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[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/23 03:51
前書き

10月15日
操作を誤って削除してしまいました。
せっかく頂いた感想まで消えてしまい泣きそうですが、めげずに頑張りたいと思います。



この物語は、BETAの脅威にさらされる地球へ飛ばされる原作の知識を持ったオリジナル主人公の視点で進む物語です。

作者は、原作をマブラヴ、マブラヴアンリミテッド、マブラヴオルタネイティブ、資料を公式メカ設定資料集でSSを作成していてます。



初めましての皆様、そして今まで読んでくださっている皆様、お久しぶりです。作者ファントムです。
【習作】マブラヴオルタネイティヴ『掴み取る未来』ですが、話を進めて行くうちに自分の中でも上手く修正が出来ず、更新がストップしてしまいました。

設定を練り直し再スタートをしたいと思います。
もっと良い作品になるように頑張って、最後まで書けたらいいなと思います。
設定の甘さ、文章力がまだまだではあるとおもいますが、皆様のご指導、ご感想を首を長くしてお待ちしています。

それでは、『掴み取る未来』始まります。



[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』第1話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/15 07:12
第1話
???

「真っ暗だけど、部屋ではないな……」

場所が何処なのかも分からない暗闇の中でそう呟く1人の男性。彼の名は北条直人 ( ほうじょうなおと ) 。歳は二十歳、仕事はミリタリー好きから自衛官の道へ進み、今年度で任期が終わるが続けるかどうか悩んでいた。
そんな時に同期からとある PC ソフトを勧められるままプレイするのだが、見事にハマってしまう。クリア後は SS を読み漁る。
それから PC に向かっては自身の妄想を SS を書いていた。
そんないつもと変わらない一日を過ごしていたはずであった。
消灯時間後もしばらくは SS を書いていたが行き詰まり寝る為にベッドへと入る。明日も休みだしノンビリするかなと思って目を閉じる。
目覚めるのはきっと昼過ぎだろうなんて考えているうちに意識を手離してゆく。

今は何も見えない暗闇の中にいる。
数歩足元を探りながらゆっくりと前へ進んでみる。
手も前後左右に何か在るかと探ってみるが何もない。

「おーい、誰かいないのかー?」

響くようだが、何の返事もなかった。
もし、先任を起こしてしまったら寝ぼけていた事にしようと考えていたが、それはないらしい。

「という事は、これは自分の夢って事なんだな」

それにしてははっきりと自分が分かるというか……。

「あれ?なんで人がここにいるんだろう」
「っう!?」

誰もいない夢だろうと決めつけていた。突然後ろから声をかけられ驚いてしまう。

振り返った先にいたのは、暗いはずなのに彼女はよく見えた。
赤い髪を大きな黄色いリボンで束ねた少女だった。

「えへへっ、こんにちは。私の名前は……」

あぁ、やっぱり夢なんだなと納得した。
何故って目の前にいる少女は、同期に勧められたゲームのヒロインだったからだ。

「……、と言うわけなんだよ。タケルちゃんらしいですよね?ほんっとに女ったらしなんですよ~」

しかも気付いていないんです。
そう言う彼女は笑顔だ。自分の夢で他人を惚気られ、つい顔がしかめっ面になってしまう。

彼女の話だと、世界を救った彼は還ったはず、だった。
しかし彼女を、彼女達を失ってしまった事に納得出来なかった彼の一部がそのままループを始めている、という。
自分があそこでいじけていなければ、あそこで別の行動をしていたら、きっと救えるはずなんじゃないのか、と。失わう必要のない命……。

数ある世界、別々の彼女たちと結ばれ、愛し合う事もあった女性達だもんな。

「それでなんだけれど……」

「……何かの偶然なのか、それとも何度もループした事でかは分からないけれど、あなたが引き込まれてしまったみたいなんです」
「……え?」

自分がか?なんでだ、と問いただそうとするが……。
あぁ、彼女もよく分かってはいないとも説明してくれたよな。
夢だから自分が主人公ってわけだ。

「……そう言えば、お名前聞いてませんでした」
「自分は、北条直人だ」
「北条、直人さん……」

真顔になった彼女に俺は見惚れてしまった。

「北条さん、これはあなたが思っているゲームでもなければ夢でもありません。これから起こる事は全てが現実なんです」

数ある世界の一つなんですよ、と。
それから彼女は最後にごめんなさいと付け加えた。

「現実……」

そう言われてもピンとこない。
自分の現実は事件や事故は度々ニュースで聞き、戦争はどこか別の国がしていて平和な日本だ。
じゃあ、今この瞬間は?夢?現実?

