦め。
   本書収録の2作は、いずれもシムノンの初期を代表する作品である。
   メグレ警部と犯人の心理戦は、コロンボと一脈通じるものがあるだろう。
   良質な人間ドラマを見た後のような読後感。


655 名前:ミステリ板住人 投稿日:02/10/17 (木) 14:08

国内編
1 黒いトランク  鮎川哲也   創元推理文庫
  先日、惜しくも亡くなられた本格ミステリの巨匠(通称「鮎」)の
  代表作。
  非常に緻密に論理構成された作品であり、じっくり噛み締めるように読まれん
  ことを願う。
  作品に手を入れることが多い鮎だが、本書は、各種ある「黒いトランク」の
  バージョン中で、決定版とも言えるものである。
  光文社文庫でも入手可能だが、こちらをお薦めする。
  先に、光文社文庫の日本推理作家協会賞受賞作「憎悪の化石」「黒い白鳥」を
  読み、ウオーミングアップしておくのも良いであろう。
  この2作の方が読みやすいのだ。
2 数の風景   松本清張    角川文庫
  本当は、コロンボにクリソツな刑事鳥飼重太郎が登場する名作「点と線」を
  あげたいのだが、さすがに古い感は否めない。
  本書は、土地問題という執筆当時のカレントな話題を盛り込み、
  大掛かりなトリックで度肝を抜く清張ミステリ後期の傑作である。
  旅情味も十分。
3 法月綸太郎の功績  法月綸太郎  講談社ノベルス
  表題作は、本年度日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
  ケレン味の無い作風による論理展開は、コロンボファンにもきっと気にいる
  はずだ。

佐野洋

その1

昔は角川文庫から、この人の本が多く出ていた。
・「華麗なる醜聞」
協会賞受賞の時事ネタ=草加次郎事件スリラー
・「一本の鉛」
初期の代表作。本格風サスペンススリラー。
・「完全試合」、「無効試合」
野球ネタスリラー。アイデアは面白い。
・「透明受胎」
SFミステリ。アイデアのみ面白い。
他にも読んだが、以上の作品が印象に残る。
角川以外だと、
・春陽文庫「銅婚式」(短編集)
表題作は、面白いと評判の短編だが、あまりに創り過ぎの
展開にアホくさくなった記憶がある。
・「ひき逃げ」(講談社文庫)
交通事故ネタ。サスペンスミステリ。それなりに読ませるボリュ
ームのある作品。

全体的な印象を言うと、この人の作品には、偶然性に頼った
創り過ぎな不自然な展開のストーりーが多い。しかし、
文章は平易で読みやすく、作品に時事ネタを比較的素早く
取り入れるが、松本清張のような社会性が欠落している
ため深みに欠ける、逆に難しくなく気楽に読める利点もある。

近年のキャラ立ち新本格を愛読して、「二階堂蘭子萌え!」とか
叫びながら歩いているドキュソ(2ちゃんねらーの多くの者)にも
読破可能なレベルであることは間違い無い。

むしろ知識人が読むべき作品」としては、最新長編「指の時代」
を推したい。
例によって、偶然性に頼ったストーリー展開ではあるが、
警察の不祥事という時事ネタを素材に、警察機構内部の人間
模様が見事に活写されている。
渋い主人公の刑事のキャラもいい。

その2

佐野洋は不思議な作家だよ。
Aランク作品は、思い浮かばない(この点ミステリ史に残るような傑作は無いという6のレスの見解に激しく
同意)しかし、Eランク逝ってよし!というほどの作品
も無いように思う。
Bランクも最新長編「指の時代」が個人的にどうかな
という程度。
CランクとDランクに作品が集中してる。
これではランキングしようがない。
7のレスの評論の方が面白いと言う意見にも同意、
堅苦しくなく、エッセイとして読んでも充分いい。
評論はAランクかもしれん。

「金属音病殺人事件」は、昔角川文庫にあった。
確かに、「透明受胎」よりいいかも。

ねつてつ氏の指摘する東野圭吾への影響もうなず
けるものがあるが、東野氏のほうがもっとウエットな
作風な感じを受ける。
佐野氏はもっと徹底的に遊び心に徹していると思う。
この点作品に重厚さや余韻を欠くけどね。

