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[22653] 【ネタ】 ああっ女神さまっ (魔神転生Ⅱ プレイ日記風 憑依仕立て 攻略メモ添え)
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/26 00:57
注意書き
①タイトルの元ネタは言わずと知れた藤島漫画。末妹最高。
 しかし本作はゴリゴリの魔神転生ⅡネタSSです。他作品とのクロスは一切ありません。
 従って女神さまは山ほど出てきますが、三姉妹は残念ながら出てきません。
 タイトルは魔神Ⅱプレイヤーであればほぼ確実に共感してもらえそうですが、
 そうでない方がこの注意書きを読まずに、ある種の期待を持って読んだ場合、
 タイトル詐欺と罵られても文句の言えない内容になっております。

②酷いネタバレです。
 ストーリーのネタバレは魔神Ⅱの面白さを一切損なうものではないと私は考えますが、
 ゲーム未プレイのネタバレを気にする方で、
 且つ何故かこれから魔神Ⅱをプレイしようと考えている方は避けた方が良いかもしれません。

③ゲームをプレイしながらだと3倍楽しめる仕様になっていますが(当社比)、
 それ故にプレイ済みだと先の展開が結構読めてしまったりもします。
 未プレイの方でも読めるように書いているつもりなので、
 もし感想を書いていただけるのでしたら、その辺りの事に配慮していただけると大変助かります。

④設定に関しては「魔神転生Ⅱ」本編から私が読み取れる範囲に限定し、構成上必要な改変・捏造をプラスして。
 上記に反するような、うろ覚えに因る誤りの類は一切ありませんので、その点についてはご安心ください。
 またヘビーメガテニストの諸兄には、シリーズ他作品との絡みが無いなどの不満もあるでしょうが、どうかご理解ください。


以上4点をご了承の上、お読みください。





更新履歴

prologue      10/21 投稿   10/22 チラ裏へ移転
第一話      10/23 投稿
第二話      10/24 投稿
第三話      10/25 投稿
第四話       /  投稿



攻略メモ      10/24 投稿
悪魔評価表    10/26 投稿



[22653] prologue        ~ It's only the fairy tale ~
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/23 09:47

『驚いたな。まさか意思疎通ができるようになるとは。そうだな、僕の事は「妖精さん」とでも呼ぶと良いよ。』



 その自称「妖精さん」に出会ったのは、目黒の研究所で不審な女性から受け取った「DIO-system」を起動した直後だった。
 とはいえ妖精さんが言うには、暫く前から『観ていた』との事。妙に頭がざわざわしたり、勘が鋭くなっていたりしたのは、どうやらそのせいだったらしい。正確には出会ったのではなく、DIOを通じて『意思疎通できるようになった』だそうだ。


 細かいことは追々に。
 ここに綴られるのは、怪しさギガオンの妖精さんと、それに取り憑かれた武内ナオキとが織り成すささやかな御伽噺である。



stage 0  Opening



 1995年の冬。
 その日は朝から何かがおかしかった。頭が妙にざわざわして、誰かから常に見られているような感覚。その為かどうかは判らないが、胸騒ぎと言うか、嫌な予感が消えなかった。どうやら嫌な予感の方は当たったようで、「緊急回線」からのメッセージが俺に届いた。


:EMERGENCY LINE:
「サキホド ケンキュウジョニテ ゲンインフメイノ
 バクハツジコガ ハッセイシ キデンノ リョウシンハ
 ナクナラレタ
 シキュウ ケンキュウジョマデ コラレタシ」


 すぐには信じられなかった。爆発事故? しかも原因不明?
 メッセージの中にある「ケンキュウジョ」ってのは、多分オヤジ達が働いている目黒技研(正式名称「防衛庁科学技術研究局」)のことだろう。研究内容については聞いた事が無い。恐らく機密に関る何かだろうと思っていた。
 俺は教授に断り研究室を出て、目黒にあるオヤジ達のラボに向かおうとした。だが、突如現れた悪魔の軍勢を率いる男によって東京が電撃的に占領され、身動きが取れなくなってしまった。

 魔都と化した東京。悪魔による新しい秩序の下、目黒のラボに近づく事すらできないまま一年ほど経った頃、反悪魔組織「パルチザン」の噂を耳にした。


 そもそもあのメッセージの送り主は誰だったのか。
 事故が起きたタイミングと、悪魔が出現したタイミング。
 あの事故については幾つもの疑問があった。

 悪魔が関る事件を追っていれば何か手がかりがつかめるかもしれない。
 悪魔から東京を開放すれば目黒のラボにも行けるかもしれない。
 そう考えた俺はパルチザンに入隊することにした。



stage 1 A.D.1996 TOKYO



chapter 1  SHIBUYA    ~ 渋谷開放作戦 ~

 俺は入隊してすぐに、渋谷の街を悪魔達から開放する作戦に参加することになった。パルチザンの本拠地がある新宿の周りを、確固たる地盤にするための作戦だそうだ。
 実行メンバーは「橘カオル」に「菊池トモハル」と俺、「武内ナオキ」の三人。まだ規模が小さいパルチザンとしては余り割ける戦力が無いとのこと。入ったばかりの俺に、貴重であるらしい通信用のヘッドセットを渡すとは。これは余程人材がいないのだろうか。聞けば渋谷の悪魔は烏合の衆らしいが、本当に大丈夫なのかと不安になった。

 一緒に行くことになったカオルはパルチザンのリーダーで、冷静沈着な「切れる男」だ。刀を使った近接戦闘に長けている。
 トモハルは一年前のあの日、行方不明になった妹を探していたところを悪魔に襲われたそうだ。そして危うい所をカオルに助けられ、そのままパルチザンに入隊したらしい。ボウガンが得意なお調子者だ。

 渋谷に着くと、何体かの悪魔が散らばってうろついていた。確かに全く統率されていない様子。「外道スライム」あたりは知っていたが、奥に居る骸骨は初めて見た。カオルに聞けば「邪鬼ウストック」だと言う答えが返ってきた。たまに鋭い一撃を放ってくるので注意が必要との事。ついでにこの辺で最近見かける悪魔について、基本的なことを教えてもらった。


 慎重に進撃を開始。まずはこちらの拠点に最も近いスライムを目標に。スライムが相手ということで、俺達に経験を積ませるためカオルは静観。
 まずはトモハルがボウガンで牽制し、俺がナイフでトドメ。かなり緊張していたが、拍子抜けするほどあっさりと、無傷で最初の戦闘を終えることができた。奴の屍骸の下から、箱に入ったきずぐすりが出てきた。落ちていた道具を拾おうとでもしていたのだろうか。
 近くに居たもう一匹のスライムも同様に処理し、続けて接近してくるウストックに対処。無造作に近づいてきた敵に対して、カオルが先制して体勢を崩し、トモハルがボウガンで追い討ちをかけ、弱ったところを俺がトドメ。こんな骸骨にボウガンでダメージを与えるとは、実はトモハルは凄いヤツかもしれないと思った。不思議なことにウストックがむき出しの「まほうびん」を落とした。こういうことも稀にあるらしい。肋骨辺りに挟んでいたのか。
 ウストックに集中しすぎたせいか、三体目のスライムの接近に気付けず、トモハルが近寄りざまの一撃をもらった。幸いそれほどの痛手にはならなかったようだ。最早手馴れたもので、トモハルと協力して屠ることに成功。屍骸の中から宝石トパーズが出てきた。謎だ。
 あとはカオルの指示に従って、一匹ずつおびき寄せての繰り返し。全て片付く頃には連携もかなり良くなっていた。

 敵拠点を守っていたのは「闘鬼ウェンディゴ」。マッチョで半裸と言う非常に近寄りがたい格好だったが、問題なく倒せた。ウェンディゴは姿形が人間に似ているので、攻撃が鈍るかと心配したが、不思議とすんなり倒すことができた。そもそもこちらを殺す気満々の鬼に、手加減とか考える余裕は全く無かったというのも大きかっただろう。


 作戦行動中は妙に勘が冴え渡っていた。悪魔との戦闘など初めてなのに、何となく相手の動きが読めたり、相手のどこにナイフを突き立てればいいのかが分かったり。自分でも不思議な感覚だった。戦闘後カオルとトモハルにも褒められた。初めてとは思えない動きだったと。

 更に次の作戦までは間があるので、俺の両親の手がかりを探すため目黒のラボに行くなら付き合うとまで言ってくれた。本当に気持ちの良いやつらだ。この借りはいつかきちんと返さねば。



chapter 2  MEGURO    ~ “ 目黒技研” 突入作戦 ~


 道中特にトラブルもなく目黒技研に到着した。研究所の周囲を悪魔が囲んでいる。
 トモハルが斥候の真似事(本人談)をしてきたところ、近くにスライムと「邪霊ゾンビ」、駅の向こうにウストック二体とウェンディゴ一体、そしてラボを守るように「妖鬼モムノフ」一体と、ポツンと外れてウェンディゴがもう一体。どこが真似事だ、完璧に本職じゃないかと、ちょっとだけ見直した。

 こちらは三人、敵は多数。だがカオルに従って闘えば負ける気がしなかった。渋谷でのカオルの指示は的確そのもの。こういうのを名指揮官と言うのか。実際カオルもこの戦力なら勝てると踏んだらしく、表の悪魔を排除してラボに突入することになった。

 邪霊ゾンビ。マヒの状態異常を引き起こす魔法「パラルー」を使用するかなり鬱陶しい悪魔だ。マヒで足止めされたくなかったら、いつも以上に慎重に間合いを計る必要がある。ここでは、敢えて気にせず突っ込む方針を採用した。状態異常の危険度は周囲の状況によって大きく左右されるのだそうだ。
 奥のモムノフは強敵。大昔の武者の亡霊と言ったところか? だが、一般に拠点を防衛している悪魔が積極的に動いてくる可能性は低いので、あまり警戒する必要は無いとのこと。


 作戦決定後、いよいよ進撃開始。目の前のスライムを鎧袖一触。
 予想通り近寄ってきたゾンビに、「パラルー」を撃たれたが不発。魔法へのレジストなんてどうしたら良いか全くわからなかったが、運が良かったと言うことか。もっとも、カオルが言うにはそうそう当たるものではないらしい。

 ゾンビの動きが止まったところで、一斉に反撃を開始。ゾンビは物理面に関しては、妙に耐久力が高いがそれ以外はからっきし。その耐久力も、三人がかりでギリギリ削りきれるレベルだった。
 その後も寄ってきたウストック達を、上手く間合いを外して一匹ずつ処理しながら前進。橋に陣取っていたウェンディゴは、相手の射程外からトモハルが一方的に削って俺がトドメ。これまでの壁役で手傷を負っていたカオルは、この隙に近くの泉で傷を癒していた。こういった体力・魔力を回復させる水が湧き出す泉は各地に存在し、それを上手くおさえることが戦いのカギなのだそうだ。
 ラボへの入り口を守っていた妖鬼モムノフも確かに強かったが、連携の取れた俺達の敵ではなかった。

 
 ここでトモハルは次の作戦の準備のために本拠地へ。ラボ内にも悪魔が居ることは予想できたが、元々好意でついてきてくれた連中だ。これ以上を望むのは我侭ってもんだろう。「無理すんじゃねーぞ!」と言って去っていくトモハルに感謝しつつ、カオルと二人でラボに侵入した。

 何故かトモハルがボウガンを置いていった。謎だ。
 


chapter 3  LAVORATORY  1F   ~ 防衛庁科学技術研究局 ~

 当然内部にも悪魔の群れがいたわけで。オヤジたちの事で気が急いていたのか「何でこんなところにまで」とか言ってしまった。はずい。

 トモハルが別行動のため、かなり厳しい戦いになることが予想された。
 とりあえず正面にある泉を確保するべく駆け寄ろうとしたら、「迂闊に泉に隣接すると悪魔に先に占拠され易い」と注意された。俺の位置からは同じく正面に見えている邪鬼ウストックも微妙に間合いの外。どうしたものかと迷っていると、カオルが「ウストックを無視して隣の部屋へ向かう」と言い出した。

 「カオルは攻撃できる位置なのに何故しないのか」と尋ねたら、「弱らせ過ぎると、相手が逃げ出して面倒になる」と言う答えが。「一息に倒せないなら、むしろ先攻のほうが攻撃を受けるリスクが高まる」とも。更にはわざと素手で攻撃して、相手の攻撃を誘う戦法すらあるそうだ。俺には思いもよらない考え方だった。


 ともかく、カオルの言葉を信じて睨み合いの状態を解消。ウストックの間合いのギリギリ内側をかすめつつ隣の部屋に向かうと、案の定ヤツがこちらに仕掛けてきた。
 「釣り」は成功。相手の攻撃を受けきって、反撃で削り、追撃で一気に落とす。大したダメージも無く、進軍もスムーズで一石二鳥。先制攻撃だけが策ではないと思い知らされた。
 俺が一人でウストックを始末している間に、カオルは隣の部屋にいたゾンビを釣り上げていた。パラルーは見事に回避したらしい。信用されるのは嬉しいが、息つく間もない連戦はちょっと勘弁して欲しい。
 釣り上げたゾンビは、本来二人だけでは一息に倒しきれないので、「少しだけ削って攻撃を誘う」予定だった。しかしカオルの一撃がかなり会心の手応えだったらしく、指示されるまま一気に畳み掛けたら倒せてしまった。機に乗じる事の重要性を学んだ。
 これまで俺は全ての敵にトドメを刺してきており、カオルに「突破力だけなら既に俺より上かもしれないな」と褒められた。けど、カオルの凄さは腕力だけじゃない。もっと色々なことを学ばねば。

 入り口の二部屋の探索を終えた俺達は、最初の部屋にあった扉に向かった。特に施錠されていたわけでも無く簡単に開いたのだが、扉の直ぐ向こうにいた「魔獣タンキ」二匹と鉢合わせに。向こうはすかさず遠距離攻撃を打ち込んできた。
こちらの間合いの外からチャージを仕掛け、一撃加えたら即離脱。素早い動きにこちらの反撃が間に合わない、非常に手強い相手だ。
 今まで通りに間合いを計ってもこちらが一方的にやられるだけなので、まずは距離を詰めることを最優先。部屋の入り口を塞いでいる相手はカオルに任せて、もう一匹の壁向こうからの遠距離攻撃(どうやってるんだ?)を上手く俺の方に誘導し、カオルの負担を軽減。最後に疲弊したカオルと入れ替わり、俺がトドメを刺した。
 足を止めての殴り合いで多くの手傷を負ったカオルだったが、俺と交代して直ぐに手前の泉で補給。即座に取って返し、既に満身創痍だった俺と再度交代し、もう一匹のタンキを相手取る。俺は入れ替わりで奥の部屋の泉へ。泉のありがたさが身に染みた戦いだった。そもそも無闇な突撃を敢行したのは、この泉が見えたからということもあったらしい。
 復帰した俺にタンキを任せて、カオルは更に奥にあった扉を開放。近くに潜んでいたウストックと交戦を開始した。妙に強いウストックで、カオルの一撃を受けてもそう簡単に崩れない。更に奥の部屋から二匹のスライムが突入してきて乱戦になった。このスライム達は、どうやら奥の部屋に見える謎のジェネレータから湧き出したもののようだ。

 カオルはウストックを削った後、一端泉まで後退。俺に「丁度良い相手だから一対多の経験も積んでおけ」と言った。
 戦場全体を見ることを心がけながら、相手の位置に注意して慎重に対処。だが予想に反して軽く片付けてしまい、ウストックはともかく、スライムの相手は余り鍛錬にならなかった。「本当に成長したな」とカオルが苦笑い。対悪魔戦にもかなり慣れてきた。

 二階への階段を守っていたのは、やはり妙に強いウストックとモムノフの鬼族タッグ。まず飛び出してきたウストックを仕留めた。ただ、拠点を防衛しているので動かないだろうと予想して油断していたのがまずかった。こちらの隙をつくような飛び出しで、カオルが痛恨の一撃を喰らってしまい危険な状態に。幸いモムノフの方は一向に移動する気配が無かった。好きなタイミングで戦闘を仕掛けられるならなにも問題は無い。一方的に攻撃を加えて二階への階段を確保した。


 その後、例のジェネレータを破壊しつつ考えた。そもそも人がいない研究所で、主電源が落ちていない事自体が不可解ではある。
 ……まさか外に居た悪魔が中に入ったのではなく、この研究所から生まれた悪魔が外に出て行ってたのか?
 いや、これは根拠の全く無い、単なる思いつきに過ぎない。何にせよ一刻も早くラボを封印するため、カオルは地下の動力施設へ。俺は事故の手がかりを求めて、モムノフが守っていた二階の調査に就くことに。
 正直心細いなんてレベルではないが、カオルの信頼には応えたいと思った。



chapter 4  LAVORATORY  2F   ~ DEJA VU ~

 オヤジ達は一体ここで何の研究をしていたのか。どうにもロクなもんだとは思えなかった。まさか今起きている悪魔がらみの混乱もオヤジ達が……。

 思い悩みながら歩いていると、甲高い鳴き声が聞こえた。姿は見えないが聞き覚えのある声。魔獣タンキだ。もしかしたら侵入者発見的な何かだったのかもしれない。状況次第では勝てない相手ではないが、一人では苦戦しそうだ。

 正面に現れたのは邪鬼ウストック二体。成長した俺にとっては、たまに繰り出す鋭い一撃さえ受けなければ、苦もなくあしらえる相手。ただ、手前に見えている泉を相手に取られると少し苦しい戦いになるだろう。距離的に、何も考えずに泉に向かって近寄ると、タッチの差で敵に占拠されそうだった。
 まずは気のない振りしてとにかく一歩、そろりと二歩目で泉に近寄り、ダダッとダッシュで無事泉を占拠することができた。そのままウストック二体を相手取っていると、魔獣タンキが壁越しに攻撃を打ち込んできた。相変わらず不思議だ。
 泉を確保し続ければ無視できるダメージだが、ここは敢えて壁から離れて逃げるウストックを追撃。戦場全体の状況を頭に入れつつ、タンキが壁のこちら側に来るように誘導を試みた。

 この行動は図に当たり、丁度邪鬼どもを片付けた頃に魔獣タンキが姿を現した。泉に固執するとこちらの射程の外から一方的に攻撃されるので、相手に泉を取らせないよう位置取りに注意しつつ階段付近まで誘導。「弱らせ過ぎて相手が逃げ出す」ことを織り込んでの行動だ。
 先手を譲った後、相手の隙を突いて退路を塞ぐようにして攻撃を仕掛け、それでも無理に逃げ出したところを後ろから追いすがって仕留めた。一対多の経験を活かして、戦場全体のイメージを頭の中に描けたことが大きいだろう。
 かなり神経を使う戦いだったが、学んだことを活かして自分なりに巧く闘えたと少し感動。

 その後、奥に見えた泉で少し補給し、ラボ内を順調に進んで遂に最奥に到達した。突っ込んできたゾンビを、机を盾にして圧倒。扉を守っていた妙に強いウストックとの戦いも、正攻法でギリギリ勝ちを拾うことができた。



 ウストック戦で乱れた息を整え、緊張しながら最奥の扉を開くと、そこには赤いスーツの女が立っていた。
 何故こんなところに一人で? 
 明らかに怪しい人物だったが独特の雰囲気があり、問われるがままに名前を答えていた。ちなみに彼女の名前はカレンと言うらしい。意味のわからないことを一方的にまくし立てた後、何かを押し付けてきた。
 問い質そうとした瞬間、ヘッドセットを通じてカオルからの連絡が入った。どうやら地下との通信は困難らしく、内容がほとんど聞き取れなかった。切羽詰っている様子ではなさそうだったので、タイミング的に電源を落とすとかその類の連絡だろうと推測。慌てて制止したが、どうやら通じなかったらしく、すぐに主電源が落ちた。
 気がつくと不審な女の姿も消えていた。一体何だと言うのか。


 急いで撤退するべきなんだろうが、俺はコレが何なのかどうしても気になっていた。ひとまず受け取った携帯端末らしきものを起動。

 <DIO>
 アクマとの交渉、及び契約したアクマを生体エネルギー「マグネタイト」と引き換えに召喚するプログラム。
 荒唐無稽だが、これが本物なら凄い話だ。どうやって試すか。
 しばし思考を巡らせていた……。










『DIOを起動したか。これから色々忙しくなるね。』



「誰だ! 誰か居るのか!」

 突如響いた声に、俺は肝を冷やす。2階には最早誰も居ないと思っていたのに。
 慌てて周囲を警戒する。接近に全く気付かなかったのに、声はすぐ近くで聞こえた。危険だ。

『む、まさか僕の声が聞こえているのか?』
「どこにいる! 姿を隠していないで出て来い!」

 油断なく辺りを見回す。周囲には動くものの気配が全く無い。声の聞こえる方向から居場所を割り出そうと考えたが。
 この声は、まるで、俺の頭の中から……?

