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所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

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日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.10.25

 ワシントン報告 財政難で対日強硬姿勢 米の軍事費削減 

カテゴリアメリカ政治・軍事出典 琉球新報 10月25日 朝刊 
記事の概要
11月2日の中間選挙まで1週間と迫り、街中に候補者のポスターがあふれ、米国は選挙モード一色になっている。

大方の見方では、下院で与野党逆転、上院で伯仲とされ、野党の共和党が勢いづいている。

共和党は伝統的に巨額の国防費を支持する立場だが、かつてない財政難に予算を削減を訴える候補が出てきている。

ケンタッキー州出身の候補者は自身のウェブサイトで、「国防費は膨大な無駄。社会保障に充てるべきだ」と堂々と批判。

13日には、軍事費削減に賛同する共和党を含む国家議員57人が、国家財政責任改革委員会に「冷戦は崩壊したのになぜアジアや欧州に米軍を駐留させるのか」と書簡を送った。

同盟国のイギリスが国防費の8パーセント削減を発表したことも相まって、連日のように軍事費の関連記事が紙面に載り、国防総省は逆風をかわせない状況だ。

しかし国防総省に言わせれば、削減が進まないのは「議会のせい」らしい。軍や軍需産業が地方の雇用の受け皿となり、削減に反対する議員が少なくないからだ。

それでも国防総省は、向こう5年間で1兆ドルの削減を目標にしている。

ワシントンで発生した軍事費削減のハリケーンは、全米を巻き込んで議論に発展しつつある。来月、議会に新しい議員の顔ぶれが揃えば、さらに議論が本格化するだろう。

そこで日米両政府は期限切れが迫る”思いやり予算”を協議し、日本は大幅削減を要求するが、米側は尖閣諸島をめぐる中国の脅威を引き合いに、在日米軍の重要性を訴えて反対する。

このように米国が強硬姿勢に出る背景には、国防費削減の事情が大いに関係している。日本が減額しないように、アメリカはあらゆる脅威を煽り、駐留を確保しようとする。

彼らの理論構築の底辺に何があるかを知ることで、交渉の内実が見えてくる。
コメント
尖閣諸島の漁船衝突事件は、中国でいつ国内問題の批判に転化しかねない反日デモを誘発して中国政府は困っている。

菅政権は対中・弱腰外交の批判に晒されて支持率を低下させた。日中共に大きな痛手を被った。

しかしアメリカ政府は、中国と日本ばかりかASEANに対してまで、アメリカ海軍の存在感を強調して見せることができた。

今回の尖閣問題で、一番得をして喜んでいるのはアメリカであることは間違いない。

これでアメリカはひとまず安心し、普天間移設問題を日本に厳しく履行を求めて来ないと思う。日本に厳しくしなくとも、思いやり予算を削減されることはないと読んだからである。(”思いやり予算”は”環境整備費”と名称を変えるだろう)

結局、普天間騒動は何だったのか。

ただ一つだけ今までと違うことは、住民(沖縄県民)が団結すれば、安全保障という国の専管事項で、日米両政府合意という錦の御旗に勝てるという実例を作ったことだと思う。

これは沖縄の歴史の重要な転換期で、新たな沖縄の歴史が始まったように思える。
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