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[21475] 【ネタ】平行世界のなのはさん~ユーノくんの不幸~
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:e29fd50e
Date: 2010/10/24 11:13
 高町なのははその日、六課の仲間とロストロギアの回収任務についていた。

 回収対象のロストロギアは『賢者の石』という赤い小さなエネルギー結晶。詳しい能力については現在ユーノが調べているところだった。

 そして、なのはたちは問題なく、その石を発見した。

「あったこれだね」

 なのはは遺跡の奥に安置されていたその石を取り上げる。

「でも、賢者の石って本当にあるんだね」

「なのは知ってるの?」

「うん。地球では魔法関係のお話によく出るよ。こう手と手を合わせて」

 そして、なのはが手をパンと合わせると……眩い光が当たりを覆った!

「きゃっ!」

 あまりの光になのはと石が見えなくなる。

「なのは!」

「なのはさん!?」

 そして、光が収まるとそこに……エプロンを付たなのはがそこにいた。

「……なのは?」

 いきなり親友の服装が変わったことに驚きながらもフェイトはなのはに声をかける。

 だが、かけられた方のなのははきょとんと首を傾げた。

「……あなたは誰?」

 その一言にフェイトたちは固まった。











 とりあえず、なのは(?)を連れて六課に戻った前線メンバー。

 なのは(?)は突然の事態を飲み込めず頭の上に大量の?マークを浮かべているように見えた。

「あー、なのは、さん?」

「あ、はやてさん、なにがどうなってるんですか?」

「はやてはわかるんだ……」

 複雑そうにフェイトは呟く。

「一応確認しますけど高町なのはさんであっとりますよね?」

「? うん。そうだけど、どうしたのはやてさん?」

 はやては質問してから悩む。

 まずはなにを聞くべきか。目の前の相手が自分の知る親友でないとはわかたっが……

『はやて、少しいいかな?』

 そこでモニターにユーノが映る。

「にゃ?!」

 なのはが目を丸くする。

『例のロストロギアの効果がわかったんだけど……』

「ほんまかい! いったいどんなのや?」

 そして、言いにくそうにユーノはその効果を告げた。

『門ていうのを開けて、使用した人物に別の世界の知識を与えたりパラレルワールドの同一人物と入れ替えるって効果らしい』

 沈黙が部隊長室を支配する。

「なんやてーーーー!?」








 ひとしきり叫んでからやっとはやては落ち着いた。

『……じゃあ、僕はもう少し詳しく調べてみるから』

「あ、逃げるなユーノくん!」

 はやてが呼び止めようとするがさっさと消えるユーノ。

 このへたれ! 淫獣! となにもない虚空を罵るはやてを尻目にフェイトはなのは(パラレル.ver)に向き直る。

「えっと、なのは、さん」

「あ、はい。えっと」

 ああ、そういえば名乗るのを忘れてたと今更ながらフェイトは思い出した。

「フェイト・T・ハラオウンです。こっちのなのはとは幼なじみの友達です」

「あ、はい。フェイトさん、私は高町なのはです。って、ハラオウン?」

 なのは(パラレル.ver)が首を傾げる。

「どうしたの?」

 なのはにさん付けされたことに苦笑を浮かべてから問い掛ける。

「あ、知り合いに同じ名字の人がいて」

 その言葉にフェイトとはやてはピクリと反応する。

「もしかして、リンディかクロノって名前?」

「あ、はい。クロノくんたちもこっちにもいるんですか?」

「うん。私の母さんとお兄ちゃん」

 その言葉になのは(パラレル.ver)が目を丸くする。

「でも、なのはさん随分冷静だね」

 ふとフェイトが呟く。

 いきなり異世界に放り出されたにしては反応が薄い。

「あの、その、信じられないかもしれないけど昔魔法の力に関わったことがありまして」

 その言葉にフェイトはまた少し驚く。意外と近い世界かもしれない。

「なのはさんってなにをしてる人なのかな?」

「えっと、今は調理師学校通いながらお母さんに色々教わってます」

「へえ、翠屋を継ぐのが目標かな?」

「はい。って翠屋もあるんですか?!」

「うん。たまに私も遊びに行くよ」

 なのは(パラレル.ver)が驚いていると、はやてがはあとわざとらしく息をつく。

「なあ、そろそろ私しゃべってええ?」

「あ、ごめんはやて」

 慌てて謝るフェイトにいいよといいつつはやてはなのは(パラレル.ver)に向き直った。

「なのはさん、まだ詳しいことがわかってないんでいきなり異世界に放り出されて気の毒やけど、しばらく私らの保護下にいてもらいます」

「あ、はい。わかりました」

 そこではやては一息切る。

「それでは、そちらとこっちの違いを確認させてもらいます。ちょっと話してもらえへんかな」











「イデアシードにレイジングハート」

「似てるようで微妙に違うね」

 こっちはジュエルシードだしとフェイトは呟く。

 割と近いみたいだと確認してから細かい確認をする。はやてを知っているのなのは(パラレル.ver)以下なのちゃんの世界のはやてが妹のヴィータとともに翠屋の常連だからだそうだった。

 一方なのちゃんはフェイトと自分の胸を見比べて、手でお椀を作ってなにか頻りに頷いていた。

「なのはさんは現在魔法の力はないんですね?」

「あ、うん……だから教官さんはできないよ? 私、その……戦いかたなんて知らないから」

 わかってますとはやてはなのちゃんに頷く。

「あと、対人関係なんやけど、さっきクロノくん知ってるみたいやったけど、どういう関係ですか?」

「にゃ? そ、その……です」

「えっ?」

「その、恋人です」

 なのちゃんの言葉にフェイトとはやては唖然とした。

「さ、先聞いといてよかったわ」

「うん。なにも知らずに会わせてたら大変だったね」

 二人はうんうんと頷きあう。

「あ、あの、なにか問題が?」

「ああ、そのな……こっちではクロノくんとなのはちゃんはただの友達なんよ」

 えっとなのちゃんが零す。

「その、お兄ちゃんは姉さん……エイミィって人と結婚してるんだ」

「そう、なんだ」

 哀しそうになのちゃんが顔を伏せる。やはり異世界とはいえ自分の恋人が他の女と結婚してると聞くのは辛いのだろう。

 はやては気まずそうに頬をかく。

「えっと、じゃあこっちのなのはちゃんの交友関係なんやけど、さっきモニターに写ってたユーノくんっていう人からなんやけど」

「はい」

 その瞬間、はやての目が光った。

「こっちのなのはちゃんの恋人や」

 その発言にフェイトがはやてに振り向く。

「そ、そうなんですか?」

「そうや、もうそばで見てると恥ずかしくなるくらいアツアツでな、近いうちに家族三人で同じ家に」

「はやて、嘘はダメだよ」

 フェイトの言葉にちぇーっとつまらなそうに口を尖らせるはやて。

「確かにユーノと距離は近いけどまだ友達だから。まだ、ね」

 暗く笑うフェイトになのちゃんはこっちの私って大丈夫なのかなと少し不安になった。

「そう、まだ二人はくっついてないまだチャンスはある」

 その言葉に、なのちゃんはこっちの自分に会ったら絶対に色々お話しようと決意する。

 とにかく身近にライバルがいることだけでも知らせないとと。








 そして、簡単にこっちについて説明してからなのちゃんを隊舎に案内することとなった。

「ここが、私たちが使ってる隊舎です。しばらくの間はここにいてもらいます」

「はい」

 三人が向かうのは隊舎に入ると、そこで多くのメンバーが三人を出迎えた。

「えっと、高町なのはです。少しの間ですがよろしくお願いします」

 頭を下げるなのちゃん。

「なのはさん、本当に別人なんだ」

 そこで、とてとてと一人の女の子がなのちゃんに近づく。

「ママ、大丈夫?」

 その一言になのちゃんは固まった。

「ママ?」

 ぎぎぎと首を傾げながら聞き返す。

「フェイトママ、なのはママどうしたの?」

「えっとね、なのはママはね」

 その会話になのちゃんの視界は真っ白に染まった。










「そ、そうですか! こっちの私がこの子の保護者なんですね!」

「そうやそうや、さすがに女の子同士はないよ!」

 はやての説明になのちゃんが胸をなでおろす。

 それから、ヴィヴィオに向き直るなのちゃん。

「ごめんねヴィヴィオちゃん、私はあなたのママとは違う人なの」

「そうなの?」

「うん、でも、ヴィヴィオちゃんのママはすぐに帰ってくると思うから、それまで我慢できるかな?」

「あい……」

 頷くヴィヴィオにいい子だねと頭を撫でるなのちゃん。その姿は確かにみんなが知る『高町なのは』だった。









「お、おいしい」

「うまいわこのシュークリーム」

「ギ、ギガうめえ」

 なのちゃんのシュークリームの美味しさに驚く前線メンバー。

「まだまだなんだけど、そう言ってもらえたら嬉しいな」

 嬉しそうになのちゃんは給仕をする。

 数日も経つとなのちゃんは隊舎で料理を振る舞うようになっていた。










「えっと、クロノくん……なんだよね?」

「ああ、君が他の世界のなのはか」

「はい」

 対峙する平行世界での恋人。そして、

「よりにもよってハーヴェイか……」

 実はハーヴェイは、こっちのクロノが昔使った即席の偽名でいわゆる黒歴史だったりする。

「まーまー。ハーヴェイくん」

 平行世界の自分の話を聞いて落ち込むクロノを慰めるエイミィ。その姿は年期の入った夫婦そのものだった。








「えっと、はじめましてユーノ・スクライアです。って、なんか変な気分だな」

「高町なのはです。そうなんですか。一応知ってる相手なはずですもんね」

 ユーノと会うなのちゃん。

「あの、ユーノさんってこっちの私どう思ってるんですか?」

「え? それは、大切な友達だよ」

 その返答に本格的にこっちの私と話さねばと誓うなのちゃん。








 そして、ユーノの調査によってロストロギアの使い方が判明、なのちゃんを元の世界に戻すこととなった。

「あの、短い間ですがお世話になりました」

 隊舎前に集まった六課のメンバーに頭を下げるなのちゃん。

「ええよ、ええよ。こっちも楽しかったしな」

「頑張ってねなのは」

 なのちゃんに微笑むフェイトとはやて。

「シュークリームおいしかったです!」

「その、色々ありがとうございました」

「楽しかったです!」

 フォワード陣もなのちゃんにお礼を言う。

「その、あっちの僕に頑張れと伝えてくれ」

「はい」

 クロノも恥ずかしそうになのちゃんに頼む。

「なのちゃんママ」

 いつの間にかそういうふうに呼ぶようになったヴィヴィオがなのちゃんの足に抱きつく。

「ヴィヴィオちゃん。ちゃんとママの言うこと聞くんだよ? ピーマンとか好き嫌いしちゃだめだからね」

「あい」

 しゃがんで頭を撫でてあげながら、一つ一つ確かめるようにヴィヴィオに言い聞かせるなのちゃん。

 そして、立ち上がってヴィヴィオから離れる。

「それでは、お世話になりました!! みなさんのこと忘れません!」

 そして、なのちゃんは賢者の石の正しい使い方。戻る世界をしっかり思い描きながら両手を合す。その動作に反応して石が光を放ち……








 なのちゃんは扉以外なにもない場所に足を付けた。そこに、服以外同じ顔のなのはが立っていた。

「こんにちは私」

「にゃはは、やっと戻れるんだ」

 ふうとため息をつくなのは。なのちゃんはふふふと笑う。

「私の世界どうだった?」

「うん、いい世界だったよ。なんか、ずっといてもいいかなって思ったのですが」

 そう言って笑うなのは。

「やっぱり私の世界はこっちだなって思えた」

 そっかと頷くなのちゃん。

「頑張ってね」

「そっちもね」

 そうやり取りを交わし、お互い前に歩きして、相手の後ろにある扉に向かいすれ違う二人。

「あ、そうだ」

 思い出したように扉に入る前になのちゃんが振り向く。

「告白するなら、早くした方がいいよ?」

 ぶっと吹きだすなのは。

「にゃあ、善処します」

 引きつった笑みを浮かべながらのなのはの返答に満足そうに頷くなのちゃん。そうして、二人は同時に扉へと飛び込んだ。






 数日後、なのちゃんはクロノと一緒に兄恭也が率いるFC翠屋の応援に来ていた。

「そっか、そんな世界だったんだ」

「うん、ヴィヴィオちゃんかわいかったんだ。私も子供欲しくなっちゃった」

 その発言に苦笑するクロノ。

 仲睦まじく二人はグラウンドにやってきたすると、

『おはようございます、なのはさん!!』

 一糸乱れず並んだFC翠屋のメンバーが二人を出迎えた。

「にゃあ!? お、おはようみんな……今日はがんばってね」

『はい、ありがとうございます!!』

 そして、百点中百点を上げたくなるほど綺麗な礼をしてからメンバーは自分たちのポジションに散って行った。

「こ、これどうなってるの?」

「なんだなのは覚えてないのか?」

 そう言って近づいてきたのは、最近奥さまである忍との間に二人目のお子様ができた恭也お兄さん。

「少しばらばら気味だったメンバーに喝を入れてから熱心に指導してたじゃないか」

 その一言になのちゃんは頭を抱える。

(あっちの私なにをしたのおおおお?!)