『驚いたな。まさか意思疎通ができるようになるとは。そうだな、僕の事は「妖精さん」とでも呼ぶと良いよ。』



 沈思黙考。テレパシーという線もあるが、もっと碌でも無い考えが脳裏を過ぎる。

「……ちょっと待て。オマエはアレか。まさかとは思うが、俺の頭の中に居るのか?」
『どうやらそうらしい。DIOの機能を考えればこんなこともありうるのかもしれないね。』

 コイツの言うことは良くわからない。良くわからないが……。
 ダメだ。激しくダメだ。頭の中の「妖精さん」と会話する、20代も半ばの男。



『まあ何はともあれ、コンゴトモヨロシク。』






[22653] A.D.1996 TOKYO     ~ Mr.? Fairy ~
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/24 13:44
 自称「妖精さん」のことはひとまず棚上げ(何か言っていたが全て無視)。俺はカオルとともにパルチザンの本拠地へ戻ってきた。すると驚いたことに、ここにも悪魔が溢れかえっていた。
 これまで相手にした連中と違って、統制のとれた動き。どうやら「悪魔を率いる男」による奇襲を受けたらしい。カオルが普段の様子からは想像もできないほどにブチ切れて、突っ込んでいった。

 無謀だ。そう思った自分を直ぐに恥じた。
 どうやら相手リーダー「オギワラ」の注意をひきつけて、俺とトモハルを逃がすための陽動だったようだ。もっともカオル自身は敵の司令官を討つことで、悪魔の統制を崩そうとしていたらしい。俺達はカオルの指示に従って撤退。見捨てる形になってしまったのが悔しいが、俺が残ったところで力にはなれない。俺にできるのはカオルを信じることだけだ。

 オギワラの部下らしき、でかいサングラスの男が追ってきた。正直逃げ切ることは難しそうだ。
 遂には追いつかれ、俺は……。


chapter 5  IKEBUKURO     ~ 起動 ~

 気が付いたら俺は一人でひらけた場所に居た。
 周囲を観察したところ、どうやらここは池袋のようだ。状況が全くわからない。俺はオギワラの部下に捕まったのではなかったのか?
 偶然と成り行きでトモハルの妹であるアヤと行動を共にすることに。気絶していたところを助けてもらった事には感謝しているが、俺の事を記憶喪失扱いするのはやめてほしい。天然か。
 まずはトモハル達を探すため、手がかりを求めてパルチザンの本拠地である新宿を目指して、山手線沿いに南下する。当然、自称「妖精さん」のことは黙っておく。

『仲間に隠し事はよくないな。』
「『俺の頭の中には妖精さんが住んでるんです』なんて、どう考えてもアブナイ人だろうが。」
『気苦労が絶えないね。』

 オマエのせいだ。湧き上がる怒りを抑えつつ、幾つか疑問に思っていたことをぶつける。 

「カオルから聞いた、『妖精ピクシー』とかとは違うんだよな。」
『勿論さ。僕は正しく「妖精さん」だからね。』

 全く意味が分からない。若干イライラしながら質問を続ける。

「何で俺の頭の中に居るんだよ。」
『もともと機械を使ってキミに接続していたんだ。ひょっとしたらDIOのお陰で繋がりが双方向になったのかもね。』

 ダメだ。暫く問答を続けたが、これ以上コイツの話を聞いても理解できる予感が全くしない。そもそも理解させようと言う気が無いのかもしれない。以前、卒業の挨拶に来た学部生に対して「今後は何かを教えて貰おうとするなら、まず自分の用意できる対価を考えることが大事になるよ」とか偉そうにアドバイスした事を思い出してしまった。
 仕方が無いので話題を変える。

「とりあえず『妖精さん』と呼ぶのは認められない。男の尊厳とかそういうものがダメになる気がする。」
『そうは言ってもね。気に入っているんだけど、そのネーミング。』
「断固他の呼び方を要求する。」
『うーん。それじゃあ、「戦闘妖精雪風」とか、「独立型戦闘支援ユニットADA」とかどうだろう。』
「まじめに考えろよ。」
『立ち位置的にはぴったりなんだけどなぁ。』

 ああもう、コイツめんどくせぇ。おまけに意味も全くわからない。コイツは名無しで十分だ。

『それはそうと、前方から悪魔の集団が接近しているよ。ビルの陰に隠れて見えないけど、距離800m。先頭は筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ。このまま行けば直に接触するね。向こうは風下で既に気付いているから迂回も難しそうだ。』
「何だよそれ。何でそんなことが分かるんだ。」
『妖精さんだからね。不思議な力を持っているのさ。』

 人を喰ったような物言い。有り体に言えば気に喰わない。

「わけわかんねぇ。あともうオマエを名前で呼ぶ気はないから。」
『なるほどそこに落ち着いたか。友好を深めたい僕としては悲しい限りだが、まあ仕方ないね。』
「本気で言ってるのか? 怪しさ爆発の奴と友好を結ぶ気なんてねぇよ。」
『む、お喋りはここまでだ。来るよ。』

 半信半疑どころか疑い9割ではあるが、一応アヤに警戒するように呼びかける。驚いたことに、程なくして闘鬼ウェンディゴがビルの陰から現れた。

「確かにマッチョで半裸だが!」

 正面ウェンディゴの道を塞ぎ、アヤに近づけさせないよう必死の思いで相手を防ぐ。大して強くもない相手なのに、誰かを守りながら闘うのがこれ程難しいことだったとは。カオルはずっとこんな風に闘っていたのか。
 相手の攻撃を受けきってから反撃しようと考えていたが、いきなりアヤが飛び出してきてウェンディゴに攻撃を加えた。

「なっ?!」

 そもそも連携が取れるとは思っていなかったが、それでもこの積極性は大誤算だ。
 ウェンディゴがアヤに反撃。豪腕の一撃でアヤが吹っ飛ばされた。ウェンディゴの注意がアヤに向く。このままでは不味い。だが今この瞬間、この体勢なら一撃で仕留められる!

『待て、そいつにはまだトドメを刺すな!』
「うるさい、耳元で怒鳴るな!」

 線路の向こうには既に魔獣タンキと妖精ピクシーらしき姿が見えてきている。自称妖精がどうかは知らないが、こっちは命がけだ。加減などしている余裕は無い。遅れてきたウストックも合わせて、さすがにこれだけの悪魔を同時に捌くのは厳しかった。俺もアヤも、ピクシーの魔法攻撃などでかなりの傷を負ったが、辛うじて撃退に成功。正直ヒヤリとした場面もあったが、運良く相手の攻撃が外れるなどして、どうにか乗り切ることができた。
 アイツは『危なっかしいというか、動きが素人くさいというか……』などと失礼な事を抜かしていたが、勝ちは勝ちだ。


『次の敵集団までかなり距離があるし、キミもまだ聞きたい事とかあるよね。休憩がてら質問タイム再開と行こうか。』
「不思議な力って、具体的には何があるんだ。」

 とりあえずさっきから気になっていた不思議パワーって奴について聞いてみる。

『まず一つは【千里眼】。戦場の地形、敵の配置や装備・能力などを完全に把握できる。』

 ……は? 本当なら最強じゃないか、それ。

「いや、凄い能力じゃん。相手の位置をこちらだけ把握できるとか、一方的過ぎないか?」
『そうでもないよ。これで圧勝できるのは、こちらに相手を各個撃破できるだけの戦力と、戦闘を継続するための十分な物資がある場合だ。現状の乏しい戦力と物資では、幾分マシになるくらいさ。』

 そういうものか。確かに今、助言を受けても苦戦したばかりだしな。

『次に【未来視】。戦略レベルでの大まかな流れが見えるのと、戦術レベルでの高精度未来予測だね。
 前者に関しては正直見えるだけで、基本的に僕単体では流れは変えられない。
 後者に関してはどの敵がどう動くか、どのタイミングでどんな援軍が来るのかがわかる。
 もっとも、「5分後四方を囲むジェネレータから大量の魔王様が湧いてくる」なんて状況になったら詰みだから過信は禁物だ。』

 十分反則だ。

『最後に【望む未来を掴み取る力】。先に述べた【未来視】は、実はこの能力の副産物だったりするんだけどね。具体的にはある時刻を基点にして、自分の望む結果が出るまで何度でも試行を繰り返せる能力だ。勿論これにも細かい制限がある。詳細な説明は省くけど、万能ではないという事だけ意識しておいて欲しい。』

 言葉も無い。
 もしかしたらさっきの戦いで「運良く起きた事」は、コレのお陰だったんじゃないか?
 いや、それだけじゃない。「ここぞ」という危険なとき、いつも「運良く」事が進んではいなかったか?
 コイツは既に俺達に力を貸していてくれたということなのか。

「オマエの言うことが本当だという証拠は?」
『この場で証明することは難しいが、薄々認めているのではないかい?』

 図星だ。そして「やっぱり」とも思う。コイツの言葉に嘘は無いという、実体験に基づく直感。そもそもこんな事で俺を騙して、コイツに何か得があるとも思えない。というかコイツがいなければ、多分この最悪な状況で生き延びて今に至ることなどできなかっただろう。
 しかし、一番聞いておかなければならない事がまだ残っている。

「……なあ、何で俺に協力してくれるんだ?」

 コイツは凄い能力を持っている。俺なんかに力を貸すより、もっと凄い奴と協力すれば、コイツの言う「戦略レベルの流れ」だって変えられるんじゃないか?

『基本的には選択肢が他に無いからだね。幾つかの例外を除いて、僕達は接続する対象を自由に選べない。』

 なるほど、そういう事なのか。ホッとしつつも、何故か落胆している自分に戸惑う。

『まあそれ以上に、キミが流れに抗い行動し、そして最後まで信念を貫き通す様を見てみたいんだ。そうできるだけの力をキミは持っている。』


 驚いた。同時に随分と買いかぶられていると思う。見事に不意を衝かれたことに対する若干の照れ隠しで、揶揄するように言う。

「観客気分かよ。」
『キミにしては鋭いね。僕が観るのはキミの綴る物語。当然ハッピーエンド以外はありえないさ。』

 なるほどこの位の距離感が丁度良いかもしれない。何にせよ、コイツが俺達の幸せを願っていることは確かなようだ。胸の奥にわだかまっていた疑念が、少し解けた気がした。



 休憩を終えた俺達は進軍を再開し、何事も無く池袋の駅に到着した。駅の向こうにはサンシャインビルが見えている。アイツが言うには、ビルの近くにタンキやらモムノフやらがウロウロしているそうだ。

『ストップだ。これ以上迂闊に進むとモムノフの間合いに踏み込むことになる。残りの敵集団への対処を決めておこう。』
「相手の位置と射程が判るなら、俺が囮になって一匹一匹釣り出すのがベストだと思うがどうだ?」
『なるほど、カオルが多用した戦法だね。しっかり学んでいるようで何よりだ。』

 トモハルの事といい、カオルの事といい、やはりコイツは随分前から俺に力を貸していたようだ。今にして思えば初陣の時の動きも、コイツのパワーだったのかもしれない。

『けど、折角だから DIO をフル活用しよう。会話が成立するやつは基本全員仲魔にするつもりで。』
「 DIO か。実際正常に動作したとして、そんなに簡単に仲間になるものなのか?」
『大体が相手の機嫌次第なんだけど、確実を期すならダメージを与えてから傷薬をプレゼントするのが有効かな。』
「酷い自作自演だな。まるでヤクザだ。」
『このくらい基本、基本。』

 どこの業界の基本なんだか。

『次に勧誘するべき悪魔について説明するよ。まずは闘鬼ウェンディゴだね。今回うっかり倒しちゃったので勧誘は無理だけど、次見たら絶対忘れないこと。』
「ぐ、さっきのはそういうことだったのか。んでも、ウェンディゴって役に立つのか?」

 正直、一対一なら片手間であしらえるレベルだ。仲間にしたところであまり役に立たない気がする。

『ぶっちゃけ闘鬼は、というか大抵の鬼族もだけど、攻撃力はあっても基本的には役立たずだね。一応弓を使えるのが唯一の取り柄だけど、実際は仲魔が少ないときの間に合わせくらいかな。』
「だったら態々勧誘する必要ないだろ。」

 べ、別にうっかり倒してしまった自分の失態を誤魔化したいわけではない。

『とは言えウェンディゴ先生には戦闘以外の大事な使い道があるんだよね。』
「もって回った言い方だな。てか、先生って何だよ。」
『うーん、今説明しても仕方が無いと言うか、追々説明すると言うか。』

 この辺についてはどうにも良くわからんが、ひとまず信用して先を促す。

『同様の文脈で妖鬼モムノフも必要だね。もっとも、槍など持たせれば結構戦闘に堪えるけど。』
「ウェンディゴに比べりゃ強いもんな。」
『あと、彼は超強力な「バーニングリング」と言う特技を覚えるんだけどね。』
「だけど?」
『覚えが悪いのさ。成長に時間がかかる。彼の特技習得に拘ると、そこがボトルネックになるので今回はスルーだ。いずれ妖精族の炎雷使い「幻魔フーリー」が覚えるから心配は要らないよ。』

 幻魔。何かカッコいいな。

『あとは育成対象としてのピクシー・タンキで終了。』
「邪鬼とかは勧誘しなくていいのか? 奴らそこそこ強いぞ。」
『あいつらと会話成立すると思う?』

 そういうものか。

『話を戻すよ。妖精ピクシーの役割は主に回復だね。彼女の存在はこの界隈では貴重だよ。』
「確かにこれまでは泉を探すか、薬を使うかするしかなかったからな。回復に手間を取られなくなるのは大きいか。」
『ひ弱さを上手くフォローする必要があるけど、魔法力の枯渇にさえ注意すれば本当に心強い味方だ。』
「タンキはどうなんだ?」
『彼は遊撃役だね。トモハルポジションって言った方がわかり易いかな。その嫌らしさは身をもって知ってるでしょ。』
「まあな。」

 確かに相当煩わされた。ちなみに、トモハルがいやらしいと言っている訳ではない。いや、帽子のかぶり方とかエロイけど。

『まずはモムノフの間合いに注意して、左手にいるピクシーを勧誘しよう。丁度泉を防衛しているし、補給には持って来いだ。』
「了解。」

 特に反対する理由もないので真っ直ぐピクシーを勧誘にいく。さすがに可愛らしい外見をした本物の妖精相手に、ヤクザ紛いの自作自演をする気にはならなかった。




『うまくやったね、このジゴロ。いやロリコン?』
「うぜぇ。」

 話しかけたら、逆に仲間になりたいと言ってきた。大歓迎だと伝えたら、仲間になるついでに何故か宝石とお金をくれた。
 俺は何も悪いことをしていないはずだ。

『続けてトレジャーを守っているタンキを勧誘に行くよ。』

 結局泉では補給せずに、そのままタンキを勧誘。どうやら一部悪魔にはアイテムに執着する習性があって、今回のタンキもそのために動かなかったらしい。そんなヤツがこうもあっさり仲間になってしまうのは果たしてどうなのか。

『鳥頭なんじゃないの。』

 酷い答えだ。

「それはともかく、こうやって片っ端から悪魔を勧誘していれば、わざわざ倒さなくても楽に進めるんじゃないか?」
『アイデアとしては悪くないんだけど、現実には色々問題があってね。』
「問題?」
『そうだ。そろそろモムノフの間合いに踏み込むね。それについても追々講義することにしよう。』
「わかった。」

 頷き、思考を切り替える。先程仲間にしたばかりのタンキとピクシーを召喚。多少のダメージなら気にしなくて良いという安心感は想像以上に大きい。まずはモムノフの一撃を受け止める事を決め、どのように勧誘するかの計画を練っていたのだが。

「まさかオマエが悪魔と会話できるとはね。」

 そうなのだ。何故か悪魔はコイツの存在を認識できて、更には会話することさえ可能だったのだ。しかもモムノフを仲間にするとき、ついでに舌先三寸で宝石とか色々巻き上げていた。支配者がどうとか忠誠がどうとか。どう考えても俺より悪質だ。

『そうだね。予想の範囲内とは言え、僕も少し驚いているよ。』
「予想していたのか?」
『僕とキミ、キミと悪魔がDIOを通じて意思疎通できるんだから、僕と悪魔もできるんじゃないかなって。根拠の無い、所謂憶測だけどね。』
「三段論法ってやつか。」
『いや、違うけど。』
 

「……そろそろ行くか。」
『そうだね、そうしよう。』

 ちなみに敵拠点を守っていた「邪鬼ハンジャ」は問題なく倒せた。ピクシーの魔法攻撃はやはり強い。
 


chapter 6 SHINJUKU    ~ FRI-DAY ~

 池袋から新宿まで移動する間に、俺はアイツから各種悪魔についての基礎知識や、対悪魔の戦術論等を学んでいた。確かにアイツの持つ不思議パワーは凄いが、制約が色々あるらしい以上頼りきりにはなれないし、なりたくない。勉強は苦手ではないし、何より命が掛かっている。我ながら良いペースで吸収できているのではないか。
 ちなみに味方の悪魔の事を「仲魔」と言うそうだ。駄洒落か。

 そんなある時、アイツがいつも以上に気取った調子で話しかけてきた。

『さて。仲魔も増えたことだし、そろそろキミの育成方針について伝えておきたいと思う。』
「なんだよ急に。ていうか、『育成』とかなんか嫌な響きだな。」

 どうやらヤツも微妙な物言いだと思ったらしく、気まずい沈黙が場を支配する。

「めんどくさい。オマエに全部任すよ。」
『「オマエ」ではない。この場では「せんせいさん」と呼びなさい。』

 マジうぜぇ。

『キミにはまず筋力を極限まで鍛え上げて、示現流の達人的なサムシングを目指してもらう。』

 達人か。良くわからんが、何か心惹かれる響きがあるな。

「でもさ、オマエ前に俺の事を『素人くさい』とか言ってたじゃないか。そんな達人になんてなれるのかよ。」
『なれるよ。キミならなれる。僕と、僕の【未来視】が保証する。』

 相変わらず照れくさいことを平気で言う。
 しかし前衛として闘うなら、つよさ・はやさ・たいりょくのバランスが大事なんじゃないか?