「そろそろ時間みたいです」

気が付かなかった。
さっきまでは暗かった周りが明るくなってきている。
何もない、ただ眩しい。

「君はどうなるんだ!?」

ふと、自分の事よりも彼女の事が気になってしまった。
もう、眩しすぎて見えないはずの彼女が笑って何かを言っている。しかし、その声は聞こえなかった。

そして自分は意識を手放した。



某年某日

遠くで声が聞こえる……、その声が近づいてきているようだ。

「ーールド05、シールド05!無事か?」

耳元で大声を出さないでくれと返事をしようとするが上手く声が出ない。
段々と焦点の合ってきた視界には、レーダーや機体、高度計や速度計と言ったどこかで見た事がある映像が浮かんでいた。

「ーー網膜投影、システム!?そんな馬鹿な」

これも夢の続き、なのか。

「つうっ??」

頭部を何処かにぶつけたのか、痛みがある。
夢って痛みはあったか。

「シールド03よりシールド05、そっちの機体は左腕が綺麗に吹き飛ばされているようだ、機体は他に異常ないか」

シールド05とは自分の事らしい。
今はいつでここは一体何処なんだ!?
表示されている機体ステータスは撃震。
シールド03に言われた通り左腕が真っ赤に染まっている。
機体がどこかビルへ激突していて、他の装甲部も所々赤くなりかけているみたいだ。

「ーーし、シールド05よりシールド03、機体の異常は左腕以外はまだ大丈夫そうです」
「シールド03了解、ここは一旦下がるぞ」

なるほど、見たいと思った方向をしっかり戦術機は見てくれるらしい。
シールド03の機体も撃震だ。
機体色が暗いダーク系な色と言う事は、帝国軍だ。
自分も必然的に帝国軍なわけだ。

シールド03が機体を起こすのを手伝ってくれるようだ。
しかし、自分に動かせるのか。

「急げ、次が来るぞ」

足元にフットペダルがあり、手元にはコントロールスティック……。
畜生、どうやれば立つんだ。
立たせる動作は…、ふと自然に身体が動いた気がする。
シールド03に支えられてだが機体を起き上がらせる。身体が覚えているのか。

少し余裕が出たせいか周りが見えるようになった。
数は少ないが突撃級、要撃級の死骸が目に入ってきた。

「これを、シールド03が片付けたんですか?」

なんと間抜けな質問だったんだろう。でも、そう聞かずにはいられなかった。

「シールド05、私1人ではない、お前と一緒にだ」
「何故か、覚えていなくて……」
「そうか、まぁいい。移動する」

なんとか機体を飛行させ、シールド03の後を追う。
戦況マップを確認しようにも、画像が乱れている。
こんな風になるものなのだろうか。
その間、少しずつではあるが、機体の動かし方も分かってきたような気がする。

「忌々しいBETA供めっ、台風のに併せて九州の各沿岸部へ上陸とはな」

西部方面隊の各隊は避難の遅れる民間人の時間を稼ぐ為に各地で戦線を構築しているとの事。さっきまではいた場所は一部BETAが浸透してきたらしい。
その撃破に向かったとの事だった。

このまま史実通りだとかなりマズいはずだ。
時間が経てばBETAは中国地方へも上陸、西部方面隊は挟撃され全滅じゃなかったか。

考えているとレーダーへ補給コンテナが表示される。
シールド03の話だと、師団の補給隊がこうして各地に配置してくれているらしい。

「これは後で使おう。まずは、シールド05の機体の修理から先だ。バランスも取りにくいだろう」
「シールド05了解」


北熊本駐屯地

シールド03に従い駐屯地へ戻ってきた。
機体を格納庫へ戻し整備へ任せ、邪魔にならないであろう隅の方へ腰を降ろす。
機体のチェックや換装に走る整備員達を眺めている。
実はこれはやっぱり自分の夢なんではないだろうか。

「北条、疲れた顔をしているな……」

隣にシールド03、今の自分にはコールサイン以外の情報は分からない。必死に名前を思い出せないかと相手を見る。
良かった、すぐに名前と階級章を見つけれた。

「佐藤中尉……」
「もっと胸を張れ。まさか隊に配属されて成績の低かった貴様が生き残れるとはな」

そう言いながら肩を叩く。
これでも食って体力付けろと、握り飯をくれた。

「糧食班がな、合成ではあるが作ってくれたらしいぞ」
「ありがとうございます」
「それは彼らに言ってやるんだな」
「後で言いに行きます」

改めて自分自身を見る。階級章は少尉、ウイングマークだって階級章だって貰ったばかりなんだろう、新品のようだった。

「第1の連中は、長崎から上陸してきたBETAとぶつかっているらしい」

今だ奴らの数が少ないのもその為だと、佐藤中尉。
この先、どうなるか自分は知っている。
夢だと思っていたら、本当になっていた。
このままだと俺は死んでしまうのか?

整備から機体の修理が終わったとの報告が入る。

「中隊長も戻ってきたようだ、今後の作戦が下達される、行くぞ」

慌てて残った握り飯を口に頬張る。
どうする、俺は一体どうすればいいんだ。
何も決めれないまま、シールド03、佐藤中尉を追うのだった。





[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』第2話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/15 07:11
第2話

台風に併せたかのように上陸したBETAは北九州沿岸部へ上陸。
展開し迎え撃つ福岡、長崎の帝国軍。
九州各県に配備されていた戦術機甲部隊も臨時戦闘団として熊本へ集結していた。
国連軍、米軍は本州への侵攻を防ぐ為に、北九州市へ展開していた。


