2010年8月27日 9時40分 更新:8月27日 11時14分
宮崎県の東国原英夫知事は27日、基幹産業の畜産を存続の危機にさらした家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の終息を宣言した。感染封じ込めのために殺処分された牛や豚などの家畜は約29万頭に達した。発生が集中した川南町など県央部の家畜がゼロになった地域では「観察牛」を導入して11月にも経営を再開する。大きな打撃を受けた地域経済を再建させるため県は300億円規模の基金を創設予定で、再生・復興が今後の課題となる。
知事は県庁で会見し「昨日までに口蹄疫ウイルスを撲滅するための措置を完了した。4カ月余りという長期間に及ぶ苦闘だったが、関係の皆様の必死のご努力により、この日を迎えることができた」と終息を宣言。ウイルス封じ込めのため家畜を犠牲にした畜産農家、防疫作業に従事した関係者の苦労、県内外から寄せられた義援金などの支援に対し感謝の言葉を述べた。
知事はまた会見の中で「やっとこの日を迎えられた。感無量だ。まだまだ復興に向けて一抹の不安もある。牛豚を入れて、軌道に乗ることが終息、安全宣言だと思う」と語った。
口蹄疫は4月20日、都農町の肉牛繁殖農家で見つかり、国内では00年以来10年ぶりの確認だった。感染は5市6町に拡大し、最後に確認された7月4日の宮崎市まで被害農家は計292例に上った。
また、感染拡大防止のため5月18日に出された非常事態宣言は県民のイベント自粛などを求め、風評被害も拡大した。家畜の殺処分を終えて先月27日に県は非常事態宣言と移動・搬出制限区域を解除。県内の農家約8100戸への目視などによる清浄性検査でも異常は確認されなかった。終息に向けて課題だった畜舎に残った家畜の排せつ物に含まれるウイルスの無害化処理も26日で終えた。国道などで実施されていた車両消毒も27日午前0時で打ち切った。
県内では29日、高千穂町での肉用子牛の競り市を皮切りに県内8家畜市場が順次再開する。
県は今後5年間の経済損失額を2350億円と試算。策定した復興方針では、防疫や環境に配慮した畜産経営の再構築を掲げている。復興事業実施に不可欠な基金に対して政府は支援額を明確にしていない。【石田宗久】