「速さがあると二回攻撃できるから強いってトモハルが言ってたぞ。」
『二回攻撃? いらない、いらない。腕力さえあれば全ての敵を一撃滅殺、二の太刀要らず。』
「速さが無いと敵に攻撃があたらないし、反撃2回喰らうってトモハルが速さアピールしてた。」
『命中回避? いらない、いらない。僕の【望む未来を掴み取る力】があればキミ一人ぐらい、どうとでもなる。』

 何と言うか、速さが取り柄のトモハルが泣き出しそうな考え方だな。


『最終的にはベレッタで魔王様をオーバーキルできるくらいになってもらう。』
「拳銃に筋力関係ないだろ。ていうかそれ意味あるのか?」
『メリットはあんまり無いね。デメリットならそれなりにあるけど。強いて言うなら浪漫、かな。』
「オマエ猫のウンコとか踏めばいいのに。」
『キミの頭の中に猫のウンコがあれば可能かも知れないね。』

 こっちは必死だってのに。何と言うか、少しだけ、ほんのちょっとだけだが、信頼していた俺が馬鹿みたいじゃないか。

『冗談はさておき、キミにはトドメ役として働いてもらうために、やはりある程度までは筋力を重点的に上げてもらう。その結果、戦闘経験がキミに集中する事になるんだ。全体的に味方を成長させるより、一人飛びぬけて強い人間がいたほうが何かと都合がいいからね。』

 どうやら純粋にふざけていた訳ではないらしい。言われてみると正しい内容の気もするが、一つ引っかかる点がる。

「でもそうすると、アヤとか合流する予定のトモハルとか危険じゃないか?」
『それはその通りだ。ただ、そこは僕の能力とキミの戦術で何とかするしかない。僕だって誰一人途中で失う気はないからね。』

 つまり考慮済みってことか。

「オマエがそう言うからには、大きなメリットがあるんだろ?」
『……あはは、随分と信用されたものだね。嬉しいよ。勿論メリットはある。一部を除いて悪魔は自分より弱いものには従わない。つまりキミが強くなればなるほど、強力な仲魔を使役することができるんだ。』

 考える。多分これはかなり重要なことだ。これまでの講義で仲魔の重要性は理解している。なるほど仲間全員を平均的に成長させたのでは、いつまで経っても強力な仲魔を使役できないということか。池袋で言っていた「問題」ってのも恐らくこのことだろう。

「だから『育成方針』とやらをわざわざ俺に伝えたのか。」
『その通り。これらの方針をふまえて、今後の戦術を練って欲しいということさ。』

 考えるべき事は増えたが、戦力増強の様子が容易に想像できる。何だか俺、ワクワクしてきた。

『そして矛盾するようだが、キミが闘っても全く鍛錬にならないような弱い悪魔は、こちらの弱い仲間に倒させるようにしてくれ。』
「そうおかしい事でもないだろ。要するに以前カオルが俺にしていた事だよな。」
『その通りだ。』

 何だか少し胸が熱くなる。早くカオル達と合流しなくては。
 ちなみに、アイツにカオル達はどこにいるか聞いたところ、『人事を尽くして天命を待て』の一点張り。ハッピーエンドがどうこう言ってるわけだから、将来的には会えるのだろう。だが、手を抜いてはその未来も遠ざかるといったところだろうか。

 程無くして新宿に着いたが、やはりと言うか何と言うか。カオルやトモハルは見つからなかった。そんな時、悪魔発生以来この新宿を一度も離れていないと言うツワモノ、八神製作所会長の噂を聞いた。彼なら何か知っているかもしれないと、藁にもすがる気分で八神製作所を目指す。一応アイツにも意見を聞くと、『キミの好きにすると良い』と答えが返ってきた。


『そろそろ接敵が近いな。』
「注意するべきことはあるか?」
『今の君達ならそう苦戦しないと思う。ただ一つだけ。地霊ブラウニーは必ず仲魔にするように。最優先事項だ。一匹しかいないから、いつかみたいにうっかり倒したりしないようにね。』

 結構根に持ってやがる。

「うっさいな、わかってるよ。んで、地霊ブラウニーって今見えてきたアレだろ? 随分チッコイな。」
『形姿は可愛いけど、能力は折り紙つきだよ。高い物理防御力と、抜群の対地火力を誇る高性能戦車だ。彼が仲魔にいるのといないのとでは戦闘の困難さが段違いさ。更には固有特技持ちと、言う事無しだね。』

 何そのスーパー悪魔。闘って勝てる気がしない。

「べた褒めだな。弱点とか無いのか?」
『あるにはあるけど、それを差し引いてもって奴だね。それについては追々講義しよう。』
「わかった。」


 まずは最寄の敵ピクシーを一撃で仕留める。アドバイスに従って、必要ないけどタンキとピクシーで削っておいた。アイツが言うにはこういう細かい積み重ねが大事らしい。

『気を抜かないで。来るよ。』
「わかってる。」

 予想通り地霊ブラウニーがこちらに向かって突っ込んできた。仲魔のピクシーが近寄りざまの一撃を受ける。信じられないことに、その一撃だけで既に瀕死だ。おまけにピクシーの必死の反撃は、ブラウニーに寸毫の傷もつけられなかった。話には聞いていたが、実際に目にすると馬鹿げた強さだ。
 慌てて勧誘。でも仲魔で削るのは忘れない。想像通り魔法防御は相当薄い。ちなみに性格は可愛らしい外見相応のお子様。アイツがイカサマギャンブルを仕掛けて、仲魔にするついでに色々巻き上げていた。

『狂気の沙汰ほど面白い……! 』

 何か無茶苦茶喜んでる。超大人気無い。いや、そもそも大人なのか?

 奥にいた敵ピクシーの間合いに入ったため、近寄られて魔法を撃たれる。覚悟はしていたが、俺の体力の半分近くを持っていかれるような感覚に焦りが生じる。だが近くに泉もあるし、今の俺達には仲魔ピクシーもいる。戦闘に支障は無い。もはやルーチンとなった感のある、削り・トドメの連携で屠る。
 一方、間合いに入っても全く動かない悪魔もいた。見た目の特徴から判断して、講義にも出てきた「妖魔インプ」だろう。可愛らしい外見だが、話が通じないから勧誘できないと言われていた敵だ。決して容赦せず必ず倒せとも。
 回復されると鬱陶しいので、勧誘したばかりのブラウニーを召喚し、体勢を整え一気に攻め落とす。やはりアイテムを拾おうとしていたようだ。それとは別にインプ自身が「ワーカーズはっぴ」を落とした。何だか儲けた気分だ。
 とりあえず法被を着ながら八神製作所をスルーして、奥にいる邪鬼ハンジャを釣る。 こちらの思惑から寸分も外れることなく相手が動くさまは、本当に気持ちが良いものだ。そう調子に乗っていたら、ついでに更に奥にいたヌエまで釣れてしまった。まだまだ未熟ということか。とは言え、特に問題があるはずもなく。
 ちなみにヌエは「ワーカーズメット」を落とした。防具は貴重品だ。ホクホク。

 そんなこんなで良い気分に浸っていると、暫くダンマリだったアイツが唐突に話しかけてきた。

『あー、僕今から当分役立たずだから。後よろしくー。』
「何だよ藪から棒に。」
『いやね、今回ね、【望む未来を掴み取る力】使ったんだけどね、
 もうね、精神力というかね、MP(ムチムチプリンプリン)的なサムシングがね、ゴリゴリ削られちゃったのよ。
 ていうか、インプとかキミより運が高いとか、ぶっちゃけありえない。
 ていうか、【望む未来を掴み取る力】って名前長いよね。言うだけで無駄にMP減る。
 よし、以降【ハヤトロギア】と呼ぶようにしよう。そうしよう。そうしよう……』

 何だか消え入りそうな上、口調まで変わっている。これは相当ヤバそうだ。

「わかった。任せておけ。」
『かゆ……うま……。』


 気のせいかもしれないが、何かが遠ざかっていくような感覚。気持ちを切り替える。思考を冷静に。アイツのように。
 【望む未来を掴み取る力】改め【ハヤトロギア】は暫く当てにできない。失敗の許されない状況。背筋に冷たいものが走る。案外、俺の気の緩みを戒めるためだったりするのかもしれないが、仮にそうだとしてもここで手を抜いては全てが台無しだ。考えろ、考えるんだ武内ナオキ。
 落ちる寸前に、以前聞いた「視覚共有」とやらをしたのか、戦場全体を俯瞰したイメージが頭に残っている。これは大きなアドバンテージだ。考えていることは共有できないらしく、近未来情報は持ち合わせていない。落ちる前に伝えてくれよと思わないでも無いが、まあ俺には過ぎた能力だ。
 何だか「妖精さん」的思考が板についてきたな、と思わず苦笑い。

 現状残っているのは拠点を防衛しているヌエと、今回初めて見る「邪霊ゴースト」、更にアイテムを拾おうとしているタンキだ。配置から見て、この中で恐らくゴーストだけが間合いに踏み込んだら即座に襲い掛かってくるタイプ。
 しかし講義によれば、初手は状態異常魔法「ドルミナー」ほぼ一択。ドルミナーによって SLEEP 状態にされるのは痛いが、モムノフ辺りを餌に釣れば全く問題ないだろう。上手くヌエの射程外で闘えるかがポイントになる。動かない敵タンキは仲魔のピクシー・タンキで削って、ブラウニーに倒させるのもありか。

 大丈夫だ。集中攻撃さえ喰らわなければ万に一つの負けも無い相手。
 そして集中攻撃されないためのプランは既に用意した。
 あとは冷静に実行するのみ。






『ただいまー。』
「戻ってきたか。」
『すまないね。でもどうやら鮮やかに倒しきったみたいで何より。』

 むず痒い。

「しかし何だな。俺は気付かなかったけど、そんなにオマエの精神力?が消耗するような危ない場面があったのか。」
『うーん、危ない場面、というのは無かったね。強いて言うなら最初のブラウニーの一撃くらいさ。』

 確かにアレは肝を潰した。

『ただ、「ワーカーズ」装備を落とさせるためにエライ苦労したと言うか。』
「確かに防具は貴重だが、そこまでして入手するようなものか?」
『あー、これは所謂「レアアイテム」って奴なんだ。』
「レアアイテム?」
『そ。店で買えないどころか、他ではまともに入手することすらできない珍しいアイテム。』
「つっても大した性能じゃない気がするがな。」
『そう侮るものではないよ。運のパラメタ強化が大きいがひとつ。更に一式揃えてブラウニーに着せれば、大抵の物理攻撃は通らなくなる。』
「いや、運とやらはともかく後者はどっちかっつうとブラウニーが固いからのような。」

 そうなのだ。
 仲魔になって改めて思うが、あんな可愛いナリして、もの凄く防御力が高い。おまけに火力もあって頼りがいがある。味方になったらガッカリ、なんて定番のオチを蹴飛ばしてくれた。コイツが『真っ先に確保しろ』とせっついてきたのも当然か。


『あー、うー、えーと、白状すると、蒐集癖。』
「ああ、そうなのか。」
『およ、怒らないの?』
「そこまで傲慢じゃねえよ。」

 コイツの存在が俺達の生死を左右するのは確かだが、実際コイツが力を貸してくれるのは、恐らく純然たる好意によるものだ。それに「あって当然」と甘えてプラスになることは多分無い。

「まあ、何だ。可能な範囲で付き合うさ。」




[22653] A.D.1996 TOKYO     ~ Commando ~
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/24 14:56
 新宿で出会った八神博士にパルチザンについて尋ねたが、有用な情報は得られず。
 かわりにDIO用 Remix システム「FRI-DAY」を貰った。何やらオヤジ達の知り合いらしい。

「結局これって何なんだ?」
『悪魔合体用のプログラムさ。八神博士が趣味で作ったらしいね。』
「趣味って。悪魔が現れたのってつい最近だろ。」
『一応そういうことにはなってるね。』

 もって回った言い方。
 喋りたがりのコイツがこんな言い方をするってことは、今はまだ説明する気が無いってことか?

「どう扱ったもんかね。」
『今はまだ気にしなくていいよ。追々説明して行くから。』


chapter 7 ICHIGAYA     ~ 駐屯地奪回作戦 ~

 魔物が落とす魔貨(マッカ)。
 正直使い道が良くわからなかったのだが、どうやら特殊なショップで通用するようだ。通貨そのものも謎だが、何故悪魔が落とすのか。
 新宿を抜けた後、そんな事を考えながら件のショップに立ち寄ったのだが。

「『オヤジ、並んでいる武具全部くれ』なんて言うヤツ初めて見たよ。しかも二つずつ。」
『僕は割と良くやるんだけどね。それより僕が店のオヤジと話せた事にびっくりなんだが。』

 何だコイツ。実はブルジョワなのか。状態異常回復アイテムも全種類5つずつ揃えていたし。

『実際消耗品を買うことも殆ど無いから、金(マッカ)は余り気味だし、何より武器は全種類あった方がいい。』
「そういや明らかにボロい剣まで買ってたよな。何でだよ。」
『効率的な削りのためさ。多すぎず、少なすぎず。丁度良いダメージを与える事が可能になれば、戦術の幅が一気に広がる。』

 確かに「弱らせすぎて逃げられる」ことは少なくなりそうだが。

「防具は?」
『イチイチ付け替え面倒でしょ。どうせお金余るし、買いすぎるくらいで丁度良いよ。』

 やっぱりコイツはブルジョワだ。
 そんなやり取りをしながら、市ヶ谷の自衛隊駐屯地にやってきた。


「FRI-DAYもそうだけど、欲しいものが手に入らずに余計なものばかり増えていくな。」
『それを余計なもの扱いなんてとんでもない。生死を分ける重要なものだよ。八神博士には感謝しなくちゃ。』

 今回だってある意味余計なものだ。永田町の敵本営を衝くには明らかに戦力が足りていないので、自衛隊が保管してたであろう火器の類を確保する目的だ。

『まるで軍放出品店を漁りにいく勇者の気分だね。』
「言うなよ。俺も少しは気にしてんだから。」
『それにしても、君達で使いこなせるのは精々拳銃くらいのものだろうに。』
「それでも無いよりマシだろ。アヤに直接攻撃させるわけにも行かないしな。」
『存外に紳士だね。』

 失敬な。

「漸く見えてきたけど、やっぱり悪魔がいるなぁ。」
『しかしどの方面軍も全く統率されていない。叩くならチャンスだね。』
「案外オギワラ、もう逃げ出していなくなってたりとかな。」
『ふむ。』


 俺の軽口に考え込んでいるような雰囲気。 どうかしたのだろうか。

『まあいいか。相手の布陣は見ての通りだ。何か気付く点はあるかい?』

 【千里眼】によるイメージの共有。正面の泉付近に邪霊ゴーストと正体の良くわからない敵、右手を流れる川の向こうに「妖精ゴブリン」らしき悪魔がいる。

「川向こうにいるのは恐らくゴブリンだよな。正面にいる気味の悪いやつは?」
『ふーむ、情報の共有は完璧ではないのかな。』

 ピントのずれた応答。

『ああ、悪いね。アレは確かに正体が掴み辛い。「外道モウリョウ」さ。』

 外道モウリョウ。確か何の特徴も無い雑魚だったか。無視でいいだろう。

「まずは正面の泉だな。ゴースト辺りに取られると泥沼になりそうだ。」
『対処法は?』
「とりあえずタンキか? 獣ならギリギリ届きそうだし、泉さえ確保すれば俺達の到着まで粘ることはできるだろう。」

 ドルミナーには外れてくれと祈るしかない。

『対岸に見えているゴブリンはどうする?』
「魔法使いだったよな。魔法攻撃にだけ気をつけて、暫くは無視かな。」
『川を渡って飛んできた場合、ゴーストたちとの挟撃を喰らうことになるよ。』
「そしたら対ゴーストの前線を仲魔に任せて俺が勧誘するさ。そこはサポートしてくれるんだろう?」