10のレスの御仁は俺の立てた吉村昭スレを
荒らした人間だと思うが、こういうえげつない行為は
慎まれたほうがいいと思う。

生涯最高の10冊

40 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/13 (木) 18:10

文学板住人諸氏よ、笑わば、笑え。
今までの人生で徹夜して読んだ和・洋・中取り混ぜた
わが珠玉の10冊である。(順不同)
 1 罪と罰  ドストエフスキー
   カラマーゾフの兄弟等他のドストエフスキー作品は、精神修養のために
   読んだが、決して面白いものではなかった。
   作者に対する冒涜覚悟で言えば、第一級のクライム・ノヴェルであり、
   が知る限り、この分野で右に出る作品はない。
 2 異邦人  カミュ
   フランス産2ちゃんねらー、ムルソーの非活躍(?)には魅了される。
   いわゆる不条理の教科書。本作もクライム・ノヴェルと読めなくもない。
 3 老人と海 ヘミングウェイ
   ヘミングウェイの長編の中では最短だが、全作品の中でも最良の作品。
   サンチャゴ老人は今日もライオンの夢を見るのか?
   色事抜きで、ハードボイルドのエッセンスがここの集約された一編。
 4 聊斎志異 蒲松齢
   角川の全訳が絶版だったため、岩波で読んだ。
   妖しくどこかクールな中国の怪異の世界には一度入ったら抜け出せない
   魅力に富んでいる。
 5 高熱ずい道 吉村昭
   辛口プロジェクトXの感もあるが、
   黒部トンネル工事を巡る人間ドラマは、一読、巻を置かさないものがある。
   泡雪崩萌え!
 6 羆嵐    吉村昭
   リアルなホラー小説か怪獣小説を思わすような全編に緊迫感漂う作品。
   人食いクマ出現!銀オヤジを呼べ!

41 名前:ミステリ板住人 ◆ExGQrDul2E 投稿日:03/02/13 (木) 18:11

7 果てしなき流れのはてに 小松左京
   文学板住人には、ミステリよりはSFの方が比較的受けがいいようだが、
   本作は、そういう事には無関係な歴代国産SFナンバー1の傑作。
   まさにセンスオブワンダーとは何かを体感せしめる教科書である。
 8 本陣殺人事件  横溝正史
 9 Yの悲劇    エラリー・クイーン
10 アクロイド殺し アガサ・クリスティ
   文学板住人で、謎解き中心の本格ミステリを読もうという人は、
   8〜10の3冊を読んでみるといい。
   本格ミステリという特殊なジャンルを面白いと思うかどうかの試金石として
最良の3作である。

別格 プチスマイル   はしのえみ
   はややこと、はしのえみタンが書いた本である。
   えみタンハァハァハァ…

土屋隆夫

俺は角川文庫から土屋隆夫の作品が山のように出ていた
時分からの読者であり、光文社文庫で千草シリーズを
愛読していた。そこでスレを総括するにあたり。
土屋隆夫長篇作品ランキングを呈示するので熟読願いたい。

A 「影の告発」
  抒情性と物理的トリックが見事に融合した佳作
B 「赤の組曲」
  良く出来たサスペンスミステリ。一気に読ませる。
C 「針の誘い」
  「赤の組曲」より少し落ちるが水準作か。、
E その他の作品 逝ってよし!
  「天狗の面」
  作者の大言壮語のわりにたいしたことない作品
  「天国は遠すぎる」
  今まで読んだなかでも指折りに退屈でつまらない作品
  「危険な童話」
  評判倒れの後味の悪い凡作
 「妻に捧げる犯罪」「盲目の鴉」「不安な産声」「華やかな喪服」  「ミレイの囚人」
 この辺は読むたびに失望。
 時事ネタの導入と作風のマッチングにしくじることが多いようだ。

 短編も相当読んだが御薦めは「淫らな証人」
 これが収録されている短編集を買うこと。
 後味の悪さ抜群の好短編だ。おそらく今の若い作家でこういう
 ものを書く人はいない。

 土屋隆夫は千草検事3部作で終わった人である。

 これでブックオフなら1000円でお釣りが来る可能性が
 でてきた。

法月綸太郎の功績

450 :書斎魔神 :02/08/01 00:45
法月倫太郎は、新本格の作家では好きなタイプである。
探偵=ペンネームの点は言うまでもなく、
ケレン味の無い文章と結構シビアな犯罪描写は明かにクイーンを意識していると
思われるが、状況はむしろカーっぽい不可能犯罪が多いのが、
カー>クイーンという嗜好の私的には高得点。

新刊「法月綸太郎の功績」収録作品について簡単にコメントしてみたい。
私は、穂波という萌えキャラがウザくて仕方なかったのだが、
今回の作品集では彼女が完全にリストラされたのは喜ばしい。
再び親子水入らずの推理ゲームに戻っている。
ただし法月親子は、「ちびまる子ちゃん」のまる子とおじいちゃんが、
さくらももこが考える孫と祖父の理想であるのと同じく、
作者のいわば「イデア」に過ぎない気がしてならない。