 一方、六課。

「法皇テムオリン! ここであったが三周期目え!! あれ? ここどこ?!」

 光の中から飛び出したのは、白を基調にした戦闘衣装を着こみ、赤い宝玉の付いた杖を持つ杖を持った少女。

「また違う子が出てきたあああああ!!」

「どうすればいい? どうしたらなのはが戻ってくるの?!」

 慌てふためく六課メンバー、その様子にきょとんとする第二位永遠神剣『不屈』を持った魔王なのはだった。








 そして、どっかの世界。

「ふえええええ! どこ? ここどこなのお?!」

「あれ? なの、は?」

「ママ? でもなんか違う……」

 周りに今まで感じたこともないような力を持つ存在に囲まれて慌てるなのは。ユーノとヴィヴィオも普段のなのはとの違いに困惑している。

 エースオブエース高町なのはの平行世界旅行が終わるのは…………今しばらくかかるようである。







~~~~
勢いで作った今は反省しているが後悔はちょっとだけ。
ただ、なのちゃんの口調とかが、少し不安。
最後らへんでなのはがにゃあとか使ったのは、なのちゃん世界でなのちゃんの振りをするために癖を付けたためです。



[21475] エターナルななのはさん
Name: 空の狐◆49752e86 ID:e29fd50e
Date: 2010/09/03 20:59
「えっと、ここはどこ?」

 ナノハは戸惑っていたいきなり門が開いたと思ったら、突然知らない場所に出たのだから。

 改めて周りを見る。わりと近代的な建物、その前に集団があってこっちを見てる。そして、その集団を見て、夫である相手を見つけてナノハは近づいた。

「ねえユーノくん、いきなり何がどうなってるの?」

「え? えっと、い、いきなり聞かれても」

 聞かれたユーノも言葉に困窮する。よく見れば、神剣も持っていない。たぶん違う世界の同一人物らしいとナノハは判断する。

 それから、彼女はかつての親友も見つけたけど、自分を知らない、もしくは覚えてないということはわかってるから少し哀しい気持ちになりながら無視しようとして、

「なのは、だよね」

 と、声をかけられて振り返った。

「フェ、フェイトちゃん? 私の名前を?」

「え? う、うん」

 フェイトが頷くとナノハは抱きついた。

「フェイトちゃん!!」

「わ、なのは?!」

 突然のナノハの行動に慌てるフェイト。

「ありがとう、違う世界だってわかってるけど、私のこと呼んでくれてありがとう!」

 親友に再び名前を呼んでもらえた。それは、ナノハの叶わない望みだったはずだった。










 賢者の石で召喚されたナノハは隊舎で色々と話をすることとなった。

「ふーん、こっちの私ずいぶん面倒なことに巻き込まれてるんだ」

 ナノハはうんうんと頷く。

「そうなんですよ。えっとナノハさんでいいですよね?」

「あ、そうだ、ちゃんと自己紹介しないとですね」

 そう言ってこほんとナノハは咳払いする。

「私は魔王なのはです」

 その言葉を聞いた瞬間、全員その場から引いた。













「なるほど、魔王というのは剣の持ち主に与えられる称号なんですね」

「そうだよ。だから、別に私は世界を滅ぼしたりしないよ?」

 みんなが引いてから慌ててナノハは説明した。エターナルの存在も「永遠神剣というものの管理とそれが起こす問題を解決する集団」と嘘の交じえた説明もした。

 ちょこちょこ、「本当に魔王になってた」など、「前から私怪しいと思ってた」などというささやきが聞こえたものの彼女は無視する。

「でも、どうしようかはやて、また違う人が出てきたら大変だよ?」

「うーん、そうやなあ」

 どうやってこの世界のなのはを連れ戻すかを考え始める。

 現状、賢者の石は一週間ほど力を貯えないと使用できないこともわかっている。

 となると一週間ごとになのはが出るまで何度も賢者の石を使うということになるが、さすがに異世界から来た人間を一週間も滞在させるわけにもいかないし、なにより上からなにを言われるかわからない。

 それに、これ以上は新人の訓練にも支障を来す恐れもある。

「あ、それなら、私と『不屈』が手伝いますよ。できるよね不屈」

『All Right』

 本来エターナルは世界に干渉してはならないルールだが、下手に転移をさせて世界を乱すよりはと手伝う約束をするナノハ。その言葉にはやては涙を流しながらお願いした。









 そして、さっそくナノハによる訓練が始まる。

「この程度でへこたれないの! ほら立って! 諦めたらそこで終わりなの!!」

『は、はい!!』

 長い戦いの経験、そして、いろんな世界で得たものを少しでも叩きこもうとするナノハ。

「く! あたしも負けられねえ!!」

 なぜか教官のはずのヴィータもナノハの訓練に参加していた。











 そして、緊急出撃でも、

「神剣の主として命ずる! マナよ、我が声を聞け。オーラとなりて我らに不屈の力を与えよ! デターミネイト!!」

「わ、温かい」

「なんか、力が湧いてくる」

 マナの加護に驚く新人たち。

「マナよ、我が声に応えよ。一条の流星となって、彼のものたちを貫く力となれ! ディバインバスター!!」

「ディバインバスター? でも、なのはさんよりでかい!」

 エターナルの強大さに驚く新人。

 光が収まるとガジェットたちは消し炭一つ残っていなかった。








「ん~、ヴィヴィオはかわいいねえ」

「ママだっこ~」

 はいは~い、とヴィヴィオを抱きあげるナノハ。

 自分の娘と違うとわかっているが、ついつい同じ感覚で甘やかしてしまうナノハ。

「そっちでもヴィヴィオがかわいいの?」

 無限書庫に帰ろうとしてナノハに捕まったユーノを見ながらフェイトが苦笑気味に尋ねる。

「だって、ユーノくんとの大切な子だもん」

『……え?』

 ナノハの世界ではヴィヴィオは、なのはとユーノの間にできた子であることを知ったフェイトとユーノ。









「で、聞くけどこっちの私はただ、大切な友達なの?」

「う、うん。そうだよ」

 フェイトにこの世界の自分とユーノの関係を尋ねるフェイト。

「ダメなの! そんなんじゃ時深さんにキングオブヘタレって言われちゃうの!」

「そ、そんなこと言われても!」

「フェイトちゃん! こっちの私はユーノくんをどう思ってるの?!」

「……やっぱ、大切な友達なんじゃないかなあ?」

 とりあえず、ナノハはユーノからアプローチするように仕向けることを心に決めた。









 そして、一週間がたち、再び賢者の石が使えるようになった。

「その、楽しかったよありがとう」

 ナノハは笑う。

「いや、お礼を言うのはこっちの方や」

「ありがとうナノハ」

 ナノハの協力によって賢者の石は調整され、燃費は非常に効率化されていた。おかげで一週間待たず、二日程度で再使用できるほどである。

 また、なのはを戻すためにも安定性も上げるのにも尽力してくれたのだ。

「ユーノくん、少し自分に自信持ってね」

「う、うん」

 ユーノが頷くと、ナノハは賢者の石に歩み寄る。

「じゃあ、みんなさよなら」

 そう言って賢者の石をナノハは発動させた。







 そして、光が収まると。

「こんにちはなのです」

 年は十歳前後で幼い、青っぽい黒髪を持った可愛らしい少女がいた。

「今度は完全になのはちゃんと違うううウウウウ!!」

「ナノハ! ちゃんと安定性上げたんだよね?!」

 オヤシロさまの巫女、古手梨花が召還された。







~おまけ~


 はやては学校帰りに『翠屋』と呼ばれる喫茶店に来ていた。

 学校で友人がおいしいと絶賛したシュークリームがどんなものなのか興味を抱いたのだ。

「いらっしゃいませ、ご注文はって八神さん?」

 席についたはやてがメニューから顔を上げると、そこに友人の友人である高町なのはがいた。

「あ、高町さん? 高町さんってここでバイトしてるんか?」

「ううん、ここの店長が私のお母さんだからお手伝いしてるんだ」

 へえ、とはやては驚く。

「じゃあ、高町さんは将来このお店を継ぐんかな?」

「うーん、それはまだ未定なのですが」

 それからなのはが桃子に呼ばれるまで二人は世間話を続けた。

 思いのほか会話が弾み、クラスメイトの意外な一面を見れてちょっと得した気分になったはやては、それから幾度も翠屋に通うこととなる。

 これが、二人の出会いだった。





~~~~
カオスエターナルのなのはさん。
続いて召喚されたのはリカちゃま。さて、次はどんななのはさんを呼ぼうかな?
感想に「はやてとどういう風に知り合ったのか」とございましたのでおまけで書きました。
おまけのストーリもちょっと続くかと思います。



[21475] 梨花ちゃんとなのはちゃん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/09/09 17:25
 そして、梨花ちゃまは首を傾げる。

「みぃ、ここはどこなのですか?」

「ああ、ここはな」

 はやてが慌てて現れた梨花ちゃまに事情を説明する。

「そうなのですか~。では、二日間よろしくお願いします」

「え、えらいあっさり納得したなあ」

 あまりに呑みこみの早い梨花ちゃまに首を捻るはやて。

「だって、僕はオヤシロさまの巫女さんなのです。それに、二日ならリミットぎりぎりだから問題ないしね」

 後半はよく聞こえなかったが、よくわからない理由で胸を張る梨花ちゃん。その姿に……ツンデレガンナーが鼻血を吹いた。

「はう~っ、かぁいいよ~!お持ち帰り~!!」

「ティ、ティア?!」

 突然の相棒の奇行にスバルは驚きの声をあげるしかなかった。








「みんなで遊ぶのですよ」

 と、訓練の合間にフォワードメンバーに提案する梨花ちゃま。

 率先してティアナが参加して、それから他のメンバーも参加する。

 次々とその萌落としと、実は堅実かつ狡猾な策略で勝利を掴む梨花ちゃま。

「また、上がりなのですよ。にぱ~☆」

「はう~、梨花ちゃんじょうずじょうず」

 鼻血を流しながら梨花ちゃんに恍惚の顔を向けるティアナ。

「ティア……」

 あまりの相棒の変貌に涙を流すスバル。










 そして、出動になぜかついてきた梨花ちゃま。

「あう~、僕がなにかしたのですか? こわいですよぅ……」

 涙目でぷるぷる震えながら敵を見つめる梨花ちゃまに敵は「萌~!!」と吐血、もしくは涙を流して「俺、なにやってるんだろ?」 と泣きだすものまでいた。

「ええい、こんな餓鬼にお前らなにしてんだ!」

 だが、その精神攻撃(?)を耐え、梨花ちゃまに攻撃しようものなら……

「はう~、ダメだよぉ、そんなことしちゃあ」

「ぐああああ!!」

 神速の『レナぱん』もとい『ティアぱん』が顎を打ち抜く!

