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中国:反日デモ内陸部で続発 若者、社会への不満

中国国旗を掲げ「日本を倒せ」などと叫んで行進するデモ隊=中国甘粛省蘭州市で2010年10月24日、鈴木玲子撮影
中国国旗を掲げ「日本を倒せ」などと叫んで行進するデモ隊=中国甘粛省蘭州市で2010年10月24日、鈴木玲子撮影

 中国甘粛省蘭州市と陝西省宝鶏市で24日、それぞれ数百人規模の反日デモが行われたが、大きな混乱はなかった。当局はデモの封じ込め策を強化しており、インターネット上で予告が出ていた江蘇省南京市では若者ら約100人が集まったものの、デモを始める前に警官に解散させられた。ただ、上海市など沿海部と格差が広がる内陸部で相次ぐデモは、社会への不満を表明する側面も見せており、強引な制圧は政府批判に転じかねないだけに当局も対応に苦慮している模様だ。

 蘭州市のデモは午前と午後に散発的に行われた。午前中のデモでは数百人の若者らが「日本製品ボイコット」などと書かれた横断幕を掲げて行進した後、約1時間で警官隊に制止された。午後になって再び約50人の若者らが中国国旗を掲げ、「愛国無罪」「日本を倒せ」などと叫びながらデモ行進したが、約30分で数百人の警官隊に取り押さえられた。

 警官隊はデモの映像や写真が外部に流出することを極度に警戒し、携帯電話のカメラで撮影していた市民を見つけると、携帯電話を取り上げた。

 宝鶏市では同日午後、若者ら約200人がデモ行進し、「日本製品ボイコット」などと訴えた。目撃者によると、一部参加者は「腐敗反対」のスローガンを掲げたという。

 南京市では、予告で集合場所とされた交差点に警官が立ちデモの発生を警戒。100人近い若者らが集まったが、警官が排除した。

 旧日本軍の虐殺事件(1937年)があった南京市でのデモが全土に伝われば、ナショナリズムが一気に高まる可能性があり、当局が封じ込めたようだ。

 16日に四川省成都市など3カ所で起きた大規模な反日デモは当局が日本側への不満表明などを目的に容認したとの見方が強く、香港メディアは各大学の学生会が主催した事実上の官製デモと報じた。

 ◇当局、芽摘み取りに躍起

 しかし、デモ参加者の暴徒化や他地域への飛び火は当局の想定外とみられ、翌17日以降の反日デモについて中国の主要メディアは報じていない。また、インターネット上のデモの呼び掛けを次々と削除しているほか、予告が出ている都市の学校で週末に急きょ授業を行うよう通知を出すなど当局は事前にデモの芽を摘み取っている。

 それでも、ネット上の情報を完全に抑え込むのは困難な状況で、尖閣諸島防衛を訴える活動家らの呼びかけに大学生が呼応してデモが起きた場合は、警官隊も暴徒化を避ける措置に重点を置いているようだ。23日の四川省徳陽市のデモでは、行進が始まると警官が後ろを歩き、トヨタ車にデモ参加者が殺到すると重装備の警官隊が車を取り囲んで暴徒化するのを制止した。

 日中関係筋は「内陸部では日本人と接する機会もほとんどないうえ、大学生は愛国教育を受けたばかりで、国難に立ち上がるべきだという使命感も強い。さらに親に負担をかけても将来を展望できない閉塞(へいそく)感もあり、現状への不満表明でデモに参加しているのではないか」と分析する。

 一方、内陸部が反日一色に染まっているわけではない。23日にデモの予告があった湖南省長沙市では日系ショッピングセンターがにぎわった。タクシー運転手は「デモの心配などしなくていい。釣魚島(尖閣諸島)のことは政府間で解決する。国民同士は仲良くすべきだ」と笑った。

 徳陽市の雑貨店主(30)は「庶民には反日は関係ない。若者のストレス発散だろ」と突き放した。

 それでも、反日デモは社会に影を落としている。南京市の自動車展示即売場には、日系メーカーのブースだけ一台も車が並んでいなかった。展示会関係者は「デモを警戒して、日系乗用車を扱う業者はみな直前に参加を取りやめた」と説明した。【蘭州・鈴木玲子、南京・米村耕一、北京・成沢健一】

毎日新聞 2010年10月24日 22時06分(最終更新 10月24日 22時50分)

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