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きょうの社説 2010年10月25日
◎待機児童対策 地域特性も考え柔軟な対応を
待機児童対策を推進する政府の「待機児童ゼロ特命チーム」が始動した。認可保育所の
入所を待つ待機児童は首都圏など大都市部に偏っており、直近の調査では、北陸は富山、石川、福井の三県ともゼロである。地域差が大きい上、景気の影響も受けやすい。菅直人首相は11月中旬までに基本構想をまとめるよう指示したが、財政負担も伴うだけに全国一律ではなく、それぞれの地域特性や経済動向なども考えて柔軟に対応していく必要があろう。そのためには、厚生労働省だけでなく文部科学省など関係省庁が垣根を越えて連携しな ければなるまい。特命チームが首相官邸に置かれた意味は、省庁横断の政策を進めることにもあるはずだ。 厚労省の調査では、昨年10月1日時点の待機児童数は約4万6千人(前年同月比5千 人増)で、4月に比べると1・8倍に急増している。不況で職を求める母親が増えたことが一因とみられる。 政府はこうした状況に即応する施策の一つとして、保育所の面積や保育士の配置基準な どの見直しも検討する。安全性などに問題がない範囲で、規制の緩和や弾力的運用は考えられてよいだろう。さらに、小学校や公共施設の空き教室、空きスペースの活用、民間事業所内の保育施設の開放、幼稚園との連携なども推進したい。 北陸の各県は、待機児童が現在いないからといって、あぐらをかいているわけにはいか ない。今後の保育サービスの在り方について絶えず目配りが必要である。 2007年度策定の政府の「待機児童ゼロ作戦」は、保育サービスの利用児童数を10 年間で100万人増やす目標であったが、今年1月に閣議決定された「子ども・子育てビジョン」は、女性の就業促進を念頭に、認可保育所の定員を今後5年間で計26万人増やす新たな目標を掲げている。 この目標の達成をめざすとなると、待機児童ゼロの自治体も保育所の拡充に迫られる。 が、目標の実現に必要な予算額や財源などはまだ示されていない。将来の保育サービスの道筋が見えない自治体の不安、もどかしさを取り除くことも政府に求めたい。
◎国家戦略室強化 政治主導のエンジンに
政府の国家戦略室が新体制で再スタートを切った。予算編成の基本方針など重要政策の
企画立案・総合調整と、首相への政策提言をそれぞれ担当する2チーム制にしたのが目玉であり、民主党政権の看板である政治主導のエンジンとなることが求められている。ただ、そうした期待に応えられるかどうか、法律の裏付けのない組織だけになお不安や頼りなさも隠せない。菅直人首相の指導力が最大の鍵であることを認識してもらいたい。国家戦略室をめぐる動きは、民主党政権の「迷走」の象徴例といえる。予定していた国 家戦略局に格上げする法案は成立の見通しが立たず、菅首相は一時、国家戦略室の機能を、政策提言を行うシンクタンク機能に特化する考えに傾いた。しかし、機能縮小は政治主導の後退という批判が強く、総合調整機能も持つ組織として再出発することになった。強化された国家戦略室が政治主導の中核組織として機能し、菅内閣の政策遂行能力が高まることを望みたい。 不安材料は、戦略室の権限に関する法規定がないことに加え、経済財政政策の立案、調 整の司令塔役をだれが担うのか、いまひとつ定かでないことだ。戦略室では、総合調整のチームが予算の基本方針や中長期の税財政、経済運営、新成長戦略などを担当し、それを統括する玄葉光一郎国家戦略担当相が司令塔になる。が、経済政策に関しては海江田万里経済財政担当相も司令塔役を菅首相から指示されており、両氏の「さや当て」も伝えられている。 両氏の政策理念が同じならまだしも、玄葉氏は財政規律重視派、海江田氏は積極財政論 者と考え方が異なることが気掛かりである。戦略室と新成長戦略実現会議との関係も明確でなく、菅首相が大戦略を持って統御できるかどうかが試されることにもなる。 これまでの民主党政治は理念先行で、組織・仕組み作りにエネルギーをとられてきた印 象が強い。まだ完成形ではないにしろ、ようやく整った国家戦略室が、その名にふさわしい働きをするよう菅首相は心してほしい。
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