北熊本駐屯地

「佐藤、北条入ります」
「2人、か」

ブリーフィングルームでは戻った中隊長以下第3中隊揃っている。
たった7名、これが今の中隊戦力のようだ。

「たった2日だ、それで中隊は半数までとはな」
「どこも支援砲撃は足りていないそうだ」

疲労がどの顔にも出ているが、誰も諦めてはいないようだ。

「師団からの命令を下達する。我々を含めた戦術機を保有する隊は……」

警報が鳴り響き、中隊長の言葉が遮られる。

『九州南部への旅団規模のBETA群上陸を確認』

ブリーフィングルームに動揺が拡がる。
自分は特に驚きはしなかった。
むしろ、来ないでくれと願っていたが、そうはいかないらしい。

「なんだとっ!?BETAが迂回したとでも言うのか!!」

悪い知らせはそれだけではなかった。

『そ、そんな!!天草観測所より入電!中隊規模BETA群上陸、数はまだ増えているとの事です』

オペレーターの声は震えている。
これで九州ほぼ全域に渡ってBETA上陸が確認される事になった。
各隊長は司令部へとの放送が入る。

「中隊各員は各搭乗機へ」

中隊長はそう言い残し、司令部へと向かう。
中隊各員がブリーフィングルームを飛び出す。
自分も佐藤中尉の後を追って走る。
まさにゲームの史実通りなんじゃないのか?
このまま西部方面隊、民間人はBETAに蹂躙されていく。
中国地方へも侵攻があるんだ、援軍だって来ない。
そのまま、横浜ハイヴ、佐渡島ハイヴが作られるんだろう。

気付けば格納庫についていて、
振り返った佐藤中尉がこちらを見ていた。

「不安か」

なんて言えばいい、自分はこの世界の人間じゃない、戦いたくないって言えるかよ。
言ってどうなる……。

「上手くは言えないが、気にするな」
「え?」
「それこそ死ぬぞ」

佐藤中尉は微笑んでいた。
やれる事を私達はすればいい。
そして、足掻いて足掻いて、BETA共に日本へ侵攻するのは間違いだったと教えてやろうと笑った。

「もし、これから中国地方へBETAが侵攻すると言った……」
「どうにもならないだろう。やれる事をやるだけだ」

今出来る事をやる……。
今更逃げても死ぬだろう。BETAはそこまで来ている。
戦術機に乗っていればまだ死なずに済むんじゃないか……?

「さっきよりはマシな顔にはなったようだな」

佐藤中尉は自分の撃震へと搭乗していった。
自分の割り当てられた撃震を見上げる。
左腕は修復されていた。
コックピットへ乗り込む。
なんだか落ち着いて来た、なんだろうこの気持ちは。

少し落ち着いたからか、周りの様子が見えて来た。
駐屯地の非戦闘員が次々に退避を開始していた。

「シールド01より中隊各機、師団司令部命令を下達する」

第3中隊は熊本南部に位置する人吉市へ展開、鹿児島県からの避難民がまだBETA侵攻の無い宮崎への移動を援護し時間を稼ぐ。
避難が完了後、山地での防衛線を形成する。
その後、民間人の本土撤退後、本土からの援軍と合流、BETAを押し戻す。

援軍が来ない、なんて言っていいのか?そうじゃ無くても、先のことを知っているんだ。
自分は言うべきじゃ無いのか。

「第3中隊、出るぞ!!」
「了解!!」

ふと周りを見渡す。
次々と出撃する戦術機、支援車両を基地要員、整備員が敬礼で見送ってくれていた。

第3中隊も次々と出る。
自分の前を佐藤中尉のシールド03が行く。

匍匐飛行で人吉市へ向かう。
海岸線では絶えずが閃光が見えた。
人吉市へはまだ中型BETAの侵攻は受けていないらしい。
戦車級以下小型種の侵入もあるようだが、宮崎に残っていた戦術機甲小隊、支援部隊が防いでいるようだ。

「シールド01より中隊各機、人吉市へ到着後、各小隊展開。BETAを殲滅する」

小隊毎に連携、カバーを忘れるな、と中隊長から檄が飛ぶ。

山を越え人吉盆地へ到着する。
道路は非難する車両が列を作っていてまだ時間が掛かりそうだ。
田浦、水俣方面では閃光が見える。

「シールド01より各機、これより火器使用自由、私より先に墜ちる事は許さんぞ!」
「了解!!」

スロットルを握る手に力が入る。
俺は、死にたくない、死にたくないんだ。

「シールド03よりシールド05、我々は水俣方面からの侵入を食い止める」
「了解」

シールド03の後に続く。
今は目の前の事をどうにか生き延びよう……。




[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』第3話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/15 07:44
第3話

人吉市西区郊外

自分はシールド03と共に郊外の警戒へと前進、警戒についていた宮崎から警戒に来ていたブラッド小隊を補給に下がらせた。

天草諸島を抜けたBETA群は熊本沿岸部へと上陸を始めている。
特に菊池平野への圧力が強いらしい。

「シールド01よりシールド03、報告を」
「シールド03、異常無し」

中隊が到着する前に一度BETA群侵入があったようだが、これは撃退されていた。
今はこちらへは来ていない。

…このまま来なければ、無事に後退する事が出来るんじゃないか。

『ゼブラ02よりシールド01……』

ゼブラ隊からのコール。
ゼブラ隊は水俣地区の守備隊、とうとう来るのか。

「シールド01より中隊各機へ!水俣方面から防衛線の一部を抜け小隊規模のBETA群が接近中だ」

小隊規模ってどれくらいの数だったか。
思い出せない。

「120秒後、支援砲撃。シールド03、05は砲撃を潜り抜けたBETAを撃破しろ!」
「シールド03了解」
「しっ、シールド05了解!!」

風を切る音が響く。
突撃級を先頭として現れたBETA群へと砲弾が降り注ぐ。

しかし、砲撃はすぐに途絶える。
各戦線へと支援しなければならないからだ。
いよいよ戦うんだ。そう思うと手が震える。

「シールド05、無理はしようと思うな」

止まらずに、撃っては場所を変えてまた撃つでいい、そう言うとシールド03の撃震は自身の突撃砲を構える。

自分は支援突撃砲を装備している。
あとは持てるだけの36mmマガジン、予備に突撃砲を担架へと搭載してきた。
シールド03の選んだ装備で今回出撃前に相談して決めていた。

