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きょうの社説 2010年10月24日
◎里山国際組織に参加 発信に値する成果を着実に
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に合わせて設立された里山保全の国
際ネットワークに、石川県、金大環日本海域環境研究センター、能美の里山ファン倶楽部(能美市)の3団体が加わった。生物多様性の維持に関しては、手つかずの原生的な自然だけでなく、人々が古くから利 用してきた農地や森林などの「二次的自然環境」も重視されている。そうした環境を守る取り組みとして環境省と国連大学が「SATOYAMAイニシアティブ」を提唱し、国際組織はその推進母体になる。 人の営みを通して生態系のバランスを保ってきた里山のような自然は世界各地にみられ 、各国が活用事例を研究、発信し、課題解決につなげるのが狙いである。 気候風土や文化の違い、あるいは先進国と新興国で自然との向き合い方が異なるのは、 COP10関連会議の議論でも明らかである。海外の取り組みがそのまま石川に当てはまるとは限らないが、国際組織への参加は、これまでの里山保全活動を見つめ直し、その意義を「生物多様性」の観点から再確認する良い機会である。世界への発信に値するような成果を着実に積み上げていきたい。 発足した「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ」には、日本など9 カ国の政府や石川、愛知、兵庫県、名古屋市、国際機関なども含め51団体が参加した。3団体が設立会員に名を連ねた石川は里山保全活動をリードする役割を担う。 県内でも耕作放棄地や手入れの行き届かない森林が増え、里山荒廃が問題になっている 。里山活性化の本質的な課題はそこに農業や林業を成り立たせ、経済的な裏付けのある生産の基盤を作ることである。その結果として生物多様性が維持されるのが理想であろう。 県内では企業、民間団体など里山保全の新たな担い手が増えてきた。金大が全国屈指の 里山研究拠点として活動の幅を広げていることも心強い。里山保全の底流には過疎の克服、第一次産業の振興といった難しいテーマが横たわっている。COP10を機に県内のネットワークを再構築し、腰を据えて取り組んでいきたい。
◎インフルワクチン 早めの接種が望ましい
冬の到来に向け、国の今年度の新型インフルエンザワクチン接種事業が今月からスター
トした。今シーズンは、新型とともに季節性のA香港型、B型にも効果が期待できるワクチンが用意され、県内でも一部市町を除いて既に接種が始まっている。今シーズンは、国全体で最大約5300万回分の需要見込みに対して、5800万回分 以上が供給可能となっており、昨シーズンのように「優先順位」は設けられないものの、ワクチンの効果が出るまでには、接種してから2〜4週間を要するとされる。新型かどうかはともかく、冬にインフルエンザが流行するのは当たり前のことであり、特に、重症化するリスクが高い高齢者、糖尿病やぜんそくなどの基礎疾患を持つ患者、乳幼児、妊婦らは、かかりつけ医と相談しながら早めの接種を心掛けるのが望ましい。 インフルエンザは、新型であっても季節性であっても、通常は早いうちに治療薬を投与 すれば短期間で回復するのだから、健康な人であれば、過度に恐れたり慌てたりする必要はない。ただ、「ハイリスク者」にとっては侮りがたい病気であることも確かだ。県内では高齢者や子どもなどを対象としたワクチン接種費用の減免制度を設けている市町もあり、そうした支援を活用してできる限りの備えをしてほしい。 ワクチン接種の目的はウイルスのシャットアウトではなく、重症化の防止であることも 、あらためて指摘しておきたい。ワクチンを接種したからといって、外出後の手洗いやうがいを徹底しなくてもよいということにはならない。かかった後は、感染を広げないために無用の外出を控えること、「くしゃみをする際には口や鼻をティッシュペーパーで覆う」「せきが続く時はマスクを着用する」といった「せきエチケット」を守ることも大事だ。 昨シーズンの新型の大流行を通じて浸透した最も基本的なインフルエンザ対策を、たっ た1年で忘れてしまってはならない。行政にも、引き続き普及啓発に努めることを求めておきたい。
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