 沈黙。まるで教師の採点を待つ生徒の気分だ。不正解だとは思わないが、心臓に悪い。

『わかった。序盤戦に関しては及第点だね。キミの立てた方針で行こう。』

 良しっ。

『ただ一点だけ。ゴブリンの勧誘はピクシーでも可能だ。』
「それは初耳だな。」
『所謂同族会話と言うやつだ。非常に大きなメリットがあるので、覚えておいて損は無い。』
「今回はピクシー使って勧誘しろってことか?」
『今はまだ選択肢の一つとして考えておく程度で構わない。今回は、まあ好きにするといいよ。』

 とはいえ前線から俺が抜けるのも避けたいし、魔法攻撃を喰らうのも避けたい。その点ピクシーでなら、間合いを計って川の上で先制攻撃、というか先制勧誘?することも可能だ。これは採用した方が良いだろう。


「他に勧誘するべき悪魔はいるか?」
『線路の向こうにいる聖獣ユニコーンは絶対。というか、可能なヤツは全部勧誘だってば。』
「聖獣ユニコーンか。何だか強そうだな。」

 想像するだけでワクワクする。

『ワクワクしているところ申し訳ないけど、聖獣ユニコーンに関しては完全に名前負けの存在だよ。』
「……絶対勧誘対象なのに?」
『まあこれはユニコーンというより、「聖獣」と言う種族の問題だね。』

 浮き立っていた気持ちが、見る見るうちに萎れていく。

『聖獣は魔獣とかに比べて何か遅くて、名前に反して大して役に立たない印象があるね。いないよりマシレベル。確か砂漠が得意とかだったけど、その特性が発揮されることはまず無いよ。』
「じゃあ、何で勧誘するんだよ。」
『答えは単純。彼の持つ特技「どくばり」が、全特技習得悪魔作成合体に不可欠だからさ。』

 俺のワクワクを返せ。

「合体とかまだよくわからんが、ゴブリンについてはどうなんだ?」
『妖精ゴブリンは対鬼族・地霊特効の炎魔法を持っている。暫くは重宝すると思うよ。そして当たり前の話だけど、こちらの鬼族・地霊は決して近づけないよう注意が必要だ。』
「まさに天敵ってやつだな。以前言ってた地霊の弱点ってのはこれの事か。」
『その通り。ブラウニーは対物理としては無欠の壁なんだけど、魔法防御がどうにも弱くてね。特に火炎と爆発は喰らうだけで死が見える程さ。』

 なるほど、これからは魔法の属性も考慮しなくてはならないようだ。敵のゴブリンには気をつけることにしよう。

「ゴブリンの覚える特技はどうなんだ?」
『特技もそれなりに役に立つけど、さして珍しくも無いものだからね。精々適当に使い倒してボロ雑巾のように捨ててやるのが関の山かな。』
「捨てる? 仮にもオマエの同族だろう。」
『たとえばソイツらがその昔、幼き頃…… 捨てられて凍えてる仔犬を助けたことがあるとしよう…… でも捨てる。』
「鬼だな。」
『この妖精さん、容赦せん。』


 本当に割り切ってやがる。少し寒気すら覚えるほどに。

『実際君達が生き残るためには、ある程度の割り切りも必要だと思うよ。アレもコレもと手を伸ばしていてはどうにもね。』

 まるでこちらの心を読んだかのようなタイミング。

「それでも、オマエなら何とかなるんじゃないのか?」
『僕が優先すべきは君達の生存さ。それ以外は悔しいけれど自分の事で手一杯だ。』

 結局コイツも俺と同じことを考えて、俺より先に現実を見据えてたってことなのか?

『ただ、キミまで僕に倣う必要は無いさ。或いはキミのような存在ならば、僕の【未来視】すら越えてどうにかするかもしれないと、そう期待してしまう所もあるしね。』

 幾度となくコイツが口にする、俺に対する期待。果たして応えることができるのだろうか。


『どうやら相手もこちらに気付いたようだね。そろそろ動き出しそうな気配だ。』
「なら先手を取って、さっさと泉を確保するか。」
『それがいい。ついでにタンキがここ市ヶ谷で特技を覚えたら言うこと無しだね。』

 タンキは異常に成長が早い。どんなときでも2回攻撃で真っ先に戦闘に参加している。一度もトドメを刺してなくとも、一番成長が早いそうだ。
 逆にブラウニーは鈍足。進軍についてくることができず、最前線から遅れることも多い。局地戦でなら壁役を任せられるので、そこそこ経験は積み易いが、特技習得は遅いらしい。前回のタンキ、やっぱりトドメを譲るべきだったか。

 戦闘開始。
 仲魔を召喚し、陣形を整えつつ、魔獣タンキを先行させる。攻撃力は低いが、頼りになる仲魔である。

『無事泉確保に成功したね。』
「おう、さっさと助けにいかなきゃな。」

 そんな俺達にお構い無しで、アヤが道端に落ちていた斧を拾う。

「何でこんな物騒なもんが落ちているかはともかく、ブラウニーに似合いそうだな。」
『攻撃を当てにくくなるから、常時装備はお勧めしない。獣の低い攻撃力を補うか、博打が必要な時に換装するのがベストかな。』

 念のため殿をピクシーに任せて、俺と少し遅れてブラウニーがタンキの支える前線に突っ込む。敵ゴブリンはどうやら一気に河を渡らず、橋まで迂回するようだ。
 ゴーストの一匹がタンキに、もう一匹は俺に寄ってきた。どちらの魔法も鮮やかに回避。タンキはモウリョウにしっかり反撃。想定していた中で最良の展開だ。ゴブリンの動向に注意しつつ、まずは鬱陶しいゴーストから片付ける。無駄に耐久だけは高いため、さすがに一掃とは行かなかった。当然逆撃を喰らうわけだが。 

「ブラウニーさん、マジパネェ。」
『でしょ?』

 そこそこ力があるはずの、モウリョウの攻撃でさえNODAMAGE。理不尽さすら漂うその精強さ。

『それよりゴブリンが渡河してくるよ。後もう一匹、奥の橋から新手だ。』

 促されるままにそちらを見遣ると、確かにゴブリンが二匹、間合いに進入してきている。

「一気に忙しくなったな。望むところだ。」

 魔法力が切れたはずのゴーストは一旦無視して、ゴブリンへの対処を考える。渡河してくるやつは、仕方ないからピクシーで勧誘。橋から来る奴は泉のタンキで受けるのが理想か。

『良し、勧誘失敗。』
「オィィィ!」

 何やらピクシーはゴブリンから礼儀について諭されたらしく、一回り大きくなった。

「急いでピクシーの救援に!」
『落ち着いて。ピクシーは火炎耐性が高い。ゴブリン二匹くらいなら確実に沈まない。』
「そうは言ってもだな。」

 どうにも新宿でのブラウニーの一撃が、頭から離れない。

『戦闘中の焦りや迷いは、取り返しのつかない事態しか生まないよ。まずはモウリョウを片付けよう。』
「……わかった。」

 ブラウニーを前に出し過ぎないようにしてモウリョウを屠る。タンキには申し訳ないが、もう少しだけ一人で前線を支えていてもらおう。
 ピクシーは予想通りゴブリンの魔法「アギ」を喰らったが、結構平気な様子。前線の攻撃はタンキに集中し、瀕死の状態になったが、何とか泉で回復。

『川向こうのゴブリンは退いたし、まずはこちらのゴブリンを片付けよう。ピクシーにもう一働きしてもらうかな。』

 不安だ。

『キミのそういった性質は好ましくもあるが、仲魔を信頼することも時には必要だよ。』
「わかってる。」

 一旦ピクシーを呼び戻し、此岸のゴブリンを勧誘。如何にも怪しげなクスリを渡されて、全く疑うことなく飲んでいた。

「またか! またなのか!」
『まあいいじゃない、何事も経験。可愛い娘が成長していると思えば気も楽さ。ほら、お父さん、愛娘の尻拭いに行ってきな。』


 さすがに今回は放置できない。ゴーストのトドメはブラウニーに任せて、ゴブリンを一蹴。「ワーカーズぐんて」を入手した。仲魔のブラウニーもゴーストを倒し、漸く一息つけた。

『よし、この調子で頼むよ。』
「おいおい、大丈夫か。」

 アイツが妙に疲れた声で言う。レアアイテム確保か。

『ああー、まあ今回もちょっと無理したからね。このターンだけは勧誘控えておくべきだったか……。』
「レアアイテムだけじゃないのか? まあよくわからんが、ご苦労さん。休んどくか。」
『いや、平気さ。ただ申し訳ないが、キミがメインで行動してくれ。』
「気にするな。元からそのつもりだ。」

 敵ブラウニーの駆け寄りざまの一撃を、仲魔のブラウニーが無傷で弾く。防具と言う文明の利器は偉大だな。追撃で落とせそうなので、もうブラウニーに任せてしまおう。アヤとタンキにちょっかいは出させるが。

『キミが着ているワーカーズ装備をブラウニーに渡してくれ。』
「レアアイテムか?」
『その通り。』

 着替えたブラウニーが、相手ブラウニーにトドメを刺す。素の強さが近いせいか、良い経験にもなったようだ。目出度く「ワーカーじかたび」をゲット。ここでも目に見えない【ハヤトロギア】の展開があったのだろう。より一層、アイツの死にそうな感じが増した。

『やった、やっと辿り着いた。』
「今にも死にそうな声だな。」
『まだだ、まだゴールせんよ……。』

 ピクシーが川向こうからのアギを喰らい、状態が危険水域に入ってきたので一旦泉へ引かせ、ついでにタンキに回復魔法「ディア」をかけさせる。
 相手の位置も完璧に把握し、先制されることもない。万全の体勢だ。あとは橋を渡ってくる敵戦力を一匹ずつ叩いていくだけ。

『ちょっと線路まで突出してもらえる?』
「ええ?! 嫌だよ。んなことしたら、ゴブリンの火炎喰らうじゃんか。」
『うん、むしろその為なんだけど。』

 ああ、多分断れない流れだな。

「どういうことだよ。」
『相手ブラウニーをこちらのブラウニーで迎撃するに当たって、ゴブリンについてこられちゃまずいんだ。』
「だから俺を餌にして、ゴブリンを川向こうに縛り付けると。」 
『ご名答。』

 果てしなく嫌だが、これが最上の選択だろうとも思う。ここで俺が体を張らずして、仲間に囮になれと言う指示を出すことはできないだろう。

「わかった、やるよ。」
『さすが。信じてた。あ、武器は外してね。反撃でブラウニー倒すといけないから。』
「……。」

 「武器を持たずに戦場に行け」と言うのがどれほど酷いことか、今理解した。
 予定通り、俺が相手の攻撃を一身に受けることで、相手の布陣をこちらの望みどおりに制御。インプによる回復をうっかりしていたが、ピクシーとタンキで削り、ブラウニーでトドメ。ブラウニーが、特技「かみつき」を習得した。コレが噂に聞いていた特技というやつか。少し感動。
 続いて突っ込んできた妖魔インプも一蹴。アギやら毒やらで俺の体がエライ事になっていたが、ピクシーの「ディア」で回復。ホント、ピクシーは偉大だな。

 満を持して橋を渡る。
 タンキは駅でお留守番。アヤは気付いたら道に落ちてるアイテムの回収に行っていた。放浪癖か。残った敵ゴブリンは魔法力が切れたようなので、アイツの言に従って、ピクシーに任せっきりにする。何でも『おじさん(ゴブリン)にイロイロ教わって、技覚えて帰ってくるよ』だそうだ。複雑な気分だ。
 と思っていたら、ゴブリンが橋の中央に陣取った。何と言う邪魔な。わざわざ倒されに来たのか。とりあえずアイツが宝石などを巻き上げつつ勧誘。

『またつまらぬものを斬ってしまった。』 
「いや、斬ってないし。」

 続けて聖獣ユニコーンを勧誘しようとしたが、何故か会話が成立しない。

『満月の夜は悪魔の気が昂って、勧誘できなくなるんだ。』
「早く言えよ。」
『あと、クリティカル率も上がるから気をつけてね。』

 コイツの言う『クリティカル』ってのは、邪鬼などがよく放ってくる鋭い一撃の事らしい。邪鬼のみならず、状況次第では誰でも放つことが可能だそうだ。
 歴戦の指揮官はクリティカル発生率まで読みきって、作戦に適度なバッファを持たせるとか。さらに伝説クラスになると、そのクリティカルが発生するタイミングまで読みきってタイトな作戦を立てるのだとか。どちらも俺には遠い話だ。
 仕方が無いから、駅にいるタンキで無駄にユニコーンを狙撃。うっかり瀕死状態まで追い詰めてしまった。聖獣弱ぇ。月が欠けた瞬間に慌てて傷薬を渡して勧誘。

『えー、いらないのに。』
「いいんだよ。」
『まあいいや、ユニコーンは即召喚で、残りのトドメは全部譲って。』
「随分と急だな。」
『まあね。あと、キミはいるだけで敵を倒しかねないので、とっとと武器庫へ向かうように。』

 武器庫にはピクシーを先行させていたのだが、どうも入り方がわからないらしい。そんなこんなでユニコーンを召喚し、固まっていたヌエとモウリョウを一掃。寄ってきた邪鬼ハンジャも問題なく倒した。

「オマエが言ってた通り、確かに名前負けだなコレは……。」
『でしょ?』

 何か遅い。魔獣タンキが常時二回攻撃なのに対して、聖獣ユニコーンは何か遅い。しかも弱い。正直斧が無かったら、瀕死の邪鬼にトドメを刺すことすらできなかっただろう。聖獣弱ぇ。

「そういや何で、じかたびだけ『ワーカー』なんだろうな。」
『多分メモリが足りなくなったんだよ。アイテム名は最大8文字、みたいな。』

 意味がわからない。
 気を取り直して武器庫を漁るが、残っていたのはベレッタ一丁と言う何とも寂しい結果。ひとまずアヤにベレッタを渡して、使用上の注意を伝える。

『解せぬ……。』
「何がだ?」
『ちょっと離れないと弾が当たらないってところ。』
「格闘戦の間合で銃なんか振り回しても当たんないだろ。」
『でも、寝てる相手にヘッドショットも出来ないとか。納得いかない。』
「何でそんな恐ろしいことを考え付くんだ。ていうか、そんな例外中の例外について言われてもな。」
『世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだよ。』

 大袈裟な。

「しかし、結局得たものは拳銃が一つだけか。駐屯地なんだからもっとバズーカとかあると思ったんだが。」
『わざわざ武器残して撤退しないでしょ。そもそも君達が重火器なんか手に入れたって、どうせ使えないんだし。』
「説明書があれば、俺もロケットランチャーとか撃てそうじゃないか。」
『そんなのは映画の中だけの話だよ。』


 世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだな。
 


chapter 8 NAGATACHO     ~ 敵本営強襲作戦 ~


 もう間も無く、敵本営のある永田町に到着する。

『アヤちゃんに諭されていたね。』
「ぐ、そうだな。無駄に殺気立っていたのは確かだ。」
『良い仲間を持ったよ。キミは。』

 我知らず、随分と凶暴な面構えになっていたそうだ。実際アヤの言うとおり、悪魔憎しの感情だけで闘うべきではないと思う。
 慎重に進撃していると、遠くに敵悪魔の集団が見えてきた。

「やたら強そうな見たことの無い鬼がいるが、あいつも勧誘するべきだよな?」
『いや、まだキミの強さが足りない。無理をすれば可能だろうが、デメリットの方が大きいな。』

 残念だ。

「他に何か気をつけるべきところはあるか?」
『まずはユニコーンとタンキに最優先で特技を習得させる。』
「ひょっとして remix ってヤツの関係か。」
『そうだ。仲魔を合体させると、元の二体の特技を引き継いだ新しい仲魔が生まれるんだ。』
「まさか元の仲魔は死ぬんじゃないだろうな?」
『死ぬというより、新しい仲魔のなかで生き続けるといったところかな。ネイルさんのように……。』
「(誰だよ……)うさんくせぇ。」
『目指せ全特技習得悪魔!ってね。』

 どうも釈然としない。 

『あとは敵のウェンディゴを二体とも殺さずに残しておくことかな。』
「何でそんな面倒なことを。」
『後で説明する。ひとまず防具フル装備のピクシーに接待させよう。』

 左翼敵ウェンディゴを無視して、奥にいた邪鬼ハンジャを強襲。タンキとピクシーとブラウニーでギリギリまで削り、ユニコーンの斧で何とか屠ることができた。聖獣弱ぇ。右翼にいた敵タンキたちはどうしようもないのでひとまず無視。左翼へ部隊を寄せていく。敵タンキの攻撃は俺に、敵ウェンディゴの攻撃は仲魔タンキに集中。理想の展開だ。
 問題は妙に強そうな件の悪魔、地獄の獄卒「闘鬼ゴズキ」が突進してきていることか。何で地獄の管理職が地上にまで出張してきているのか。

『大丈夫、ヤツの到着にはまだ余裕がある。さっさと戦場を綺麗にしよう。』

 確かに、強いヤツ相手に乱戦なんてぞっとしない。俺達の優位を生かすためにも、なるべく早くこいつらを倒さねば。
 どうやらタンキとユニコーンは特技習得のめどが立ったらしい。ブラウニーは斧に持ち替え、ユニコーンが削った敵タンキを必殺の一撃で仕留める。俺は仲間達のサポートを受け、もう一匹を手堅く仕留める。
 ウェンディゴ先生はきっと生き残ってくれるはず。

 ついにゴズキが戦場にやってきた。おまけに近くのジェネレータが稼動開始。このタイミングで邪霊ゴーストとか、最悪すぎる。
 
『慌てるな。ゴズキは耐久が高いだけで、脅威度はそれほど高くない。ピクシーやアヤの位置に気をつけて、落ち着いて仕留めるんだ。』
「了解!」

 言われてみれば何のことは無い。ピクシーのザンで半分近く削り、俺の一撃でトドメ。乱戦でさえなければむしろカモに出来る相手だ。平常心が如何に大事か、少し学んだ。あとやっぱりピクシーはエライな。ユニコーンとタンキも特技を習得。全てが順調だ。

 好事魔多し。
 ゴズキを倒すことに集中しすぎて、ゴーストの間合いに踏み込んだことに気付かなかった。当然寄ってきたゴーストにドルミナーを喰らう。幸い何とかレジストしたものの、これで眠らされていたら色々と台無しになるところだった。何度学んだと思っても、油断は完全には消し去れない。
 ブラウニーとのコンビで、さっさとゴーストを片付けて合体を開始。獣コンビと、技を覚えたピクシーを remix にかける。

