『盲導犬情報』 第4号 〜NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第4号






自治体の相談窓口利用状況

1.相談窓口設置までの経緯

 2002年に身体障害者補助犬法が施行されてから7年が経った。2008年には一部が改正され、従業員56名以上の事業所での受け入れが義務化された他、都道府県・政令指定都市・中核市において相談窓口が設置された。
 身体障害者補助犬法改正を求める動きの中で、相談窓口の設置は、これまで盲導犬受け入れに関するトラブルがあった時、受け入れ側事業者や盲導犬ユーザー、または盲導犬育成団体など、当事者同士でのやりとりではうまく解決しないような場合に第三者的な立場で仲裁・調整できる救済機関として、その設置が身体障害者補助犬ユーザーから求められていた。
 その結果、改正により、以下の条文が付け加えられた。

(苦情の申出等)

第二十五条 身体障害者又は第四章に規定する施設等を管理する者(事業所又は事務所にあっては当該事業所又は事務所の事業主とし、公共交通事業者等が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両等にあっては当該公共交通事業者等とする。以下同じ。)は、当該施設等の所在地(公共交通事業者等が旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両等にあっては、当該公共交通事業者等の営業所の所在地)を管轄する都道府県知事に対し、当該施設等における当該身体障害者による身体障害者補助犬の同伴又は使用に関する苦情の申出をすることができる。

2 都道府県知事は、前項の苦情の申出があったときは、その相談に応ずるとともに、当該苦情に係る身体障害者又は第四章に規定する施設等を管理する者に対し、必要な助言、指導等を行うほか、必要に応じて、関係行政機関の紹介を行うものとする。

3 都道府県知事は、第一項の苦情の申出を受けた場合において当該苦情を適切に処理するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長若しくは関係地方公共団体の長又は訓練事業者若しくは指定法人に対し、必要な資料の送付、情報の提供その他の協力を求めることができる。

(大都市等の特例)

第二十六条 前条の規定により都道府県知事の権限に属するものとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「中核市」という。)においては、指定都市又は中核市(以下「指定都市等」という。)の長が行う。この場合においては、前条の規定中都道府県知事に関する規定は、指定都市等の長に関する規定として指定都市等の長に適用があるものとする。
 そして、2008年4月1日より相談窓口が設置されることになったが、2008年7月に調査したところ、103都道府県・政令指定都市・中核市のうち未設置(設置予定は除く)だったのは6自治体、設置率94.2%だった。

2.相談窓口の稼働状況

 では、相談窓口が設置されてからの1年間で、どれほどの相談が持ち込まれ、解決されたのだろうか?
 都道府県・政令指定都市・中核市の合計106自治体に対し、2008年度に受け付けた相談件数等について電子メールで問い合わせたところ、75自治体から回答があった(回収率70.8%)。
 その結果、使用者・補助犬育成団体・事業者からの問い合わせは、122件。また、一般市民からの相談が41件あった。一つの自治体で受け付けた相談・苦情は、平均2件にしかならない。ちなみに関西盲導犬協会で受け付けた苦情・相談は、2008年度は41件であったことから考えると、非常に少ない件数と思われる。

3.相談窓口での相談内容

相談者別にみると、受け入れ側の事業者ではなく、使用者からの相談件数が圧倒的に多い。

(1)補助犬使用者からの相談
・施設・交通機関等の利用拒否に関する相談 65件
・補助犬育成団体に対する相談 5件
・その他 34件
(2)補助犬育成団体からの相談
・施設・交通機関等の利用拒否に関する相談 3件
・施設・交通機関等での受け入れ後のトラブルに関する相談 0件
・その他 4件
(3)事業者からの相談
・実際に補助犬を受け入れる前の、事前の相談 6件
・補助犬を受け入れたために起きたトラブルに関する相談 0件
・その他 5件
(4)一般市民からの相談
・補助犬使用者に対する相談・苦情 13件
・補助犬育成団体に対する相談・苦情 3件
・その他 25件

4.相談窓口の対応

相談窓口で受け付けた相談に対して、どのような結果が出たかについて尋ねると、「解決しなかった」と回答した件数は非常に低かった。

・当事者に直接連絡をとり、問題を解決した 65.2%
・当事者に直接連絡をとったが、問題は解決しなかった 8.7%
・補助犬育成団体に相談内容を連絡し、対応を依頼した 2.9%
・補助犬使用者団体に相談内容を連絡し、対応を依頼した 0.7%
・その他 22.5%

