受難之碑　友好礎に

中国人強制連行　安野発電所敷地　　安芸太田　元労働者と和解記念、建立

記念碑の碑文を読む元労働者や遺族ら（安芸太田町で）

　昭和戦争中の１９４４年、建設工事に中国人３６０人が強制連行され、過酷な労働を強いられた安芸太田町の安野発電所の敷地内で２３日、「安野　中国人受難之碑」の除幕式が行われた。元労働者側と、建設工事を請け負った「西松建設」（東京）の昨年の和解を記念して建立。事実を刻み、日中両国の友好の＜礎＞にとの思いが込められ、元労働者５人や遺族、同社関係者ら約１００人が参列した。

　強制連行を巡っては、元労働者の邵義誠(シャオイチェン)さん（８５）ら５人が同社に賠償を求めて提訴し、２００７年に最高裁が請求を棄却したが、同社に被害者救済に向けた努力を求めた。昨年１０月、同社が事実を認めて謝罪し、補償などに充てる和解金２億５０００万円を支払うなどの内容で和解した。

　３６０人にちなんで高さ３・６メートルとした碑には、裏に強制連行の事実や和解までの経緯を明記。「日中両国の子々孫々の友好を願って建立する」との碑文を、元労働者と同社が連名で刻んでいる。左右両側には、３６０人の氏名を刻んだ碑も立てた。

　除幕されると、元労働者や遺族らは碑に刻まれた氏名を手でなぞり、涙を流しながら献花。建立主体の「西松安野友好基金運営委員会」によると、３６０人のうち２９人は、原爆による被爆死者も含め日本で亡くなった。１６５人に補償金を渡すことができたが、残る人々は所在不明で、今も捜しているという。

　１９４４年から１年間働いたという邵さんは「尊厳と正義を取り戻すことができた。今日を迎えられずに亡くなった仲間も、安らかに眠れる。若い人たちに事実を伝えたい」。同じく元労働者の楊希桂(ヤンシィグェイ)さん（８７）は「これでやっと、亡くなった人たちに報告を果たせる」と涙をぬぐった。