「私よりも早い……」

 相棒の神速の攻撃に自分の存在意義を見失いかけるスバル。

 そして、その隙に、

「これが私の全力全壊!!」

「えええええ?!」

 掴んだキャロを『超級覇王沙都子弾』改め『超級覇王キャロ弾』の弾として撃ちだす梨花ちゃま。それでほぼ敵を制圧してしまった。

 以後、キャロはなのはに微妙な距離を取る様になったとか。






「やっぱりなのはちゃんなんやな……」

 梨花ちゃまの決め台詞を聞いて独白する部隊長。







 そして、再び賢者の石を使いなのはの召喚を試みる六課。

「せめて『なのはちゃん』が出てくれればいいんやけど」

「そうだね……」

 半分投げやり気味にはやてが呟く。

「ではさよならなのです!」

 ぺこっとお辞儀するりかちゃま。

「じゃあね梨花ちゃん!」

「ううう、梨花ちゃん」

 ヴィヴィオはブンブン手を振り、ティアナは相棒たちに押さえられながら涙を流す。

 ティアナがお持ち帰りしようとして、召喚の邪魔をさせないため、スバルやヴィータたちに阻まれているのだ。

 そして、賢者の石が発動し、梨花ちゃんが光の中に消え、新たな少女が現れた。それは、綺麗なブロンドの髪に、翡翠と紅の虹彩異色の少女。

『ヴィヴィオ?!』

 全員が驚く中、女の子はきょとんとしていた。

 そして、きょろきょろと一同を見まわしてから、ぱあっと笑った。

「パパ~」

 そして、とてとて走ってユーノに抱きついた。

『パパあ?!』

 全員が素っ頓狂な声を上げる。

「……もしかして、なのはとユーノが結婚した世界から来たその子供とか?」

「……ありえるわな。でも、それだと目が説明できないわ」

 こそこそと黒いオーラを出しながらフェイトとはやては相談する。

 そのオーラに当てられ少し背筋が冷たくなるユーノ。

「こんにちは。お名前は?」

 とりあえず黒いオーラをねじ伏せたフェイト。

 困惑するユーノに変わって話しかける。すると、

「あれ? フェイトおばあちゃん?」

 女の子の言葉にピシッと空気が固まった。








「君のお名前は?」

 しくしくと隅で泣き始めたフェイトを置いといて、はやてができる限り優しく問いかける。

 その頬は今にも吹き出しそうにピクピク動いていた。

「なのは・スクライアです!」

 元気にピシッと手を挙げながら答えるなのはちゃん。

 だが、その名前に全員困惑する。なのはの名前とスクライアのファミリーネーム、どのような経緯の子か想像できないのだ。

「えっと、なのはちゃんのパパとママは誰かな?」

 はやてが念の為聞いてみる。

「ユーノパパとヴィヴィオママです!」

 それを聞いた瞬間、はやてと、いつの間にか気を取り直したフェイトがユーノの肩を掴んだ。

「さあ、キリキリ吐いてなユーノくん」

「えっ?!」

「流石に犯罪だよユーノ……」

 ドロドロとした情念混じりの目を向けるフェイト。

 痛い、掴まれてる肩がすごく痛い。

「ちょっと待って! 僕じゃない! 僕じゃないんだあ!!」

 そしてユーノは二人に連行されてしまった。









 げっそりとなったユーノとフェイトたちが戻ってからなのはちゃんにみんなは色々お話を聞く。

「パパとママはすっごい仲がいいんです! 近所でも評判のおしどり夫婦で、特にパパは周りから『ロリコン』なんて言われてるんです!」

「なのはちゃん、それ褒め言葉やない」

 とりあえず、小学生の勘違いを突っ込むはやて。

 なのはちゃんはどうやら普段の定位置であるらしいユーノの膝の上に座っている。

 一応、この世界がなのはちゃんのところのユーノと違うことは説明したもののパパはパパということらしい。

 すると、くいくいとヴィヴィオがユーノの袖を引っ張る。

「ヴィヴィオってユーノくんとけっこんするの?」

「ヴィヴィオ……」

 無邪気な笑顔を向けてくるヴィヴィオに、なんとなく泣きたくなったユーノだった。

『まあ、しますね』

 と、なのはちゃんの首にかけられていたレイジングハートがちかちか光った。

『レイジングハート?』

『はい』

 全員の注目を浴びながら答えるレイジングハート。ほとんどの人間がいたんだという顔をしている。

『それでは、マスターが何者なのかは私から説明させていただきます』

 そして、レイジングハートは語った。なのはちゃんがやってきた世界で、高町なのははある事件で帰らぬ人となってしまったこと。

 その事件の後、ユーノがヴィヴィオを引き取り、フェイトやはやての助力を得ながら必死に育てたこと。

 そして、ヴィヴィオは十八歳の誕生日に、ユーノに告白し、その一年後、二人は結婚。生まれた子供に二人の大切な人の名を贈ったことを語った。

「そうなんだ……」

 ユーノはしんみりと将来の娘になるかもしれないなのはちゃんを見つめる。

『もちろん周りからロリコン司書長、犯罪者と罵られ、『ヴィヴィオちゃんをVividに愛する会』に命を狙われましたが』

「そうなんだ……」

 今度は涙を流しながらユーノは答えた。









「ママのほうがちいさい~」

「えへへ~、なのは~」

 親子というよりは姉妹のように遊ぶ二人。

 特に二人はザフィーラの背に乗るのが好きなようで、一緒にのっかる姿があった。ザフィーラも嫌がらず、むしろ率先して二人を背にのせていた。

 そのほのぼのした姿に、

「はう~っ、かぁいいよ~!今度こそお持ち帰り~!!」

 と、再びツインテールが暴走しかけ、『ティアぱん』で何人も沈められながらも、他の六課メンバーに取り押さえられる一幕もあった。








 そして、フェイトは……

「あの、レイジングハート」

『なんですか、サーフェイト』

 それから、意を決して聞くフェイト。

「その、私ってそっちではどうなったの?」

『ユーノに幾度もアプローチをかけたものの、友達としか認識されず、最近、孤児院を開き、そこの院長になりました』

「……そう」

 その後、出撃したフェイトは……

「プラズマザンバーブレイカー!!」

 リミットは外さない範囲で大技を使い、八つ当たり気味にガジェットを薙ぎ掃う。

「ユーノのバカヤロおおおおおお!!」

 乙女の叫びにライトニングだけでなく六課の全員が涙を流した。ただ、ユーノだけはなんで自分が罵られたか理解できないでいた。






~おまけ~

 白い空間に彼女はいた。目の前に資料で見せてもらった高町なのは。ただ、あちこちがぼろぼろで少し背が伸びてるように見える。

 さらに、聞いた話よりもずっと大人っぽい雰囲気が漂っていた。

「運命なんてこの手で撃ち抜けるの」

 なのはが、梨花とすれ違う時に一言呟いた。梨花は足を止める。

「そうなのですか。私は何度も運命に倒れました。そして、本心では誰よりも希望を信じていませんでした。では、あなたは?」

 かつて羽生に指摘された事を話す。その言葉になのはは微笑みながら答える。

「諦めないよ。不屈の心で絶対に元の世界に帰るから」

 なのはの答えに梨花も笑う。

「わかりました。それでは」

 そして、二人はお互いに扉をくぐった。









「梨花!」

「羽入、どうしたの?」

 戻ってきて早々、興奮した羽入が詰め寄ってきた。

「どうしたのじゃないのですよ! 僕は驚きました! いったいいつの間にあんな力を手に入れたのですか?!」

 梨花は羽入の言葉に、もしかしてと思った。

「あの『山狗』どもを一人で殲滅するなんて!! それに、たった一ヶ月の間に圭一を導きこの村に新しい風を吹かせた! 本当は諦めてなかったのですね!!」

 ああ、と思ったと同時になのはが行った数々の事象が梨花の中に流れ込む。と、同時に喜びがこみ上げる。

 もう、あんな地獄のような運命はないのだと。

(ありがとうです。なのは)

