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政治活動
1 教員の政治活動
 教員も一国民であり,市民です。したがって,基本的には政治的自由や権利が保障されています。政治的な学習を行い,政治的な思想や信条を持ち,政治的見解を発表し,政治的な集会に参加し,政治的な結社に加入し団体行動を行い,選挙権を行使するなどの自由が保障されています。このことは今日では国際的常識であって,たとえば,1954年に採択された世界教員憲章は「教師は完全な市民的権利と職業的権利とを自由に行使する資格を持っている」とうたいユネスコ「教員の地位に関する勧告」でも「教員は市民が一般に享受するいっさいの市民的権利を自由に行使すべきであり,かつ公職につく権利をもたなければならない」と定めています。
 教師は市民として享受すべき政治活動の自由を,教員でありまた労働者であるがゆえに制限されるべき理由を持たず,教育労働者であることに伴う当然の節度・・・子どもに政治的党派活動をあおるとか勤務時間の制約を無視して職場で政治活動をするなどの行動をつつしむこと・・・を踏み外さない限り,むしろ大いに自由に活発に政治活動を行うことこそ望ましいと言えます。
2 労働組合の政治活動
 労働組合としての政治活動は最高裁判決でも次のように認められています。「現実の政治,経済,社会機構のもとにおいて,労働者がその経済的地位の向上を図るにあたっては,単に対使用者との交渉においてのみこれを求めても,十分にはその目的を達成することができず労働組合が右の目的をより十分に達成するための手段として,その目的達成に必要な政治活動や社会活動を行うことを妨げられるものではない」(昭43.12.4三井美唄事件最高裁大法廷判決)とあるように,労働組合が要求実現の立場から,政治と経済が密接に関連しあう現状では政治的闘争を組織することも必要とされていますし,前述のように最高裁も承認しています。
3 教員のできる選挙活動
 教員の場合は,選挙活動について特殊な制限があります。
 地方公務員である私たち公立学校の教員には選挙活動については,国家公務員と同じ制限があります。しかし,違反にたいし刑事罰は科せられず,懲戒処分だけです。
 国家公務員の場合は,国家公務員法や人事院規則でこまごまと制限されています。この制限は違憲との批判はありますが,現時点ではこれらによって規制されています。
(1)投票依頼はできます。
 勧誘運動の禁止とは「組織的,計画的,又は継続的に,勧誘をすること」とされているので,そこまで至らなければ,投票依頼もできます。「選挙に際したまたま街頭であった友人に投票依頼をするような行為」は規制に該当しないとされています。
 また,選挙事務所での単純な労務の提供,たとえば書類の作成とか演説会の設営などの活動はできますが,個人演説会の司会をしたり演説をしたりすることは禁じられています。
(2)講演会への加入,カンパは自由
 公示(告示)前に,後援会,励ます会などの運動がありますが,これらの後援会,励ます会への加入については自由です。カンパを集めることは禁止されていますが,カンパに応ずることは全く自由です。