2010年10月25日0時22分
【南京=奥寺淳、重慶=峯村健司】中国西部の甘粛省蘭州と陝西省宝鶏で24日、日本への抗議デモがあった。地元住民らの目撃情報によると、蘭州では100人以上の若者らが「日本製品ボイコット」などと叫んで行進。宝鶏では約2千人の若者らがデモに参加した。「多党制を導入せよ」「住宅が高すぎる」といった横断幕も掲げられ、中国共産党・政府を直接批判する訴えが現れ始めた。
23日には四川省徳陽でデモが起きており、中国当局はデモ封じ込めに各地で厳戒態勢を敷いたが、収入格差などの問題が深刻な内陸部の中小都市で2日続けてデモが起きた形だ。反日に紛れて、当局への不満も噴出し始めた事態に、指導部は極めて神経をとがらせているとみられる。
宝鶏は16日にデモがあった陝西省の省都西安から西に約170キロにあり、人口370万人。鉛生産が盛んな工業都市だが、沿海部の都市に比べると収入水準は低い。役人の腐敗や不動産価格の急激な上昇に対し、市民からは不満の声が出ているとされる。
目撃者によると、デモ隊は反日スローガンは赤色の横断幕、中国政府への批判などは緑と青の布と区別して行進を始めた。共産党の一党支配体制への批判のほか、「馬英九(台湾総統)、大陸はあなたを歓迎する」との文言もあったという。治安当局は横断幕を没収。数名が連行されたとの情報もある。
一方、デモの呼びかけがあった江蘇省南京では24日、100人ほどの若者らが集まったが、治安当局に排除された。重慶でも大学当局が学生の集団での外出を禁じるなどの措置でデモを封じ込めた。
これに先立ち、中国外務省の馬朝旭報道局長は23日夜、日中関係改善に向けた22日の前原誠司外相の発言に「留意する」との談話を発表。「日本とともに努力し、戦略的互恵関係を推進させたい」とした。