 そして、梨花は心の中でなのはにお礼を言うのだった。

 だが、羽入の言葉に一つだけひっかかった。

「……一ヶ月? 二日じゃなくて?」

「なにいってるんですか? 何日もしっかりと準備を行ってから動いたじゃないですか」

 その時、梨花は理解した、あのなのはがどんな目にあっているのかを。



~~~~
どうも、梨花ちゃまと並行世界ななのはちゃんです。
なお、梨花ちゃんの発言からもわかりますが、現在のなのはさんは……
次回はリクエストにあったキャラの誰かを出そうかと思っています。



[21475] かなみちゃんと受難ななのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/09/12 10:16
 そして、再び再びなのはの召喚を試みる機動六課。

「さあて! なのはちゃんは帰ってくるのか!! 運命の瞬間です!!」

「わー、パチパチ」

 だいぶツッコミも適当になってきたフェイト。

「ママ、じゃあね!」

「なのはちゃん、じゃあね!」

 なのはちゃんに手を振るヴィヴィオ。

 ティアナは「駄目だ私、落ち着け私」とぶつぶつ呟き、なのはちゃんのお持ち帰りをしようとする心を封じる。

「みんな、さようならあ!!」

 そして、なのはちゃんは光の中へと消えていった。





 なのはちゃんは扉だけがある白い空間にいた。

 そして、その目の前に少し目じりに涙を貯めた高町なのはがいた。

「今度は帰れるのかなあ?」

 と、とぼとぼと扉に歩み寄るなのは。

「あ、あの!」

 そこで、なのはちゃんは慌ててなのはに声をかけた。

「ん? なに?」

「あの、高町なのはさんですか?」

「うん」

 頷いたなのはに、なのはちゃんは、笑顔でなのはに抱きついた。

「おばあちゃん!」

 なのはは娘のヴィヴィオより少し大きい子におばあちゃんと呼ばれたことに複雑そうな顔をする。

 でも、すぐに気を取り直し、その頭を撫でる。

「あ、あの、おばあちゃん、お願いがあるの!」

「なに、なのはちゃん」

 優しく笑いかけながらなのはちゃんと目線を合わせる。

「だっこしてください!」

「うん、はい」

 そしてなのははなのはちゃんを抱き上げる。

 なのはちゃんは嬉しそうになのはに体を預ける。

「えっと、おばあちゃん。なのはね、おばあちゃんの名前もらえて、すごく嬉しいよ」

「そっか、ありがとう。なのはちゃん」

 なのはちゃんの言葉に嬉しそうにその頭を撫でるなのは。

『がんばってあなたのマスターのサポートをしてくださいよ』

『そちらこそ、私みたいにマスターを死なせないでくださいよ』

 と、デバイス同士も言葉を交わす。

 そして、なのははなのはちゃんを地面に降ろす。

「じゃあね、なのはちゃん」

「うん、なのはおばあちゃん」

 そして、二人は扉をくぐった。







 なのはちゃんが消えた後、そこに一人の女の子が立っていた。

「あれ? カズくん?」

 弱肉強食が横行する大地、ロストグラウンドのインナー。その地で今日を生きる少女、かなみがそこにいた。

「また、なのはちゃんですらないのな」

「なのはって一体……」








「魔法ですか」

 はやての説明にかなみは目を丸くする。が、それ以上の驚きを見せない。

「君も納得早いんやね」

 何度もリアクションが小さい相手が来たせいか、はやても張り合いを感じずにいた。

「そ、その、私が住むところにも似たような力がありますから」

 と、かなみはアルター能力を説明する。

「もしかして、かなみちゃんも持ってるのかな?」

 冗談めかしてフェイトは聞く。

「な、ないです」

 プルプルと否定するかなみ。

 だが、本人は気づいてないが、一応彼女もアルター使いである。

 余談だが、かなみの姿に再び「はう~」と暴走しかけたツインテールは即座にシャマル印の薬で眠らされたとか。










『夢を、夢を見ました』

 そして、彼女はその晩、夢を見ていた。

 見たこともない異形の腕を持つカズマ。

 彼に対峙する、白い衣服と桃色の翼を広げる槍のような杖を持った女性。

 かなみはすぐにわかった。それが六課の人が言う高町なのはだと。

「てめえ! かなみをどこにやった!」

 悪鬼のごとき形相でなのはに殴りかかるカズマ。

 なのははその攻撃を翼と同じ桃色の壁でカズマの拳を阻む。

「落ち着いて! 私はただ話を」

「うるせえ! かなみの声でムカつくことばかり言ってんじゃねえ!!」

 それを阻み、カズマはさらに拳を振るう。

「どうしてかな、私はお話したいだけなのに」

 カズマの攻撃の前にその音はあまりに小さい。だが、

「少し頭冷やそうか!!」

 そして、カズマと激突するなのは。

 シェルブリッドが大地を割り、なのはの魔法が空を撃ち抜く。

 そして、互いに最後の一撃を決めようとして、だが、その時に確かにカズマには聞こえた。

「かなみ?」

 困惑するカズマ。

 かなみはアルター使いじゃないはずなのに。だが、それでも、彼がかなみを間違えるわけがなかった。

「ああ、わかったよ。もうやんねえよ」

 そう言ってアルターを解除するカズマ。なのはもバリアジャケットを解除する。

「じゃあ、お話聞かせてもらえないかな?」

「なんでだよ」

 なのはを無視しようとするカズマ。だが、なのはは諦めず粘り強くカズマに話し掛け、最後はしぶしぶだがお話することを許させたのだった。









 そして、かなみは目を覚ます。

 夢に出てきたなのは、それが本当になのはかわからない。カズマがあんな姿になるのも知らない。

 だけど、と少しかなみは思った。自分が本当に彼女と同じ存在だったら、自分も少しは彼女みたいに全力で相手に自分の意思を伝えようとする人になれるのか? と。

 なれるかはわからない。だけど、その未来が魅力的にかなみには思えた。










「それでは、みなさん、お世話になりました!」

 かなみが綺麗にお辞儀をする。ティアナは「落ち着け私、落ち着け私」と右腕を押さえながら唱えている。

「かなみちゃん、元気でね」

「はい、キャロちゃんもがんばってね」

 友達には近い関係になったキャロと握手を交わし、かなみは元の世界に帰る。

 この六課との交流が、彼女がカズマ以外の人間に心を開く理由になったかはわからない。

 なのはとカズマの出会いがなにをロストグラウンドに与えたかはわからない。

 だが、それでもこの出会いはきっと何かをもたらしただろう。







 

 かなみが消えて現れたのは、エプロンを付けて髪を下ろしたなのはだった。

 また、なのちゃんを呼んでしまった!? と一同が戦慄する中、なのはは、んっ? と首を捻る。

「あれ? みんなどうしたの?」

 なのはの問いかけに、とりあえず自分たちのことを知っている世界から来たらしい。そう判断しはやては意を決して、

「あのな、なのはちゃん」

 と問いかけた瞬間、なのはが動いた! 一瞬でフェイトに近づきそのお腹に触れる。

「な、なのは?!」

 突然のなのはの行動にフェイトは顔を真っ赤にする。

「フェイトちゃん……」

 目を大きく見開き、なのははフェイトの肩を掴む。

「お腹の子、どうしたの?」

『へっ?!』

 なのは以外の全員が素っ頓狂な声を上げる。

「なんで? なんで大きくなってたお腹が凹んでるの? ユーナやユートも弟や妹ができるって喜んでたのに!」

 なのはの言葉にフェイトはもうなにがなんだかわからなくなっていた。

「あ、あの、なのは?」

 ユーノが声をかけると、なのはが泣きそうな顔を向けた。

「あなた、フェイトちゃんの付き添いに行ってたよね。どうなってるの? 」

『あなたぁ!?』

 本日二度目の合唱が響いた。











「なるほど、平行世界だったの」

 ある程度落ち着いてから、なのはは説明を受けて納得した。

 さっきの行動は、まあ、言ってみれば火事の時にマクラを抱えているようなものだろう、となのはは語った。実は相当うろたえていたらしい。

 一方フェイトは「私の赤ちゃんかあ……」と頬を緩めながらちらちらとユーノに熱い視線を贈っていた。

「でも、なんでユーノくんが付き添いやっとるの? フェイトちゃんの旦那さんは?」

 全員が一切になのはを見る。フェイトの旦那になる人物、確かに気になるだろう。

 そして、なのはは苦笑気味に頬をかく。

「フェイトちゃんの旦那様もユーノくんだよ」

『な、なんだってえ!?』









 なのはの爆弾発言の後、はやてはなのはにいろいろと尋問し始めた。

「なあ、なんで二人ともなんや?」

「その、二人ともユーノくんのことが好きだってわかったから……」

「本当に?」

「……実は二人して酔っ払った勢いで関係を迫りました」

 と、恥ずかしそうに告白するなのはさん。

 その言葉に翌日、ユーノの泊まっている部屋の前で、全身からぷんぷん酒の匂いを漂わせながら、アルコール中毒で倒れたフェイトがいたと言う。

「じゃあ、あたしは?」

「ゲンヤさんと結婚してたよ」

 それから、スバルとギンガを食事に誘い、「新しいお母さん欲しくない?」とゲンヤを外堀から埋めようとして、懐が寂しくなったタヌキがいたとか。










「さてっと、みんなに私のシュークリーム食べてもらおうと!」

 そう言ってなのはは張り切って翠屋二号店自慢のシュークリームを振舞った。

「わあ、おいしい」

「この前のなのはさんとも違うね」

 世界が違えばシュークリームも違う。六課のメンバーは喜んでそのシュークリームを頂く。








 そして、一日だけ教導官に戻ることにしたなのはは、新人たちを引っ張る。

「みんながんばって!!」

 と応援しながら、アグレッサーを勤めるなのは。往年の実力はなくとも体力は欠片も衰えてなかった。いや、むしろ体力だけなら現在より上かもしれない。

「な、なのはさん、随分元気ですね……もう教導官引退してるんですよね?」

 訓練で元気に動き回るなのはにへとへとになったティアナが尋ねる。

「だって、翠屋って割と忙しいし、夜はユーノくん激しすぎるし」

 その発言にユーノは『夜の教導官』という不名誉なあだ名が与えられることとなった。









「へ~、私の子供ユートって言うんだ」

 なのはの話に嬉しそうに笑うフェイト。

「うん。ただね……」

「ただ?」

 なんでなのはが暗い顔をするんだろうとフェイトは首を傾げて、

「最近、ユーナがマテリアルのあの子に似てきてるんだ」

「……そうなんだ」

 頬を引きつらせて笑うフェイトだった。

 余談ではあるが、フェイトが次に産む子は、女の子で青髪だったという。









~おまけ~

 なのはちゃんが帰還した翌日、なのはちゃんは久しぶりに両親と一緒に寝ることにした。

 嬉しそうに二人と手を繋ぐなのはちゃん。

「ははは、ごめんねあんまり一緒にいられなくて」

 ユーノが申し訳なさそうに笑う。リンディもそうだが、彼もほとんど老けた気配がない。

 そして、ふとなのはは両親に尋ねた。

「あのね、パパ、ママ」

「なあに、なのは」

 それから、意を決して二人に問いかける。

「おばあちゃんに会えて嬉しかった?」

 なのはちゃんの言葉に二人は複雑な顔をする。

「……うん、そうだね。私はお母さんに会えて嬉しかったよ」

「僕も、また会えて嬉しかったよ」

 そっかあとなのはちゃんは笑う。二人が嬉しかった。なら、こんな突飛な出来事もよかったと思った。

「さあ、明日は遊園地行くから早く寝ようね」

 ヴィヴィオが大切な愛娘の手を握り返す。

「はーい」

 そして、なのはちゃんはゆっくりと眠りの世界の住人になった。








「ねえ、ユーノさん」

 なのはちゃんが眠りにつくと、ヴィヴィオが夫となったユーノに話しかける。

「なに? ヴィヴィオ」

 ユーノの返事に、ヴィヴィオは少し悩んでから聞いた。

「今もママのこと愛してるの?」

 その問いにユーノは言葉が詰まった。そして、

「……そうだね、正直に言えば今でも、なのはの存在は僕の心で大きなウェイトを占めていると思う」

 その言葉にヴィヴィオは、やっぱりと思うとともに、なんでこんな質問したんだろうと後悔する。

 泣き笑いのような表情を浮かべるヴィヴィオ。

「だけど」

 そう言ってユーノは手を伸ばしてヴィヴィオの目じりを拭う。

 そして、その顔を自分のそばに引き寄せ、その唇を塞ぐ。

「今、僕が一番愛してるのはヴィヴィオとこの子だよ」

 顔を離してから、ユーノはヴィヴィオに微笑む。その言葉にヴィヴィオも微笑む。

「うん、ありがとう。ユーノさん」

 そして、ユーノとヴィヴィオも布団の中で手を繋ぐ。

 ……もしも、娘がいなかったら、きっとこの後に二人はハッスルしていたことだろう。










 一方なのはさん。

「あちこち行ったけど、楽して帰れる場所だとは思ってないの」

 目の前の異形を睨みながら歩む。その手にJと書かれたメモリ。

「行くよユーノくん!」

『ああ、なのは』

 ばっとなのはは構える。

「変身!!」

 その手にあるメモリのスイッチを押す。

<JOKER!>

 そして、腰のバックルに現れたメモリと共にそれを挿入する。

<CYCLONE!>

<JOKER!>

 その身に黒と翠のバリアジャケットを纏ったなのは。

『さあ、お前の罪を数えろなの!』

 高町なのは、私立探偵。今日も風都の平和を守る。






 かなみが去ってからだいぶ正気に戻ったティアナは膝を抱えて部屋の片隅にいた。

「あ、あの、ティア、大丈夫?」

「ほっといてよ。どうせ私なんか……」

 ここ数日の暴走にいじけるティアナ。

 ユーノの予想により、召喚時に平行世界のティアナの精神の影響を受けたのだろうとフォローされたが、ティアナにしてみれば、そんなものに影響を受ける自分の精神力が悲しくなってしまっていた。

「ティアナさん元気出してください!」

「ほら、ゲームしましょうよ!」

 そうキャロとエリオが提案し、かわいい絵の描かれたカードを見せた瞬間、ゆらりとティアナは立ち上がった。

「はう~、そのカード、絶対取るんだからあ!!」

 ティアナ・ランスター、まだしばらくの間は、完全に平行世界の影響から脱することはできないらしい。

 その後、真っ赤になって相棒に「忘れなさい!」と鉈を持って迫ったという。




~~~~
リクエストにありましたかなみちゃん登場です。
まあ、メインがむしろなのはとカズマの邂逅になってしまいましたが……
もう一人の平行世界のなのはさん、以前僕が作った『ユーノくんの受難』からのゲスト出演です。思わずやってもうた……
今回も楽しんでいただければ嬉しいですが、あまりやるとマンネリ化しそうだし、もう一話か二話でご帰還いただこうかな?