解決が困難だった場合の具体例を尋ねると、

といった事業者側の受け入れ拒否事例の他に、

といったものや

といった事例も挙げられた。また、

といったことが寄せられた。

5.まとめ

身体障害者補助犬法の改正によって、相談窓口が設置されるようになったが、実際にはあまり活用されていない様子がうかがえる。また、「解決が困難だった事例」に挙げられていた意見にも「どのように指導すれば良いかわからない」というものがあったが、

といった意見が出されている。
このようなことからも、相談窓口は設置しただけでは不十分で、窓口としてきちんと機能し、十分な対応を求めるためには、各地の育成団体や使用者団体がさらに情報を提供し、理解・協力を呼びかけていくことが必要と思われる。

「盲導犬との生活に関するアンケート」の調査報告

井上明美・甲田菜穂子(東京農工大学)
久保ますみ(関西盲導犬協会)
石上智美(日本医療科学大学)
古橋博昭(関西盲導犬協会)

1.はじめに

 視覚障害者が盲導犬から受ける効果は、身体面だけでなく心理面や社会面でも広く認められています。2002年には身体障害者補助犬法が施行され、公共施設は補助犬の受け入れを、補助犬育成施設は良質な補助犬の育成を義務付けられました。
 しかし、盲導犬育成の現状を見てみると、全国の盲導犬希望者は7800人と言われているのに対し、現在の盲導犬育成頭数は185頭、盲導犬使用者は1069名(ともに2008年3月現在)です。また実際に盲導犬を使用したいと申し込む人数は、例年150名前後です。このように、現在でも盲導犬を希望していると推計されている人数と実際に盲導犬を使用している人数に差があることや、育成施設には法律によって良質な盲導犬の育成と適切な管理が義務付けられていることから、盲導犬の普及や育成にこれからも力を入れていかなければならないと言えます。
 そこで今回、盲導犬の機能向上のための育成技術の改良の提案をすることを目的として、使用者の盲導犬の使用実態と、盲導犬に対する具体的な要望をアンケートによって調査しました。

2.調査方法

1)調査時期

2009年3〜4月

2)調査対象

 関西盲導犬協会から過去5年間の間に盲導犬の貸与を受けた使用者92名(男性42名、女性50名)。内訳は、初めて盲導犬を使用する「新規者」26名、1回以上の盲導犬との別れを経験し、現在も盲導犬を使用している「代替者」52名、現在は盲導犬を使用していない「元使用者」14名でした。

3)調査方法

質問内容をメール、点字、音声テープ、墨字のいずれかの媒体にしたものを対象者に郵送または送信し、回答していただきました。

4)質問内容

アンケートは、以下の3つの部分から構成されました。

  1. 盲導犬の使用状況
  2. 盲導犬の行動特性の5段階評価
  3. 盲導犬使用に関しての要望など

 新規者には現在の盲導犬、代替者には現在と過去一代前の盲導犬、元使用者には最後に使用した過去の盲導犬について回答していただきました。盲導犬の行動評価の分析では、盲導犬が訓練を卒業するまでの協会職員による行動評価の結果も用いました。

5)有効回答率

61%(男性25名、女性31名)。

3.結果

1. 盲導犬の使用状況

1)盲導犬との週の外出頻度(選択項目、現在、過去の順に記載)

・ほぼ毎日 79% 81%
・3,4日ほど 19% 19%
・ほとんどない 2% 0%

2)盲導犬との1日の外出時間(選択項目、現在、過去の順に記載)

・1時間以下 13% 8%
・2-4時間 46% 41%
・5-7時間 10% 24%
・8-10時間 19% 9%
・10時間以上 12% 8%

3)盲導犬と慣れない場所へ行く頻度(選択項目、現在、過去の順に記載)

・よくある 15% 24%
・ときどきある 65% 68%
・めったにない 19% 8%

4)盲導犬と交通機関を使う頻度(選択項目、現在、過去の順に記載)

・よくある 81% 62%
・ときどきある 19% 38%
・めったにない 0% 0%

5)盲導犬と遊んだり、くつろいだりする頻度(選択項目、現在、過去の順に記載)

・よくある 63% 62%
・ときどきある 31% 38%
・めったにない 6% 0%
2.盲導犬の行動評価(5満点で評価した平均点。項目、現在、過去、協会の評価の順に記載)

