小説家になろう様にも投稿させて頂いております。
処女作ですが、楽しんで頂けたら幸いです。
奥様の名前は葛葉刀子。
そして、ダンナ様はなし。
ごく普通に神鳴流を学び、ごく普通に麻帆良学園の教師になりました。
でも、ただ一つ違っていたのは息子が魔法ヤンキーだったのです。
まだ雀が鳴く早朝、古いアパートの一室。一つのちゃぶ台を二人の男女が囲んでいた。
片や、スーツを一部の隙も無く着込んだ葛葉刀子。
麻帆良学園ではそのきりっと眼鏡が似合う美貌ときめ細やかな授業で生徒に人気の教師。
その刀子が教師の仮面と眼鏡を外し、口を開く。
「刀哉…あんた高校三年にもなったんだから、少しは落ち着いたらどうなんだい?」
片や、刀哉と呼ばれた男。
天に聳え立つ真っ赤なリーゼント。
そして、麻帆良学園の制服の存在なんざ認めねぇ!無言の内にそう叫ぶ気合いブリバリの改造学ランに身を纏った…丼飯をかきこむヤンキーがそこにいた。
「わかってるって、母ちゃん! 最近は俺も売られた喧嘩しか買わないしさ!いやいや、麻帆良の狂犬と呼ばれた俺も丸くなったもんじゃねえか!おっと、それより母ちゃんおかわり!」
どん!と突き出される丼を受け取り、ご飯をよそいながらも話は続く。
「何が麻帆良の狂犬で何が丸くなったよ!あんたのその時代遅れのリーゼントをやめろって言ってるのよ!この間、高畑先生に何て言われたかわかる?
『…なかなか元気な息子さんで』
母さん、申し訳無くて、あんたの事、叩き斬ろうかと思ったよ!あとお母さんと呼びな」
山盛りの丼を受け取りながら、
「…この間の山籠もりはそういう理由だったのかい。道理で母ちゃん俺の事、殺し来てた訳じゃねえの」
「人聞きの悪い事、言ってんじゃないよ!あとお母さんと呼びな。大体、あんたね」
「うっし、ごっそーさーん!母ちゃん、今日もうまかったぜ!じゃいってきまーす!」
更に続くであろうお小言には付き合ってはいられない。そう言わんばかりに狭いアパートから飛び出すヤンキー刀哉。
「全く…まぁ性根が腐っている訳じゃないから、まだいいのかねえ…さてと」
綺麗に食べ終わった朝食を軽く片付けると、刀子は眼鏡をかけ、微笑んだ。
「今日も一日、頑張りましょうか」
刀哉の母親ではない教師、葛葉刀子の一日が始まった。