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帰還兵、人知れぬ苦悩 戦場に意識向かわぬ米国社会(2/3ページ)

2010年10月24日5時30分

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 彼の目だけをみつめて話そう。そう思った記者の心を見透かすように、「目をそらさず、見てほしい。なぜこうなったか、尋ねてほしい」とスコットさんは訴えた。

 イラクに派遣されていた4年前、乗っていた装甲車が仕掛け爆弾に襲われ炎上。意識があるまま全身が焼けていく。自分の叫び声が頭に響いた。どれだけひどいか、救出に来た同僚の表情で悟った。

 やけどは体表面の66%におよび、一部で骨に至った。左足のひざ下を失い、神経を失った左手は手首のところで直角に曲がったままだ。

 入隊を志願した2004年秋、米国はイラクとアフガンで二つの戦争のまっただ中だった。派兵のおそれを顧みずに軍を選んだのは、麻薬や犯罪的行為に手を染め、「死ぬか刑務所に入るか」という生活から抜け出すためだった。生存率5%という重傷から生還した今、米国のために役立ったことを誇りに思っている。腰かけたソファの背後には、入院先でブッシュ前大統領とともに撮った写真と「尊敬と感謝を込めて」という言葉が、星条旗と一緒に大切に飾ってあった。

 だが、「二つの戦争」からの出口を急ぐオバマ大統領に話が及ぶと冷静さを失い、言葉が荒くなった。「自分たちの犠牲は何だったのか。オバマは何も分かってない」

 スコットさんと母親のルアナさん(45)は今年、重度のやけどを負った帰還兵のグループを立ち上げた。名前は「テンパード・スチール(鍛鉄)」。戦争の傷から生還した兵士らは「火に鍛えられた鉄」だという思いを込めた。全米各地から15人が集まり、写真集もつくった。講演会を開くことを目指している。

 「傷ついた兵士はこの国に腐るほどいる。でも、人々は自分のことしか考えず、気づくことさえない」とスコットさんは語気を強めた。「中間選挙で、我々を代弁してくれる政治家もいない。米軍最高司令官のオバマ大統領なんて、軍の経験すらないんだから」。そう話すルアナさんの表情は険しかった。

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