・タンキ×ユニコーン→邪鬼ハンジャ
・ピクシー×ウェンディゴ→魔獣タンキ

 ピクシー……。
 まるで娘を嫁にやる気分だ。ましてや、あんな筋肉野郎と合体なんて。サイズが違いすぎる。

『ウェンディゴ先生がもう一体欲しいので、そこにいる奴を勧誘しよう。』
「お構いなしだな、オマエは。」
『あとは敵殲滅までにキミの強さを底上げするのと、ブラウニーに特技を覚えさせるのが優先事項だね。』

 ブラウニーと横に並んで、狭い道路を進んでいく。相手もスクラムを組んでくるため渋滞しがちだが、後ろからモムノフの槍とゴブリンの火炎でフォローが来る。「ドルミナー」で眠らされたらカフェインソーダで即座にたたき起こす。上手く連携を取って、ストレス無く進むことが出来た。

『あとでカフェインソーダ補充しとかないとね。今度は10個ずつにしようか。』
「ブルジョワめ。」
『まだ言ってるのかい。』

 湧いてくるモウリョウや、拠点を守る妖獣達も、成長した俺達の前では塵芥も同然。思うままに蹴散らして敵戦力を殲滅。俺の成長と、ブラウニーの特技「ばくだんなげ」の習得も何とか間に合ったようだ。しかしブラウニーは何処から爆弾を取り出すのだろうか。

『じゃあ拠点制圧の前に、合体を始めようか。』

・ブラウニー×ハンジャ→妖鳥コカクチョウ(ひっかき・はばたき)

『コカクチョウは最優先育成対象ね。』
「俺よりもか?」
『程度問題ではあるけれど、場合によってはキミよりも。』

 何か面白くない。子供か俺は。

「種族としての特徴は、『高速・高機動の空対空ミサイル、鳥獣に注意』だっけか。」
『その通り。ただ、それだけではないんだ。妖鳥それ自体の性能もかなり良好で、何故か杖・頭・腕・足装備可能。そしてなにより「コカクチョウ」の覚える特技が反則級の強さなんだよ。』
「随分もったいぶるな。」
『それだけの価値はあるよ。……そして!!』

・タンキ×ウェンディゴ→地霊ブラウニー
・モムノフ×ブラウニー→天使エンジェル(かなしばり・アイスストーム)


『イヤッホォォオォオウ! エ・ン・ジェ・ル 最ッ高ー!』
「いきなりテンション高っ。」
『だって、アレだよ? エンジェルちゃん、マジ天使。』
「天使か。悪魔でも天使なのか。」
『キミ、存外に細かいことを気にするね。それとも駄洒落?』

 余計なお世話だ。

『フフーフ、完璧だ。完っ璧なタイミングだ。今後はこのツートップに楽をさせてもらおう。』

 飛行タイプはもの凄く使い勝手が良い。全ての障害物を無視しての超高機動。ただ鳥獣に弱いという決定的な弱点があり運用が難しい、と習った。
 エースがどっちも飛行ではバランス悪そうだ。

『こいつら強いからね。この界隈なら、防具をフル装備すれば基本ダメージ自体碌に通らないさ。暫く対空部隊とやりあうこともないし。』

 【未来視】か。なるほど、妙に機嫌がよいのも頷ける。
 ただ、機嫌よさげなところ、水を差すのは非常に申し訳なくもあるんだが、ここはひとつ言っておかねばなるまい。

「……なあ。オマエさっきウェンディゴ勧誘するときに『remixのための材料なんかじゃない、大切な仲魔だ』とか言ってなかったか。」
『確かにそんなことを約束したな。あれは嘘だ。』
「オイ。」

 計画的犯行。以前言ってた『ウェンディゴの大事な使い道』ってコレの事か。

『ウェンディゴは犠牲になったんだ。天使エンジェルの降臨、その犠牲の犠牲にね……。』
「故意犯の上に確信犯か。オマエって本当に最低の屑だな。」
『ありがとう。最高の褒め言葉だ。』


chapter 9 BASE OF INVADER     ~ 解放 ~

 永田町で、最後のウェンディゴを勧誘した後、カオルらしき黒尽くめの男の情報を得た。何でも新橋にある、使われなくなった古い地下鉄の駅に向かったという。
 今さら引き返すわけにも行かず、ひとまずここを制圧してから向かうことに。

『やっぱり先生は大活躍だったね。』
「確かに合体には大活躍だったな。」
『ピクシーと合体してできた娘がタンキ。そして我が子タンキと合体か。父×母父インブリードとか危険な配合過ぎる。さすが三界一の種馬、ウェンディゴ先生。モノが違う。』
「誤解ウェルカムな表現だな。」

 敵司令部に突入し、コカクチョウ・エンジェル・ゴブリンを召喚。ストックにウェンディゴが居るとは言え、仲魔の数が一気に少なくなって、何やら寂しい感じだ。

 ちなみにエンジェルは「ライト悪魔」と言うらしい。
 一般にライト悪魔は妙に信心深くて、ウストックなどに代表される「ダーク悪魔」とは別の意味で会話が成立しない。ただ、remix で作成したこのエンジェルは刷り込みなのか何なのか。まるで俺が神様であるかのように懐かれている。


『合体に使って、すっからかんだからね。勧誘可能な奴は全部勧誘しよう。特にピクシーは絶対に忘れないようにね。』
「ユニコーンとかもか?」
『合体材料としての使い道があるからね。最早倒したところで、然したる足しにもならないし。』
「わかった。んじゃ、行くか。」

 エンジェルとコカクチョウを正面十字路まで先行させる。高機動は伊達じゃない。あっという間に離されてしまった。

『サラマンダーより、ずっとはやい!!』
「いや、確かに速いけど。そもそもサラマンダー飛ばねぇし。」

 サラマンダーをはじめとする各種精霊は、基本的に戦闘には堪えないと教わったのだが。

『ホラ、来たよ。僕の事はいいから先に行ってくれ。』

 何か沈んでないか、コイツ。
 ひとまず向かって右側の通路にいる妖精3匹から片付ける。まず一匹だけ混ざっているピクシーをゴブリンで勧誘。「黙って俺についてこい」的な感じで、強引なナンパに成功していた。

『ゴブリンはすごいなぁ ぼくにはとてもできない 』
「オマエはピクシーをナンパしたいのか。」

 敵ゴブリン二匹は俺が倒しても大した経験にならないので、ニューフェイス二匹に譲りたかった。だが、どうにもコカクチョウの対地攻撃力が弱く、結局一匹は俺が倒すことに。もう一匹の方は残りの全員で袋叩き。コカクチョウが無事トドメを刺したようだ。
 反対側からピクシーが寄ってくる。左右の通路奥から、ジェネレータが吐き出すウストックもやってくる。

「挟み撃ちか。前門の虎、後門の狼って奴だな。」
『それ空間分布じゃないから。どっちかというと時系列展開だから。』

 ウストックはとりあえず泉に配置したアヤに任せて、反対側のゴブリン二匹を叩きに行く。アヤがメキメキ力をつけている様子。アイツは『まりょくふりじゃー』とか意味のわからないことを言っていた。
 こちらは速攻でゴブリンどもを片付け、残るはジェネレータから湧いてくるウストックのみ。エンジェルとコカクチョウをそれぞれの通路に残し、ゴブリンを二人の丁度中間に配置。主に火炎でコカクチョウのフォローをするためだ。

 俺とアヤは中央の通路を進む。地霊ブラウニーを勧誘し、もう一匹の方も片手間で屠る。アヤに扉を開けさせて部屋に飛び込むと、魔獣ネコマタが襲い掛かってきた。
 ベレッタ装備を禁止されているので、一方的に攻撃を受ける。何でも『反撃で全部落としちゃうから』らしい。

『さあ、勧誘だ。』
「言われずとも!」

 剣をベレッタに持ち替え、ネコマタに話しかける。妙に色っぽくて良い匂いだ。何が何やらわからないまま、気付けば仲魔になっていた。

『ジゴロ爆発しろ。』
「オマエなぁ。」

 もう一匹のネコマタも反撃で仕留めて、順調に奥の部屋へ。ユニコーンとタンキも勧誘し、残ったタンキはネコマタでトドメ。こちらの制圧は全て完了した。
 残してきた仲魔はどうなっているのか。急いで引き返したが、到着したときには既に決着がついていた。頼もしい。しかもどちらも成長して能力が上がっていた。
 
 仲魔を労っていたら、エンジェルが非常にカッコいい篭手を差し出してきた。「しっこくのこて」と言うらしい。『相手の攻撃が当たりにくくなる優れもの』だそうだ。保護色、なのか?

「しかし結局カオル達には会えずじまい。オギワラも倒せなかったな。」
『むしろ後者に関しては幸運だったと思うけどね。』
「なんだよ、俺達じゃオギワラに勝てないってのか。」
『そうだ。まだ遠く及ばない。』

 薄々わかってはいたが、改めて言われると結構クるものがあるな。

「そんなのやってみなきゃ分からないだろう。もしかしたら勝てるかもしれないじゃないか。」
『カオルから何も学ばなかったのか。大事なのは間合い、そして退かぬ心。勇敢さの取り違えは隙をつくるだけだ。』

 確かにカオルは相手の戦力と間合いを慎重に計っていた。

「だったら何でここに突っ込むのを容認したんだ?」
『君自身も言っていただろう。「オギワラは逃げたんじゃないか」って。』
「オイオイ、本気にしたのか。ありゃ冗談だぞ。」
『だけど全ての辻褄が合うし、実際オギワラは現れなかった。』

 そりゃあ、そうだが。

「まあ、その話は後回しだ。一時的かもしれないが、折角敵本営を制圧したんだから、情報収集なり破壊活動なりできることをしようぜ。」
『そうか。』

 とは言え、めぼしいものは見つからない。まるで引越し後のように、重要な情報などが持ち去られている印象だ。まさか本当にオギワラはここを引き払ったのか?

 ふと顔を上げて辺りを見渡す。
 アヤが司令室の中央に鎮座している巨大な機械を弄り回しているのが見える。

『一応聞くけど、止めないのかい?』

 俺は少し考えて、答える。

「状況から考えて、敵の司令官が悪魔を呼び出して使役しているのは明らかだ。」
『まあそうだろうね。』
「司令官が戻ってきていない今がチャンスだ。」
『まあ何をするにもチャンスであることは確かだろうね。』
「だからこの怪しげな機械を止める。」
『何だかなぁ。』

 呆れているようだが、反対しているわけでもないらしい。これが奴らにとって、何か重要な機械であることは確かだろう。情報を得るか、最悪破壊するだけでも敵に痛手を与えられるはずだ。

 アヤの気の抜けた声と共に、謎の機械が起動する。
 辺りに光が満ち溢れ、視界が全て白一色で塗りつぶされて……。



[22653] A.D.2024 SLUM-TOKYO     ~ The valiant ~
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/25 23:23
 気が付いたら俺達はひらけた場所に居た。どこかで見たような展開だ。
 周囲を観察したところ、どうやらここは上野公園のようだ。やはり状況は全くわからない。あの機械はワープ装置か何かだったのだろうか。
 しかしアヤが言うように、妙に辺りが荒廃している。ビルが壊れたまま放置されているなんて、東京では見たことも無い光景だ。

 その辺をふらついていたオッサンを捕まえて、色々聞いてみる。アヤの機転で、俺は記憶喪失の気の毒な男の子になった。あとで泣かしちゃる。人の良いおっさんが、哀れな俺に同情して聞かせてくれた話によると、やはりここは上野らしい。だが信じられないことに、今は2024年10月21日だと言うのだ。

『迫真の演技だったね。』
「うるせぇよ。一体俺達はどうなったんだ?」
『どうもこうも、お察しの通りだよ。』

 本当にタイムスリップしたってのか。

「つまり、敵本営にあったあの機械がタイムマシンだったってことか?」
『そうなるのかな。』
「オマエはそれを知っていたんだよな。」
『そうだね。』

 珍しく簡潔な答え。

「何故俺達に教えなかったんだ?」
『……君達にとって、コレが必要なことだと思ったからさ。』

 短い付き合いではあるが、コイツが俺達のために力を貸しているのはわかっている。そして何かを誤魔化す事はあっても、俺に嘘をついたことは無い。

「それならいい。」
『あれ、怒らないの?』

 これもどこかで見たようなやり取り。

「オマエは俺達のことを考えて黙っていたんだろう。」
『その言い分を鵜呑みにするのかい?』

 考えるまでも無い。


「今さら疑うものか。俺はオマエを信じる。」
 
 我ながら照れくさい物言いではあるが、いつもやられっぱなしと言うのも性に合わない。たまにはこういうのも良いだろう。 


『……あ~、キミが姐さんで、かつ僕が実体を持ってそちらに干渉できていたらなぁ。』
「気持ち悪いことを言うな。」



chapter 10 UENO     ~ Where's here ? ~

 上野公園を出た途端に、敵意むき出しの妖精族に半包囲されると言う緊急事態。
 急いでエンジェル・コカクチョウ・ネコマタを召喚し、戦闘に備える。周囲が荒れまくってるせいで移動しづらいが、うちの二枚看板にとってはむしろ好都合だ。

 囲みの薄い右側ゴブリン二匹に戦力を集中。エンジェルのクリティカルもあって、一気に包囲を食い破る。
 残る敵戦力は、ゴブリン2・ブラウニー2の混成部隊。移動速度の違いでゴブリンだけが突出、厄介なブラウニーが到着するまで少し余裕ができる。狙い通りだ。
 深追いしてきたゴブリン二匹を一掃しつつ、航空部隊をブラウニーの間合いにぶら下げる。ブラウニーは絶対無敵の対地対物戦車ではあるが、上からの攻撃には滅法弱い。相手に対空要素が無く制空権がこちらにある以上、負ける要素が見当たらない。
 敵ブラウニーが堅く、コカクチョウの攻撃が通らなかったこと以外は、全て想定の範囲内。問題なく片付けて、上野駅に向かって前進。とりあえず高架の向こうにいる悪魔の群れを一掃してから、今後の予定を決めることにする。

 左手高架上の遠くにあるジェネレータから湧き出して、高架上を爆走してくる鬼共は、飛行タイプ二人を先行させて翻弄。むしろコカクチョウの糧になってもらう。

「『勧誘可能な悪魔は全部勧誘』なんだろ。ゴズキはいいのか?」
『気持ちはわかるけど、あれは罠なんだよね。地霊をエースにしないなら話は別だけど。』

 良くわからん。詳しく説明する気もないのだろう。
 その間に俺とアヤはネコマタをCOMPに戻し、ゆっくり高架を乗り越えてから再召喚。そのまま敵本隊に接近する。俺にとってブラウニーは、もはや大した経験にならない相手。だがネコマタにとっては極上のご馳走だ。上手く俺とアヤで料理して、彼女に食べさせる。
 妙に強いピクシーがいると思ったら、何と武器防具を装備していた。

「30年の歳月がピクシーを進歩させたのか。」
『「呉下の阿蒙に非ず」って? 随分気の長い話だ。第一、こいつらが湧き出したのはつい最近の話だよ。しかも既に駆逐されつつある。』
「どういうことだ?」
『キミが気にする必要はないよ。僕らとはまた違う「物語」さ。』


 別段苦戦するでもなく。最後のピクシーもネコマタでトドメ。アヤは相変わらず弱いままだが、主力の成長は順調そのもの。意気揚々と上野を後にする。

 

stage2 A.D.2024  SLUM-TOKYO





chapter 11 ASAKUSA     ~ Challenger ~

 意気揚々と上野を後にしたのは良いものの、実際のところは行くあてもなく。アイツに聞いても、『まだあわてるような時間じゃない』の一点張り。確かに急がなければならない理由は無い。ひょっとしたらこれも『必要なこと』なのかも知れないが、この風景の中をただ歩き回るってのも正直疲れるものだ。

「コレが30年後の東京の姿だなんて信じられないな。」
『何も全部悪魔が原因ってわけじゃない。簡単に言えば内戦だよ。』
「内戦? そんな事が日本で起こるなんて信じられないな。」
『まあ日本人に成りすました国外勢力が流入していたって説もあるけどね。定説では大恐慌の後、平等と博愛を謳う反政府グループが、脱資本主義を掲げて武装蜂起したとされている。そいつらがテロ行為を繰り返し、最後は自衛隊と衝突してご覧の有様だ。』
「博愛を謳っているのにか。」
『革命に犠牲は付き物らしい。人間誰しも、自身の矛盾には目を瞑るものさ。』


 ふらりと立ち寄った浅草で奇妙な噂を耳にした。
 どうも「召喚士」なる男が、召喚した悪魔を浅草に放っているらしい。

「何のために悪魔をばら撒くような事しているんだろうな。」
『さてね。修行か、何かの実験か。』
「けど放って置く訳にはいかないよな。」
『いいや、究極的には放置するより他に無いよ。』

 突き放すような言葉。

「どういうことだ?」
『まず浅草にいる悪魔を一掃しても、時間が経てば召喚士が再び悪魔を呼び出す為、根本的な解決にはならないのが一つ。』
「だったら元凶を断てばいいじゃないか。」
『そして次の理由がコレだ。見えるかい?』

 視覚共有による【千里眼】のイメージ。
 今見えている男がどうやら件の召喚士らしい。
 だが、この映像は……。


『どうだい。何かわかったかい。』
「何だ、コレは。気持ち悪くて吐きそうだ……。」

 見えるには見えるが、男の周囲の空間が何とも形容しがたい。こちらの理解が及ばない。見ているだけで頭痛が引き起こされる。どうしようもない生理的嫌悪感。自分でも何を言っているかわからなくなってきた。まともに頭が働かなくなる。


『亜空間と言うやつさ。我々のいる空間からでは決して辿り着くことはできないし、あそこから出ることも不可能だ。空間制御に擬似不老不死。サモナーとしての腕はともかく、魔道師としては一流なんだろうね。』
「どういうつもりでアイツはあんな場所にいるんだ? 永遠にあそこから出てこられないんだろう?」
『不思議だよね。まあ、狂人の考えなど推し量るだけ無駄だと思うけど。』

 理解できない。

「浅草は永久に悪魔の巣窟なのか。」
『浅草に限った話ではないよ。彼が何処に悪魔を召喚するか次第だ。崩れた三界のバランスを何とかすれば、或いは空間も安定するのかもしれないけどね。』