「りょ、了解」
「シールド03、05前へ出る」

シールド03を戦闘に2機の撃震が噴射跳躍でBETA群へと接近する。
光線級の上陸が無いのが人類側を多少ではあるが優位に立たせていた。
シールド03の撃震が、傷付きながらも他のBETA群より先行する突撃級を飛び越え、その背後に着地する。

後方に位置する要撃級や戦車級、小型種には目もくれない。
支援砲撃によって突撃級周辺に展開していた戦車級が無力化されていた事も幸いだった。
慌てる事も無く、突撃級の装甲殻の無い背部へ36mm弾を撃ち込んでいく。

シールド03へ対処する為に旋回する突撃級へは自分の支援突撃砲で狙撃、こちらへ進む突撃級へはシールド03の36mm弾が撃ち込まれた。

初めてBETAを見るが、なんとも言えない気持ち悪さだ。
思っていたよりは大丈夫なようだ。

落ち着いて狙いを定める、照準を合わせて撃つを繰り返す。
狙撃後は移動し、同じ場所へと長居をしないように心掛ける。

突撃級を片付けた後、要撃級、戦車級が追いついて来る。

「シールド05、要撃級を頼む」

そう言うとシールド03は36mm弾を戦車級へとばら撒いている。

戦術機、しかも第一世代の撃震ってあんな風に動けるのか……。

くそっ、外れた!?
すでにこの位置からは要撃級への狙撃が当たっていない。
さっきまでとは何が違うんだ。

「シールド05、下がりすぎだ。慌てるな」

レーダーへ目を移す。気が付けば、当初の位置よりだいぶ下がっていた。

「シールド05、了解」

なんとか最後の一体の要撃級を撃破する事が出来た。

シールド03が先行、囮役となってくれたから落ち着いて対処出来た。

「シールド03、05よくやった。補給に一度下がれ」

第2小隊のシールド02、07とここを引き継ぎ下がる。


人吉市総合グラウンド


指定された総合グラウンドへと向かうと、そこには師団からだろう、整備チームが待機していた。

「お帰りなさい、補給の間だけですが降りて休んで下さい」

女性整備員がスピーカー片手に誘導していた。
整備支援担架へと機体を寝かせ、コックピットから出る。
シールド03、佐藤中尉は先に降りていたベンチへと座っていた。

「佐藤中尉、先程はスゴかったです」

先の戦闘を思い出し、自然にそう口から出た。

「あれはたまたま、だよ」
「たまたまですか!?」
「支援砲撃、タイミング、奴らの数、上手くいったんだよ」

その言葉には謙遜とかではなく、次はどうなるか分からないぞとも言っているように聞こえた。

なぜだか佐藤中尉を見ていられず、総合グラウンドの外へと目を向けた。

陽は傾き、夜が来る。

『作業完了、衛士の方は機体へお願いします』

20分程だろう、あっという間な気がした。
どちらの機体も損傷は無かった為に補給とチェックで済んだらしい。

第2小隊と持ち場を変わる。

「シールド01より中隊各機、遅かれ早かれ耳にするだろう。聞いてくれ。長崎、佐賀放棄が決まった」
「長崎と佐賀がですか!?」
「そんな……」

陥落では無く放棄だと言う。
戦線を立て直す為に長崎、佐賀防衛している隊を福岡の三群、耳納山地へ下げる。隊の立て直しを図り防衛線を維持するとなった。

「なお、我が隊は作戦の変更はない。」

各員持ち場を守れ、と下達された。

暗くなっているはずなのに、そらは赤々としていた。
どの方へカメラを向けても曵光弾の描く軌跡、そして火災が起きているのだろう、明るかった。

人吉市へは未だに鹿児島からの避難する人が流れてきていた。

水俣地区へBETA群は散発的に上陸をしているらしい。
防衛隊の奮戦によって、こちらの被害は殆んど無かった。

『HQより各隊へ通達、最優先事項、佐賀より入電。光線級の上陸を確認、繰り返す光線級の上陸を確認、最優先で……」

「……光線級が上陸したのか」

とうとう来たんだ。今までは空を味方にしていた隊も多いだろう、現にさっきの戦闘でもそうだったんだ。

「シールド01より中隊各機、聞いたな!見つけたら最優先で潰せ!!」
「了解!!」

北へカメラを向けると、空へ走る光の筋が見える。

「まさかここまで見えるなんて……」
「シールド07、怖気ついたか?」
「そ、そんな事はありません」

水俣地区への支援砲撃はまだ機能していると言う事は、ここへは光線級は上陸してはいない。
もし上陸し、ここまで侵攻を許してしまったら……。

自分の機体がレーザーに貫かれ、爆散するのを思い浮かべてしまう。

「シールド05、お前もか?」

シールド03、佐藤中尉だ。

怖い、怖いけれど……。

「今やれる事をやるだけです」
「ほぅ……」

何故か中隊長が反応している。

「どこかで私が言ったセリフだな、シールド03?」
