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[22705] 【習作】ウィングアーツファンタジー【オリジナル/ファンタジー】
Name: 水無月イチル◆1e8b8de8 ID:95bd4147
Date: 2010/10/24 14:35
まえがき。

 異世界ファンタジーモノです。

 様々な実際の神話をモチーフにした設定が多々あります。

 基本的に「剣と魔法」のおはなしです。戦闘多め。

 恋愛・ぼのぼのも多少はあるはずです。

 文法の誤りが、誤字脱字、設定の矛盾などがありましたらご指摘お願いします。



それでは、よろしくお願いします。



[22705] 01
Name: 水無月イチル◆1e8b8de8 ID:95bd4147
Date: 2010/10/24 14:29

 月を従えた巨大な惑星があった。表面の八割を海で覆われ、残った二割の陸地を、二つの巨大な大陸が分かち合う世界があった。
 大陸の片方、楕円形の形をした南側の大陸には《レシアーヌ連邦》と呼ばれる、六つの国と一つの特別自治区によって形成される連邦国家が存在し、その名前を取って、大陸は《レシアーヌ大陸》と呼ばれている。北東から南西に向かって、大陸を斜断する形で聳えるのが数千メートル級の山々の連なる《中央山脈》。中央山脈は大陸中央部、《連邦首都》のある場所で一度途切れ盆地となり再び伸びる。その中央山脈と連邦首都の辺りで交差するのは、北西から南東に下る流域面積、幅、長さとどれも大陸一の河川《レシヌ河》。この山脈と河川によって、レシアーヌ連邦は連邦首都を中心として大まかに東西南北、四つの地域に分類されている。また、南端から五分の一の辺りを横一直線に赤道が通り、熱帯雨林が広っていた。
 北側の大陸には、統一国家《グランツ帝国》が唯一存在する。レシアーヌ大陸が温帯から寒帯、亜寒帯、亜熱帯など幅広い気象と四季を持つのに対して、北側の大陸は冬が長く、春から秋が短く平均気温はレシアーヌ大陸に比べると非常に低い。
 二つの大陸は海を挟んで位置し、その歴史は、戦いの歴史でもあった。現在でこそ大規模な戦闘は繰り広げられていないが、記されている限りでは二千年前より南北大陸間の争いは存在した。現在ではほぼ休戦状態となっているが、それも何時、戦争の火種が弾けるかもわからない膠着状態にある。
 世界という舞台は、非常に不安定な足場になりつつあった。


 世界暦一三九七年。レシアーヌ連邦東地方に存在するイーシャ王国内。
遠くには中央山脈が雲を突くように覗く。平地の果てには、中央山脈には及ばないレベルの標高数百メートルの山があった。麓には針葉樹の森が広がり、近隣の村からはやや離れた場所にある、普段は人が殆ど寄り付かないであろう山だった。がしかし、人が寄らないからこそ、寄ってくる者はいた。例えば、盗賊団。盗賊を稼業として行う彼らの場合、街中にドンとアジトを構えるのは、あまり賢い判断とは言えない。そのため、人の寄り付かない場所にアジトを構えるのは盗賊団の常である。そんな例に漏れず、この山の山腹にあいた洞穴を、近隣の村や街を襲い金品を強奪し、女子供を誘拐する盗賊団がアジト兼倉庫として利用していた。先日、近隣の支部から連邦軍小隊が盗賊団の討伐に派遣された。が、しかし。盗賊団の潜む洞窟は非常に入り組んだつくりをしており、突入した連邦軍小隊を待ち構えていたのは不意打ちの嵐だった。結果、連邦軍は三十人中、二十四名が負傷、うち八人は意識不明の重体という結果に終わってしまった。最も、連邦軍の敗退の理由は、盗賊団の不意打ちだけでは無いのだが。


この事態の武力的解決の為に、連邦軍は《ミリティア》の投入を決定。
翌日。《ミリティア》カイル・ワークザスがミリティア本部より派遣された。


森の中に、一人の青年がいた。
黒い髪に、青い瞳。イーシャ王国のあるレクシアーヌ連邦東地方では一般的な髪と瞳を持つ少年。身長は、平均よりやや高い程度。黒を基調としてデザインされた制服が、彼が《ミリティア》の一員である事を示している。腰のベルトから鞘を下げ、中にはロングソードほどの剣が収まっている。


 ガンギンッギン。と金属同士がぶつかり合う音が洞窟内に響く。
 幅一五〇センチほどの短い通路だった。人が二人、すれ違う事が出来るかどうかの狭い通路で、カイルは盗賊団の男と対峙していた。男の手に握られているのは、湾曲した鉄製の《シミター》と呼ばれる片手剣を振るっている。対するカイルは一般的な片手剣とされる《ロングソード》とよく似た形の剣を振るう。黒と白の金属を用いた、コントラストが美しい剣、名を《ノワール・フレイ》、を振るう。
 一見、盗賊の男とカイルは対等に見えるが、盗賊の男が焦った顔で剣を半ば我武者羅に振り回しているのに対して、カイルは余裕すら伺える表情で剣を鮮やかに振るい、盗賊の男が振るう剣を的確に受け止めている。また、剣がぶつかり合う度に盗賊の男が持つシミターの刃が少しずつ欠けていく。