[21475] 衛士ななのはさんと斬魔ななのはさん~加筆修正~
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:b50a47bc
Date: 2010/09/16 23:53
 −−−−これまでのリリカルなのはは

『あなたは全ての魔法使いを破壊しなければならない』

『ここどこ?』

『法皇テムオリン! ここであったが三周期目え!!』

『こんにちはなのです。にぱ~』

『フェイトおばあちゃん?』

『これが! 俺の! 自慢の拳だあ!!』

『フェイトちゃんお腹の子どうしたの?』

『変身!』

 世界の破壊者高町なのは、いくつもの世界を巡り、その瞳はなにを見る?」

「妙なナレーション止めてね、はやて」

 二日酔いでガンガン痛む頭を抑えながらフェイトはつっこむ。

 現在六課は恒例となったなのは召喚の儀式を始めている。

「じゃあ、フェイトちゃん、ユーノくんと頑張ってね!」

 なのはは手を振りながら賢者の石が生み出したゲートを潜る。

 フェイトはユーノのそばでなのはに手を振って見送る。

 そして、光が収まると……

 ピッチリとしたボディスーツのような装備を纏ったなのはがいた。









「フェイトちゃん、ユーノくん困ってるから……」

 そこでなのはは首を傾げた。

 さっきまで自分は横浜基地のシミュレーター室に向かってた筈なのに、いつの間に屋外に出たんだろう。

 そして、さっきまで意中の相手に体を擦り寄せていた部隊の仲間がいない。いや、いることはいるけど見たことない制服に身を包んでいる。

「あれ?」

 A−01部隊所属、ポジション、砲撃支援の高町なのは中尉は首を捻った。









「どうも、なのはちゃん、でいいんやよね?」

「あ、はやてちゃん、どうしたの? 今日は確か新型OSのテストだったよね?」

 なのはは困惑しながらはやてに問いかける。

「うん、そのこと含めてお話しよか」

 そして、六課隊舎内ではやてに説明を受けるなのは。自分が別の世界にやってきてしまったこと。魔法のことに驚く。

 なにより、自分が教官をやっていることにも。神宮寺教官、あなたのような人なのでしょうか? と、なのはは考えたが、この世界に狂犬はいないのである。

「ま、魔法ですか……そんなのがあるなんて」

「うんうん、そのリアクション、私は嬉しいで」

 満足げに頷くはやて。

「はやてちゃん、なにか違うです」

 思わずリインが突っ込む。

「あ、リインフォース大尉……あれ? 小さい……」

 まるで妖精のようなリインフォースツヴァイを見て、自分の知る相手との違いに違う世界ということを強く認識するなのは。

「あ、リインフォースもいるんか?」

「はい、副司令直属の研究チームのメンバーです」

 衛士ではないリインフォースの意外な役職に驚くはやてたち。

 余談だが、リインフォースは香月副司令の元で衛士を補助するAIシステム、『インテリジェントシステム』を開発し、なのはは『レイジングハート』と呼ばれるタイプのAIのテストを任されることとなる。








 一方フェイトはなのはの強化装備に戦慄していた。

 あの水着のようにぴっちりと身体にフィットし、どこか艶めかしい印象を与えるデザインは、薄さで勝負のフェイトにとって寝耳に水だったのだ。

「バルディッシュ! なのはのあの装備を参考にソニックフォームデザイン変更! それと、ラバー部分は半透明に!! ふっふっふ、これなら例えフェレットも狼に!!」

『サー、落ち着いてください』

 フェイトの暴走を諫めるバルディッシュ。

「てか、ソニックフォームの方がお色気って感じやないか?」

「私、わかったんだよ! ただ肌を晒すだけが戦い方じゃないって!!」

 はやての言葉に高らかに唄うフェイト。どうやら彼女は新たな境地に目覚めてしまったようである。









「お、おいしい」

 涙を流しながら料理を頬張るなのは。

「そ、そんなにおいしいんですか?」

 スバルの問いかけに頷くなのは。

「三食食べられるから贅沢言えないの。それに、おばちゃんの料理はおいしいけど、やっぱり合成食材って不味くて……」

 世界の差に複雑な心境になる六課メンバー。








「そっか、リインフォース元気なんか」

 違う世界とはいえいなくなった大切な家族が元気に生きているそのことにはやては純粋に喜んだ。

 できれば、会いに行きたいが、なのはみたいになったら笑い話にもならないので止めておくが。

「にゃはは、そうかも。それにこの前なんかPXで、訓練生の子が正規兵の人に殴られた時なんかね『貴様等は私の大切な人になにをした?!』ってすごく怒ったんだ。大尉があんなに怒ったの見たの初めてかも」