「ええ、そうですよ。シールド01。あなたが私に言ってくれた言葉です」

それを聞いた中隊長は笑う。

「聞いただろう、今はすべき事をすればいい」
「了解!!」

言い忘れたと続ける中隊長は笑う。

「なお、これより私より先に墜ちたら、例え地獄にいようとも死ぬ程痛い目に遭わせる」

なんて人だ。でも、怖いとかじゃ無いんだよな。
スロットルを握り直す。
補給も終えたばかり、燃料、弾薬もある。

やれる事をやろう、誰が死んでやるもんか!






[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』第4話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/18 02:29
第4話

人吉市西区郊外

『ゼーー2、シールーー、ここまでのようー頼むっ」


途切れ途切れに入る無線、水俣地区へのBETAの圧力が強まり、持ちこらえてはいるものの時間の問題となっていた。
民間人の避難はなんとか完了しつつあった。

戦線を縮小し、防衛線構築の為に水俣地区から順次戦車隊、各種支援隊が人吉を通過していく。
水俣地区は戦術機の部隊が残り殿をこなしていた。

「シールド05、異常無ーー!?」

後退してくる戦車の一両が砲塔を旋回させ射撃を開始する。
それに呼応するように、他の車両も射撃を始める。


「水俣を抜けたBETAか!?」
「シールド03、05が救援に向かいます」
「シールド03、任せる」

機体を短距離跳躍で前進させる。
噴射跳躍で一気に跳躍すれば、光線級に捕捉され撃墜されるかもしれない。
九州北部では存在が確認されており、いつここも照射圏内になるかわからない為に
距離が在り、なかなか近付けないのがもどかしい。
目の前で一両の戦車が突撃級の体当たりによって押し潰され、別の一両は戦車級に取り付かれている。

「下がれ、下がるんだ!!」
「シールド03より、シールド01戦車隊を下げて下さい!」
「シールド03、他の非装甲車両が下がるまでは下がれないとの事だ」

時間を稼いでいるのか!?

「シールド03了解、シールド05は車両後方へ、後退を援護しろ」
「し、しかし!?」
「後ろは戦車隊にカバーさせる。むしろ05の方がキツイぞ」

やれるな、と言い残し佐藤中尉の撃震は短距離跳躍で機体を戦車隊よりも前へ出て行く。

残された自分はレーダーを確認する。
車両隊の後方へも戦車級が迫っていて、いつ追いつかれておかしくない。
担架から突撃砲へ兵装を変える。
120mmキャニスター弾を佐藤中尉に指示されていたのが幸いした。
機体を車両隊と戦車級の群れの間へ機体を移動させる。

……くそっ、今までは佐藤中尉が前へ出てその援護だったが、今は違う。
目の前のBETAはこちらへと向かってきている、その姿は昔テレビで見たどこかの蟻の大群と重なった。
操縦桿を握る手の震えが止まらない。

『そこの戦術機、助かる』
「!? 」
『死ぬんじゃないぞ』

一瞬何が起きたか分からなかった。
礼を言われたのか……?

射撃センサーが目標が有効射程内に入った事を知らせる。
気が付けば、震えは治まっていた。

密集する戦車級へ120mmキャニスター弾を放てば、広範囲に広がる弾子が戦車級に降り注いでいく。

1発、2発、3発……。

密集する戦車級を粉々にしていく。
120mmキャニスター弾を使い切る頃には浸透してきた戦車級は全滅する事が出来た。
少数の生き残りは36mmに切り替えて対処する。


ーー水俣地区で爆発、地響きが起こり、一瞬空が明るくなる。


あの爆発はーー?

「シールド01より中隊各機、……水俣地区を放棄が決まった」

ゼブラ隊の生き残った3機がこちらと合流する事になったようだ。
Sー11を作動させ、上陸してきたBETA群を一掃させたらしい。

「シールド03よりシールド01、戦車隊は後退させました。シールド05、カバー頼む」
「シールド05、了解」

佐藤中尉、ゼブラ隊と合流し補給へ下がる事になった。
ここも危険になった為に、機体からは降りる訳にはいかなかった。

『各戦隊へ……、BETA群は日本海側から中国地方への上陸が確認、山口にて展開している友軍は交戦を始めている』

人吉からも時期に後退する事になるのか、ここで死ぬのか……。
周りも慌ただしくなり始める。

「シールド01より中隊各機、よく聞け。戦術機を保有している隊はこれより四国へ後退する」
「なっ!?そんなバカな……」
「未だに避難する民間人は宮崎にもいるんですよ!」
「他のここに展開する隊が下がるだけでも時間を稼ぐだけでも……」
「分かっている!これを確認してほしい」