 「く、そォ!」

 盗賊の男が大振りでバランスを崩した瞬間だった。それを待っていたかのように、カイルは剣を上から垂直に振り上げた。キィン、という音と共に、シミターが男の手から離れてクルクルと回りながら洞窟の壁に突き刺さる。

 「終わり、だッ!」

 武器を失い、体制を崩した男の腹部目掛けて、カイルは横薙ぎの蹴りを放つ。真横に吹っ飛んだ男は壁に激突し、そのまま気絶して倒れこんだ。

 「さぁ、次は誰だ? ……言っておくが、俺に不意打ちなんてものが効くと思うなよ?」

 剣を軽く振るい、カイルは通路の先を睨む。そこには同じ様な剣を持つ盗賊団の男達が後ずさりながらもカイルを睨み返していた。しかし、男の一人が剣を強く握り締め、

 「うぉオオォォォォォ!!」

 剣を振り上げながら怒号を上げ、カイルに迫る。続くように、他の男達も叫びながら声を上げてカイルに向かって突っ込んでいく。
 
 「邪魔、だ! 《ブラスト・ブロウ》!」
 
 突っ込んでくる男達に向かって、カイルは手のひらをかざし、叫ぶ。
 ボォッ、という音と共に、純白の光が溢れ、放射状に広がった。
 溢れ出した純白の光は突っ込んできた男達に、衝撃という形で襲いかかる。四人もの男達が一気に吹っ飛んで二メートル以上、宙を舞った。どすん、という音で男達は地面に重なりあって転がる。少しのうめき声に混じって、意識を保っていた男がいた。他の三人がクッションとなって衝撃が少なかったのかもしれない。

 「オマエ、《ミリティア》、か……」


 男の言う通り、カイルは《魔術師》と呼ばれる存在である。
 この世界には《魔術》と呼ばれる、物理法則とは別の《異なる法則》が存在する。
 人の理を超えた、魔の術。いつからか、人々はその術を《魔術》と呼ぶようになった。
 《魔術》は、最低でも数千年前、この世界の誕生と同時に生まれたとされ、世界に存在する《マナ》と呼ばれる物質を、体内で《魔力》に変換し、多様な形で放つのが《魔術》とされている。それは非常に優れた力であり、人の限界を容易く超える。弓矢の普及した世界でも、未だにカイルが剣を使い続けている理由は、本人の剣術の腕もあるが、やはり《魔術》の影響が大きい。
 けれども、《魔術》は誰にでも使える訳では無い。まず、《魔術》を使用する大前提である《マナ》を《魔力》に精製出来るかが《魔術師》であるか否かが問われている。
 その《素質》は完全に先天性の物であり、訓練でどうにか出来る物ではなかった。
 確率は、およそ千人に一人。人口およそ一億人と言われるレシアーヌ連邦には単純計算で一万人の魔術師がいるとされている。その一万人の中でも、特に優れた実力を持つ者を集めた対魔術師組織、《ミリティア》、が存在した。
 連邦軍の特殊機関として彼らは、連邦に存在する唯一で最高の対魔術師機関である。


 報告では、盗賊団は一四人。先程の四人を倒して、残りは三人。不意打ちに備えながら、カイルは狭い通路を進む。範囲は狭いが、周囲の生命反応を感知する魔術を使って索敵を続けてはいるのだが、それでも視界による確認は怠れない。敵の魔術による索敵術式のジャミングを受けている可能性も捨てきれはしなかった。
 カツン、カツン、と歩みの音だけが洞窟に響く。剣を強く握り、辺りを見回しながらカイルがたどり着いたのは広がった空間だった。
 奥行きは三〇メートルほど、幅は十メートル。壁には灯りが配置されていて、薄暗いながらも空間全域を見渡せる程度の光を放っている。その中で、立ち尽くす男が、一人いた。
 身長はカイルより高い、一八〇を超えた長身で薄汚れた色のローブを羽織っている。 
 その右手には、一本の杖。木を丁寧に削り出した、流れるようなフォルムに、先端に鈍い光を反射して放つ珠を持つ、一五〇センチほどもある大きな杖だった。

 「……ッ!?」

 カイルは、思わず後ろに下がっていた。男の持つのは赤い珠の付く杖。赤という色は《四大属性》の《火》を表し、《杖》は同じく《火》を象徴する武器でもあった。それが表す意味は。


 「《フィア・ボアム》!!」


 カイルより先に動いたのは、敵の魔術師だった。一気に魔術名を叫び、杖を、先端で円を描く様に振るう。赤い珠が光を纏い、そこから轟々と燃え盛る炎が現れた。
 炎の魔術師は、先端に炎を宿した杖を振るう。宿した炎は、直径五〇センチもの玉となってカイルに真正面から襲いかかる。