「イコールYの悲劇」 評価C
結構考えさせるラストだが、
もっと女性心理を書き込めば、松本清張の初期短編のような哀愁を湛えた重厚な
作品になったであろう。作者にその志向が無いように思える。
ダイイングメッセージは、バカミスの範疇を出ていない。

「中国蝸牛の謎」   評価D
前半の蝸牛に関するウンチクが一番面白い。トリックは脱力ものの小技である。

「都市伝説パズル」 評価B
日本推理作家協会賞受賞作品だけあり、アイデアが面白く一気に読ませる。
幕切れも余韻に富む。

「ABCD包囲網」  評価D
作りすぎて面白くなくなった作品。
海外作品であれば抵抗感無く読めるかもしれないと、ふと思った。

「縊心伝心」    評価C
タイトルが意味深。
長篇「頼子のために」等に共通するようなビターな余韻を残す作品。
その意味では、作者の持ち味のひとつが良く発揮された一編である。
作者は実生活の親子関係に何かトラウマでもあったのかと思ってしまう。


パトレイバー(小説)

先ほど、パトレイバー映画2の小説化された「TOKYO WAR」を読了したところである。
映画とは細部が異なるところもあるが、あらためては斬新で面白いプロットであると思った。
この手の物語だと、トム・クランシー、クライブ・カッスラー、古くはルシアン・ネイハム、トマス・ハリスあたりを想起させるが、これらの外国人
作家がとかく派手な活劇、単純な勧善懲悪に走る傾向がありがちなのに対し、淡々としたドキュメンタルな展開で知識階級に愛読された初期のフレデリック・フォーサイス的である。
私はパトレイバー映画1の小説化された「風速40メートル」も読んでいるが、これも
なかなかスリリングな物語だと再認識したものである。

しかし、映像が先行した場合の小説化において、いつも問題になる書きこみの薄さ
これは描写の薄さと言い換えてもいいが、この欠点からはパトレイバーの小説も逃れらてはいないようである。
2作品共にプロの小説家がハードカバー上・下2段組500頁程度書きこんでノベライズしていれば、小説としても読みごたえのある作品になったと思うのに残念である。
もとより押井守・伊藤和典両氏が各人の本職においては優れたクリエーターであることは
否定しようもないが、小説は監督や脚本とは異なる意味のクリエーティブな才能を要する
のは、いまさら指摘するまでもない。
ノベライズを真保裕一、福井晴敏、佐々木譲、麻生幾あたりにやって欲しかったものだ


ハマ・ミステリ倶楽部のビッグ5のベスト作品(長編のみ)

ハマ・ミステリ倶楽部のビッグ5のベスト作品をご紹介しょう。
ただし今回は長篇のみだ。
・江戸川乱歩 「孤島の鬼」
 戦慄のホラーミステリ。「羊たちの沈黙」はぶっ飛ぶ。
・横溝正史 「本陣殺人事件」 「獄門島」
 国産ミステリのオールタイムベストの2作。
・松本清張 「点と線」 「数の風景」
 初期と後期から各一篇ずつ。清張は文壇の巨匠程度の存在だ ったのではなく、稀代のトリックメーカーだったとわかる。
・鮎川哲也 「憎悪の化石」 「黒い白鳥」
 「黒トラ」はオタクっぽいので、やはりんこの2篇でしょう。他にも
 傑作てんこもりだけど。
・高木あきみつ 「刺青殺人事件」 「能面殺人事件」
 この2作はいいよ。ただこれで終わった人だ。
そして、われらが加田伶太郎登場。

ちなみにハードボイルド等本格以外だと
・結城昌治 「暗い落日」
 これ読むと、現代のハードボイルド作家は集団自殺したくなるだ ろう。モノが違う。透明感のある文体がグー。
 この作家は他のミステリのジャンルでも傑作てんこ盛り。
・生島治郎 「追いつめる」
 直木賞受賞の名に恥じない快作。しかしこれ一作で終わってし まった人だ。あとは余興。
・結城昌治 「夜の終わり」
 日本初の悪徳警官ものにして、最高の作品。
・仁木悦子 「猫は知っていた」
 ユーモアミステリにして、本格の常道ははずしていない。
 日本のクレイグ・ライスだった。
・大藪春彦 「野獣死すべし」
 やはりあげとかんと。モノが違うし。