データリンクによって中国地方の戦域が表示される。

山口に展開している友軍の背後へと上陸するBETA群は勢いを落とさずに飲み込もうとしていた。

「シールド05です、四国への上陸は…?」
「まだ確認されていない」
「中部方面隊が分断された状態になっている」

補給が完了したのち隊は大分を通り、愛媛で部隊再編成する。

愛媛へ渡る頃には、九州南部へ展開していた戦術機甲部隊が集まった。
どの機体も傷の無い戦術機はいなかった。

九州で最後の補給を済ませる。
運良くここまで生き延びれた、一体どうすればいい。やれる事をやる。

「シールド01より中隊各機、海に落ちるんじゃないぞ」

集結地点の座標がデータリンクで表示される。

次々に四国へ向けて飛び立つ戦術機。
まだ残って戦い続ける友軍を残して……。



[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』第5話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/19 04:06
第5話

「北条君は、なんで自衛官になるの?」
「誰かの為に何かしたいと思ったからかな」
「バーカー、こいつは格好つけてるだけで他の公務員の採用試験落ちただけだって」

隣の席の友人がバラしてしまう。
何も今言わなくてもいいじゃないか。

「でも、受かっても入らないって選択肢もあるじゃない?入る道を選んだだけでも凄いと思うよ」

頑張ってね、と彼女は笑って言った。
死ぬなよ〜、なんて茶化してくる友人。
担任が教室に入ってきてホームルームが始まる。

ボーッと窓の外を見ていると、誰かが突いてくる。
なんだよ、担任の話はちゃんと聞いているって。
それでもまだ突いてくる。


「北条、ボーッとしてるぞ」

振り返るとそこには顔を迷彩色にした同期がいた。

「あれ?ここは……」
「あれ?ここは……、じゃないだろうよ、寝ぼけてるのか?」

どこから教官が来るかわからんぞ、しっかり見張れよ。
そう言って、彼は反対側へ視線を戻す。

今のは夢だったのか、立ったまま寝てしまったのか、なんだか懐かしい夢を見ていたような気がする。

昨日からの警戒する訓練はただでさえ緊張していて、仮眠も取れなかった。そこを襲撃されて余計に眠れなくて疲れている。

「昨日寝れなかったもんな。北条は?」
「自分もだよ……」

別の区域を警戒している班から無線が入る。
教官を確保したとの事だった。

『集合!!』

同期と顔を見合わせる。
やっと終われる、そんな顔をしていた。

行くぞと、先に向かう同期の後を追う。
帰ったら湯船に浸かってノンビリしたい。
変だな、先を走る同期に追いつけない。むしろ離されていく。

「おっ、おい!待てって」

呼び掛けても反応が無い。
胸が苦しくなってきた、頭も痛み出す。
耐え切れなくなって地面へと倒れる。

なんなんだ、声も出せない。振り向けよ、後ろで倒れているんだぞ。

…………。

「っはぁっ!!」

懐かしい夢を見ていた様な気がする。
頭がボーッとしている、起き上がった拍子に身体に少し痛みが走った。
周りが騒がしい、ここは?
映画で見た事のあるような野戦病院の様だ。

「先生!!彼が気が付きました」

赤十字の腕章を着けた兵が走る。
気付かなかった、衛生兵が来てくれたのか。

改めて自分を見ると、……服を脱がされたのか。
次に周りを見ると、様々な傷病者が溢れていて今も運び込まれている。

「運が良かったんだろうな、殆ど傷は無い状態だった。意識が戻らないのでな、寝かせていたんだが……」

声の主へ視線を移す。
戦闘服の上に白衣を纏っている。

「貴様の上司へは連絡しておいた、入り口ででも待っていろ。ここは他に必要としている者がいるからな」

どけ、と追い出されそうになる。

「少尉、強化装備です」

そう言うと、先程の衛生兵が持って来てくれた。
強化装備……?

「どうかしましたか、少尉」

待て、何かおかしい。
自分は、まだ士長だし、少尉?強化装備?

……段々と思い出してきた。
ここはオルタの世界で、自分は衛士になっていたんだ。
戦術機に搭乗していて、戦いの真っ只中で……。

でも、なぜここにいるんだろうか。

確か、体制を立て直し帝国、国連、米軍による防衛線を構築。
自分も中隊を組み込まれたはずだ。
BETAの侵攻が本格的になってきて、各戦線での戦闘が始まったんだ。
そこまでは覚えているだが……。

さっきの医者はいなくなっており、衛生兵が怪訝そうな顔をして待っていた。
強化装備を受け取り、着替える。

「ところで、自分はなぜここに?」
「覚えていらっしゃいませんか?」

衛生兵の話だと、友軍誤射にあったとの事だ。
戦車級に取り憑かれた友軍がパニックになり周囲に突撃砲を乱射し、運悪く胴体部へ直撃してしまったと。

「身体は少し痛むけれど、それ以外は何とも無いようなんだようだが」
「はい、先生も運が良かったと言っていました」

誤射にあって、生き延びたのか……。
運が良いんだか悪いんだか。

それでは、と衛生兵は離れていった。
自分もいつまでもここにいる訳にはいかない。
入り口へ向かうと、佐藤中尉と鉢合わせた。

「北条、無事だったか」
「はい、身体は異常無しとの事です」

さっき先生から聞いたよ、ついて来い。歩きながら話す、そう言って歩き出す。

しかし、友軍誤射とは……。
機体はどうなっているんだろうか、使えるんだろうか。

「北条、機体は今は無いそうだ」
「……そうですか」

これで戦わずに済むんじゃ無いか。
しかし、佐藤中尉の口からは別の言葉を聞かされる。

「色は塗り直せていなくてな、国連軍カラーになるが撃震を回してくれるとの事だ」
「!?それは、良いんでしょうか?」
「今の現状では、機体も衛士も遊ばせておく訳にはいかんからな」

