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【記者コラム:越中春秋】

’09回顧編▼11 フグ食中毒 危うい調理資格制度

2009年12月28日

フグの食中毒再発防止のため、県厚生センターはトラフグ加工工場を立ち入り調査した=3日、射水市で

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 十一月二十三日夜。一日の仕事を終え、通信部でひと息ついていると、富山支局の記者が慌てた様子で電話をかけてきた。「南砺市のすし店で昨夜、フグの食中毒があったようです。店主に話を聞いてください」

 中毒症状を起こしたのは十二人で九人が入院し、二人が意識不明の重体。被害の大きさに緊張が走った。店主はフグの調理資格を持っていないのか。それとも調理上のミスがあったのか。すし店に向かう車の中で、あれこれと考えた。

 店に着き、店主に事故の経緯について話を聞く中で、予期せぬ言葉が返ってきた。「種類の分からないフグを使った」。店主はフグ調理の有資格者だったが、種類を把握せずに客に提供していた。

 「調理人が種類も分からないものを、客に出していいんですか」。そう尋ねると、店主はうつむき、謝罪した。「本来なら使い慣れたものを使うべきだった。謝っても謝りきれない」

 数日後には、県の調べで、有毒部位の肝臓を提供していたことも明らかになった。フグを扱う人なら、どこが危険な部位なのか、知っていなければならない。資格を持っていたのに、なぜ基本が守られなかったのか。

 全国各地のフグの資格制度を調べた。県の場合、二日間の講習会に参加し、簡単な筆記と実技試験に合格すればフグを扱える。

 試験に落ちても合格するまで追試をするため、落第者はいない。命にかかわる資格なのに、全員が合格−。消費者の感覚との大きなギャップを感じた。

 関係者からは「知識や技術が不十分な調理人も少なくないのでは」と、事故の再発を懸念する声も上がる。県は事故を受け、フグの取扱業者に緊急の講習会を開催。資格制度の見直しも検討している。

 冬も本番、フグが旬を迎えている。先日、食べる機会があったが、根っからの心配性もあり、身構えてしまった。安心してフグが食べられることを、消費者の一人として願っている。 (河郷丈史)

 

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