 何を言っているかわからない。いや、それよりもだ。

「ここから離れよう。一刻も早く。」




chapter 12 KORAKUEN     ~ PRELUDE ~

 結局浅草では、有用な情報は何も得られず。
 仕方が無いので都内を回っていたら、後楽園で大規模な悪魔の集団と遭遇した。統率者らしき人影を一瞬視界に捉える。驚いたことにトモハルそっくりだった。さすがにこの時代にトモハルがいる訳も無いので見間違いだとは思うが、何か気になる。

「見たことの無い邪霊がいるな。」
『あれは「邪霊ランスグイル」。多彩な特技を覚えるアジア土着の吸血鬼、だったかな。』
「でも勧誘できないんだろ?」
『そうだね。それ以前に使いにくいので、たとえ可能だとしても勧誘しないけど。』

 まあ、邪霊だしな。

「ランスグイル……。確か毒の魔法だったか?」
『大正解。魔法「ドグラドラル」だね。瀕死の状態で喰らわなければ大した脅威じゃない。』
「ひとまずはそのくらいか。後の事はとりあえず邪霊を片付けてから考えよう。」
『残念落第点。』
「えっ?!」

 正直どこに穴があるのか、全くわからない。

『目を凝らして敵陣奥深くを見てごらん。』
「鬼族に獣、鳥もいるな。そういや鳥が敵で出てくるのは初めてか。」
『そこだよ。鳥の存在を軽視しすぎている。』
「いや、いくらなんでも遠すぎるだろ。」
『それが相手の狙いさ。邪霊で君達を釣って、鳥で本拠地を一気に落とす。そうやって油断していると、一瞬で継戦能力を奪われるよ。』
「確かに鳥の機動力は異常だが……。なら邪霊を深追いしないように気をつけてみるか。」
『そうだね。特にコカクチョウがドルミナーを喰らわないように注意だ。』
「コカクチョウ? ネコマタでなしに?」

 いつでも拠点を守りに戻れるように、ということならネコマタの方を優先すべきと思うが。

『どっちでも良いんだけどね。万一深追いし過ぎても大丈夫と言う意味で。』
「しかし、空対空同士の戦いとか、あぶなっかしいな。」
『大丈夫。こちらのコカクチョウは育っているし、防具もあるし、何より地の利がある。』

 確かにな。

「育成方針はコレまでどおりでいいのか?」
『そうだね。何をおいてもコカクチョウを最優先。エンジェルは絶対止めを刺さないように。』
「で、特技を覚え次第合体か。」
『そ。エンジェルが特技もう一つ覚えるまで頑張る手も有るけどね。今回はパスだ。』

 ひとまず正面のゴーストをエンジェル・ネコマタ・アヤ・コカクチョウで沈める。俺は拠点でもう一体のゴーストを迎撃。瀕死になるように武器を調整。
 事前の評どおり、凄い勢いで敵コカクチョウがこちらに突っ込んできた。うっかり前に出ていたら、本当に拠点を落とされかねない勢い。非常に厄介な相手だ。
 ランスグイルを俺とネコマタで仕留めた後、予定通りコカクチョウを拠点に戻し、ついでに二匹目のゴーストを沈める。ランスグイルが「しっこくのぐそく」を落とした。やはり相手の攻撃が当たりにくくなるらしい。優れた足防具だ。

『だけど何故か「ワーカーじかたび」の方が回避力高いんだよなぁ。』

 アヤとネコマタは下がって相手の出方を伺う。鳥二匹は思いのほか上手く釣れて、拠点を守るコカクチョウに攻撃。かなり削ることに成功。それぞれ俺とコカクチョウで止めを刺す。

 何とか一息。
 次は鈍足の鬼族。速やかに橋まで間合いを詰めて、あっさり屠る。コカクチョウの特技、「ひっかき」の意外な強さが嬉しい。
 そうやって油断していると、視界の外から敵ネコマタの片割れが飛んできて、コカクチョウに攻撃してきた。さすが地対空ミサイル。結構削られる。ただ、能力差が大きいためか、致命的な打撃には程遠い感じ。とは言え、エンジェルの方は速度の問題で致命傷になりかねないそうだ。何れにせよ、好きにやらせて良い法はないので、奥のネコマタはコカクチョウの子守唄で足止め。手前のネコマタも仕方ないので、エンジェルの特技で金縛ることに。

「さすがにヒヤッとしたな。」
『そうだね。局地戦が始まると、視野が狭くなるのは仕方の無いことだけど。』
「皆の命を預かる身としては、そうも言ってられないよな。」
『その通りだ。お互い気をつけるとしよう。』

 単騎先行してネコマタを眠らせたコカクチョウに、見たことの無い妖鬼が寄ってきた。

「『妖鬼イバラギドウジ』か?」
『正解。勧誘可能だけど、今この瞬間は経験値にした方が良いだろうね。』
「了解。上手く釣り出して仕留めるか。」

 大江山に住んでいたと言われる伝説の鬼。その割には、あんまり強そうに見えないが。

『伝説の現物がそのまま出てきているわけではないよ。本体の射影だったり、経年劣化していたり、伝説が誇張だったりと理由は様々さ。大江山に住んでいた茨木童子が、特別な個体だったと考えるのが妥当だと思うけどね。』

 俺は前進して橋を塞いでいるネコマタを仕留め、他の仲魔はコカクチョウに合流させてイバラギドウジに対処。仲魔三体で前線を維持させながら、アヤ・俺の順で合流しようとしたのだが。

「げっ、後ろのジェネレータからゴーストが。」
『貴重な経験値だ。』
「仕方ない。さっさと仕留めるか。」

 上手いこと時間差で発動して、見事な挟撃・分断を喰らうことに。

『あはは、素早い進軍が裏目に出たね。自縄自縛の典型例だ。』
「もとはオマエが『経験値もったいない』とかほざいて、ジェネレータの封印を禁止したからだろ!」

 飛行タイプ二体を戻して、遅れ気味だったアヤと協力させてゴーストを仕留める。同時に俺は沼地に突っ込み、イバラギドウジを仕留めた。沼地は非常に不快指数が高く、いるだけで体力を削られる。
 幸い敵のネコマタはまだ眠ってくれているが、そろそろ起き出してもおかしくない頃だ。こちらのネコマタで隘路を塞ぎ、飛行タイプに敵ネコマタの攻撃が届かないようにする。
 案の定起き出した敵ネコマタだが、大した仕事もできず。同時に、気になっていた二つ目のジェネレータが稼動を開始。モウリョウが出現した。
 俺としては二つとも封印処理したいところだが、アイツ曰く『ダメ、ゼッタイ』。事情はわかるが俺としては不安で仕方が無い。出現悪魔が、コカクチョウ単騎で十分対処可能なものばかりだったのが、せめてもの救いか。この調子ならコカクチョウの特技習得も遠くは無いだろう。
 ひょっとしたらここまで見通していたのかもしれないが。

 ジェネレータはひとまず仲魔に任せて、俺は銃を持って線路に隣接。線路の向こう岸にいる獣の間合いに、敢えて踏み入ることで攻撃を誘う。ところが何と完全スルー。どうやらあの集団は専守防衛組らしい。そうとわかれば好き放題荒らしまわるのみ。
 ちなみに残っていた敵ネコマタは、エンジェルの特技で再度眠らせて、結局こちらのコカクチョウの餌食になった。コカクチョウが目出度く特技「はばたき」を習得。ネコマタもいつの間にか特技を覚えていたので、満を持して合体を開始する。

・ネコマタ×コカクチョウ→闘鬼ゴズキ(バーニングリング)
・エンジェル×ウェンディゴ→魔獣ネコマタ

「オマエが頑なにゴズキを勧誘させなかったのはこの為か。」
『うん。素のゴズキがいると、どう工夫してもエンジェルあたりの特技をエースに引き継げなくなるからね。』

・ネコマタ×ゴズキ→地霊ノッカー(麻痺噛み付き・お調子ボム)


『……穏やかな外見を持ちながら、全ての特技を受け継いで目覚めた、伝説のスーパー地霊殿、ノッカー様だ!』
「種族名に殿って。まあ、気持ちはわかるか。俺もテンション上がってきてるし。」
『人類種に友好的な鉱山妖精。オマケに可愛いなんて言う事無しだよね。』

 地霊ブラウニーの強さは言うに及ばず。その上位者たるノッカーは、一体どれほど規格外の仲魔なのか。
 とりあえずジェネレータ二基はこいつに任せておけば心配ないだろう。 

一方俺は単身線路を越えて、敵拠点を攻めていた。初めて見る「妖獣ドドンゴー」が「しっこくのかぶと」をドロップ。拠点を守っていた他の悪魔も問題なく落とし、制圧は目前。

『ストップだ。一旦停止してくれ。』
「何だよ、あと一歩なんだぞ?」
『制圧するなとは言わないさ。ただ、少し待ってくれないか。』
「何かあるのか。」
『もう少ししたら、ジェネレーターから「堕天使アンドラス」が出現する。』

 堕天使。講義ではまだ詳しくやってない種族だ。

『彼の持つアイテムを頂いてからクリアして欲しいんだ。』
「異論は無いな。俺、結構傷負ってるけど、これでもいけるか?」
『念のため傷薬を使っておこう。』

 そこそこ強い相手というわけか。もしくは魔法系か。ジェネレータから湧いてくるランスグイルを、片端から一刀両断しながら考えを巡らす。程なくしてそいつは現れた。
 かの有名なソロモン王の72柱が1柱であり、確かに強いは強い。高い機動力と強力な魔法攻撃。空を飛んでいるため、こちらの攻撃も当たりにくく、一撃で仕留めることができなかった。
 もっとも、逆に言えばそれだけ。一対一でなら決して負ける相手ではない。あっさり剣の錆にして、「しっこくのよろい」をゲットした。

『お疲れ様。』
「どうって事ないさ。」

 まあ本音を言えば、長い戦いだった。
 気付くとアヤが怪しげなおっさんと話している。あの子はホントに物怖じしないなぁ。

『良い娘だよね、アヤちゃん。』
「オマエ何か、妙にアヤに甘くね?」

 コイツが女に下心とか、何か想像できないが。
 というか、コイツはそもそも男なんだろうか。

『女子高生とか、好きだから!』
「……。」
『……いや、冗談ですよ?』



 オッサンの話を要約すると、「地下鉄の新橋駅に、昭和初期に作られたもう一つの幻の駅があって、そこが異次元とつながっている」と言うことらしい。
 怪しげなオッサンから得た、この上なく怪しげな情報だが、思い出すのは30年前、永田町で聞いたカオルらしき男の情報。そのときに出てきたのも、「新橋にある地下鉄の廃駅」だった。
 俺達には他に元の時代に戻るあてもない。このまま無意味に彷徨うよりはマシだろうと言う事で、ひとまず新橋へ向かうことにした。


『いや、ホント、冗談だからね?』
「……。」



chapter 13 SHINBASHI     ~ RUMOURS ~

 後楽園を抜け、ショップで買い物を済ます。

「またヤリやがった。」
『と言うか、ショップのオヤジ、30年前と明らかに同一人物だよね。人物?』

 やっぱり今回も武具全部2つずつ+α。しかも傷薬や、初めて見るやつ含め状態異常回復アイテムも5個ずつ揃えるという念の入れっぷり。
 どんだけ金遣いが荒いんだよ。

「お陰で財布はスッカラカンだ。」
『だって他に使うこと無いでしょ。取っておいても腐るだけだよ。』
「金が腐るわけ無いだろ。」
『いや、腐ると思うよ? 30年とかしまっておくと、貨幣価値的な意味で。』
「屁理屈を。」
『実際今持ってる全財産は、後になるほどその価値が下がる。1996年でのキミの全財産いくらだったか覚えてる?』

 一理ある、のか?

『まあ屁理屈だけどね。どうしても僕を信じられないなら、僕の信じる【未来視】を信じろ。』
「いや、ダメだよな? それ前提からして間違ってるよな?」


 新橋駅が見えてきた。
 正面泉付近にゴースト。左右にネコマタ。

「例によって泉の確保が最優先だが、ちょっと遠いよな。」
『そうだね。合体によって、育ってたネコマタが消えたのが痛い。』
「とは言え、さすがに泉を無視するわけにもいかないだろ。ユニコーンとタンキを先行させてひとまず確保。後に交代がベストか?」
『素の低レベル仲魔とか不安材料しかないけど、現状代替手段が無いからね。相手に対地火力が皆無なのが救いか。』

 左右に展開しているネコマタが鬱陶しい。うちの獣達は、まあ、最悪やられてもいいか。

「あと気になるのは正面奥の鳥二匹だな。あいつらが突っ込んで来るようだと、最早収拾がつかなくなる。」
『しっかり学んでいるね。その悪い予感は大当たりさ。こちらの主力に対空要素が無い以上、タフな戦いになるよ。』

 うへぇ。読みが当たったのにちっとも嬉しくない。
 ひとまず計画通りに泉の確保に動いて、相手の出方を注視。案の定こちらの獣二匹は袋叩きにされる。
 殆ど何もしていない(眠らされて、たたき起こされただけの)タンキ達を下がらせ、入れ替わりで俺とノッカーが泉を防衛。ノッカーでゴーストを叩くも、異常に耐久が高く仕留められない。ここはケチらず「はばたき」を使うべきだったか。

 下がったタンキを合体に使用。

・ブラウニー×タンキ→邪霊ゴースト
・ゴースト×ゴブリン→妖鳥コカクチョウ


「何か前にコカクチョウを仲魔にしたときと、微妙に違ってるな。」
『永田町の事だね。あの時はユニコーンの特技引継ぎと、敵本営の鬼退治にゴブリンを残すのが目的だったんだ。今回は直ぐに勧誘可能なゴブリンの換わりに、後に使う予定があるユニコーンを残すような合体ルートを選択したのさ。』

 やはり未来知識を前提に合体を考えているのか。

「また『はばたき』を覚えるのか?」
『そうできたら理想的なんだけど、現実には間に合わないだろうね。』
「何かの材料か。」
『その通り。まあ、純粋に戦力としての期待もあるかな。トドメは刺させないけど。』
「妥当だろうな。」
『相手の鳥に集中攻撃を受けたら死が見えるので、コカクチョウは一旦COMPに戻すよ。』

 俺は泥縄的にネコマタを勧誘。召喚まで込みで俺の行動を縛られるため、瞬間火力の不足が心配ではあるが、この戦局では強い味方になるはずだ。
 アヤの防御力に不安が残るが、泉を塞いでおけば回りこめるのは「凶鳥フーシー」のみ。アヤとピクシーを戦線から一歩遠ざけて、下手を打たなけりゃ何とかなる!
 そう思っていたのに。

『気をつけて。後方のジェネレータからゾンビが湧いてきてるよ。』
「クソッ、マジか!」
『慌てるな。ジェネレータから出てきたばかりの悪魔は弱い。アヤとピクシーでも十分対応可能だ。それより急務は鳥共の排除だよ。やつらを野放しにすると、まずい事になる。』

 確かにその通りだ。
 俺達は泉から動けないが、幸い俺にちょっかいかけてきて、隣接しているフーシーが一匹。予定変更してネコマタ召喚を遅らせ、まずはコイツを確実に屠る。残りの一匹は、アヤとピクシーで何とかしてもらうしかないか。
 そう覚悟していたのだが、残ったフーシーも俺に仕掛けてきたので反撃で落とす。他の連中も俺に攻撃を仕掛けてきて勝手に沈んでいく。こいつらアホなのか。

 形勢が一気にこちらに傾いた。今が好機。
 ノッカーが泉を飛び出しネコマタを仕留める。一つ目の特技「マヒかみつき」を覚えた。入れ替わりでピクシーに泉を占拠させ、アヤを回復させる。アヤは適当に遊ばせておく。
 俺も泉の上からネコマタを銃撃。空に浮かんでいるやつでなければ、大抵一撃で屠れるようになった。


「アヤが撃つとちょっと痛そうにするだけだが、俺が撃つと木っ端微塵に吹っ飛ぶよな。同じベレッタなのに。」
『そこはそれ、鍛え上げた筋力のおかげさ。そのうち何ちゃってレールガンだって撃てる様になるよ。』
「理解できない。」
『世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだ。』
「オマエ、そのフレーズ大好きだよな。」

 なんちゃってレールガン。ちょっと心惹かれる響きだ。ただ、どう考えてもベレッタで電界・磁界、何より十分な長さの頑丈なレールを確保できるとは思えない。精々体からパチパチ無駄放電するような、それっぽい静電加速が関の山だろう。

『尤もらしい所で、反動に耐えられるか耐えられないかでしょ。』
「ああー、そういやアヤは一発撃つだけで反動で吹っ飛んでるもんな。」
『実際よくあれで当たるよね。その点キミは全弾とは言わないまでも、相当数一度に打ち込めるから実質的な殺傷力が上がるんだ。適当に言ってみただけだけど。』

 適当かよ。
 ちなみに残存する邪霊の相手は最早消化試合だ。
 確かにタフな戦いだった。



「……なあ。いつまで続くんだ、コレ。」
『そう言わずに。もうすぐだから。』
「無視して先に進んでも良さそうな気がするがな。」

 ジェネレータから延々湧き出し続けるゾンビ。永い、永すぎる。一向に止む気配が無い。

『慌てる乞食は何とやら、ってね。』
「絶対ぼかす所間違ってるよな、それ。」

 こいつがそう言うからには、慌てると損をするというのは事実なんだろうが。
 味方がうっかりゾンビを倒してしまい、一瞬手空きになったので、欠伸交じりにネコマタとコカクチョウを召喚。

「しかし飽きるな。」
『いくら何でも油断しすぎでしょ。』
「油断っていうか、余裕だろコレは。」
『何と言うお美事な死亡フラグ。』

 そうこうしているうちに、やっとジェネレータの動作が止まった。

「ようやく進めそうだな。」
『そうだね。この後はどう進む?』

 脳裏に浮かぶ、戦場全体を俯瞰するイメージ。
 道が左右に二本。どちらも敵の構成は変わらない。更にほぼ完全に分断されていて、互いに干渉し合うようなことはなさそうだ。
 橋向こうの駅周辺に、凶鳥フーシーが四匹とゴブリンが二匹。ついでに未稼働のジェネレータが二基。橋の手前には、ゴブリンやゴズキが、ごちゃごちゃと固まっている。

