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耳かき店員殺害、死刑求刑で裁判員に精神的重圧

 客として通っていた耳かき店の店員江尻美保さん=当時(21)=と祖母鈴木芳江さん=同(78)=を殺害したとして殺人罪などに問われた無職林貢二(こうじ)被告(42)の裁判員裁判第5回公判が25日、東京地裁(若園敦雄裁判長)であり、検察側は論告で「極めて強い殺意に基づく残虐で計画的な犯行」と述べ死刑を求刑した。裁判員裁判で死刑求刑は初めて。裁判員は極刑か否かの厳しい判断を迫られる。

 検察側は論告で、Vサインでほほ笑む江尻さんと傍らで笑う鈴木さんの写真を法廷のモニターに映し出し、「なんら落ち度がない2人の尊い命を奪った結果は重大で、真しな反省の態度も見られない」と指摘。83年の最高裁判決が示した死刑適用の「永山基準」を引用し「刑事責任は極めて重大。罪と罰の均衡や犯罪予防の観点からも死刑が相当」と結論づけた。

 論告は1時間半以上にわたり、検察官がゆっくり大きな声で「死刑に処するのが相当」と締めくくると、顔を上げ緊張の様子を見せる裁判員も。

 この日の審理は午前から開始。江尻さんの父(57)が被害者参加し、論告の前には代理人弁護士が「死刑に処してください」との書面を代読。傍聴後は「検察官が死刑を求刑してくださったことは当然とは思いますが、感謝しています」とのコメントを公表した。

 弁護側は最終弁論で「抑うつ状態で善悪の判断能力が低下していた」とし、「反省、後悔しており、死刑にすべきではない」と主張。被告は終始うつむき、最後の意見陳述も「命で償うしかないと思うが、批判を浴びて生きて自分がしたことと向き合うしかないという思いも、心を駆けめぐっている」とささやくような声。「申し訳ありません」と涙で声を詰まらせ、法壇に向け一礼した。

 起訴状によると、被告は昨年8月3日朝、江尻さん宅に侵入。同居の鈴木さんの頭をハンマーで殴り、首をナイフで刺して殺害、江尻さんの首を別のナイフで刺し翌月に死亡させたとしている。

 女性4人、男性2人の計6人の裁判員は29日まで評議、判決は11月1日。厳しい判断を迫られる裁判員の負担は大きく、判決後のサポートは最重要課題。多くの死刑判決にかかわった元東京高裁部総括判事の原田国男・慶応大法科大学院客員教授(刑事法)は「プロの裁判官でも死刑は重圧が大きい」と指摘。死刑の判断を下した被告の存在はずっと気にかかるといい、「日常生活で裁判との接点が少ない裁判員ならば、精神的負担は計り知れない。心のケアが重要になってくる」と話した。

Yahoo!ブックマークに登録 [ 2010年10月26日 ]

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