結論として国産ミステリは上記した作品だけ読めば良いわけである。

9 名前:書斎魔人 投稿日:2001/04/13(金) 20:55

ハマ・ミステリ倶楽部アンケートより
レス8で挙げた作品を読破後の所感

「すごい!新本格派は衆議院と同時解散すべきだ。」
(男 20歳 フリーター)
「昔の純文学作家(筆者注 加田伶太郎だと思う)の余興で書いた作品のほうが今のミステリ専業作家のものよりはるかに上なのが悲しい。」
(女 25歳 フリーター)
「新本格も最近のハードボイルドまがいの作品も断じて認めない主義です。ビッグ5等の作品を読破してこの感を強くしました。」
(元サラリーマン 50歳)
「とにかく凄いの一言、新本格はまとめて廃品回収に出゙します」
(主婦 35歳)

ハマ・ミステリ倶楽部海外ミステリ公式見解



おはよう。
HMCの海外ミステリに関する公式見解カキコするよ。
作家別にいく。

ディクスン・カー(カーター・ディクスン)
「マッド・ハッタ―」、「プレーグコート」、「皇帝の噛み煙草入れ」のみ読めば良い。
「ユダの窓」はトリックがちゃっちいし、法廷ものとしての雰囲気も盛りあがらずダメ。
「火刑法廷」は余興そのもの。その他の作品は悲惨。
俺はカー好きだけどまあ仕方ないか。

エラリー・クイーン(ドルリー・レーン)
「Yの悲劇」読むべし。XとZはブック・オフへ叩き売るべし。
国名シリーズは「ミステリーは文字だけで書いた数学の本ではない。」と地下のクイーンに言いたい。
後期の作品は余興ばかり。

アガサ・クリスティー
「アクロイド殺し」、「オリエント急行殺人事件」、「そして誰もいなくなった」のみ読めばいい。
後は余興。

ヴァン・ダイン
美術評論家崩れ。読むに値する作品無し。

F・W・クロフツ
鮎川哲也を擁する日本では無用の人。ダルイ作品がてんこ盛り
「樽」は特にひどい。

ダシール・ハメット
元祖ハードボイルドだどー。
「血の収穫」、「ガラスの鍵」、「デイン家の呪い」、「マルタの鷹」を読め。ハメットにしてはマルタは少し甘め。
短編もいいのあるよ。

レイモンド・チャンドラー
「さらば愛しき女」、1冊読めばいい。「ロング・グッドバイ」は作品全体が間延びして、冗長ダメ。
後の作品は正にオマケ。

ロス・マクドナルド
「さむけ」のみ必読。後は同じようなパターンの繰り返し。
これは一般的評価だね。

ウイリアム・マッギバーン
過去の人。
ロバート・ワイズ監督「拳銃の報酬」(原作「明日に賭ける」)は原作をはるかに上回る出来映え、これを観て済ますこと。
主演はロバート・ライアン、ハリー・べラフォンテ、シェリー・ウインタース。

エド・マクベイン
「警官嫌い」で始まりそして終わった。
俺は「被害者の顔」が好きだが、糾弾されたよ。

コリン・デクスター
工夫無し。退屈。読む必要無し。

ミッキ―・スピレーン
大藪春彦の前で失禁状態。逝ってよし。


68 名前:書斎魔神 投稿日:2001/04/16(月) 07:55

さあ、今度はフランス行くよ。

ジョルジョ・シムノン
評価に値するのは「男の首」、「黄色い犬」の初期作品2作」のみ。
「サンフェリアン寺院の首吊り男」は乱歩(「幽鬼の塔」)に討ち取られた。
後のメグレものは余興に過ぎない。

モーリス・ルブラン
紙芝居屋のオヤジに過ぎない、逝ってよし!

カトリ―ヌ・アルレー
逝っちゃってるオバサン。「わらの女」のみ。これは洒落てる。

セバスチャン・ジャプリゾ
「シンデレラの罠」等、ただのアホ。


69 名前:書斎魔神 投稿日:2001/04/16(月) 08:05

67、68はあくまで公式見解の一部を紹介しただけだよ。他に評価知りたい作家いる?

2人追加。
エドガー・ア・ランポー
短編だし「盗まれた手紙」等読む価値は今でも充分ある。

コナン・ドイル
短編が多いが、本格は「雰囲気の盛り上げ」が重要であることを良く知っていた人だ。
「バスカービルの犬」と56の短編は全て読むこと。
個人的には処女作「緋色の研究」が好きだけど。

秘蔵・決定版 ミステリ板住人が選ぶ、これがサイエンス・フィクションだ!

703 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/29 (日) 15:32

秘蔵・決定版 ミステリ板住人が選ぶ、これがサイエンス・フィクションだ!