「常識で考えれば戦力を片側に集中して突破するのがよさそうだが。」
『お察しの通り、部隊を二つに分けるよ。』

 まあ、そうなるだろうな。コイツが言うところの『経験値』とやらを、コイツ自身がみすみす逃がすとは思えない。

「左翼は俺・アヤ・コカクチョウ。右翼はノッカー・ネコマタ・ピクシーで行くか。」
『95点だ。ほぼ完璧だね。強いて難を挙げるなら、君自身の戦闘能力をちょっと過小に見積もっているかな。コカクチョウは左翼では暇になると思うよ。もっとも、キミの作戦でも全く問題ないけどね。』

 尻が痒くなる。

『とりあえず右翼敵ゴブリンの火炎にだけ気をつけて。とは言え、一発なら喰らっても何も問題はないし、そのためのピクシーだろうとは思うけど。』

 ひとまずプランどおりに進軍し、左翼敵先頭の闘鬼ゴズキを勧誘。同時に右翼ノッカーもゴズキと戦闘状態に。一撃では仕留められないようだが、まさかゴズキ相手でもノーダメージとは思わなかった。地霊マジ強ェ。
 ちなみに橋手前に屯していたゴブリンズだが、間合いに入ったにもかかわらず全く動いてこない。どうやら拠点防衛行動を取っているらしい。警戒しすぎたかと思う一方、それを損したと思うようではいけないな、と自分で自分を戒める。

 予想外の展開もあった。最奥の両翼に位置していたフーシー二匹が突っ込んできたのだ。
 てっきり拠点防衛悪魔かと思っていたが、よくよく考えればそんな根拠はどこにもなく。思い込みで作戦を立てることが如何に危険なことか、身をもって知ることができた。損害は殆ど無かったので、多分アイツもわかっていて黙っていたのだろう。情けない話ではあるが、確かにこうして肝を冷やした方が、身に付きやすい気はする。
 飛来したフーシーを力でごり押しして撃墜。その勢いのまま橋手前のゴブリン達も全て一撃で切り伏せる。なるほど筋力特化の鍛錬は確かに歪だが、戦術次第と言うことか。
 乱戦のさなか、橋向こうのゴブリンがこちらに強襲をかけてきて、背中に魔法を一発喰らうも、大勢には影響なし。右翼のノッカーに注意を促さなければ。ひとまずコカクチョウを、右翼橋向こうにいるゴブリンの足止めに向かわせるのもアリか。
 右翼は鳥に苦戦しているらしい。如何にスーパー陸戦兵ノッカーでも、対空火力まで十分とはいかない。どうやら鳥を特技でマヒさせて、殴り合いに持ち込んだようだ。賢いやつめ。拠点防衛組を尻目に、ピクシーとネコマタの援護を受けて何とか撃墜に成功。ノッカーが見事に更なる成長を果たしたらしい。特技習得まで後一歩だそうだ。
 左翼に残るは駅を守るフーシーだけとなっていたが、ずっと稼動していなかった最奥のジェネレータ二基が遂に起動した。しかしこちらも泉で補給して万全の状態。駅の二匹はどうやら動かないようだし、負ける要素は見当たらない。

「慌てる乞食がどうのと言っていたのはコレか。」
『ご名答。最後に出てくる「妖精ドリアード」がお目当てさ。』

 どうせ名前からして、可愛い系の妖精だろう。このスケベヨウセイめ。
 俺はジェネレータに張り付いて、出てくる悪魔を片っ端から切り伏せる。アヤは落ちているアイテムを拾う。「妖刀ニヒル」という禍々しい剣だった。

「なんか扱いづらそうな剣だな。そもそも剣なのに『妖刀』ってのもアレだが。」
『そう言わないでよ。キミにとっては永く付き合うことになる主兵装だよ?』

 うへぇ。いかにも呪われてそうな雰囲気なんだが。 
 しかし実際に持ってみると、しっかり手に馴染む。まるで吸い付いて離れないかのようだ。
 上手く扱うには相当技量が要りそうだが、何だか急に良い武器かもしれないという気がしてきた。

「よし! コイツでジェネレータから湧いてくる悪魔を、虐・殺・DA!」
『おーい、大丈夫かー?』
「だいじょうぶだ。おれはしょうきにもどった!」
『大分侵されてるね。』


 本当に正気に戻ったのは、駅を守っていたフーシーを二体とも切り捨てた、その瞬間だった。
 妖刀ニヒルを握ってからの記憶が、まるで白く霞がかったかのように定かではない。

「俺、どうなってたんだ?」
『剣にのっとられてた。多分バカにした物言いが、ニヒルの気に障ったんじゃないの?』
「マジかよ。」
『と言っても、もう耐性もできたっぽいし、心強い味方だよ。多分。』

 色々と思うところはあるが、まずは状況確認だ。

「俺がラリッてる間、何が起きた?」
『なべて世は事も無し。順調そのものさ。
 ピクシーがゴブリンとドリアードを勧誘したことが一つ。
 駅を守っていたフーシー達が、異様に強かったのが一つ。
 エースである地霊ノッカーが、目的の特技を覚えたのが一つ。
 それに伴って合体を二つ、新エースとサポーター作成をこなしておいたよ。』

・ノッカー×コカクチョウ→夜魔リリム(魅惑噛み付き・イービルアイズ)
・ネコマタ×ゴズキ→地霊ノッカー


「大いに事があるじゃねぇかよ。」

 戦闘自体は楽だったようだが。

『そうだね。まさに死線を背にした戦いであった……。だが、ねんがんの「フェイクバニー」をてにいれたぞ!』
「いや、何となくしか覚えてないけど、そこはそんな激しく無かっただろ。」

 たまにある事だが、話が全く噛み合わない。何故かコイツのテンションが上がりっぱなしだ。

『それはそうなんだけどね。これが私の【ハヤトロギア】全力展開!的な意味で。』

 そういう意味での、激しい戦いか。

「そうまでして入手するってことは、いつか言ってた『レアアイテム』ってやつか。」
『洞察力とスルースキルが良い感じに鍛えられてきたね。まあ厳密にはレアアイテムとは言えないかな。後で宝石と交換で貰えるし。』
「ふーん。ならあんまり有り難味が無いな。」
『それでも宝石は貴重だからね。悪魔のドロップで得るに越したことは無い。ドリアードは無駄に運が高くて心配だったけど、いやぁ良かった、良かった。』


 やはりテンションが高いな。この喜びようはイマイチわからん。

「しっかし、そんなに大層なものか? 不思議なことに防御力はそこそこあるようだけど。」
『ああ、これは防具としての性能も勿論だが、何より重要なのは運が大幅に増強されることなんだ。』
「運、ねぇ……。」

 講義を受けているときにも思ったが、イマイチ実感が湧かない能力だ。

『そうさ。アイテムドロップ率の向上によって、【ハヤトロギア】の使用コストが劇的に減少するんだ。』
「へー、凄いじゃないか。」

 何だろう。いつも回りくどいコイツの、いつも以上に回りくどい感じ。
 嫌な予感しかしない。

『うん。というわけでコレを身に着けてくれないか。』



 ホラ来た。

「オマエ、成人男性たるこの俺に『ウサ耳カチューシャ』を着けろと申すか。」
『そうだよ?』

 それが何か?的な軽いノリで返された。

『うーん、僕にとっても結構な死活問題なんだよね。コレばっかりは譲れないなぁ。』
「知ったことか。俺は」
『仕方ない。あまり気は進まないが奥の手を使おう。』

 奥の手?と疑問に思う暇もあらばこそ。道具袋のウサ耳を俺の右手が光って掴む。

「何だ?! 体が勝手に……」
『大神隊長乙。』

 右手の動きに抗えず、結局ウサ耳カチューシャは俺の頭の上に鎮座する運びとなった。
 アヤがこっちを指差して死ぬほど笑っている。むしろおれがしにたい。


『参ったな。このダメージは戦闘に支障が出そうだ。予想通りだけど。』

 裏切ったな! 俺の信頼を裏切ったな!

「オマエが俺の意思を無視してこんな事する奴だとは思わなかった。」
『う、それを言われると非常に心苦しい。』
「もう誰も信じられない。」
『大丈夫だ。キミを信じる、この僕を信じろ。』
「うるさいだまれ。」
『参ったなぁ。コレ序の口なんだけど。』

 アーアーキコエナーイ。
 不吉な言葉なんてキコエナーイ。




[22653] 攻略メモ
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/24 16:10
*注意書き
 ①以下の文章は全てフィクションと言う態です。
  鵜呑みにして損害を被ることの無いよう、お気をつけ下さい。

 ②SS本編を読むにあたって、このメモを読まなければ理解できないと言うことはありません。
  ゲームをやる予定のない人には無用の長物。
  SSでは無いものを載せるのはちょっと気がひけますが、
  システム的な補足を入れる予定なので、読んだ方が妖精さんの言動を理解しやすいとは思います。
  設定資料的なものと思っていただければ幸いです。
  それ以外の内容はほぼSSのダイジェスト版。逆に1ターンごとの細かい戦術が知りたければSS本編をどうぞ。

 ③そもそも需要があるかは激しく謎ですが、
  一部の人を除き、メモだけ先に読んでも疲れるだけだと思うので、ゲームをプレイしながら読むことをお勧めします。
  スーファミを扱う店はそこそこレアですが、何でも最近「i-revo」なるものがあるようで。


*前書き
 このメモは極一部で不朽の名作と話題の、魔神転生Ⅱを布教するために作成したものです。
 コツを掴むまではエライ難しいこのゲームの、初心者参入ハードルを下げることを第一の戦術目標にしています。
 また合体にまつわるアレコレは、慣れるまでスルーするのが無難かも知れません。

 自然、ヘビーメガテニストの皆様にとっては、
 鼻で笑える内容となっているので、ニヤニヤしつつお読みください。
 以下は言うまでも無く私の主観によるものです。

 ちなみに「*」以下のパラグラフは余談。読まなくても攻略としては機能します。
 内容は主に合体ルート考察覚書。
 初心者は読んでもきっとちんぷんかんぷん。上級者は同じく鼻で笑えるレベル。



-プレイ日記風攻略メモ-

 育成に関して。
 本編中でも述べるが、ゲームシステム的に主人公「ナオキ」1人に経験値を集めるのが吉。
 満遍なく育ててレベル不足に陥ったのは果たして幾周ほどか。

*攻撃魔法の強力な「カオル」一人を育てるのも手か。
 分断マップが厄介なので、慣れてきてから。


 と言っても他の人間ユニットが死んでもGAMEOVERなので、
  ①多少は他キャラも死ににくくするか
  ②完璧な戦術で攻撃を一切受けないようにするか
 のどちらかを選択。

 望ましいのは②で、アヤ・カオルは魔力に極振り、トモハルは速さメイン。
 ただ、マップと仲魔と腕によってはハマる上、どうしても確率が絡むのでリセットゲーになること必至。
 ナオキで倒してもexp5にしかならない連中、又はナオキの進路から遠く離れた連中を倒させて、最低限体力には振らせるのが吉か。

 ナオキはとどめ役の性質上、つよさ(攻撃)振りで育てる。
 速さは命中・回避と何より二回攻撃の発生を制御する重要なパラメタだが、
 攻撃極振りならそもそも二の太刀要らずなので、根気に自信があるなら速さは不要。
 戦術に自信が無いのなら攻撃を受けることを前提に、適度に体力(耐久・防御)や速さにも振って死ににくくするのが吉。
 というか、最初はそっちのほうがお勧め。

*攻撃極振りは、トドメ役としてはメリットが大きいが、
 後述する「祭」に参加できないというデメリットにもなる。
 また、浪漫を追求して40まであげるか、効率を追求して30で止めるかは自由。


 魔力(主に魔法攻撃)、ちえ(主に魔法防御)に関しては、ナオキ的には伸ばす必要が無い。
 魔法防御は欲しいけど、そこ中途半端に伸ばすくらいなら……という。

 運がつかさどるアイテムドロップ率の向上は、特殊プレイにおけるゲーム進行上のストレスを軽減してくれる。
 「アイテムコンプしたいが根性に自信が無い」というのなら適度に運にも振る。
 結局自分の首を絞めることになるので、あまりお勧めはしないが。



 戦闘に関して。
 各チャプター開始時に、敵の所在と間合い及びステータスの確認を心がける。
 手間ではあるが、事故死が劇的に減るため、結局ストレスの全時間積分量は減少する。
 敵の行動パターンやジェネレータ動作も重要だが、その辺は死んで覚えるしかない。
 全マップ1回は情報収集のための捨てプレイをしておくと精神衛生的にgood。

 ハマリを避けるため、枠一つ使ってステージ突入前のデータを残しつつ、
 もう一枠でステージ内セーブを更新して行くのが吉。
 それでも嵌るときは嵌る。

 ちなみにこのゲーム、油断していると所持金が直ぐにカンストする。
 店では金を惜しまず、武器は「全種類」そろえる。防具も必要以上に買うくらいで丁度良い。
 それに気付くとゲームが一段階楽になる。




以下囲みは基本メガテニストにのみ関係する話。

――――――――――――――――――――――――――――――

サブテーマとして
「ぼくのかんがえたさいきょうのなかま」
を一体作成することを目指して攻略していく。

完成形(本攻略では当然の女神様)から逆算するのが合体ルート模索のコツ。
終盤は可能なルートが多すぎて漫然と考えると発散する。序盤はほぼ選択の余地が無いのだが。

各ステージ別(同レベル帯かつ覚え易いという主観)の特技一覧を、
合体が始まるタイミングに合わせて末尾に追記する予定。

またゲームを面白くするための?制約三か条を定める。
①原則撤退しない。(無闇なレベル上げ禁止)
②召喚マップ利用禁止。(同上)
③合体事故は利用しない。(むしろ狙うほうがしんどい)
「原則」とか。我ながら甘えがひどい。

同様の文脈で「総ターン数1000以内クリア」を裏テーマにする。過度のレベル上げを縛る意図。
①を無くしてこれを代わりにしても良いかもしれない。
②は正直やりすぎな気もする。

他にも、そのうち表に出す予定の裏テーマがあと2つ存在。
片方は多分達成可能で、もう片方は多分無理。


①②に関しては色々な意見があると思う。
「魔神Ⅱの醍醐味は、stage1-1でナオキのレベルを99に上げることだ!」という主張もあるだろうし、
実際それが達成されてもゲームの面白さを損なわない辺り良くできていると思う。
だが1000ターン内クリアも含むこの制約は、良く訓練されたメガテニストにとっても、
かなり楽しいゲームバランスに調節してくれるものではないか。



あと、制約ではなく方針として
・最高効率は追求しない
・役に立つ特技は低レベルのうちから積極的に

効率を追求すると、全部レベル80代90代の仲魔で覚えるとかになる。
というか、突き詰めると「効率って何だろう?」的な状態になってしまう。

それに、経験値効率を重視した少数精鋭(笑)だけだと、どんどん戦闘がシンドくなる。(経験談)
必要経験値は若干増えるけど、サポートメンバーを手厚く運用。
ダブリとかも恐れずガンガンいく。その結果、道中楽できる。


最終合体終了レベルは73予定。目指せ、全特技使える女神ラクシュミしゃま。

――――――――――――――――――――――――――――――


本攻略はリセットを多用している。多分ライトSRPGゲーマーの想像を絶するほどに。
本攻略を参考にプレイしようと言う人は、適当に制約を緩めると心労が溜まらずいい感じ。
それでも行けるくらいの遊びは持たせるつもり。あくまでつもり。




○stage1

 stage1では大体レベル10までの仲魔の特技を、
 次ステージにおけるエースユニット、地霊ノッカーに集約する事を目標とする。

 序盤は全ての敵にナオキがトドメ。
 まだ運が低いので大変だが、心が折れない程度にリセットを活用し、なるたけ敵から宝石もドロップさせる。


渋谷

  特に難しいことは無い。
  スライムはトモハルで削り、ナオキでトドメ。
  カオルは敢えて空気に。きちんと間合いを計ればほとんど無傷で行ける。 

  鬼はちと固いので、カオルで削り、トモハルで調整、ナオキでトドメ。
  ナオキで突っ込んで、無駄に発生率の高い邪鬼のクリティカルとか喰らうとしんどくなる。
  すべてナオキで止めを刺すと、ナオキがレベルアップするのでパラメタは「つよさ」振りで。


目黒

  下手に突出して、集中攻撃を喰らうようなことが無ければ負けは無い。
  状況的にゾンビのパラルーも全く脅威にならない。3ターン足を止められるのが嫌ならリセット。
  橋を守る闘鬼は、トモハルで削り、ナオキで仕掛け、敵ターンにナオキの反撃で仕留めるとターン数の節約になる。
  ずっと壁やってたカオルさんは、その間に泉でゆっくり傷を癒す。

  拠点守ってる妖鬼モムノフはそれなりに強い。モノノフではないのか。
  ただ、最後のトレジャー守ってる奴が普通に飛び出してくるので、
  モムノフだけに集中してるとむしろそっちの方が危険。

 終了時ナオキのレベルは4。パラメタはやはり「つよさ」極振り。


ラボ1F

  扉の奥にある部屋で、入り口に陣取る二匹の魔獣タンキが厄介。
  一端手前の部屋の泉まで引いて補給し体勢を整えるか、そのままカオルの足を止めての殴り合いで速攻か。
  慎重を期すなら前者。腕に自信があるなら後者。
  後者のメリットは総ターン数短縮のただ一点のみ。
  カオルが集中攻撃を受けないように、ナオキで二匹目の攻撃を上手く誘導する。

  後半の邪鬼ウストック二匹はRANKが高い。
  特に階段に陣取っているヤツは動かないと思って油断していると、普通に飛び出してきて痛打を喰らうので注意。


 これまで全ての敵にナオキがトドメ。終了時のナオキのレベルは6。タンキより強くなった。 



ラボ2F

  ナオキ一人でそこそこしんどいマップ。相手に泉を取られると面倒。
  本編中では最初の泉に2ターンかけて到達しているが、
  実際にはタンキの行動が読めるのでそれを利用しても良い。

  まず1ターン目、壁から一マス離れて一匹目のウストックを釣って反撃で削り、2ターン目にトドメ。
  二匹目のウストックも釣れる筈なので、反撃で削り3ターン目で壁に隣接しつつトドメ。
  寄ってきたタンキに遠距離攻撃で先制されるが、相手の退路に体を割り込ませて一撃。
  タンキは慌てて逃げ出すわけだが、
  左右で二歩・こちらを追い越すのに二歩無駄にしているので、泉に足を取られても確実に追いつける。
  レベル6で攻撃極振りなら追撃でトドメ。

