メルディアナ魔法学校を卒業したネギ・スプリングフィールドは卒業証書を握り締め中身をあらためようとしていた、なぜなら卒業証書に浮かぶ修業内容。それは立派な魔法使いになるための試験、ネギの後ろからアーニャとネカネが覗き込む。
「「「日本で、先生をやること……」」」
直後、学校の廊下で三人の悲鳴が響いた。十歳になったばかりの子供が、先生をやるなんて前代未聞のことだから。
校長に問い詰めるアーニャとネカネ、特にネカネは執拗に校長を黒い笑顔で問い詰めている。それを見ていたアーニャとネギは二人仲良く引いた、どうやら修業内容は変わらないようで。校長が気絶しネカネはにこやかな表情で振り向き、ネギを見る。ビクッと怯えるネギ、他人のふりをするアーニャ。
「ネギ、日本に行くのなら色々学ばなくちゃ。ね?」
「……う、うん! 勿論だよお姉ちゃん」
答えるのに間があったのはしょうがない、ネカネは笑顔でも目が笑っていなかった。そして始まるネカネによる、ネギの先生勉強。
「いい、ネギ? 女の子には優しくすること! 間違ってもくしゃみで服を破ったり、失恋の相がでている女の子にそれを教えたらダメよ。あと、魔法を見られて対処するとき記憶を消そうとしてパンツを消さないように! いいわね」
「は、はい!」
先生勉強と言うよりは、やけに具体的な内容だった。むしろネギの失敗をさせないように、一般常識と魔法の制御をしっかりと教えているような気がする。
「そしてこの子には十分、気を付けること! 会う事はないなんて甘い考えを持たないように、会ったら全力全開でぶつかって先生としてお話するのよ。そのために、私が考えた『きゅうけつきのたおしかた・しょきゅうへん』を日本に行くまで見ておきなさい」
ネカネがまほネットで検索し見せたのは闇の福音、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの写真。その外見は少女でも中身は真祖の吸血鬼、その対処を書いた本をネギに渡した。日本に吸血鬼がいるとは思えないが、それが甘い考えだったと後にネギは知る事になる。
長いようで短い三週間、日本語をマスターしネカネの授業を受けたネギは日本の麻帆良学園都市に向かうのだった。
麻帆良学園中等部エリアに到着したネギ、彼は失恋の相がでていた女子学生に、生暖かく頑張れ視線を送り迎えにきたタカミチに案内され学園長に挨拶。
指導教員のしずな先生と一緒に担当する2-Aのクラスに着き、その廊下で名簿を渡された。緊張しながらも確認のために開いてみる、ネギの目に入ったのは――
出席番号26、Evangeline.A.K.McDowell。写真には無表情の長い髪をした少女が映っている。
(ん?)
どこかで見覚えがある顔と名前、もう一度見なおす。
出席番号26、Evangeline.A.K.McDowell。
何度確認しても変わらない、ネカネに聞いた通りの闇の福音が担当するクラスにいた。まだ渡された本を最後まで見ておらず、心構えも出来てないネギは迷わずしずな先生に告げた。
「しずな先生、クラスチェンジで」
「はい?」
ネギ・スプリングフィールド、教育実習生初日にて早くも弱音をはくのだった。
魔法先生、はじめます
0時間目『魔法先生を諦めて、普通の男の子に戻ります?』