 1 果しなき流れの果に  S・小松
   文句が無いオールタイムべスト1。
   時空間を飛び交うS・O・Wの最良のテクストであることのみならず、
   物語の起・承・転・結がきちんと構成されており、
   謎解きが、それなりにきちんとなされるのもいい。

 2 幼年期の終り     A・C・クラーク
   壮大にして深遠な本作が、後継の多くの作品に影響を与えたのは否定出来ない事実だ。
   しかし、結局、オ―バーマインドの正体は不明なまま終り、オーバーロードについても
   判然としない部分が残るのは、ミステリファンとしては納得出来ない。

 3 睡魔のいる夏  Y・筒井
   スラプスティックな作品が多い筒井氏だが、本作は短編ながら、大ヒットした
   ジュブナイル「タイムトラベラー」と同様なシリアスな佳作。
   筒井流滅びのバラード(実際、バラード風でもある)が物静かに展開される。

 4 新世紀エヴァンゲリオン H・庵野
   大ヒットが仇になり、意図的にスルーされがちだが、バイブル、古典SF、
   巨大ロボットアニメ、戦闘美少女もの、心理学、ショコタン…
   投入可能な限りの要素を盛り込んだ見応えあるSFアニメである。

 5 サイレントランニング D。トランブル
   視覚イメージ的にも2001年より上で、ストーリーも面白い。
   この作品をスルーするSFヲタに明日は無いと言える。

704 名前:ミステリ板住人 投稿日:03/06/29 (日) 15:33

6 声の網 S・星
  CP社会の陥穽を予言したSSの巨匠のハードSF長編。
  幕切れの鮮やかさは、星氏の数多あるSSの傑作に劣らないか、それ以上とも言える。
  本作を無視するSFヲタは逝ってよし!

7 人類皆殺し T・S・ディッシュ
  知られざる傑作。サバイバルの凄まじさは、数ある滅亡ものの中でも出色の出来栄え。
  そして、一枚の銅板画を見るかのような鮮烈なラストシーン。
  心して読め!

8 星を継ぐもの H・ホーガン
  スぺース本格ミステリと称しても過言でない、科学的ホラ話の面白さを堪能出来る。

9 ソラリス   S・レム
  自己の意思を持つソラリスの海、というイメージは鮮烈なものがあり、
  エヴァンゲリオン等にも影響を与えている。
  しかし、ソラリスの海に関する謎が十分に解明されない点に不満が残る。

10 ウルトラセブン
   「ダークゾーン」「空間X脱出」「超兵器R1号」「ノンマルトの死者」
   「第四惑星の悪夢」「円盤が来た」…
    ウルトラシリーズ中、最もSF色が強いと言われる番組だけに、
    SFヲタの琴線に触れる作品は多い。

別格 「美しい星」 Y・三島
    事実上のオールタイムベスト。
    SFプロパーでない作家に、こんなに凄い作品を書かれてはたまらない。
    天才三島を前にしては、
    SF者は、オーバーロードを前にした無力な人類に等しいのか?



フロスト警部シリーズ

ハリー新作を書き下ろすには、フロスト警部シリーズは必読だ。
私の手になる書評をアップしておく。

フロスト日和     R・Dウィングフィールド  創元推理文庫  
怪漢フロスト警部の活躍(?)する警察小説第2弾である。
87分署の刑事たちの生真面目さに物足りなさを感じる向きには最適
なシリーズである。正直言って謎解きミステリーとしては同じ英国の
ドーヴァー警部シリーズの方が上だろう。
マルティンベックシリーズほどの社会性も感じられない。
しかし、主人公フロストを筆頭に警察署面々のキャラの面白さで
文庫700頁を読ませるのはさすがである。

クリスマスのフロスト R・Dウィングフィールド 創元推理文庫 
先に第2作を読んだせいか、重量感がやや不足な感じがした。
第1作から読んでいれば、また感想も違ったかもしれない。
少女殺し、小動物殺し、利己的な連続殺人等第2作より凄惨な内容だが
フロストのめげないキャラのせいもあり、軽快に面白く読ませるのはさす
がだ。

夜のフロスト  R・D・ウイングフィールド 創元推理文庫 
第1作よりは面白く、第2作よりは少し落ちる感じがする。
怪漢フロストは相変わらずエンジン全開だが、マレット署長が前2作
に比較して完全な敵役にキャラ設定されているのが残念。
アレン警部も登場しない。この分、作品全体の深みを欠く気がする。
事件も順次解決していくので、前2作のような複数事件がなだれ込むような
面白さを欠く結果となっている。

ポプラ社

ポプラ社3シリーズを斬る!

