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HTLV―1検査、公費負担広がる
妊婦対象「感染の拡大防げる」
HTLV―1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)への感染の有無を調べる公費負担の抗体検査が今年度以降、全国で始まる。
これまでは九州・沖縄に集中していた感染が、全国に広がっているためだ。県内では古賀市が先行し、今月から公費負担を始めた。県内は全国平均より感染率が高いとされ、患者団体は歓迎している。
「今月から検査費を一部助成します」。今月上旬、古賀市の福祉施設「サンコスモ古賀」で開かれた妊婦教室。出産を控えた8人の女性に市の担当者が呼びかけた。1人は「助成があるなら受けます」と話した。
1人当たりの助成額の上限は850円。市は6月から妊婦に検査を受けるよう呼びかける独自のチラシ配布も始めた。堀美枝子・健康づくり課長は「仮に感染していても、授乳を制限すれば母子感染はかなり防ぐことができる。検査を受けやすい環境を整え、感染を減らしたい」と語る。
HTLV―1は死亡率の高い成人T細胞白血病(ATL)などの原因となるウイルスだが、全国的にはあまり知られていない。感染者が九州・沖縄などに偏っていたためで、厚生労働省が補助した研究班の1990年度の報告書では、全国の感染者約119万人中、半分が九州・沖縄だった。
しかし、2009年度の報告書では、感染者約107万人のうち、九州・沖縄の割合は約45%と減り、関東(約17%)や中国・四国(約6%)が増えた。
感染が全国に広がったため、研究班は09年度の報告書で「全国的な検査や対策が必要な時期にきている」と指摘。患者団体は政府や自治体に公費負担の要請などを活発に行っていた。
県内の正確な感染者数は不明だが、県健康増進課によると、この約10年間のATLによる死亡率は全国平均の約2倍という。だが、全国平均の約7~10倍という鹿児島や宮崎、長崎ほど高くはなかったため、これまでは鹿児島県や長崎県のような検査の公費負担は実施してこなかった。来年度からは古賀市に続き、県内の他の市町村も県や県医師会と連携し、検査の公費負担を行う方針だ。
HTLV―1が引き起こす
アトムの会についての問い合わせはNPO法人「スマイルリボン」(099・800・3112)へ。(本部洋介)
HTLV―1 主に母乳を介して母子感染し、ともに有効な治療法のない「成人T細胞白血病(ATL)」や「HTLV―1関連脊髄症(HAM)」などを引き起こす。いずれも発症率は高くはなく、授乳を制限すればかなりの割合で感染を防げるとされる。政府が9月に発足させた特命チームは、妊婦を対象とした公費負担による抗体検査を妊婦健診の検査項目に追加することを決め、国は今月、都道府県に通知した。追加分の費用には市町村が国から受ける交付金などが充てられる。
(2010年10月25日 読売新聞)
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