「体操世界選手権第7日」(22日、ロッテルダム)
個人総合決勝を行い、男子は北京五輪銀メダリストの内村航平(21)=日体大=が92・331点で2連覇を達成した。06、07年の楊威(中国)以来史上3人目、日本勢では初の快挙。初代表の植松鉱治(コナミ)は8位入賞。女子は田中理恵(日体大大学院)が17位、前回銅メダルの鶴見虹子(朝日生命ク)は21位。16歳のアリーヤ・ムスタフィナ(ロシア)が61・032点で初優勝した。
第8日(23日)の種目別決勝の男子床運動で、内村は2位となり大会3個目のメダルを獲得。
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最終種目、“体操の華”の鉄棒。場内の視線が集まる最大の見せ場で、160センチ、54キロの小さな体が、微動だにしない着地を決めた。この日一番の笑みがはじけたのは、この時。右手を誇らしげに突き上げる内村に、称賛の拍手が降り注いだ。
2位のボイもミスは少なかったが、内村は別次元の強さを披露した。6種目合計の内訳では、技の難しさを示す演技価値点で1・5点高い構成ながら、美しさ、正確さを表す実施点でも1点近く上回った。痛めていた左肩を「つり輪の後は痛かった」とさすったが、負傷の影響など感じさせない演技だった。
それでも鉄棒に小さなミスが出たことを悔やむ。「失敗したのは嫌だった。鉄棒ですごい得点を出すやつがいたら、どうだったか」。落下で1点、不安定な着地で0・1〜0・5点といった減点を最小限に抑えた時に、21歳は最も大きな喜びを感じる。
限界はまだ見えない。日本選手団の塚原光男団長は「まだ全種目で伸びしろがある」と言い、体操王国の中国人記者すら「現状では敵無し。いつまで勝ち続けるのだろうか」と絶賛した。
世界をリードする求道者は「ミスをしないことが一番。これから先、何回やっても失敗しない演技を作り上げないといけない」。終わりのない道を見つめている。