かねてから3シリーズに対する批判的意見(特にホームズ)
が出ないことに憤りを感じレスいたします。
わたしは、少年探偵団シリーズ(旧版)の全作品、ホームズ
ルパンのほぼ全作品を読破しておりますので、下記の読書
ガイドはご子息等のご指導に安心してご利用下さい。

・ホームズシリーズ
 原典の持つ格調を捨て去り、内容までも曲解して出来の悪い
 講談まがいに貶めた悪本です。絶版(逝って良し!)は当然
 です。このシリーズを読んでホームズものを馬鹿にしたり、
 嫌いになったりした人はわたしの周りだけでも相当数存在
 しました。
 なお、作品の内容や重要部分の改変は明かな不法行為
 であり、著作権の問題とは別です。

・ルパンシリーズ
 所詮紙芝居ですから子供向きには相当。

・少年探偵団シリーズ
 乱歩の成人向きの作品をリライトしたものは香辛料皆無
 のカレーのようなもので読むに耐えませんでした。
 まとめて絶版(逝って良し!)は当然のことです。

 さて少年ものオリジナルでは

A 「青銅の魔神」
  このシリーズの基本パターンがこの作品に結実。
B 「怪人二十面相」
  第1作のみが持ち得るフレッシュな雰囲気が魅力
C 「透明人間」「怪奇四十面相」「宇宙怪人」「黄金豹」
  「夜光人間」
  この辺は読んでもいいかも。
D Eランク作品を除くその他の作品。
E 「鉄人Q」「電人M」
  明かに少年読者を愚弄した作品。逝って良し!絶版を希望!

松本清張

81 名前:名無しのオプ 投稿日:2001/05/22(火) 22:46

そろそろ総括して締めくくろう。
初学者用に公平にランキングすると(清張のミステリに限定
する純文学、ノンフィクションは除く)

A 短編集
  既出の新潮文庫の「張込み」「駅路」あと中短編集だが
  「黒い画集」等がある。前は文春文庫や講談社文庫からも
  ミステリに限定しても多くの短編集が出ていた。
  清張の短編はハズレが少ないのでブックオフでは買い!
  図書館では借り!で間違い無い。
  「点と線」
  もはや古典。社会派の作風ながら本格の面白さもある
  素敵な作品だ。
  「数の風景」
  後期の傑作。トリックは秀逸。トラベルミステリとしても
  第一級だ。

B 「眼の壁」
  社会派の問題意識と本格の趣向がうまくかみ合わなかった
  のがぎこちなさを感じさせ残念。一応、読む価値はあり。
  「砂の器」
  映画とは別物として読む価値はある。少しタルイが。
  「時間の習俗」
  「点と線」の続編ということで地味な作品だが意外にミステリ
  としての面白さはある。

C 「ゼロの焦点」「黄色い風土」「黒い樹海」「影の地帯」
  「球形の荒野」その他諸々の通俗長篇
  清張が週刊誌(中には女性週刊誌もある)に書き散らした
  作品群が多い。特に読む必要はない。

番外 清張は時代小説でいいものを書いているので一部紹介
    「無宿人別帳」
    ミステリの興趣にもと富む好短編集。
    「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」
    東京出身者以外では、はじめて捕物帖世界の構築
    に成功した記念すべき作品集。
    「鬼火の町」
    長篇捕物帖。息もつかせぬ面白さだ。綺堂の「白蝶怪」
    と双璧。   

以上長篇だけならブックオフで1000円もってれば充分だ。

ミステリ以外の読書リスト

最近はミステリ以外の本を読むことが多い。
審美眼が磨かれてくるとミステリは創り過ぎが気になって
しょうがない。
俺が2000年に読んだミステリ以外の読書リストをアップ
するから心して読め

30前後やや美人        岸本葉子    文春文庫
小さな会社を成功させる極意 池ノ上直隆   成美文庫
テレビマガジン特別編集 ウルトラマンガイア 講談社
心理カウンセラー                  ぺりかん社
企画書の作り方         高橋憲行    ティアイエス
仮面ライダー大研究                二見文庫
土手の犬ダーク         原 伸一     文芸社
お目出たき人          武者小路実篤  新潮文庫
新入社員             江波戸哲夫   講談社
天気の良い日は小説を書こう 三田誠広    集英社
鬼太郎のベトナム戦記     水木しげる    文 春
レッツラゴン11          赤塚不二夫  ごま書房
書く前に読もう超明解文学史  三田誠広   朝日ソノラマ
蘇える野獣 大藪春彦の世界           徳間書店
高らかな晩歌           高井有一    新潮社
イントラネットクーデター    江波戸哲夫   祥伝社
深くておいしい小説の書き方  三田誠広    朝日ソノラマ
地球はウルトラマンの星    切通理作    ソニーマガジンズ
庵野秀明スキゾ・エヴァンゲリオン        太田出版
庵野秀明パラノ・エヴァンゲリオン         太田出版
私の司法試験現役合格作戦            エール出版
銭ゲバ              ジョージ秋山   ソフトマジック
迷 宮               清水義範     集英社
早稲田界隈            浅井慎平     大和出版
文七殺し              山本昌代     新潮文庫
恐るべきお子さま大学生たち P・サックス    草思社
ビジネス弁護士2000                日経BP社
脚本家になる方法        福田卓郎     青弓社
岡本綺堂読物選集全8巻               青蛙房
岡本綺堂戯曲選集4巻から8巻           青蛙房
越後つついし親不知       水上 勉     新潮文庫
夕焼けの詩44          西岸良平     小学館
福祉事務所 新米公務員奮戦記          新風舎
フリーライターになる方法    樋口 聡     青弓社
島抜け                吉村 昭     新潮社
殺しの4人             池波正太郎   講談社文庫
現代民話考10          松谷みよ子    立風書房
 同 上    8
必殺シリーズを創った男               洋泉社
MBA講義             八城政基     日経BP
現代の民話            松谷みよ子    中公新書
出版クラッシュ          永江 朗      編書房
みんな家族            清水義範      文 春
八つの顔を持つ男        清水義範      朝日新聞社
 