「そうなんか?」

 リインフォースの意外な発言に驚くはやて。

 どうやら祝福の風は恋愛原子核に射とめられたらしい。







 出動について行くなのは。

 一人ヘリから下りずに、後部ハンガーで借りたデバイスを構え、スコープを覗き込む。

「シュート!」

 対AMF用のヴァリアブルバレットがないが、それでも、はるか遠くの標的を見事に撃ち抜きフォワード陣の援護に貢献してみせる。

 その狙撃は、そばで見ていた本職のヴァイスも唸らせたと言う。






「なのはの世界で私ってどんなことしてるの?」

 さすがに半透明は許されなかったフェイトだが、それでも衛士強化装備を纏えてご満悦のようすだった。

「えっと、フェイトちゃんは私の部隊の仲間で、強襲前衛のポジションで、部隊の先陣を切る役で、それと、私とユーノくんをかけたライバル」

 その言葉に、フェイトはなのはの肩を掴む。

「なのは、そっちの私に頑張ってって伝えてね」

「うん」











「ええ加減帰ってこないんかなあ……」

「きっとなのはも頑張ってるよ」

 零式強化装備に似たバリアジャケットを纏ったフェイトが笑う。

 そして、再びなのは帰還のための儀式が始まる。

 はやてはこれでも帰ってこなかったら風水師やイタコ、とにかく考えられる限りのオカルト関係の力を借りようと誓った。

「それでは、お世話になりました!」

 光の中に消えるなのは。

 そして、七度目のなのはの召喚。光の中から表れたのは……地に伏しながら、必死に手を伸ばすなのはだった。

「フェ、フェイトちゃん、ご……」

 そして、そこで最後の力を使い尽くしたのかパタッとその手が落ちた。

「衛生兵ーー!!」

 はやての叫びに慌ててシャマルはなのはの体を見ようとして……

 ぐぎゅるるるるげるぐぐ~……

 盛大な腹の音が響いた。

 乙女が発したと思いたくない音に、その場の全員が気まずげに押し黙る。

 そして、

「食堂に連れて行き」

 やっと、はやてはそう指示を出したのだった。









「はあ、助かったの」

 スバルたちに負けないぐらいの量を食べてなのはは一息ついた。

「よく食べたね……」

 呆れ気味にフェイトが呟く。

「にゃはは、食べれる時に食べないとね」

 と笑うなのは。それから、あれっと、首を捻る。

「フェイトちゃん、今日は「働けよ」ってお説教なし?」

「……さてなのは、少しお話しようか」

 なのはの発言にいろいろと戦慄するフェイト。










「平行世界なんだ」

「そうなんよ」

 はやての説明に納得するなのは。

 なのはの世界にも系統は違うが魔術はあるためにあっさり受け入れられる。

「まあ、二日で帰れるからって、どうしたの?」

「ユーノ、くん?」

 ユーノが話しかけるとなのはは目をパチパチと瞬かせる。

 そして、

「成長したらこんな感じになるんだ! うう、こっちも捨てがたいけど、ちっちゃい方も……」

 と驚いてから、妙な葛藤を始めるなのは。

 ちっちゃい方もという発言からフェイトはエリオたちに、「いい、あのなのはにはあまり近づいちゃだめだよ」と言い含めたそうな。

「僕ってそっちではどんなのなの?」

 つい、葛藤するなのはに問いかけるユーノ。

「魔道書の化身で私のパートナー」

 ついに本になったかと唸る一同。ユーノは少し落ち込んでいた。

 フェイトも聞いてみる。

「私は?」

「教会でシスターしてて、孤児院の真似事みたいなことしていて、いつも私にご飯たかられてるかな」

 余談だが、このなのはの世界のフェイトはシスター以外にも、夜な夜な謎の正義
の味方としてスカリエッティの破壊ロボ撃退に勤しんでいる。

「そうなんだ、ってなのは何してるの?!」

「探偵」

 たかるだの、働けって説教されるだの、親友の数々の発言からまさかのニートかと思いフェイトは尋ねるが、とりあえずニートではないことに安心する。

「なら私は?」

「八神財閥の総帥で、私の雇い主だよ」

 他、シグナム、ヴィータ、シャマルはメイドである。

「あれ? ザフィーラさんは?」

 ふとそのメンバーの中に知り合いが一人欠けていることに、なのはは気づく。

「ああ、ザフィーラならそこやよ」

 とヴィヴィオを背に乗せた狼モードのザフィーラを指す。

「ザフィーラさん犬なんだ……」

「犬ではない!」

 つっこむザフィーラ。

「ザフィーラが気になるの?」

「背中を任せた相手だからね」

 その言葉に、自分の活躍する世界を知ったザフィーラが、仁王立ちしながら腕を天へと突き上げて目から魂の汗を流す姿を六課の何人かが見たという。









 そして、出撃でも……

「クトゥグア、イタクァ!!」

 二丁の拳銃で次々と敵を屠るなのは。左のリボルバーの弾丸が縦横無尽に走り、右の自動拳銃が多くの敵を粉砕する。

 さらには、

「フォマルハウトより来たれ! 風に乗りて来たれ! クトゥグア、イタクァ、神獣形態!!」

 神獣を召喚し、一瞬でガジェットの空中戦力を一掃した。

 その姿にたった一日だけだが指導してもらうティアナがいたという。

 ただ、さすがにイブン・ガズイの粉薬などの調合のために『二百年くらい前からあるお墓ないかな?』と探し始めたのは、ティアナも引いたという。







 そして、ヴィヴィオ。

「はあ、かわいいなあヴィヴィオ……」

「えへへ、ママ~」

 幸せそうにヴィヴィオを抱きあげるなのは。

 そばでフェイトはなにもしないように見張っていた。すごく心配だから、ヴィヴィオの貞操が……

「ユーノくんとの子供できたらなあ、でも、魔道書って子供できるのかなあ……」

 変な心配をするなのは。

 だが、このなのはは知らない。

 別の世界で神になった自分とユーノの間にできた子であるヴィヴィオが、セイクリッドハート・トゥーソードを駆って自分の前に現れることを。








~おまけ~

 はやては妹のヴィータを連れて翠屋にやってきた。

「ここのシュークリームってすっごくおいしいんやよ」

「へえ? 楽しみだなあ」

 嬉しそうなヴィータの手をひっぱり、お店の扉を潜る。からんからんと鈴が鳴った。

「やっほう、なのはちゃん!」

「あ、はやてさん」

 友達の姿を見とめ、声をかけるはやて。

 あれ以来、学校でもちょこちょこ一緒に話したり、遊びにいったりして二人は友達になっていた。

「あれ? その子は?」

 なのちゃんははやての横の赤毛の女の子に気づいた。

「あ、私の妹、ほらヴィータ挨拶して」

「ヴィ、ヴィータです。はじめまして……」

 ぎこちなく挨拶するヴィータ。その目はどこか、目の前の相手を品定めするような色があった。

「なのはです。よろしくねヴィータちゃん」

 くしゃくしゃとヴィータの頭を撫でるなのちゃん。これが、この世界の二人の出会いだった。









 元の世界に帰還したなのは。

 彼女がいたのは、基地の裏にある高台だった。今、朝日が昇り始めている。

「あれ?」

 なのはは首を捻る。戻ってきたんだろうけど、なんでこんな場所に……

 そこで、気づいた、左右から一人ずつ誰かが近づいてくるのに。ユーノとフェイトだった。

 いきなり現れた二人になのはは困惑する。いったいなにがあったんだと。

「あの、なのは、なんで僕を呼び出したの?」

 ユーノが問いかけ、なのははこっちに来ていた自分がユーノを呼び出したことを知る。

 そして、フェイトはなのはに歩み寄って、ユーノに聞こえないくらい小さく声をかけた。

「その、なのは、ここで決着をつけるって本当?」

 フェイトの言葉を聞いた瞬間、なのはの中にこれまでの記憶がなだれ込んできた。

 甲二十一号作戦、スサノオ弐式、桜花作戦、そして、その直前に生き残ったら決着をつけようとフェイトと交わした約束。

 それらの記憶を得たなのはは一度目を瞑る。そして、

「うん、決着をつけよう」

 フェイトにそう伝え、ユーノの方に振り向く。

「ユーノくん」

「ユーノ」

『私たちはあなたのことが』

 そして、朝日の中、二人は告白した。






~~~~
マヴラブな世界と斬魔の世界からなのはさんです。
きっと、はやても恋愛原子核にやられているはず。
もう少し引っ張っていいって言ってくれる人もいたけど、もう数話くらい引っ張ろうかな?



[21475] ノキアさんと裏切られたなのはさん
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:b50a47bc
Date: 2010/09/29 00:27

「高町なのは帰還できるかクーイズ!」

「いえー」

 はやてに付き合いめんどそうに右手を突き出すフェイト。

「①なのはちゃんが帰ってくる ②別のなのはちゃんがくる ③なのはちゃんじゃない子がくる。さあ、どれ?!」

「①で」

 当たり前だが彼女は親友の帰還を信じているのだ。答えは?しかない。

「それではなのはさん答えお願いします!」

「にゃはは、じゃあねー」

 なのはは手を振りながらゲートを潜った。








 そして、出てきたのは、携帯を持ったかわいい女の子? だった。

「あれ? お兄ちゃんどこ?」

 兄を探すの人物の名はノキア。

 カラミティステップ、デスマキナ、二つの異名を持ちつ携帯使いの男、カシオの弟妹だった。









「はじめまして。君の名前はなんて言うの?」

 フェイトはノキアに話しかける。

「あ、ボクはノキアです。はじめまして。あの……ここはどこなんですか?」

「うん、今から説明するから」

 フェイトはノキアを隊舎に案内する。

 その間、ティアナは「疼くな私の右手!」と必死に自制していた。










 簡単に今の状況をノキアに説明したはやて。

「へえ、ボクたちの魔法とは違うんだ」

 ノキアはデバイスを使った魔法に興味を示した。

「にしても携帯で魔法なあ?」

 はやてはノキアの携帯を見る。

 ノキアの世界では魔法は携帯を通し、ゼノリアルネットワークから落として使う。

 高い魔法に至っては情報量は絶大でとてつもないパケット代が発生し、使用限度額まであるという。









「ノキアちゃん、一緒にお風呂入らない?」

 はあはあと、荒くなりかける息を力尽くで抑えつけながら、ティアナはノキアを連れてシャワーを浴びようとした。

 なにせノキアは普段はホームレス生活。実はここ数日水でしか洗ってないという。ヴィヴィオとスバルもそれに付き合う。

 そして、ご満悦の様子でティアナはシャワー室にノキアを連れ込んで……悲鳴を上げた。

「ティ、ティアどうしたの?!」

 悲鳴を聞きつけ、外に待機していたスバルは慌ててシャワー室に入る。

 ティアナは尻餅をついたまま霰もない姿で、ノキアを指差して、

「ぞぞぞ、ぞうさん、ぞうさんがついてた!」

 はあ? とスバルはノキアを向いて、同じように悲鳴を上げた。

「あはは、やっぱりびっくりする?」

 実は、現在のノキアは男の子だったのだ。







 そして、シャワーについていったヴィヴィオが証言した。

「ノキアちゃんのぞうさん、エリオくんのより大きかったよ」

「ああ、そうなの」

 ヴィヴィオの言葉に真っ赤になるエリオだった。










 そして、出撃時に、

「ボクも行く」

 と、ついていくノキア。

 曰わく兄カシオが「恩も売り物。売れる時に売る」という考えだからであるそうな。

−−ぐらびてぃれんず

 光学系の攻撃をねじ曲げる魔法を使用し、ガジェットの攻撃を防ぐノキア。

 だが、ガジェットの攻撃の余波で飛んだ石つぶてが命中してひっくり返ってしまう。

「ノキアちゃん!」

 慌ててフォワード陣が援護に入ろうとして、全員の背筋に悪寒が走る。

 ゆらりと幽鬼のように立ち上がるノキア。フォワード陣は彼女の正面から全力で離れる。

 そして、

「うちに逆らって、ただで済む思うなこのあほんだらどもーー!!」

 携帯を向けた方向に太陽のような輝きの魔法が解き放たれる。

 ころなばーすと。地上に太陽のコロナを召喚する魔法。ひらがなで可愛らしくしてるが凶悪な魔法である。間違っても水平及び地上に撃ってはならない。

 一瞬で、ガジェットは消し炭も残さず消滅した。










「ノキア、ちゃん?」

 ノキアの豹変に戸惑うフォワードメンバー。

「うちはな、頭に衝撃を受けると表と裏が反転するんや」

 と説明する。余談だが性別まで変わるのだが、この特性は、カシオのミスが主な理由である。

『えっと、ノキア、ちゃん?』

 戸惑いがちにノキアに話しかけるはやて。

「あんたがうちらをここに呼んだ狸やな。魔法のパケット代とうちをここに呼んだ分の慰謝料払ってもらおか」

 と言ってノキアはパケット代を見せようとして……一機だけ残ってたガジェットに叩き潰された。

「ノキアちゃん!」

 スバルとティアナがガジェットを破壊する。

 そして、ノキアを助けようとするスバルたち。そこに大怪我を負ったノキアが……いなかった。

「あー、びっくりした」

 そう言って普通にパンパンと埃を払って立ち上がる表ノキア。

「あ、え?」

「大丈夫なの?」

 戸惑いがちにティアナが問いかける。すると、ノキアは笑いながら言った。

「ボクはお兄ちゃんの魔法だから」

 そう、ノキアはカシオが作り出した『魔法』だったのだ。

 ちなみに、頭部に衝撃があると、ノキアの人格や性別が変わるのは、カシオがノキアの設定時に好きな属性を全部入れた上で、性別の項目をチェックし忘れたためである。

 そして、彼女の具現化の月額パケットは六千万円である。これが、二人の極貧生活の理由の一つだったりする。









 そして、戦闘終了後、

「これ、もう一人のボクが言っていた請求書です」

 はやてはふーんと請求書を見て固まった。

 予想よりゼロが多かったのだ。

「あ、な、ノキアちゃん。これマジ?」

 はやては震える指で請求書を指差す。

「はい! それにお兄ちゃんも世の中金って言うから、びた一文負けません!」

 その後、街の一角を吹き飛ばしたことを理由になんとか、請求書の金額を値切ることはできたが、それでも八神家は手痛い出費をする羽目になった。









「なのはちゃん帰ってきたくないんかな?」

「そんなことないと思うよ……」

 はやての呟きをユーノは否定する。

 だが、いい加減帰ってきてほしいものであるのは全員の共通認識である。

「それでは、お世話になりました」

 ぴょこんとお辞儀するノキアを全員で見送った。

 そして、ノキアの代わりに光から出てきたのは姿はなのは。

 だが、彼女は膝を抱えてボロボロと大粒の涙をこぼしていた。

「な、なのはちゃん?」

「なのは?」

 いきなり泣いているなのはの出現に戸惑うフェイトたち。

 そして、しばらくして異変に気付いたのか、なのはは顔を上げた。

「なのは、どうしたの?」

 フェイトに声をかけられると、再びなのはの表情が崩れる。

「うわあああああああん! フェイトちゃーん!!」

 なのはは泣きながらフェイトに抱きついた。

「な、なのは?」

 突然の親友の行動に戸惑うフェイト。

「ごめんね。ごめんねフェイトちゃん。私フェイトちゃんのことちゃんと理解してあげられなくて……」

 そこまで言ってなのはは再び慟哭する。

 フェイトは、ただ静かになのはが泣き止むまでその背を撫で続けた。

「なのは、もう平気?」

「うん、ごめんねフェイトちゃん」

 まだしゃくりあげながらもなのははフェイトから身体を離す。

 そして、周りを見る。

「えっと、なんでみんないるの?」

 そこでやっとなのはは首を傾げる。

「なのは、よく聞いてね。この世界は……」

 そして、なのはにフェイトは現状を説明した。

「平行世界、そうなんだ……」

 戸惑いがちになのはが口を開く。

「うん、今ユーノに協力してもらいながらなのはを連れ戻そうと頑張ってるんだ」

 ユーノの言葉になのはの肩がぴくんと反応する。

 そして、ゆっくりと人ごみの中からユーノを見つける。

「ユーノ、くん」

「やあ、なのは」

 と、いつも通りの柔らかな笑顔を浮かべるユーノ。

 なのはは立ち上がり、ユーノに向かって走り出し、そして……

「ユーノくん…………ばかあああああああああ!!」

 涙を流しながら強烈な右ストレートを食らわせた。

「きゅーーーー!!」

 貧弱なフェレットはそれに耐えきれずに倒れる。

 だが、なのははそれだけで止まらなかった。マウントポジションをとると、その顔と叩き始める。

「ユーノくんのバカ! 浮気者! 女ったらしい!!」

 いくつもの罵詈雑言をびんたとともに叩きつける。

「お、落ち着いてえななのはちゃん! このユーノくんは違うんや!」

「離して! 今のうちに罰を与えるのお!!」

 はやてが慌てて救出したが、すでにユーノは気絶してしまっていたのだった。









 そして、シャマルにユーノを治癒させながら隊舎で話をする。

「私の世界では……私はJS事件の後、ユーノくんと結婚しました。フェイトちゃんは、なぜか辺境の世界に言って音信不通でした。クロノくんたちもたまに連絡が来る程度だったらしいの」

 ぽつぽつとなにがあったか語るなのは。

「でも、私はユーノくんとヴィヴィオにアルフさんで幸せな家庭を作ったの。そのうち、私もユーノくんとの子供ができたの」

 なんか一人違う人が混じっていたが全員スルーした。

 実は、八神家とフェイトとユーノ以外、アルフはユーノの使い魔と思っているので半分はおかしいということにすら気づいてない。

「ユーナって名付けたその子は元気に育ってくれて、十六で局に入った」

 その時にはなのはは教導官を止めて、ユーノの秘書のようなことをしていた。

「それで、あの子が局入りして一年くらいかな? 友達って言って一人の男の子をうちに連れてきたの」

 なのは曰く二人は友達という雰囲気ではなく、明らかに恋人のような雰囲気を漂わせていたという。

 なのははそのことを祝福した。なによりも、

「その子の名前はユート・T・ハラオウンって名前だったんだ」

 えっ、と全員が声を上げてフェイトを見る。

「えっと、もしかして……」

 フェイトの問いになのはは頷く。

「その子は、フェイトちゃんの子だったの」









 なのははそこから歯車が狂ったと言う。

 久しぶりにあったフェイトは明らかに動揺し、二人の交際に反対したという。ユーノもどこか様子がおかしかった。

 そして、なのはは色々と調べたのだった。フェイトのこと、ユートのこと。わかったのは、ユートはフェイトが辺境の世界に住居を構えて、すぐに産んだこと。ユートは私生児だったということ。

 ここまできて、全員まさかとその答えを想像する。その想像を助けたのは以前この世界にやってきた、自分だけでなく、フェイトと一緒にユーノと結婚したなのはさんのこと。

「そのことから、まさかと思ったの。でも、二人を信じたかった」

 そして、なのははユートのDNAを調べた。結果、ユートの父親は、

「ユーノくんだったんだ」

 じとおっとユーノに視線が集まる。

 頬を引きつらせるユーノ。

「それって、まさか……」

「ユーノくん、フェイトちゃんと浮気してたの」

 なのはの言葉にユーノに対する非難の視線が集中する。

 痛い。視線がすごく痛い。特に女性陣。

「フェイトちゃんは自分がユーノくんに迫ったっていってたけど、それも本当なのか……」

 フェイトも頭を抱えていた。まさか未来の自分にそんな結末が待っているなんて……

 フェイトが二人の前からいなくなったのは、二人に迷惑をかけないためだったのだ。

「別にね、ユーノくんが浮気してたのはいいの。まあ、前からフェイトちゃんが少しユーノくんを気にしてたの知ってたから」

 だけど、と前置きする。

「これじゃあユーナとユートくんが可哀そうなの。だって、好きな相手が知らなかったとはいえ兄妹だったなんて……」

 まず、結ばれない。重婚は認められてるが、近親婚は従兄弟からである。

 そして、なのはは立ち上がるとユーノに迫った。

「わーん! ユーノくんどうするのお!!」

「ぼ、僕に言われても!!」

 胸倉を掴まれながら弁解するユーノ。

 それから、誰も助け舟を出さなかったため、ユーノはなのはをなだめるのに苦労したという。








~おまけ~

 ユーノはやせ細りながら廊下を歩いていた。すると、目の前になにかが現れた。

 それは、真っ黒なローブに身を包み、どこかで見たような仮面を付け、そして、その手にS2Uとデュランダルを携えていた。もう、隠す気ないだろうといいたくなる。

「……君は本気だな」

「わかってるようだな」

 くぐもっているが聞きなれた声が聞こえ、ああやっぱりとユーノは思った。どこから聞きつけたかは知らないが、彼がここにいるということはそういうことなのだろう。

 だが、その殺る気満々な殺気も、今のユーノにとってはそよ風同然だった。

 そして、黒尽くめの男、クロノが構える。

「妹を傷つけるものには、然るべき報いを……」

 そうの呟きとともに、クロノは飛び出した。









 そして、十分後、クロノは涙を流して地面に倒れていた。

 数々の魔法を防ぎ、バインドで避けながらユーノが行ったこと。それは、

「ありがとうフェイト」

『ううん、気にしないでユーノ。これでクロノが頭冷やしてくれたらいいんだけど』

 フェイトと通信を繋げ、モニター越しに『クロノのバカ! もうお兄ちゃんって呼んであげない!』が決め手だった。

 シスコンを倒す最終兵器は、護りたいものである妹なのだった。