 「―――ッ!!」

 真正面から迫る、触れれば黒焦げになるであろう、炎の玉に対して、カイルは剣を構える。魔術の発動と共に、カイルの剣に白い光が纏われた。下げた剣を斜め上に振り上げる形で、白い軌道を描きながら剣と炎の玉が激突する。
 ゴゥッ、と赤い炎と白い光が勢いよくせめぎ合って空気が揺れた。そのまま、カイルが剣を振り上げると、炎の玉がゆらぎ、歪んで、そしてボンッとい音で弾けた。小さな火の粉が降り注ぎ、薄暗い空間を裂く白い軌道が残っていた。

 「行くぞ……!!」

 魔術には多種多様なタイプが存在する。先程の様な遠距離攻撃や、近接用魔術、索敵魔術、そして自分自身を強化する魔術も存在している。
 カイルが使用するのは身体能力を飛躍的に向上させる《エンハンス》系統。それによって強化された身体能力は、人間の限界を突破する。例えば、敵の魔術師との距離を数秒で詰められる程度に。
 バンッ、と大きな音が響く。それが、カイルが地面を蹴った音だと確認する前に炎の魔術師は再び魔術を放つ。


 「《フィア・ボアマス》!!」


 杖で描いた円の線状にボッ、ボッ、ボッ、と連続で八つの炎の玉が灯る。八つの炎の玉は、見えない円形の糸に繋がれた様に連動して回る。その間隔は少しずつ狭まってゆき、やがて、炎の玉が中心に集中した瞬間。
 ボンッ!!と八つの炎の玉が同時に弾けた。それぞれの玉は、多方向からカイルに迫る。
それに対して、カイルが慌てる事も、黒焦げに焼き尽くされる事も無かった。


 「《ウェポン・エンハンス》―――ッ!!」 


 冷静に、魔術を発動させる。先程よりも纏う白い光が多くなった剣を、カイルは振るう。炎の玉の数は八倍になったが、一つ一つの大きさ自体は半分以下になっていた。ならば、と、カイルは小刻みに剣を振るう。前へ進みながらも、迫る火の玉に対して剣を叩きつけるようにして、白い光で炎の玉を打ち消していく。
 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、と。カイルは次々と炎の玉を打ち消しながら前へと進んでいた。爆風と共に最後の炎の玉が破裂し、煙の先からカイルが現れるのを、炎の魔術師は見た。


 「《ブラスト・ブラッシュ》!!」
 「ふぃ、《フィア・ボアム》……!!」


 炎の魔術師がカイルに向かって放った炎の玉は、カイルの右肩の上を通り、洞窟の壁に激突して赤い炎を散らした。対してカイルの剣には白い光が集中する。武器を魔力の光によって覆い、性能を強化する魔術である。

 「はァッ!!」

 振り上げた剣を、カイルは思いっきり地面へ叩きつけた。剣に纏われた白い光が、地面に叩きつけられ衝撃という形で拡散する。炎の魔術師は体の調子近距離で衝撃を受け、勢い良く吹き飛んだ。

 「が、はッ……」

 地面に叩きつけられた魔術師は、最後に呻き声を漏らして気絶した。


 残ったのは、盗賊団の非戦闘員、盗品の処理を任されていた者達だけで、カイルと魔術師との戦闘が終わった所で、向こうから両手を上げて現れた。残った二人を拘束した所で洞窟外部に待機していた連邦軍が突入。カイルの活躍によって無力化した盗賊団達を一人ひとり、確実に拘束して行く。
 その後、盗賊団の輸送に付き合ったカイルは、近隣の連邦軍支部に出向き、詳しい事情聴取や戦況報告を行っていた。一通り終わって支部の受付ロビーに戻った頃には、午前二時を回っていた。宿泊に関しては軍側が用意してくれたというので、今夜はそこに泊まる事になっている。

 「起きている、よな」

 壁に並べられた電話ボックスを見る。街中に設置してあるそれと型は同じだが、こちらの電話ボックスはコインを投入する穴が取り外されている。関係者ならば誰でも無料で使う事が出来るらしい。カイルは電話ボックスに入り、テンポよくボタンをプッシュする。しばらくすると、プルルルルと等間隔のコール音が聞こえ、それが¥は三回繰り返された所で途切れた。

 『はい、もしもし? うん、カイル君だね。任務お疲れ様』

 電話に出たのはまだ若い声だった。こちらは声すら出していないというのに既に正体を見破られている。おそらく、連邦軍支部の番号から推測したのだろうとカイルは思う。

 「どうも。……知っていると思うが、一応は報告だ。まだ寝てないと思ってね」

 『勿論さ。僕にとって睡眠など三時間で足りるよ。それに、最前線で君達が命がけで戦っているんだよ? 僕らは出来うる限りのサポートをする責任がある。そんな簡単に安めはしないさ』

 「そうか。まあ、一応の報告だ。切るぞ」

 『うん、じゃあ、次に会う時は本部かな? じゃあね、おやすみ、カイル君』

 ガチャッ、と受話器を置く音が向こうから聞こえて、電話が切られた。ツーツーと無機質な音が聞こえる。



 この世界には《魔術》が存在する。
 世界の平穏を脅かす《魔術》に対抗する《魔術師》の組織。
 人々はそれを《ミリティア》と呼んだ。


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