「『あの人は今』の取材？　いいですね〜」

●鼠先輩

　２年前、♪ポッポ　ポポ……と歌うコミックソングが話題になった。鼠先輩のデビュー曲「六本木〜ＧＩＲＯＰＰＯＮ〜」だ。「一発屋」を自任し、その言葉通り、去年の大晦日のライブを最後に１年余の芸能界生活に自らピリオドを打った。と思ったら、今年５月、キンチョーの「蚊がいなくなるスプレー」のＣＭに突然登場。だが、これも一発で、またしても姿を見なくなった。さて、今どうしているのか。

●「来年の５月のカンヌ映画祭でパルムドール賞をもらったら即引退ですね、ハハハ」

「『あの人は今』の取材？　いいですね〜。芸能人は話題になってナンボだから、大、大、大歓迎ですよ。この業界は一発屋にさえなれずに消えていく不発芸人、チン没タレントの方が多いんだし、取り上げてもらうのはいつだってウエルカムです」

　秋葉原の喫茶店で会った鼠先輩、こう言ってサングラスの奥のちっこい目を細めた。この日のいでたちは、パンチパーマにブーゲンビリア柄の真っ白なスーツ。白地のネクタイには「エンポリオ・アルマーニ」とある。

「仕事？　バリバリしてますよ。まず先月１９日に『芸能人鼠先輩・ガチナンパ』で古巣のＡＶ業界に殴り込みをかけ、今月３１日には六本木の『ｍｏｒｐｈ―ｔｏｋｙｏ』で復活コンサート。それと六本木のキャバクラ嬢を主人公にした『愛幻蝶』ってタイトルの一般映画の監督もやることになってます。こっちは９月下旬にクランクインして、１２月公開の予定です。処女作でドカ〜ンと当て、来年５月のカンヌ映画祭でパルムドール賞もらったら、即引退ですね、ハハハ」

　さて、大阪生まれ、岡山育ちの鼠先輩は地元の高校を卒業後、歌手を目指して上京。草刈り、ビル清掃、中華料理店など２０種類以上の職を転々としながら、下積み生活を送った。

「そのひとつがＡＶ業界で、男優もＡＤも監督もやったけど、監督作品は３０作以上。だから、映画監督も決してシャレじゃありません」

●「一回限りの人生、楽しくなくっちゃ」

　ブレークしたのは０８年５月。６月１８日にデビュー曲「六本木〜ＧＩＲＯＰＰＯＮ〜」が発売される前、インターネットの「着うた」に先行配信したところ、「レコ直演歌・歌謡曲デイリーランキング」で１位になったのだ。

　その後は一気呵成（かせい）。立て続けにシングル３枚、アルバム１枚、自伝＆エッセーを３冊出し、０８年１２月２９日付でライブドア社長就任、０９年１月４日辞任、そして６月には年末の引退発表と虚実入り乱れたパフォーマンスで芸能界を賑わせた。

「しょせんワタシは一発屋。明日のことさえわからない稼業です。一回きりの人生、楽しくなくっちゃいけません」

　結局、引退後、半年も経たずに復帰したわけだが、実は先月末に第２子が誕生。これが発奮材料のようだ。

「子鼠１号に続き、２号も女の子です。２人が嫁に行くまで一緒に風呂に入れる明るく楽しい家庭を築くのが、今のワタシのささやかな夢ですね、ハハハ」

　都内のマンションに、夫人と２人の娘と暮らす。

（日刊ゲンダイ2010年10月4日掲載）