「田中角栄の甥がＡＶ男優に！！」と大いに騒がれた

●山科薫さん

　加藤鷹、マグナム北斗、チョコボール向井……ＡＶで活躍した人気男優だ。しかし、キャリアの面ではこの人にはかなわないだろう。ピンク映画からスタートし、にっかつロマンポルノ、ＡＶと進み、１０００人の女優を斬ったといわれた男優、山科薫さんだ。故田中角栄元首相の“甥っ子”としても話題になった。今どうしているのか。

●「みなさんもよくご存じのあの方、この方のお相手もしましたよ」

「９０年代は良かったんですけどねえ……、２０００年に入るや、もうメロメロでした。カネがかかる女性と付き合ったのが運の尽き、貯め込んでた６００万円の貯金を全部吐き出し、あげくに６００万円の借金をこしらえちゃったんです」

　話を聞いた小田急線新百合ケ丘駅近くの居酒屋。山科さん、喉を鳴らしながらビールを飲み干し、こう切り出した。

「一時は世間からドロップアウトしようかとも思いました。でも、ボク自身、けっこう土俵際に強いところがあって、くる仕事はすべて引き受け、最後は土方をやって、どうにか借金はきれいにした。いやあ、正直、しんどかったですね」

　と、ここで再びビールをグビリ。

「今はもっぱらＶシネマがメシの種です。最近出たのは、え〜と、『新人ツアコン物語』に『ドリーム学園』って感じですか。ついこの間は電車なんかの案内板に流す健康飲料のＣＭからお呼びがかかった。ただし、顔を出すとイメージを損なう恐れがあるのか、ナレーターでしたけど、ハハハ」

　さて、劇団「シアタースキャンダル」出身の山科さんは「芝居じゃ食えなかったから」、ピンク映画に出演。その後、にっかつロマンポルノ、ＡＶと活動の範囲はエスカレートした。

「ピンクに出ながらチャンスをうかがい、一般映画や舞台に進出する。これが健全なパターン。ところが、ボクはそのままポルノ路線に進んじゃった。ピンクからＡＶまで約１０００本に出演してるから、それだけの女優さんとイタしたことになります。みなさんもよくご存じのあの方、この方のお相手もしましたよ」

　俳優業以外に９１年、小説「女弁護士悩乱」で作家デビューも果たした山科さん、９２年、「田中角栄の甥がＡＶ男優に！！」と雑誌やスポーツ紙に大きく取り上げられ、話題になった。

「ボクの父親の妹、つまり叔母さんが神楽坂で芸者をしてましてね。そこで田中さんが叔母を見初めた。その結果、叔父と甥という関係が生まれたってわけです。もちろん、会ったこともありますよ。世間ではダミ声のようにいわれてますが、ボクには元巨人の長嶋監督のような甲高い声が印象として残ってます。ＡＶに出てることも知っていて、“どうせやるならトコトンやれ”と励まされたのが忘れられません。しかし、田中さんはとうに亡くなり、叔母も去年２月に他界しました」

　確か叔母さんと角栄の間には２人の男の子がいた。

「長男は飲食店をやりたいようなことをいってました。弟は体調を崩してるようです」

　独身。東京郊外のマンションにひとり暮らしだ。

（日刊ゲンダイ2010年10月6日掲載）