今頃は搬入されているはずだ、急ぐぞ!
そう言って走り出す佐藤中尉の後を追うのだった。


1998年10月

まだ自分は生きていた。
中隊は人員の補給はあったものの、度重なる出撃でとうとう先任は自分と佐藤中尉を残すのみとなっていた。

京都陥落、BETAの勢いを止める事が出来ずに北陸への侵攻を許し、佐渡島へハイヴ建設を許してしまった。
帝国軍、国連軍、米軍によって戦線を構築しBETA侵攻をなんとか抑えている状況となってしまった。


「おいおいおいおい、あいつらどこへ行くんだ?!」

隊に動揺が広がっていく。
米軍機が次々に後退を始めていたのだった。
日米安保条約破棄、撤退していく米軍機をただ見送るしか出来なかった。
そうして戦力を失ってしまった為に西関東へとBETA侵攻を許してしまう。
順調に自分の知っている正史へと突き進んでいた。
多摩川を挟んで、間引き作戦を繰り広げている最中、横浜ハイヴの建設が確認された、自分はよく分からなかったのだが、かなりの速さ成長していると噂されていた。

自分もまた戦い続けていた。
度重なる疲弊によって中隊は無くなり、佐藤中尉と自分、そして2人の新任少尉と共に一個小隊の遊撃部隊へとされていた。
戦線の穴埋めの為の部隊がこうしていくつも出来ていた。
気が付けば、自分がこの世界へきてもうすぐ一年が経とうとしている。
そして、横浜ハイヴ攻略作戦が発令され、その日までもう幾日も無かった。

「シールド01より小隊各機、中隊規模のBETA群が戦線を抜けたそうだ」

CPから隊長となった佐藤中尉のシールド01へ無線が入る。
自分がシールド02、新任少尉2人がシールド03、05だ。

「シールド02、いけます」
「シールド03問題ありません」
「シールド05、同じくです」
「向こうで国連から小隊と合流し、奴らを迎撃する。遅れるな」

佐藤中尉の撃震の後を追って、3機の撃震が臨時の駐屯地から出撃する。

到着すると、すでに国連軍の小隊が展開している。

「各機、兵器使用自由!」
「了解!」

こうして、間引き作線をこなしなてゆくのだった。





[22526] 【習作】マブラヴオルタネイティブ『掴み取る未来』第6話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:c523a40f
Date: 2010/10/23 16:11
第6話

1999年8月5日


海上を幾つもの黒く巨大な影が並んでいた。
太平洋、日本海側を国連、帝国海軍各艦隊は展開を終える。



重低音が響き渡り、風を切る音が幾つも重なり、幾つもの閃光が明滅する。
侵攻するBETAの後続を寸断する為に洋上に展開した艦隊からの艦砲交差射撃から始まった。
AL弾による砲撃が始まる。
降り注ぐ砲弾へ光線級による迎撃レーザーが幾つもの線を空に描いていた。
重金属雲が一定の濃度へ到達すると通常砲弾をBETAへ降らせていく。


ハイヴ攻略の第一段階が始まる。明星作戦が開始された。
国連軍、大東亜連合、米軍の思惑がいくつも重なっている作戦となっていた。

後続のBETA群の寸断に成功し、地上に展開する砲兵の大小様々な火砲をが次々と面制圧を順次開始していく。


今作戦において、帝国陸軍は戦術機甲大隊2個大隊を投入していた。
佐渡島へのハイヴの建設を許してしまい、戦力を集中運用出来なくなっていた。
今作戦は横浜ハイヴの攻略、西部本土奪還を目的とする作戦。戦力を集めたのだった。

多摩川を挟んでの間引き作線を展開していた部隊を集めることになり、シールド小隊他の独立遊撃小隊、中隊が寄せ集められた2個大隊である。
自分の所属する隊は再編され、コールサインも変更された。
ノーブル05、それが新たな自分のコールサインだった。
シールド隊からのエレメントの佐藤中尉はノーブル03となっていた。

自分の搭乗する機体を見上げる。
整備、補給も終えていつでも出撃する事が出来る状態だ。

『CPより各大隊へ、これより作戦は第三段階へ移行を始める。準戦闘体制へ。繰り返す……』

コールサイン『スパルタン』第1大隊は不知火、陽炎を有する精鋭部隊。
コールサイン『ノーブル』第2大隊第は撃震で構成されている。
第3中隊に自分は組み込まれていた。

戦車隊と協力しBETA群をハイヴ周辺から引き離し、軌道突入部隊の作戦を支援する事になる。

そして、米軍は後詰めとして展開している。
きっとG弾も使用されてこの作戦は『成功』する事になるんだろう。
多くの犠牲を払って……。
ただの衛士がこれから起こるであろう、

「G弾が使用されるので、米軍の行動を見張って下さい」

と言ったところで誰が動く。むしろ、この各国混成軍に混乱を呼んで作戦事態が危うくなる、なんて可能性も出てくるはずだ。
もしくは、どさくさに紛れて殺されるなんてあるかもしれない。
米軍の第5計画について触れてしまうんだ。
現段階では米軍くらいであろう、使用を知っているのは。