・攻撃的行動 4.6 4.2 4.3
・動物(イヌ以外)に対する執着 4.2 3.9 3.2
・食べ物に対する執着 3.8 3.4 3.2
・臭いに対する執着 3.9 3.7 3.3
・激しい興奮 4.3 4.1 3.4
・警戒的な凝視 4.6 4.2 3.5
・不安行動 4.4 4.1 3.3
・体に触った時の受け入れ 4.4 4.3 3.5
・音に対する過敏な反応 4.1 3.7 3.6
・作業意欲 4.0 4.3 3.6
・命令や声掛けに対する反応 4.1 4.1 3.4
・人の意志に従順に従う行動 4.1 3.9 3.3

3.盲導犬使用に関しての要望など

1)盲導犬を使用するにあたって、協会に希望するサポート(複数選択回答)

フードの補助 38%
盲導犬の医療費の補助 52%
フォローアップの充実 59%
情報提供 38%
その他 25%

2)訓練を強化して欲しいところや、盲導犬の訓練に新しく取り入れて欲しい作業(自由記述)

落し物を拾う 12名
特定の場所への誘導 8名
空席探し 7名
乗車 7名
両手持ち歩行 6名
基本訓練 6名
排泄 5名
訓練フォローアップ 4名
点字ブロック関連 3名
歩行 3名
障害物関連 2名
遊び方 2名
拾い食い防止 2名
目的地への誘導 2名
その他 18名

3)盲導犬と暮らす中で、使用者が盲導犬に教えた作業(自由記述)

誘導 16名
落とし物を拾う 3名
空席探し 3名
排泄 2名
その他 19名

4)訓練はしてあるけれども、あまり使わない作業(自由記述)

命令語 4名
動作 6名

5)使用者の盲導犬のことで苦情を受けたこと(自由記述)

入店拒否 5名
乗車 4名
排泄 3名
その他 11名
*入店拒否: 1件は、盲導犬の行動問題から拒否された。
*乗車の例: タクシーの中で座席のシーツを盲導犬が汚してしまった。
バスにて他の人に「来ないで」と言われた。

6)盲導犬の世話などをするときに使う道具で、不便なところや、改良が必要なところ(自由記述)

ハーネス 12名
排泄関連 8名
ブラシ・シャンプー 7名
コート 4名
2名
その他 1名
4.まとめ

 盲導犬の使用状況は、盲導犬の現在と過去であまり違いが見られませんでした。また使用者が盲導犬と交通機関を使う頻度がかなり高いことと、訓練を強化して欲しいところに「乗車」が挙げられていたことから、乗車訓練(タクシーなどの乗用車への乗降や、電車とバスの座席に座る時の盲導犬の動き方)は重視すべき項目であることが伺えました。
 盲導犬の行動評価では、使用者の現在、過去の盲導犬の行動評価には違いが見られず、全体的に高い評価になりました。そして興味深いことに、使用者と協会の行動評価を比較すると違いが見られました。すなわち、使用者の方が協会より評価が高く、使用者は協会が思っている以上に盲導犬に満足していました。ただ「動物(イヌ以外)に対する執着」、「食べ物に対する執着」、「臭いに対する執着」といった執着に関する項目では、使用者と協会共に評価が低目に出ており、今後、訓練で強化していく必要があると考えられます。
 提案としては、盲導犬使用に関しての要望などであった、訓練はしてあるけれども、あまり使わない作業を吟味し、新たに、使用者が自分で盲導犬に学習させる方法を共同訓練に取り入れれば、使用者の生活により適した盲導犬が育成できると考えています。そうすることによって、使用者と盲導犬の絆もさらに深くなるのではないでしょうか。
 この調査をもとに、これからも多くの方の意見を取り入れて、より快適に使用および共に生活できる盲導犬の育成を目指していきます。今後も盲導犬のよりよい育成と啓発のために、皆様にご協力していただく場合があると思いますが、何卒よろしくお願い致します。最後になりましたが、大変お忙しい中、アンケートにご協力いただきました使用者の皆様に、貴重なご意見をお寄せいただきましたことに心より感謝申し上げます。

