トップページ > なっとく法律相談 > 身障者補助犬の入店拒否をした悪質な店をブログで公表!
なっとく法律相談 2006年5月15日 更新
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私は、身体障害者が不自由なく生活できる世の中になってほしいと願い、その活動を支援している者です。
先般、介助犬シンシアとユーザーさんの尽力により、「身体障害者補助犬法」が制定されました。その第7条には、一定の施設への同伴は原則として拒んではならないと規定されています。しかし、残念なことに、全国で入店拒否事件が後を絶ちません。
そこで、あるユーザーさんは、特に対応が悪質だった店をご自分のブログで公表されました。何も問題が起こらなければいいのですが、損害賠償を請求されたりすることはないでしょうか。
(50代:女性)
「身体障害者補助犬法」(補助犬法)は、平成14年10月、身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化を図り、身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与することを目的として成立しました(第1条)。
一定の施設における身体障害者補助犬の同伴は、第4章(施設等における身体障害者補助犬の同伴等)に規定されています。施設管理者は、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合、その他やむを得ない理由がある場合以外は、補助犬同伴を拒否してはなりません(9条)。
ところが、同法が施行されて3年半が経つというのに、同伴入店を拒否される事件がいまだに相次いでいます。わが国の人権意識・法規範意識の低さを物語る、まことに残念な現状です。
一般には、違法行為をすると、罰金、禁固、懲役等の刑罰を受けるように思われます。しかし、国民が法律に違反して刑罰を受けるのは、法律で罰則が定められている場合に限られるのです(罪刑法定主義)。
同法についてみると、「施設等が補助犬を受け入れるように努めること、補助犬を利用する人に対して必要な協力をするように努めること」等の努力義務は規定されていますが、罰則は定められていないため、違法行為をした施設管理者に刑罰を与えることはできません。
そこで、入店を拒否された者としては、インターネットやマスコミ、集会等を利用し、自らの権利を訴える方法を取ることになると思われます。
このような条件の下で、被害者が具体的事実を摘示(指摘)して違法行為を批判することは、原則として、名誉毀損罪(刑法230条)、業務妨害罪(233条)には当たらないと考えます。また、民事上の損害賠償を請求される場合を考えても、相手方は損害額を確定したりしなければならないため、その負担を考慮すれば訴訟に至るような可能性は低いでしょう。
しかし、内容において正当な主張でも、指摘の態様において行き過ぎれば、相手との間で法的紛争を招くことがあります。これでは、一般市民の共感を得ることはできません。
被害事実を指摘する際には、誠意をもって、真実に従い、具体的客観的に行うことが大切です。中傷めいた表現や、悪意をもって風評を流していると受け取られるような書き方は避けるべきです。
また、同法23条に基づき、地方自治体等の関係行政庁に改善や違反施設への指導を継続的・組織的に求めていく活動も、一定の効果が期待できるのではないでしょうか。
身体障害者補助犬法の施行状況に関する厚生労働省の検討会は、今月12日、将来的に補助犬受け入れ義務を職場やマンションなど民間集合住宅に拡大する方針で合意しました。同省は、超党派の国会議員でつくる「身体障害者補助犬を推進する議員の会」に、来週にも検討会の内容を伝える方針です。
バリア・フリーは時代の要請です。障害者の人権保障について、国民の一層の理解と協力が期待されています。
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