~~~~
グリードパケット∞の主人公カシオの妹であり弟のノキアと、とんでもない修羅場な世界からやってきたなのはさんです。

別の世界なのに、ゼノリアルネットワークにアクセスできるのか? という突っ込みはできたらなしで。



[21475] ゼロノスななのはさんと御神ななのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/10/19 22:13
 再び、再び新たななのは召喚が試みられる。

「さあて、今回はなのはちゃんの帰還と別人が出るを出し抜き、一番人気は別の世界のなのはちゃんだあ! 」

 はやての言葉を聞いて、フェイトは後でお話する相手を捜さなければと決意する。

「では、なのはちゃんよろしくお願いします!」

「うん……」

 頷いてなのはは両手を合わせ、ゲートを潜ろうとしてから、一度振り向く。

「ユーノくん、こっちの私を絶対に私のようにしないでね」

「はい……」

 ユーノは申し訳なさそうに頷く。その肩をフェイトが苦笑気味に叩いた。

 そして、なのははゲートを潜り……光が収まると頑丈そうなアーマーを着込んだなのはが現れる。

「来てフェイトちゃん!」

 その言ってなのはは腰のベルトからカードを取り出し、裏返して黄色い面を上にして再び挿入する。

「えっ?」

 するとフェイトが引っ張られて、なのはの中に入ってしまった。

『えっ?!』

『ライトニングフォーム』

 驚く一同の前でなのはの姿が変わる。茶色の髪が金色に染まり、サイドポニーはツインテール、瞳も赤く。そしてアーマーも重厚なものから軽量なものへ。

 そして、『変身』が終わると『なのは』は慌てだした。

「えっ? えっ? なにがどうなってるの?!」

 その声と仕草は間違い無くフェイトのものだった。









『フェイトちゃんどうしたの? いつもならここで「最初に言っておきます」って決めゼリフ言うのに!』

「そ、そんなこと言われても……」

 そこでやっとなのはは気づいた。自分がさっきまでいた場所と違うことに。

『あれ?』

 そう呟きながらなのははベルトを外す。と、ベルトからカードが出て消滅してしまった。

「八神さん、どうなってるの?! また私にパスを無駄遣いさせたの!?」

 はやてを見つけると、すぐに詰め寄るなのは。

「お、落ち着いてやなのはちゃん」

「い、一体どうしたんだよなのは?」

 その言葉になのははヴィータを見て、あれっと首を捻った。

「ヴィータちゃん、いつの間に『ヴォルフラム』の外でも実体化できるようになったの?」

「はっ?」

 なのはの疑問にヴィータは首を傾げるしかなかった。









「なるほど、時間を駆ける船ですか」

「そうなの。私は失われたはずの時間を航行していた『アースラ』で魔法使いゼロノスとして、私の世界の八神さんは『ヴォルフラム』で魔法使い電王になって時間を守るために戦ってました」

