実家の寿司屋を継いで２３年。かつてのファンが今でも毎月のように店にやって来るそうだ

●宮田恭男さん

「この物語は、ある学園の荒廃に闘いを挑んだ熱血教師たちの記録である……」――。こんなナレーションで始まる学園ドラマを覚えている読者は多いだろう。京都市立伏見工業高校ラグビー部をモデルにした「スクール☆ウォーズ」（ＴＢＳ系）だ。教師・滝沢役の山下真司のアツい演技に毎回感動したものだ。きょう登場の宮田恭男さんは落ちこぼれのラグビー部員・森田光男役でレギュラー出演。第８話の「悔しいです」とむせび泣くシーンは印象的だった。今どうしているのか。

「江戸前寿司の道は２３歳からだから、今年で２３年目。ちょうど人生の半分になりました。戦後間もなく、戦争未亡人だった祖母が三軒茶屋の三角地帯で始めたのがルーツで、私は３代目になります」

　世田谷区下馬、世田谷観音そばの「都寿司」で会った宮田さん、まずはこういった。

「放送終了して２５年になるのに、かつて見ていたという方が毎月のようにいらっしゃいます。ただ、オトコ臭いストーリーだったせいか、ほぼ９割が男の方で。女性にもぜひ来ていただきたいものです、ハハハ」

　カウンター７席に４席のテーブル１卓。寿司の値段は１貫２００円から、並握り１人前１６００円、上２３５０円、特上３１５０円。夫人と二人三脚で切り盛りしている。

　さて、宮田さんが芸能界にデビューしたのは高１の冬。エスビー食品のスナックのテレビＣＭ出演だった。

「ウチの常連さんだったＣＭディレクターの方に“ＣＭのアルバイトしない？　土曜日の午後半日で２万円出すよ”って誘われましてね。毎月の小遣いは４０００円がせいぜいの時代でしょ。２万円なんて夢みたいな金額。半信半疑のまま、成城の東宝撮影所に行きました」

　ほかに４、５人、同じＣＭの撮影に来ていたが、最終的に採用されたのは宮田さんバージョン。女の子に頬にキスされ、学生服ではにかむ姿が放映されるや、「カワイイ〜！」と女子中・高生の間で人気が沸騰、「本人の意思とは関係なく」（宮田さん）、８１年１１月、元チューリップの財津和夫作曲の「ガール」で歌手デビューした。そして、８４年１０月スタートの「スクール☆ウォーズ」の森田光男役で人気を不動のものにしたのだった。

●「オトコ臭いストーリーだったせいか、９割が男性の方で。女性にも来ていただきたいものです、ハハハ」

「山下さんの滝沢先生役は演技じゃなく、完全に地でしたね。第３話に森田が先輩たちから神社の石段でウサギ跳びを強要されるシーンがあって、撮影を待ってたら、“本番のときだけつらそうな顔をしてもダメだ。待ち時間の間にウサギ跳びをしてた方がいい”って率先してウサギ跳びを始めたことがありました。それをやられたら、続くしかないですよね。あと、何度もあった出演者が号泣する場面でも、目薬なんか一度も使わなかった。役になりきって感情移入すると、自然に涙が出ちゃうんです。そんなところが視聴者に感動してもらえた秘密ではないでしょうか」

　２２歳で芸能界からスッパリ引退。家業を継いだ。

「バイトの延長みたいな感覚が最後まであって、未練はありませんでした。いい経験をさせていただいたと思ってます」

　店舗が自宅、子供はいない。

（日刊ゲンダイ2010年10月18日掲載）