盲導犬ユーザーのコーナー

いたわり合って歩こうネ
   兵庫県  金田 福美

 『名前はフランク、黒のラブラドール2歳です』
 そう言って紹介していただいたとたん、私のほっぺにチュッ! それがフランクとの出会いでした。
 先天的に視覚に障害はあってもいわゆる弱視だった私は、小学校から盲学校にいたので、見えないということで不便を感じたことは、あまりありませんでした。卒業して、就職、結婚、出産、子育てと、人並みに経験を重ねて行く間に、少しずつ視力が下がって、気付けば白杖が必要な状態になっていました。
 外出することが次第に億劫になり、用がなければ外に出ない日が増えていきました。それでも子供たちの学校行事や個人懇談には行かなければなりません。
 ガイドヘルパーさんに頼る気持ちになれなくて、他の保護者のように一人で自由に行動したい、という気持ちが強くなっていきました。
 そんな時、たまたま読んだ本がありました。そこには、盲導犬と共に積極的に社会参加しきらきらと輝いている、視覚に障害のある女性たちの生き方が書かれていました。
 時を同じくして、久しぶりに連絡をした後輩が盲導犬のユーザーであることを知りました。当時、小学校6年生だった娘と共に彼女の家に行くと、大歓迎で出迎えてくれたとても人なつっこいKちゃん、「ねっ、盲導犬っていいでしょ」と言うように、初めて出会った私にぴったりと寄り添ってくれました。その温もりが忘れられなくて、その日から私の頭の中は盲導犬一色となりました。
 迷うことなく、我が家から一番近い兵庫盲導犬協会に見学を申し込みました。その時、体験歩行させていただいたBくんにも心を奪われ、即、申し込みをさせていただき、それから1年数ヶ月、どれほど待ち遠しく思ったでしょう。
 感動の出会いから、あっと言う間に月日は流れていきました。フランクはとても素直で聞き分けの良い子です。それでも最初の1年は、自宅以外での排泄が出来なくて、外出はせいぜい7、8時間以内で帰れる場所ばかりでした。
 2年目に入って、思い切って北海道に行きました。なんとかなるものだ、と自信がつき、2ヶ月後、全日本盲導犬使用者の会の交流会で、ディズニーランドへ。もうそうなると何処でもOK! いろいろな所に行きました。
 もちろん近所のお買い物、子供達の学校、お友達とのランチ、毎日が楽しくて、自分の何処にこんな体力と気力があったんだろう、と不思議なくらいでした。
 現在、フランクは5歳。単純計算すれば引退までの折り返し地点、そんなふうに考えていました。  それは突然の出来事でした。全日本盲導犬使用者の会のイベント、東海道盲導犬ウォークリレーのゴールに立てる喜びを胸に、東京への準備を進めていた2009年11月21日、
いつものようにブラッシングを終えたフランクは、前足をぶるぶる震わせて、固まったように動けなくなりました。検査の結果は、おそらく馬尾症候群が原因ではということでした。まだ軽度だということで、お薬と休養で症状は治まりました。
 不安を抱きながらも、のど元過ぎればで、あの日の悪夢を忘れかけた2ヶ月後の2010年1月末、外出から帰宅した玄関で足を拭こうとしたら、今度は全身の震え! 私の頭は真っ白になりました。
 その後協会スタッフと共にいくつかの動物病院に行きました。軽度な馬尾症候群だけではあり得ない炎症だということで、血液検査の結果、多発性筋炎という診断が下されました。
 医師の説明では、結果はそれほど悪くないとのことでした。現在、お薬の投与を続けながら様子をみています。
 盲導犬として私の側に来てくれた時から心に決めていたこと。それは、充分に余力を残して引退させてあげたい、ということです。今回の病を通して、沢山のことを気付かせて頂きました。
 おかげさまで協会の方々が今の私達ユニットの状態を把握し、経過を見ながら、今後のことを真剣に考えて下さっていることが、私には本当に強い味方です。
 2月25日でフランクは6歳になります。4年のキャリアは簡単には諦められません。でも、フランクに負担をかけるようなことになれば、それは別問題です。結論を急がず、病気と仲良く付き合いながら、のんびり マイペースを、私達ユニットの個性にして、引きこもりがちだった私に、勇気と元気と沢山のお友達をくれたフランクと、いたわり合って歩いて行きたいと願っています。

盲導犬情報ボックス

2009年に出版された盲導犬に関する文献

 昨年1年間に出版された盲導犬に関する書籍を調べてみました。
 大学や学会などで発表された論文についてはなかなか把握できていませんので、他の文献をご存じの方はぜひ盲導犬情報室までお知らせください。