  道中1ターン適当な泉で補給してさっさと進む。
  ゴーストとか、机を盾にして闘えば一応回避にボーナスがつくが、正直いらない。
  ウストックもクリティカルさえ喰らわなければ、普通に倒せる。

 ナオキのレベルは7。敵が格下ばかりで、さすがに伸びが悪くなっている。


池袋

  DIO起動。
  以降、一部(ウストック・ヌエ・インプなどのダーク悪魔他)を除いて悪魔を仲魔にすることができる。
  とりあえずピクシーのザンに気をつければ十分。 

  仲魔にできるやつは全員勧誘。
  リセットを嫌うなら、アヤでダメージを与えてからtalkで傷薬を与える、ヤクザ的自作自演が有効。
  だけど、リセット前提で話し合いを色々試すと良いことがある。 

  SS本編では話の都合上(怪しさマハギーガの妖精さんのせいでDIO使用のハードルが高いため)、
  第一波のウェンディゴとかを、ナオキ君は勢いでつい殺っちゃうんだけど、全員普通に勧誘するのが吉。 


 勧誘した悪魔の役割について。
 妖精ピクシー(悪魔のウィンク)は回復役。
 魔獣タンキ(子守唄)はトモハル役。
 闘鬼ウェンディゴ(子守唄)は賑やかし。
 妖鬼モムノフ(バーニングリング)も同様。

 妖精は魔法系。序盤はひ弱さをフォローして上手く使えば重宝する。
 泉を活用して、MP切れにならないよう注意する。低レベル悪魔のトドメを狙って特技を覚えておくこと。
 また、ピクシーは隠しマップに行くのに必要なので、合体でレア特技を引き継いだら必ず補充しておくこと。

 魔獣は対地火力が不足しているが、高速・高機動・長射程で、二回攻撃を活かした遊撃がはまり役。
 後の優秀な地対空ミサイルでもある。森の移動コストが低いのも序盤的にはgood。

*タンキは特技習得がRANK2のためダルイと思うかもしれないが、
 常時二回攻撃とクリティカル率の高さとで、削りで稼ぐならむしろ早い。
 移動力も射程もあるので少なくともウェンディゴやゴブリンよりは若干特技を覚えやすいはず。
 根気良くリセットを繰り返して、暇なときは毎ターンクリティカル出してやるくらいの気概で。
 獣は軽車両なので、高速には乗れないことにだけ注意。

 闘鬼(というか大抵の鬼族)は、攻撃力はあるけど普通にプレイする分には役立たず。
 人数少ないときの間に合わせ。後に合体(サラマンダー)材料の主力。
 極力勧誘して大事にして行くことになる。そしてサラマンダーにする。
 ウェンディゴとの会話はまさに本質を突いていて、胸が熱くなるな。

 妖鬼も闘鬼同様賑やかし要員で育てる価値はないが、モムノフがランク4で覚える特技は破格。
 直ぐ後に仲間になる闘鬼ゴズキがランク3で覚えるし、
 それ以降もいくらでも覚える機会があるので無理して育てる必要は無いが、
 覚えて引き継ぐと序盤の戦局を一変させる存在に。
 天使エンジェルに引き継いだりしちゃったりしたら、もうね、もうね、愉悦!

 今回は経験値総量が足りないので完全スルーだが、プレイ方針によってはブラウニーに次ぐ序盤の主力になり得る。
 最序盤は他に駒も少ないことだし、強力な槍を装備させて積極的に狙うのも悪くはない。


 今後の経験値(トドメ)の割り振りは、
 ①ナオキ:最優先。レベル12を目指して頑張る。現在レベル8。遅くとも永田町の魍魎狩りで達成。
 ②タンキ:特技習得まで。リセット頑張れば削り経験値のみでもいける。
 ③ピクシー:後述するポイントを除いて、基本はナオキの足しにならないような低レベル悪魔を狙う。
 ④他の連中にはトドメ経験値あげない。モムノフにまで回す余裕が無い。


新宿

  序盤最強の壁役である地霊のブラウニー(噛み付き・爆弾投げ)を勧誘。

  ブラウニーは、こんなにかわいらしい外見なのにカッチカチ。
  かつ対地相性が軒並み150%の高火力戦車でもある。しかも固有スキル持ち。
  進軍速度を彼に合わせて、最前線で壁役として使えば、ガンガンランクが上がって、ますます手がつけられなくなる。
  逆に、クリアターン数を短くしようとすると、その鈍足が災いして最前線から遅れてしまう。
  ここら辺はプレイスタイル次第だが、できれば優先して経験値を回したい。永田町終了までにRANK3必須。

  彼の斧装備はロマンだが、長剣でも十分強い。
  魔法、特に火炎に対しては文字通りの紙装甲と化すので、後に出てくる天敵ゴブリンには要注意。
  合体に使うのが惜しくなるが、早めに合体させてレア特技を後継者に伝えるのが吉。


  ちなみにヌエ・インプは
  運強化の激レアアイテム「ワーカーズ装備」を落とすので、
  蒐集癖のある人はリセットしてでも奪い取ること。


 クリア時のナオキのレベルは9。目標の12には程遠い。

 新宿を抜けると念願のショップ。金は全部使い切る。ショップ越しの金は持たないこと。
 まず武器は全部最低でも一つずつ揃える。逆に今後絶対に売らない事。
 ナイフや弓は更にいくつか買う。特に「ボウガン」はあとで需要が出てくる。
 逆に槍は需要が少ない。
 本プレイでは序盤に妖鬼・中盤幻魔・終盤魔神と最大一本しか使わない。でも念のため二本買う。
 状態異常回復も五つずつ。
 防具は付け替えて運用する手もあるが、一式×主力人数分くらいあっても良い。


市ヶ谷

  聖獣ユニコーン(どくばり)、妖精ゴブリン(子守唄)勧誘。
  厄介なのは川と線路。獣が完全に足止めされる。
  ただ、これまでタンキできちんと削ってきたのなら、特に問題は無いはず
  駅に置きざりもよし、COMPに引っ込めて奥で再召喚するもよし。
  ブラウニーをゴブリンに焼かれないようにだけ注意。

  正面の泉を邪霊に取れられると面倒なので、タンキで速攻抑える。
  対岸に見える妖精ゴブリンは、ピクシー最大の稼ぎどころ。
  流麗なtalkを仕掛けて(リセットボタンを駆使して)、経験値を稼ぎまくる。
  集中攻撃を受けないように、ポジショニングには細心の注意を払うこと。

  ブラウニーとゴブリンも「ワーカーズ」防具を落とすので狙うべし。
  ナオキ用とブラウニー用の二揃えとか手に入れてしまおうものならstage1は敵無し。
  ちなみに「ワーカーじかたび」だけ「ワーカーズ」ではなく「ワーカー」。八文字制限?



 聖獣は名前負け。種族として大して役に立たない印象。いないよりマシレベル。
 勧誘後即召喚して、トドメを全部譲ってあげる。
 可及的速やかに特技を覚えて合体に。

*ユニコーンとタンキとではまだそれ程差はないが(それでも速度の差は大きい)、最強の聖獣キリンがLv43。
 神獣は勿論の事、妖獣フェンリル(Lv75)や、成長上限が異様に高い魔獣兄弟オル&ケルに比べて明らかに冷遇されている。
 特に妖獣は中盤水上移動で役に立つ場合もあるし。 
 聖獣は確か、砂漠だか荒地だかが得意だったけど、stage6では純然たる役立たずになっている。


 ゴブリンは序盤の対鬼族決戦用削りユニット。
 逆に敵に居るときはこちらの鬼を近づけさせないよう注意。
 特技は役に立つが、さして珍しくも無いので、適当に使い潰す。

 終了時のレベル
 ナオキは11目前。ユニコーンはexp73。
 ピクシーは習得済。タンキは習得寸前。ブラウニーはRANK1成り立て。


永田町

  序盤はタンキ・ユニコーンで。可及的速やかに特技を習得する。
  その後はナオキ・ブラウニーを中心に組み立てる。
  敵ウェンディゴはピクシーにでも相手をさせて、必ず二体とも残しておくこと。
  ステージ中で獣二匹が特技を覚え次第、合体開始。

*召喚マップを利用するなら、残すウェンディゴ先生は一匹でいい。
 二匹目はstage2の浅草で勧誘すれば十分。


・タンキ×ユニコーン→邪鬼ハンジャ(子守唄)
 邪鬼は基本役立たずの上、ハンジャは覚える特技もしょうもないが、
 聖獣の特技をエースに引き継ぐためには必要な手順。

*子守唄の引継ぎはタンキよりゴブリン使った方がハードルが低そうに思えるが、そんなことはない。
 あと、後述する妖精の合体相手の都合上、タンキから引き継いだ方が一手間少なくて済む。と思う。


・ピクシー×ウェンディゴ→魔獣タンキ
 こちらもピクシーのレア特技を引き継いだ地霊を作るために必要。

*全体レベルの関係上、妖精の相手は妖鬼か闘鬼しかいないが、
 妖鬼モムノフは売約済みのうえ、仮に掛け合わせてもできるのが聖獣では扱いにくい。
 というか、低レベル帯の合体は目的をきちんと定めれば、ルートがほぼ一本に決まるので逆にやりやすい。


  ピクシーやウェンディゴなどの最底辺のN悪魔(レベル3,4)は、
  他の低レベル悪魔を作るのに重宝し、逆に真っ当な合体では作れない。
  ウェンディゴ先生は何回でも活躍してもらうため、
  上記合体が終わったらステージ内ですかさず先生をもう一体ナンパ。

  敵殲滅時、ナオキのレベルが12以上になってるはず。
  ブラウニーも特技を習得しているはずなので、敵拠点征圧前に合体開始。
  目的はこのレベル帯での特技の集約(ピクシー・タンキ・ブラウニー・ユニコーン)。


 最初のうちは高レベルユニットをいきなり狙わず、低レベルユニットで回すのがコツ。
 程度問題ではあるが、既に仲間にしたことがあるやつでも気にしないで作成する。
 後になればなるほど低レベルの悪魔は混ぜにくくなる。
 あと、使った悪魔は即補充。コレ超重要。


・ブラウニー×ハンジャ→妖鳥コカクチョウ(引っかき・はばたき)
 ブラウニーと掛け合わせることで、
 チート特技持ちの妖鳥コカクチョウになるのが邪鬼ハンジャの存在価値。
 コカクチョウはstage2で勧誘できるが、
 魔獣聖獣の特技引継ぎ的な意味合いだけでなく、このタイミングでいると敵本営とかもかなり違う。
 目指せはばたき量産。

 ちなみに妖鳥それ自体の性能もかなり良好。
 高速・超高機動、おまけに何故か杖・頭・腕・足装備可能。
 最初のうちは杖が存在しないため、対地火力不足で苦労するが、後に高性能の空対空ミサイル。邪龍イーター。
 当然地上戦力、対空要素には激弱いので注意。
 調子に乗って突出すると、獣に羽を毟られることになる。

*コカクチョウはブラウニーのかわりにウェンディゴを使ってもできるが、
 前述したピクシーのレア特技引継ぎのため、ウェンディゴは需要過剰気味。
 邪鬼ではなく邪霊経由というのもありうるが、ゴブリン無駄に使う上、ユニコーンが上手く消化できない気がする。


 もう一枚の看板作成。
・タンキ×ウェンディゴ→地霊ブラウニー
 ピクシーの血を持つタンキのために、ウェンディゴ先生大ハッスル。まさかの父×母父インブリード。
 更にウェンディゴ三人目を勧誘。
 こちらの反撃を外させるなどして、ウェンディゴ先生を殺さないことが、このマップ最大のポイント。

・モムノフ×ブラウニー→天使エンジェル(かなしばり・アイスストーム)
 鳥獣に弱く動かしづらいが(序盤は防具フル装備で無双可能)、居ると戦術の幅を広げてくれる人。
 かなしばりが馬鹿みたいに使える。アイスストームは他で習得。
 本攻略ではコカクチョウの育成を最優先して、ギリギリRANK1になるよう経験値を調整。


*結局、ピクシーの行き先が魔獣or聖獣しかなくて、
 かつ元からいる、使いづらい聖獣の特技も引き継がなきゃいけないのが面倒の元。
 そこら辺考慮して最終形コカクチョウ・エンジェルから逆算すれば、このルートしかない。気がする。


 これでひとまず特技集約が完了。RANK50とかは除く。
 合体に使った悪魔は適当に補充しておく。

 クリア時ナオキはレベル13。
 後述するが、「闘鬼ゴズキ」は仮に勧誘可能だったとしても、仲魔にしないこと。


☆本攻略のように撤退を縛ったりしないなら、ここでクリア直前に撤退。
 再度チャレンジしてモムノフをRANK4まで上げてから合体すると、この後が馬鹿みたいに楽になる。
 ペナルティは所持金半減なので、ショップでアイテム買い込んで、無一文になっておくのを忘れずに。
 初心者には超お勧めコース。



敵本営

  ゴブリンの群れを一つずつ潰していくことになる。
  エンジェルとコカクチョウを作っていれば笑ってしまうほど楽勝だが、
  地霊や鬼族をまだ残していると、ゴブリンの火炎の餌食に。
  ランクの上がったモムノフに槍とか持たせれば一応対応は可能だろうか。

  その後泉を確保しつつ、
  ①片側のジェネレータは一応コカクチョウ単騎で対応。火力は不足。
  ②もう片方のジェネレータはエンジェル単騎で十分。火力も十分。

  万一、モムノフが未だ残っているようなら、ここで一気にランク4を目指す。
  ちなみに最後に出てくる邪鬼スパルトイは「漆黒」装備を落とす。
  一式そろえると驚異の回避率を叩き出す高性能防具シリーズ。
  リセットゲーで狙っていく。

  獣がいる中央はナオキとアヤが前進制圧。魔獣ネコマタ(悪魔のキス)を勧誘する。
  妙にパラメタが高く(上位のストーンカと同等?)、長く使いたくなるが合体優先で。
  ついでに仲魔に出来るやつは全員勧誘。コレ基本。
 (ピクシー・ブラウニー・ユニコーン・タンキ)




[22653] 悪魔評価表
Name: 774◆0928de07 ID:73a4f91d
Date: 2010/10/26 00:35
何かの参考になったらなったで、な悪魔評価表。
仲魔の選択は若干Law-Light寄りかも。
 
・◎は一点モノ。本プレイでは代替不可。
・○は全特技取得の計画段階で採用予定だった悪魔。本編でも採用されるかは未定なので注意。
 入手難易度、加入時期に応じた戦術的価値・特技及びその習得し易さ、同系統上位存在、要するに適当に評価。
・▲は代替手段。
 計画からは外れたが、価値は○悪魔に劣るものではなかったりそうでもなかったり。
・△は覚えられる特技の種類のみ評価。
 覚えられる特技が良くても、火力・耐久力不足で敵を倒せないので、結局特技を覚えられない。
 外道とか邪霊とか大体ここ。愛か根気があればゲッソー育成も頑張れる。
 セーブ&ロードで同族会話と言う手もあるけど、邪道だよね?

・合体事故 or イベント専用悪魔はリストから除外。
 前者で引き継げる特技はどれも破格だが、今回は自重。
・無印は高Lv悪魔除いて基本使ってない。
 高Lv悪魔(60以上)はどれでも大抵役に立つ。(龍族除く)
・正直レイアウト無理。アルカディアエディタとか誰か開発して。



レベル帯で分けて眺めることで、見えてくるものもある。
本編準拠でレベル73以上の悪魔は基本的に対象外。
RANK50技は割愛。愛があっても普通は無理。
天神・地祇も今回は特技引継ぎ対象外。縛り次第では言うほど習得しにくくはない。
技逆引きとかは、ctrl + Fで頑張れ。

ついでにレアアイテム持ちも記述。店売りと宝箱から入手可能な奴は除外。
ただしラグズショップ購入武具及びダイヤ・ムーンハイドは載せておいた。


投稿予定の文書のなかで、唯一実機で確認を取ってない、いわゆる計画段階のものであり、
万一これを鵜呑みにして何か損害が発生しても、制作者としては関知できないのでご利用は慎重に。



△Lv2 スライム   デスタッチ(1) イービルアイズ(2)
 Lv3 ウストック  マヒかみつき(1)
○Lv3 ピクシー   アクマのウィンク(1)
 Lv4 ゾンビ    かみつき(1) 
 Lv4 ウェンディゴ こもりうた(2)
○Lv5 タンキ    こもりうた(2)            *:子守唄は地味に使える
◎Lv6 ブラウニー  かみつき(1)ばくだんなげ(3)    *:カッチカチやぞ    宝:ワーカーじかたび
 Lv6 モムノフ   バーニングリング(4)        *:火に弱いのにバーニング
▲Lv7 ゴブリン こもりうた(1)              *:タンキには負ける    宝:ワーカーズぐんて
○Lv7 ユニコーン どくばり(1)             *:聖獣は習得特技に関しては優れている
 Lv9 ハンジャ こもりうた(2)             *:レベル8不在とか初めて気付いた。どうでもいい。
○Lv10 ネコマタ アクマのキス(2)             *:妙に強く、育てたくなってしまう
 Lv10 ヌエ マヒかみつき(1)              宝:ワーカーズメット
 Lv10 インプ こもりうた(1)              宝:ワーカーズはっぴ
 Lv11 ゴースト マヒかみつき(1)
 Lv12 ゴズキ  バーニングリング(3)           宝:ワーカーズはっぴ
○Lv12 コカクチョウ ひっかき(2)はばたき(4)      *:存在そのものが罪。何匹でもいけちゃう。
○Lv12 エンジェル かなしばり(1)アイスストーム(3)   *:かなしばりは使い勝手が非常に良い


ここまでStage1。
・スライムは当然のスルー。
・マヒかみつきも、stage2にあてがあるのでスルー。
・バーニングリングまで覚えると相当戦闘で楽をできる。だが拘ると律速条件になるので、今回は合体優先でスルー。
・アイスストームもできればエンジェルで覚えたいが、さすがに無理か。
 どっちみちヘカーテがついでに覚えるので無駄っちゃ無駄だけど、役に立つ特技だし、さすがに待ちすぎ?
 ハクタク・サクヤさんあたりが妥当か。


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