                                 つづく

興味のある人も多いかと思うので、書籍以外の私の1週間
の読書について簡単に記そう。

購読紙 日本経済新聞
夕刊が意外に面白い。朝刊が必読であるのは現代経済社会
に生きる者として当然である。
本紙を読んでいない場合厨房ドキュソと呼ばれても仕方なか
ろう。

月曜日
週刊ポスト、週刊現代、AERAを立ち読み
火曜日
週刊朝日、サンデー毎日、ヨミウリを立ち読み
水曜日
テレパル(隔週)を購入。他のTV雑誌は語るに値しない。
逝ってよし!
木曜日
週刊文春、週刊新潮を立ち読み

*週によってはフォーカス、フラッシュ等の写真週刊誌を
読むこともあるが、これは知識人が読むべき雑誌ではない。

夕刊紙は日刊ゲンダイを買うことが多い。
今ごろ夕刊フジを読むのはよほどのドキュンであろうと思われる

結城昌治

ここに長編ミステリランキングを紹介します。

A・「暗い落日」
  「野獣死すべし」と並ぶ本邦ハードボイルドミステリの最高
  傑作。
 ・「夜の終る時」
  警察小説と言うより警官小説だが、とにかくミステリとして
  1級品の出来映えである。
 ・「仲のいい死体」
  ユーモアミステリの快作。洒落た味わいが絶品です。
 ・「白昼堂々」
  コンゲームものの傑作。
 ・「幻の殺意」
  サスペンスミステリーの傑作。どこか戸川昌子風である。
B ・「ゴメスの名はゴメス」
   国産スパイ小説の金字塔だが、スパイ小説の醍醐味の
   ひとつが同時代性にあることを考慮して、あえてBランク
   とした。
   ・「公園には誰もいない」「赤い霧」
   「暗い落日」の主人公私立探偵真木シリーズの作品。
   それなりに面白く読める。
   ・「ひげのある男たち」「長い長い眠り」
   「仲のいい死体」の主人公郷原部長刑事シリーズの作品。
   これもそれなりに面白く読める。
  ・「裏切りの明日」
   シリアスな警官もの。地味だが読み応えある作品。
C  A、B、Eランク以外の長編と考えていただいて結構である。
E ・「炎の終り」
   真木シリーズ第三弾だが、テンポが悪い駄作。逝ってよし!

*短編集は、角川文庫のものがあれば買い!
 特に初期から中期に書かれた短編の収められた「葬式紳士」
 「あるフィルムの背景」「温情判事」「犯行以後」等はオススメ。
 シリーズもの(紺野弁護士もの等)短編集は無視して差し支え
 ない。

>個人的には「秘密パーティ」が好き。今読むとツライとこもあるけ
>ど。

集英社文庫にありましたね。一応楽しく読んだ記憶のみあり
ます。


横溝正史

537 名前:名無しのオプ 投稿日:2001/05/22(火) 12:13

総括としてミステリ倶楽部の横溝正史作品ランキングを紹介
するので、初心者は読書の際はこの基準を遵守すること。

A 「本陣殺人事件」
  中編の最高傑作にして、日本ミステリ史上最良の密室もの。
  「獄門島」
  長篇の最高傑作にして、クリスティと並ぶ和製マザーグース
  もの。
  「蝶々殺人事件」
  都会的で洒落たミステリ。隠れた佳作。
  「真珠郎」
  あやかしの世界良し。乱歩の秀作に匹敵する。
  「鬼火」(短編集 角川文庫)
  横溝氏は基本的にはノヴェリストだが、戦前に書いた短編
  は妖しく、素晴らしい。

