あと一歩、そしてあと数センチの差だった。九回一死一、二塁。和田が放った打球は、左翼手・ラミレスが懸命のジャンプで差し出したグラブの数センチ上を越えてサヨナラ打となった。
「中日投手陣を打ち崩すことができなかった。結果、こうなってしまった。同じ目標、目的を持ち、全員の力を結集してペナントにおいてもCSにおいても戦った。だが、これが現実だった」
左翼フェンスに向かって転々とするボールを見つめた原監督は、歓喜の中日ナインからも目をそらすことはなかった。会見場でも堂々と胸を張り、敗戦の弁を述べた。
原巨人の2010年が終わった。ペナントレースは1位・中日と1ゲーム差。最後の試合も2点を追う九回一死一塁から矢野が左翼フェンス直撃の適時二塁打。さらに一死三塁からは、代走にスペシャリストの鈴木を送り、松本の二ゴロにギャンブルスタートで同点に追いつく執念を見せた。
九回裏に久保が連続四球でサヨナラのピンチを背負ったときは、自らマウンドに足を運び、叱咤(しった)激励。最後まで打つべき手をすべて打ち、そして負けた。
「今年は同じ投手に苦戦を強いられたことが印象に残っている。来年のことはまだ(時期)尚早。少しリラックスして、時間を頂いて次のことを考えたい」と指揮官は最後の言葉を結んだ。
強力打線が、ナゴヤドームでは最後まで機能しなかった。リーグ戦12試合で計25点しか奪えず、CSの4試合でも小笠原、ラミレス、阿部の中軸3人が計8安打と抑え込まれた。中日との差を埋めることから2011年の戦いが始まる。(桜木理)