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きょうのコラム「時鐘」 2010年10月25日
キグレサーカスが事業を停止した記事があった。戦前設立された日本3大サーカスのひとつで北陸の興行も多かったから思い出す人もいるだろう
都市型テーマパークが人気である。レジャーの多様化に加え、新型インフルエンザの流行でサーカスの入場者が激減、とうとうテントをたたむという。演芸、風俗、大衆娯楽史の節目を刻むニュースである 30年ほど前に「キグレ村」を取材したことがある。親子代々の団員、押しかけ入団した若者、歌劇団出身の美女や芸大出の女性ピエロもいた。団長は言った。「役者に文化勲章が出るのに、われわれになぜ出ない」 今年の泉鏡花賞を受ける篠田正浩さんの「川原者ノススメ」(幻戯書房)は、歌舞伎をはじめ日本の芸能が都市の川原から始まる歴史を描き「川原になぜ大群衆が参集するのか」を追究した労作である。キグレの団長は、サーカスも歌舞伎も原点は同じだと胸を張るのだった 子どものころに見た神社境内の巨大なサーカステント跡は、大人になって見るとあまりに狭い。幻のような空間に「サーカスは文化だ!」と叫んだ団長の姿が浮かぶのである。 |