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東大医科研病院:がんワクチン投与の1人が出血

 東京大医科学研究所(清木元治所長)は15日、医科研病院で08年に実施した「がんペプチドワクチン」の臨床試験で、ワクチンを投与した膵臓(すいぞう)がん患者1人が消化管から出血を起こしていたと発表した。医科研は出血を「重篤な有害事象」と判断して院内倫理委員会に報告したが、ワクチンを提供した国内約30の医療機関にこの事実を伝えていなかったという。

 がんペプチドワクチンは、がん細胞だけを攻撃する特定のリンパ球を体内で活性化させる治療法。開発した医科研がワクチンを全国の医療機関に提供し、食道がん、大腸がんなどで臨床試験が実施されている。

 医科研によると、患者は投与開始から2カ月後の08年12月、消化管から出血したため中止。患者は小康状態となり退院したが、入院期間が約1週間延びたため、厚生労働省の臨床研究倫理指針に基づき院内の倫理委員会に「重篤な有害事象」として報告した。患者は退院の約1年後、がんで死亡。同じ試験に参加していた5人に異常は見られず、試験は昨年5月に終わった。

 ワクチン提供先の医療機関に知らせなかった理由について医科研は「医科研病院が単独で実施した臨床試験で(他施設に)報告義務はない。以前実施された共同研究で同様の症例があり、情報は既に共有されていると考えた」と説明する。

 消化管出血は膵臓がんに見られる症状で、医科研は「ワクチン投与と出血との因果関係を100%否定はできないが、出血はがんによるものとみられる」としている。厚労省は「被験者への説明がきちんと行われていたかなどを含め調査したい」と話している。【河内敏康、佐々木洋】

毎日新聞 2010年10月15日 20時14分(最終更新 10月16日 0時58分)

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