B 「犬神家の一族」
  舞台設定も効果的で、一応面白く読ませる標準作。
  「八つ墓村」
  過去レスにもあるとおり、探偵の影が薄く冒険小説の色合い
  が強い。最後まで面白く読ますのはさすが。
  「夜歩く」
  意外な面白さ。地味だが評価できる。

C 「悪魔の手毬歌」
  期待はずれの凡作。和製マザーグースの失敗作。
  「三つ首塔」
  いまひとつ盛りあがりを欠くのが残念。
D 「悪魔が来たりて笛を吹く」
  タイトル良し。それのみの凡作。
  「迷路荘の殺人」
  特に語る必要もない凡作。
  「仮面舞踏会」「病院坂の首くくりの家」「悪霊島」
  以上3作は冗長にして散漫、読むのにタルイ。
  横溝衰えたりを実感させる。

E 「女王蜂」
  この作品を評価すると、読者としての審美眼を疑われる愚作。
  「白と黒」
  単なるエログロ小説に過ぎない。 

番外 捕物帖の人形佐七シリーズには手をださないこと。

筆者個人の御薦め 「幽霊座」
角川文庫で現在も入手可能。意外に横溝氏のカラーが良く
出た秀作である。

読書ガイドとしてはAランクの作品は必読。
Bランクは読んでもいい。
Cランク以下は無視してもさしつかえない。
特にEランクは逝って良し!

これでブックオフで1000円あればOK!


吉村昭

68 名前:名無しのオプ 投稿日:2001/07/06(金) 21:13

>>65
「高熱隧道」は吉村昭の数ある長編の中でも1、2を争う
傑作です。是非読んでください。
他にお薦めとしては
「羆 嵐」       新潮文庫
「破 獄」       新潮文庫
「戦艦武蔵」     新潮文庫
「長英逃亡」     新潮文庫
「桜田門外ノ変」   新潮文庫
「闇を裂く道」     文春文庫
「殉 国」       文春文庫
「亭主の家出」    文春文庫
「逃 亡」       文春文庫

以上が吉村作品のA級長編です。この他に多数の珠玉の
短編があります。
「海の史劇」は吉村作品ではB級(他の作家例えば田口ランディ
が書けば超A級でしょうが)長編ですから、これからA級作品を
読む楽しみが多くていいですね
次回はBランク、Cランク作品も紹介しましょう

93 名前:名無しのオプ 投稿日:2001/07/07(土) 10:10

お待たせ 吉村昭決定版長編ランキングをご紹介しょう

A 68のレスを参照。遵守のこと。

B ・新潮文庫
  「冬の鷹」「零式戦闘機」「漂流」「海の史劇」「破船」
  「炎のなかの休暇」「仮釈放」「ふぉん・しいほるとの娘」
  「プリズンの満月」
  ・文春文庫
  「神々の沈黙」「関東大震災」「孤独な噴水」
  ・講談社文庫
  「北天の星」「赤い人」「間宮林蔵」「海も暮れきる」
  ・ちくま文庫
  「消えた鼓動」「一家の主」
  ・中公文庫
  「三陸海岸大津波」

C ・新潮文庫 
  「大本営が震えた日」「遠い日の戦争」「背中の勲章」
  「陸奥爆沈」「光る壁画」「蜜蜂乱舞」「雪の花」
  「天狗争乱」「アメリカ彦蔵」
 ・文春文庫
  「深海の使者」「蚤と爆弾」「彦九郎山河」「朱の丸御用船」
 ・中公文庫
  「花渡る海」

*Aランク作品とBランク作品の差はわずかである。
 Cランク作品は少し落ちるが、それなりに読み応えのある作品
 も多い。

未読
 ・新潮文庫
 「冷たい夏、熱い夏」「ポーツマスの旗」「ニコライ遭難」
 ・文春文庫
 「海の祭礼」
 ・文春ハードカバー
 「夜明けの雷鳴」
 ・講談社文庫
 「白い航跡」「落日の宴」

このリストをもとに熱く語っていこう!

*長編ではないが新潮文庫の短編集「海馬(トド)」は吉村作品
 唯一の逝ってよし!である。
 映画「うなぎ」の原作「闇にきらめく」もこの本に収められて
 いるが、それだけの話しである。
 同じ動物小説集の同文庫「羆」「鯨の絵巻」に所集の作品群
 に遠く及ばない凡作揃いである。
 絶対に買わないこと、また、時間の無駄であるから図書館等
 でのレンタルも差し控えること。
 各自この旨充分に留意されたい。


ホームページ