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教員紹介

川嶋 辰彦
カワシマ タツヒコ 教授

担当 [本年度休講]
略歴 1964年 東京大学経済学部卒業
1966年 同大学大学院経済学研究科修士課程修了
1969年 ペンシルヴァニア大学大学院修士課程修了
1971年 同大学大学院博士課程修了
同  年 Ph.D.(Regional Science)取得
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研究室
<研究分野>
空間経済学(都市・地域・農山村・交通・人口・情報・環境・国際協力・ヴォランティア活動等を考察対象とする複合的研究領域である「地域科学」の、サブセットとして位置づけられる経済学的学問分野)、計量経済学・統計学、ODA・NGO 論、ヴォランタリズム論。

<主要業績>
専門領域関連論文等(書評・随想を含む) 約130篇

<メッセージ>
 1970年代初頭、最適交通混雑税を説明する従前からの理論に対して、僕は初めて批判的な疑問を抱きました。その後、20年間近くにわたり折り折りの考察を重ね、1980年代後半に下図で表わされる枠組みに辿り着きました。同図構築の狙いは、MSCf曲線(第一象限)に上側反転部が存在することを証明し、そのうえで、反転部(超混雑状態)に位置する最適交通混雑水準点P11”の理論的意味付けを試みる点にありました。このささやかな成果は、僕の研究で漸く達することのできた眇たる一歩にすぎません。今後の研究作業でも、同様に小さな一足一足を更に前方へ運び続けられるよう、努めたいと存じます。

〔図の出所: T. Kawashima, “Optimum Level of Traffic Congestion Taxes: An Outgrowth of Else's Approach,” New Frontiers in Regional Science: Essays in Honour of Walter Isard, Volume 1, Manas Chatterji and Robert E. Kuenne(eds.), MacMillan Press, Houndmills, Hampshire, UK, 1990, pp. 318-341〕

GONGOVA(学習院海外協力研修プログラム)
 「GONGOVA」は、草の根的な対途上国国際協力NGOヴォランティア活動と取り組む、大学内の課外活動プログラムです。
 「GONGOVA」の主な狙いは、タイ国北西部山間地域の山岳少数民族居住僻村に滞在して労働作業に汗を流し、山村の社会・経済・生活基盤の整備及び自然環境の保全に聊かなりと資するとともに、参加青年達の国際性、ヴォランティア性、非偏見性、創造性、寛闊性、自立性、及び強靭性を涵養し、堅実な体験に根差した広やかな夢と希望を語る意気を培い、併せて持続可能な自然環境の価値に関するより深い認識を促すことにあります。
 我が国の青年達が発展途上国の不便な山村へ率先して赴き、必ずしも容易ではない諸条件の下で生活を試み、ヴォランティア作業に自ら携わることは、当該地域の生活環境の向上に寄与し、国際的な相互理解と協力親善に役立つのみならず、冷静な判断力と的確な行動力を培い、他者の痛みへの共感を養い、社会貢献の喜こびを手応え豊かに味わい得る好個の機会と申せましょう。
 更に現地山村滞在の経験を通して青年達が、国際協力の切り口でNGOとODAの補完的・競合的意義を考察し、人間が個々に有する人種・民族・国境を越えた掛け替えのない価値を改めて認識し、タイの経済・社会・文化の特性を学び、アジアの歴史・現在・将来に思いを巡らし、且つ、寛厳併せ持つスケールの大きな自然環境と親しく向かい合う姿勢は、創造的で器量の大きな人格形成に与って大いに力があると思料されます。
 以上の観点に立ち、1997年以来毎年「GONGOVA」を企画・実施(タイ国滞在期間は約4週間)致して参りました。2008学年度のプログラムは、従前のGONGOVAで執り行ないました諸種の作業成果を対象に、それらの補強・修復を主目的とする最終的フォローアップ作業を実施し、GONGOVAの幕を閉じる予定です。

<偏見の陥穽(かんせい)と学問の視座>
 ピアノ、或いはハープシコード。一オクターブの音程間隔に、七つの白鍵と五つの黒鍵が並ぶ。J.シベリウスは、フィンランドの作曲家。彼を記念する音楽博物館が、同国最古の都市の一つトゥルクに在る。館内の一角に陳列されている、一台のハープシコード。見所は、通常の鍵盤楽器と比較し白鍵と黒鍵の着色が逆になっている姿。即ちこの楽器では、七つの黒鍵と五つの白鍵が、一オクターブの間に並ぶ。   不思議なことでは多分あるまい。
 鬼。ヒトが折々心に描く想像上の存在。大抵は、怖れの象徴。立春を祝う節分の夕暮れ時に、ヒトはオニを自分の家から追い払おうと試みる。「福は内、鬼は外」と声をあげ、鬼打ち豆をまきながら。オニにとっては、寂しい夕暮れ。翻って、嬉しい事実がある。場所は、鬼瓦(おにがわら)の生産地、愛媛県越智郡菊間町。同町の鬼瓦出荷額の対全国シェアーは、凡そ五パーセント。決して小さな数値ではない。この町の遍照院では、節分の日に餅と豆が境内でまかれる。当日境内ではにこやかな掛け声が響く、「福は内、鬼も内」。   不思議なことでは多分あるまい。
 ホタル。子供時代に経験した、夕間暮れの蛍狩り。その頃は竹ぼうきと虫かごを手にして、茂る樹木の蔽う川岸を辿った。友達と、「ほーほーほーたる来い、こっちの水は甘いぞ、あっちの水は苦いぞ」と、歌いながら。僕は今度、孫達を含めた三世代一緒の家族キャンプで、ホタルの「燈(ともしび)狩」を味わう際に、皆でそれぞれ画帳とペンライトを携えて歩いてみたい。「ほーほーほーたる来い、こっちの水は甘いぞ、あっちの水も甘いぞ」と歌い、ホタルの明滅する穏やかな光をスケッチしながら。どちらの水も揃って甘いホタルの川辺。  不思議なことでは多分あるまい。
 点灯された自動車のヘッドライト。夜間や照明不十分なトンネルの中など、暗闇の道路交通の安全には不可欠。しかし、雨天や曇天の日には、日中もヘッドライトの点灯に心がけたい。その結果、他車の運転手に自分の車の存在をいち早く認識させ、すれ違いや追い越し走行との関連で道路交通の安全性は顕著に高まる。日中の点灯。  不思議なことでは多分あるまい。
 黒白反転鍵盤、福は内と鬼も内、あちらの水とこちらの水は同じく甘い、ヘッドライトの日中点灯。これらは、「大学時代には学問を心ときめく友として大切にしたいヒト達」にとり、多分乞われる肝要な視座の在り方。常識に投げかけられる疑問が秘める価値、常識にとらわれないしなやかなアプローチの価値。  不思議なことでは、もちろんあるまい。
〔備考〕 本稿は 『Auto Camp』(1999年10月15日)のコラム「ハナイカダ」に収録の筆者の短文に、加筆修正を施したものである。
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