 再び隊舎でなのはのやってきた世界の説明を受けて、頷くはやて。

「あ、そういえばなんで私はなのはの中に?」

「フェイトちゃんは私の世界では、私の契約イマジンだったからそのせいかも」

 フェイトの疑問に答えるなのは。もちろん、はやての契約イマジンはヴォルケンリッターである。









 そして、再びの緊急出撃に同行するなのは。

「贅沢は言ってられないの!」

 なのはは腰に装着したベルトにカードを入れる。

『スターズフォーム』

 魔法使いゼロノスに変身するなのは。

「最初に言っておきます、私はかーなーり強い!」

 腰のレイジングハートを組み立てガジェットに立ち向かうなのは。

 バスターモード、ザンバーモードを的確に使ってガジェットを打ち倒す。

『Full Charge』

 そして、バックル左上のスイッチを押してからカードを取りだす。それを、レイジングハートに装填すると、先端にエネルギーが集中する。

 それは、スターズフォームのなのは最大技、ディバインバスターEX。

「いっけえ!!」

 なのはが引き金を引く。

 集中したエネルギーが解放され、ガジェットは跡形もなく粉砕された。








 変身を解き、カードが消滅する。

「ただいま戻りました」

 そして、全員が六課に戻って、

「あれ? なのはさん?」

「いつ賢者の石使いましたっけ?」

 ルキノとシャーリーが首を捻る。

『へっ?!』

 はやてたちが驚き調べたところ、六課の一部の人間が、今朝行われたなのは召喚を忘れていた。

「どうなっとるんや?」

 なのはは話さなかったが魔法使いゼロノスは変身するたびに、他者から装着者の記憶を奪うものなのである。







「こんにちはヴィヴィオちゃん」

 なのはがヴィヴィオに笑いかける。

「こんにちは」

 ぺこっとヴィヴィオが頭を下げる。そんなヴィヴィオになのはは笑う。

「こっちでは小さいんだねえ。私の世界では同い年くらいだったのに、いきなり小さくなっちゃって」

 しんみりと思いだす。時間の影響と聞くけど、どうしてだろうと考えるなのは。










「今度こそ、今度こそなのはちゃん帰ってきとくれよ」

「はやての頑張りは無駄にならないよ。きっと」

 未だに賢者の石を使えるのは上に掛け合っているはやての努力の成果である。

 ユーノにシャーリーやマリーもその努力に報いるため、懸命に賢者の石の研究を続けている。

「じゃあ、みんながんばってねえ!」

 ぶんぶん手を振ってなのははゲートをくぐる。

 新たに召喚されたなのはは、真っ黒の装束、背中側の腰に二振りの小太刀を差して、タバコ……いや、シガーチョコをくわえていた。

「だー! なのはちゃんってなんなんや?! 何者なんやー!!」

「は、はやて、落ち着いて」

 錯乱するはやてを宥めるフェイト。一方のなのはは状況を把握しきれないのか目を白黒させていた。








「えっと、高町なのは……さんですよね?」

「あっ、はい。そうです。あの、ここはどこなんですか? それになにがどうなってるんですか?」

 なのはの問いにユーノは頷く。

「簡単にですが今の状況を説明させていただきます」

 そして、ユーノは簡潔にここが異世界であること。この世界のなのはが事故で別の世界に飛ばされて自分たちはなのはを連れ戻そうとしていることを説明した。

「はあ、そうなんですか」

 なのはは平静に頷き、そのリアクションの薄さに説明いらないかと考え、

「異世界!? そんなのあるんですか?!」

 なのはは大声で驚く。そのワンテンポ遅いリアクションに全員が滑った。








「魔法ですか……霊能力があるくらいだからあってもおかしくはないけど、びっくりです」

 はやてたちの説明を受けて目を丸くするなのは。

 そんななのはにはやては満足げに頷いた。

「そのリアクション嬉しいよなのはちゃん」

「だからなんか違うってはやて」

 はやてにつっこむユーノ。

「なのは、さんはなにをしてる方なんですか?」

 ちょっと興味を抱きフェイトは尋ねた。

「えっと、ボディーガードをしてます」

 意外な役職に驚く一同。

「へえ、ボディーガードなんだ」

「うん、お兄ちゃん直伝の御神の剣でがんばってるの!」

 そういってなのはは胸を張った。実際、恭也並みに表裏問わず有名なのである。








 そして、なのはの体さばきに興味を持つシグナム

「高町、一手手合わせ願えるか?」

「え? いいですけど……」 

 そうしてなのはが承諾し、二人の模擬戦が決定した。

 なにもないフィールドで二人が向きあい、お互いに武器を構える。なのはは訓練用の模造刀。シグナムは殺傷力を落としたレヴァンティ。

「永全不動八門が一派、御神真刀流小太刀二刀術表、高町なのは参ります」

「ヴォルケン・リッターが烈火の将シグナム、参る!!」

 二人の剣がぶつかり合う。

 火花を散らす剣と剣。めまぐるしく動く攻防。

 激しく、早く、そしてどこか美しい剣舞に誰もが目を奪われていた。

「うわあ、なのはママすごおい」

 目をキラキラさせながらヴィヴィオは呟く。

「すごい……」

「あのなのはさん魔法使ってないんですよね?」

 御神を知らない純粋な魔法世界出身者たちは、純粋な体術だけで戦うなのはの動きに圧倒される。

 そして、一瞬のようで長い攻防の均衡が崩れ、ぎんとシグナムによって刃を弾かれなのはがバックステップで離れる。

「ふ、やるな高町。以前お前の兄と手合わせしたが、互角、いやそれ以上だ」

「にゃはは、ありがとうございます。シグナムさんも烈火の名の通りすごく強い剣です」

 お互いの称賛の言葉にお互い笑う。剣士同士通じ合うものがあるのだろう。

「だが、次で最後にしよう」

「ええ」

 そう言ってお互いに構える。なのはは奥義を使うために刀を鞘に納める。対してシグナムは最も信頼する技、紫電一閃の構え。

 誰もが固唾を飲む中で二人は動いた。

 なのはは動く。神速を使い、誰も追いつけない領域に踏み込む。

 速さは力。届かない速度に力は意味をなさず、そして、速度は如何なるものにも届かせる力になる。

 傍から見れば瞬間移動。だが、シグナムとて歴戦の剣士。その動きに反応しレヴァンティを振るう。

「紫電……一閃!!」

 シグナムも最高の技の冴えと自負できる一撃。

 だが、なのはの動きはそれを超えた。

 憧れの兄から受け継いだ奥義之六『薙旋』の四連撃。

 一刀目で軌道を逸らさせつつ、シグナムの背中からの一刀、さらにそこから二連撃を叩きこむ。

 なのはの剣に弾かれるシグナム。派手にシグナムは地面へ叩きつけられた。

 慌てて駆け寄るなのは。

「あ、あの大丈夫ですか? 手加減し忘れちゃったんですけど……」

 心配そうになのははシグナムを見る。だが、シグナムはふっと小さく笑う。

「大丈夫、ではないな。将としてのプライドはボロボロだ」

 シグナムの言葉になのはは苦笑を浮かべる。

「だが、いい勝負だった。礼を言うなのは」

 シグナムが手を差し伸べると、なのはも笑顔を浮かべる。

「あ、いえ、こちらこそありがとうございました!」

 お互いの力を認め合った剣士同士の姿に戦いを見ていた全員が拍手した。







「すっごかったよ、なのはママ!!」

「にゃはは、まだいないはずの娘に会うなんてちょっと複雑」

 なのははぽりぽりと頬をかいて苦笑する。なお、このなのはに子供ができるのはもう少し後、依頼で運命の相手と出会ってすぐである。

「えっとね、シグナムさんがこうずばーって来たら、ママはこうすぱーって」

 ヴィヴィオが一生懸命なのはの動きを真似して見せる。

 最初は微笑ましくそんなヴィヴィオを見つめて、なのはは一つ気づいた。

「ヴィ、ヴィヴィオちゃん、もう一度今のお願いできる?!」

「なのは?」

 なのはは慌ててヴィヴィオに頼む。フェイトがいぶかしげに首を傾げるが、なのはにとってこれは重要なことであった。

 なにせ、ヴィヴィオが今した動きはなのはが神速を使っていた時の動きであったのだから。

「はーい」

 ヴィヴィオは頷くと、再びなのはの動きを模倣して見せる。ところどこと間違いはあるが、それは確かにあの時なのはがした動きだった。

 そして、なのははがしっとヴィヴィオの肩を掴んだ。

「ヴィヴィオちゃん、私のところで修行しないかな? きっと誰よりも強い剣士になれるから!!」

「ちょっとなのは」

 フェイトが止めるが、なのはは気にしない。そんなことで今の彼女は止められない。

「ママより?」

「うん」

 なのはは頷く。目の前の原石はきっと自分を超える輝きを見せるはずだと確信が持てた。

「じゃあ、やってみるー!」

 そして、なのはは元の世界に帰るまで、できる限りヴィヴィオに簡単で基本的な指導を、そして、自分がいなくなってからも大丈夫なように、ノートでヴィヴィオに教えることをこの世界の自分に残したのだった。




~~~~
今回はゼロノスななのはさんと御神のなのはさんでした。
ゼロノスな世界では電王ははやて、イマジンたちはヴォルケンズです。ただし、僕の中では一人だけ違うのが混ざっています。それはそのうち明かす予定。
そして御神のなのはさん。
シグナムと名勝負は出す時から考えていたこと。楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、また。コメント楽しみにしています。



[21475] とある世界のなのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/10/25 06:44
 私は紅茶を一口頂きます。

 うん、葉が本来持つ甘味と渋みが完璧に引き出されているの。

「ノエルさん美味しいです」

「ありがとうございます」

 ノエルさんは特に表情を変えずにお茶菓子を起きました。

 むう、私の世界ではもう少し表情が豊かだったのに。ちょっと寂しく感じます。

 はあ、みんな元気かなあ。

「ねえなのはちゃん。今、元の世界を思い出してたでしょ?」

 ニヤリと忍さんが笑う。にゃはは、忍さん鋭い。

 現在、私のいる世界の私はこの海鳴学園の中学生で忍さんと同級生。忍さんは私がここの私とすり替わったことに気づいて、いつの間にかお茶会をしています。

 部屋にたくさんのコスプレ衣装があった時は驚いたの。ブログまで開いて所謂ネットアイドルまでやってて、戸惑い気味ですができる限り同じように更新しています。

 冗談でバリアジャケット姿をアップしたらすごい反響でびっくり。一応デザイン残しておこうかな。

「でも、異世界ねえ」

 忍さんが笑います。この忍さん、実は吸血鬼。いくつかの世界の忍さんも『夜の一族』とかいう吸血鬼みたいな存在だったっけ。

 その忍さん、なんでも最近赴任してきたユーノくんのお父さんに、ここから出られなくなる呪いをかけられて封じられてしまったそうです。

 ただ、聞いた限りはその人お兄ちゃんそっくりなような……ううん、お兄ちゃんはそんなはっちゃけた人じゃないの!

 そのユーノくんはユーノくんで不安。何度か魔法らしいものを使っているのを見て不安になります。

 はあ、バレたらフェレットってわかってるのかなあ? なにかとヴィヴィオがフォローしているけど、やっぱり不安……

「だいたいどのくらいで回るの?」

 うーん、どのくらいって……

「世界によってまちまちですねえ。数年いる世界もあれば一週間程度の世界もありますし」

 ここに来てまだ一週間。

 いろんな世界を回れるのはいいけど、もう少し時間に関してはっきりしてくれたらなあ。

「そういえば、今度修学旅行よね?」

 ああ、そういえば。場所は京都。

「楽しんできてね」

 そういって笑う忍さん。確かに楽しみなの。でも、なんかありそうな……







 そして、その予感は的中。新幹線内では妙な事件が発生。旅館ではやてちゃん誘拐未遂事件にユーノくんの偽物発生事件で私の堪忍袋の緒が切れました。

「アコースウゥゥゥゥ!!」

 目標の居場所をWASで見つけ出した私は、完全武装で強襲しました。

 バインドで簀巻きにした犬のアコースくんにレイジングハートを突きつけてお話しします。

「バレたらフェレットで本国強制送還なのわかってるの? ねえ、私の言っていることそんなに間違ってるかな?」

「はい……」

 横でユーノくんとヴィヴィオが怯えてますが気にしません。

「とりあえず、こんな事件を起こした反省文を書いた上でユーノくんのコピーと一緒によろしく!」

 まあ、ちゃんと言い含めたからこれで平気だと思うの。

「なのはさんって魔法使えたんですか……」

「びっくり」

 ユーノくんとヴィヴィオが目を丸くしてます。ああ、説明しないと。

「私は別の世界からこっちの私と入れ替わってきたの。だからここの私はたぶん魔法使えないかな」

 少なくとも部屋にはおもちゃのステッキくらいしかなかったの。

 でも、私の発言に二人は驚きます。

「えっ? 魔法世界とは違うんですよね?!」

「ここの高町さんはちゃんと帰ってこれるの?」

 と矢継ぎ早に問いかけられます。ああ、もう!

「一度に聞かれると答えられないの!」

 ごめんなさいと謝る二人。よろしい。

 とりあえず、余程のことがない限り、私はもうなにもしないと言って、私は部屋に戻りました。

 平穏が一番なの。








 だけど……

「私呪われてるのかな?」

 はあとため息をつきます。

 再び誘拐されたはやてちゃん。調べたところでは主力はほぼ壊滅。浚われたはやてちゃんはリョウメンスクナノカミとか言うものの復活のために利用されてるとか。

 まったく……

「世界はなんでこんなに忙しいの……」

 私は突撃しました。









 エリスさんと蓮飛ちゃんが暴れる中に突っ込む。

 鋼糸を使って軌道上にいる数体一気に縛りつける。

「むう?!」

「なに?」

 悪いけど、眠ってもらうの。

「ディバインバスター!!」

 一気にバスターで吹き飛ばした。

「むっ? 高町?」

「え? なのはちゃん?」

 私の参戦に二人が驚く。

「ごめんなさい、先急ぎます!」

 そのままバスターで作った包囲の穴をくぐって私は直進した。 








 妖怪の群れを突破し、一気に本陣に切り込みます。

 そこに、リインフォースさんにはやてちゃんを奪還された……そういえば名前知らないの。まあ、でも今回一番会いたかった相手。

「なんや。もう復活したんや。もう私らは止められ」

「黙れド三流」

 私の言葉に口を噤む。はあ、私は額を抑えます。

「まったく、こんなくだらないことで私の周りを乱さないでほしいの。折角今回は中学生生活をエンジョイしてたのに」

 私のくだらないの一言に真っ赤になる相手。

 左手を向ける。今まで訪れた世界で気に入った、世界を、人を、私の大切な者を泣かせる相手に向ける言葉。

「さあ、あなたの罪を数えなさい!!」

 私はレイジングハートを構える。

「はっ! 威勢のいいこと言ってこの力がわから」

 かつて訪れた世界でいつの間にかあった剄脈から剄を発生させて拳を振るう。

 私の拳から放出された放出されると破壊力を持った衝撃波へと転じた剄に殴られたリョウメンスクナノカミが森に倒れる。

「な……い?」

 尻すぼみになる言葉。

「借り物の力で威張るな」

 起き上がろうとするリョウメンスクナノカミ。巨大に見合わず早い。まあ、でも……

「マナよ、我が声に答えよ。一条の光となりて、彼のものどもを薙ぎ掃え。オーラフォトンビーム!」

 リョウメンスクナノカミの腕を右肩(?)ごと消し飛ばす。再び倒れ、大きな水しぶきが上がる。

「なんや、なにがどうなってるんやあ?!」

 慌てる相手に対し、私は少し残念がっていた。本当は上半身ごと消し飛ばすつもりだったけど、流石に神剣じゃないから出力が上がらない。

 まあいいや。

 私はその真上に飛んで魔力を集める。

「待て!」

 待たない。テロリストには譲歩しない。これは国際常識なの。

「スターライトブレイカー!!」

 星の光が泉の半分ごと吹き飛ばした。

 ふう、すっきりした。

「じゃあ、あとお願いしますね」

 となぜか来る気がしていた忍さんに後のことは丸投げする。

「はいはい。面倒なところは押し付けるのね」

 苦笑する忍さんと交代しました。








 私が降り立つとみんなが笑顔で迎えて……くれなかった。

「し、死ぬかと思った……」

「ママ怖い吹き飛ばさないで消し炭にしないで」

 確かにやりすぎたかも。まあ、それは置いといて、

「どうも、こんにちは」

「へえ。データはないけどずいぶんと危険な存在だね」

 眉をひそめた白い少年が私を見返す。

「ふっ!」

 抜き打ちのディバインバスターだが、防がれる。

「こんなのが効くとでも?」

 思ってないの。

 神速で少年の後ろに回り込む。目を見開く少年。

「これは!!」

 私はレイジングハートを槍だけどうちの流派の小太刀に見立てて振るう。

「ぼこぼこにされたユーノくんの分なのーー!!」 

 奥義之六『薙旋』の四連撃で斬り飛ばす。

「っ?!」

 湖面に叩きつけられる。水しぶきが上がり、少年が消える。

 まあ、このくらいでやられるとは思わないけど、さすがに私と言うイレギュラーがいるから後退したと思うの。

 そして、私はすぐにユーノくんのところに駆け寄る。と、ヴィヴィオの服が石になって砕けていた。

 ……中学生だけど、私くらいありそう。っと、それは置いといて、私がジャケットを被せるとびくっと肩が震えてから、身体に被せられたものに気づいて笑う。

「ありがとう、高町さん」

 そして、忍さんが『おわるせかい』で文字通り終わらせた。








 それからはやてちゃんがパクティオーして、石化が進行するユーノくんを治療して一安心。

 私は爪を噛んでそれを見守ってました。ユーノくんとキス、ユーノくんとキス……

「た、高町さんって強いんですね」

 憧れるような目で私を見るユーノくん。もっとそのきらきらな目を私に向けて。

 と、別れていた私たちが集結し互いに無事を確かめ合う中、嫌な予感がよぎった。そして、私は忍さんの背後に潜む陰に気がついた。

 同じく忍さんの向かいでヴィヴィオ達と喜んでいたユーノくんも同様に。

『忍さんっ!!』 

 忍さんを突き飛ばし自らを楯にしようとするユーノくん。

 数本の石槍が伸び、ユーノくんに迫る中、私は神速で割って入った。そして、なにかが刺さる音が響いた。

「なのはさん!」

「なのはちゃん!!」

「高町さん!!」

 絶叫が響き……私は少年に手を突き付け、

「ディバインバスター!!」

 今度こそ、ディバインバスターをゼロ距離で直撃させた。祭壇の一角ごと吹き飛ぶ少年。ざまあみろなの。

「なのは……さん?」

「うん? どうしたの?」

 私は振り向く。

「あ、いえ、今直撃……」

 ああ、そのこと。

 自動で展開していたプロテクションを消した。

「ぎりぎり間に合ったから。ありがとうレイジングハート」

『All right』

 そして、私はみんなと合流しようとして、光に包まれた。ああ、もうなんだ。

「な、なんですか?」

「うーん、お別れが近いみたい」

 そんなとヴィヴィオが洩らす。

「えっと、なのはちゃん、短い間だったけど楽しかったよ」

 ありがとう忍さん。そして、忍さんの言葉に気を取り直したのか、みんなが次々と別れの言葉をかけてくれる。

「高町さん、またいつか」

「ヴィヴィオ、元気で。ユーノくんと仲良くね」

 途端に真っ赤になる二人。

「えっと、なのはちゃん、助けてくれてありがとうな。そっちでもがんばって」

「はやてちゃんも、がんばってね」

「さよなら高町」

「はい、エリスさん」

「じゃあねなのはちゃん」

「うん蓮飛ちゃん」

 そして、最後にユーノくん。

「あの、なのはさん、ありがとうございます。もっとお話ししたかったです」

「うん、いいのユーノくん。あ、でもちょっと来て」

 戸惑い気味にユーノくんが近寄ってきます。時間がないの。

「アコースくん!」

「はい!」

 そして、私はユーノくんにキス。パクティオーしました。現れるカードを取って離れます。

「じゃあね~」

 そうして、私はゲートに飛ばされた。さて、次は帰れるかな? それとも別の世界かな?







 私はパクティオカードを見る。『世界を渡る白い魔王』と書かれたカードに苦笑する。

 まあ、魔王でもいいけどね。

「さあ、かかってきなさい勇者フェイト!!」

 私は勇者であるフェイトちゃんとその仲間たちを迎え撃った。




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旅先でのなのはさんの活躍の回です。
とりあえず、チートになっているなあ……
実はチートと唄われるラカンさんとも絡ませたかったけど、まあ、今回はこの程度で。


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