<書籍>

『 七頭の盲導犬と歩んできた道−日本初の女性盲導犬ユ−ザ−戸井美智子物語』
沢田俊子/野寺夕子(学研教育出版)  2009.12

『 盲導犬サフィ−、命の代償−サフィ−が命をかけてのこしてくれた、愛と勇気と感動』
秋山みつ子(講談社) 2009.11

『 日本最初の盲導犬』
葉上太郎(はがみ たろう)(文藝春秋) 2009.7

『レッツゴ−・サフィ− −子どもたちの夢と地域の愛を集めた盲導犬−』
井上夕香(ハ−ト出版) 2009.6

『ベルナのしっぽ −盲導犬とななえさん−』
郡司ななえ/影山直美(角川書店 つばさ文庫) 2009.3

『ラブの贈りもの −盲導犬誕生物語 2 (改訂版)』
登坂恵里香(とさか えりか)(汐文社) 2009.2

『切手が伝える視覚障害 (切手で知ろうシリ−ズ ) 点字・白杖・盲導犬』
大沢秀雄(彩流社) 2009.1

<漫画>

『 ナオ・ゴ−ストレ−ト盲導犬歩行指導員 (Action comics ) 1』
山本康人(双葉社) 2009.10

<論文>

『ヒトと動物の関係学会誌』通巻24号(ヒトと動物の関係学会) 2009.12

「社会における盲導犬の役割」(甲田菜穂子他)

『日本補助犬科学研究』第3巻第1号(日本身体障害者補助犬学会) 2009.9

事例研究「盲導犬ハーネスの改良」(飯島浩他)

事例研究「拒食訓練の考察」(山田大他)

現場報告「盲導犬育成事業における動物福祉について」(福井良太)

現場報告「全国の盲導犬協会の繁殖動向−AGBNの活動について−」(古橋博昭)

NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ

(1)2009年度資格認定事業の実施状況

 NPO法人全国盲導犬施設連合会では、盲導犬育成事業に携わる訓練士・歩行指導員の資格を確立し、レベルの向上を図り、その社会的地位を高めること、そして、どこの施設の職員でも一定水準以上の盲導犬の育成と、より良いサービスが提供できるようになることを目的として、盲導犬訓練士・盲導犬歩行指導員の資格認定事業を2007年度より行っています。
 今年度は、10月と3月に資格認定の審査を行い、11名の盲導犬訓練士、4名の盲導犬歩行指導員の認定を行いました。
 この認定資格制度が始まって3年になります。しかし、審査に合格し認定を受けたら終わりということではなく、盲導犬を希望する視覚障害者や盲導犬ユーザーが全国どこの施設でもより良いサービスの提供が受けられるようにがんばってほしいと考えています。

(2)2010年度ポスターと『デュエット』について

全国盲導犬普及キャンペーンの一環として、毎年ポスターと『デュエット』という機関誌を作成・発行しています。
 2010年度のポスターは、ハーネスをつけた白っぽいラブラドールの左向きの写真が右上に、黒いラブラドールの右向きの写真が左下に。それぞれの間を縫うように、犬の足跡とハートマークが並んでいます。「盲導犬と歩く 幸せのはじまり」と大きい白抜きの文字にピンク色のバックで、素朴ですが温かい雰囲気のポスターです。
 機関誌『デュエット』は、盲導犬候補犬ステップとジョイの物語。おっとりマイペースな黒いラブラドールのステップと元気いっぱい陽気なイエローのラブラドール、ジョイ。やがて1頭は一人の視覚障害者と出会い盲導犬へ。1頭は盲導犬にはならずにかわいい子どものいるご家庭へ。こんな2頭の物語が進む中で、盲導犬としての適性や訓練の内容、様子などがわかるような筋書きになっています。
 その他、盲導犬ユーザーからのメッセージのページや、クロスワードパズルのページもあります。
 これらの機関誌・ポスターは、全国盲導犬施設連合会の募金箱を置いてくださっているスーパーやコンビニエンスストアなどで手にすることができます。機関誌は無料で配布していますが、置いてあるお店が近くにないという場合は、連合会事務局または連合会加盟施設に問い合わせてください。なお、郵送を希望される場合には、郵送料を申し受けることになりますが、ご了承くださいますようお願い申しあげます。

編集後記

 5年前、横断歩道を渡っている最中にトラックにはねられ、盲導犬ユーザーは重傷、盲導犬は即死という交通事故の損害賠償請求訴訟の判決が先日、名古屋地裁でありました。
損害賠償金額として、裁判所は盲導犬の年齢からあと5年は実働できたことを考え、その価値を260万円と算定したそうです。もちろん金額の問題ではありませんが、時間の経過とともに「盲導犬としての技能が向上していたこと」も考慮された、とのことで、そういうことも考慮されたことは評価できるのではないでしょうか。犠牲になったサフィー君のご冥福を心よりお祈りいたします。(久保)