「北条、作戦の前に浮かない顔ばかりしているな」

佐藤中尉が隣に並ぶ。

「……はい」
「今までは間引き作線をや迎撃に駆り出されていたが、いよいよ攻略作戦だ、いつもより緊張もするだろう」

北条とは、あのBETA上陸からのエレメントだからな。
経験だって積んできたんだ、今度も気を抜かなければ大丈夫だろう、そう言う佐藤中尉はそれを信じているんだろう、言い切った。

「この作戦、ハイヴの成長段階でBETAの総数を見積もっていますよね」
「そうだな、攻略するには今しか無いと判断されたらしい」
「その計算は違っている、……そんな気がするんです」

それによって、こちらの戦力もすり潰されていくのではないかと思う。

「そう言う計算をする学者共にしか分からんよ、目の前にあるあの化け物共の巣窟を潰す。それが今回の戦いだ」

そう言って、佐藤中尉は横浜ハイヴへ視線を移す。
ここからはハッキリとは見る事は出来ないが、今もなお面制圧が繰り返されているだろう。

佐藤中尉もそこで自身の機体へと走り去った。
自分も機体へと搭乗する。
こうしてここへ座るのも何度目だろうか。

隊の作戦開始時刻になるまでは、機体の動力を落としていた。

CPから入る報告で戦闘の経緯は今のところは順調に推移しているようだ。
太平洋、日本海側からの交差する艦砲射撃によって後続BETAを寸断している。
国連軍、大東亜連合軍の北と南から陽動部隊が先に出ている。
展開しているBETAを引き離しも成功しているようだ。

第1大隊各機体の主機が唸り声を上げる。
今作戦において、帝国軍の精鋭部隊と噂される隊だ。

次々と出撃して行くのを見送る。

第1大隊も作戦は順調に進んでいる。
このままいけば、第2大隊と戦車隊も前進し、戦線の構築に入るはずだ。


『CPより第2大隊、BETA群の増援を確認。このままでは第1大隊が孤立する。予定を繰り上げ、第2大隊出撃せよ……』

「ノーブル01より大隊各機!聞いたな、これより我々はこれよりハイヴ周辺に展開した第1大隊と増援のBETA群を撃破しながら合流する」

第1大隊との合流し、その後戦車隊の火砲と連携、戦線を構築。
第1大隊は門を確保し、軌道突入部隊のハイヴ内部突入支援、及びBETAの迎撃にあたる。


地上要員へ誘導され、機体を前進させる。


第1大隊横浜ハイヴ東

「くそっ、戦車級に取り付かれた排除してくれ」
「スパルタン11、了解。スパルタン10、スパルタン12援護を」
「了解」

第1大隊は当初各中隊毎に展開して作戦を遂行していた。
そこへBETA群の増援が挟撃する形で現れてしまい、中隊毎に孤立してしまった。

『CPより第1大隊、今第2大隊を送っている。合流し、戦線の構築、その後は当初通り門の確保、光線級の出現の際は最優先で排除せよ』
「スパルタン01了解」

すでに初期の光線級狩りで3機、この増援で足元から現れたBETAによって4機が喰われた。
スパルタン01は考えていた。

横浜ハイヴのBETAの予測規模をすでに超えているのではないだろうか、と。
しかし、例えそうであっても引くわけにはいかない。
日本の未来がかかっているのだからと迷いを断ち切る。

「スパルタン各機!!これ以上奴らの好きにさせるな!!」
「了解!!」
『ノーブル01よりスパルタン01、第2大隊は東側のBETA後方より合流を図る。誤射だけはしないでくれよ』
「スパルタン01了解」


第2大隊が戦線へ到着すると、BETA群は第1大隊へと殺到していて、後ろを取る形になった。

「ノーブル01より、大隊各機!前方の第1大隊へ誤射するな」
「白兵戦用意、第1中隊抜刀せよ」

第1中隊の機体は次々に近接長刀へと装備を切り替えていく。
第1大隊も合流する為にこちらへ向う、その為に近接長刀へ切り替えている

「各機、エレメントを崩すな。各中隊毎に展開、先頭は第1中隊、楔壱型(アローヘッドワン)で敵陣へ突入する」

第2、第3中隊は残存するBETA群を排除しエリアの確保、と命令が下達された。

「第3中隊は左翼へ展開する」
「了解!」

第1中隊の進行速度に併せて動いていく。
BETA群はかなりの密度がある。
こちらを察知し反転、攻撃を加えて来るBETAも増えてゆく。

「ノーブル01へ。ノーブル07、ノーブル11、ノーブル12大破」
「ノーブル01了解」

すでに、敵味方入り乱れ始めていた。

「ひっ、誰かこいつらを剥ぎ取ってくれ!!」
「2時方向、突撃級だ避けろっ!!」
「あっーー」

目の前で1機の撃震が砕かれていった。
衛士は隊を結成した日に生まれたばかりの子供の写真を見せてくれた中尉だった。

レーダーからマーカーが一つ消える。

「ノーブル09、撃破されました」
「……了解、ノーブル13はノーブル08、21と組め」

こればかりは慣れない。出撃前にも話していた人が気がつけばいなくなっている。

「ノーブル05、心拍数が上がっているが」
「だ、大丈夫です。いけます」

自分は佐藤中尉の援護があって今も生き残ってこれていた。
今作戦では混戦を予想、両腕へ突撃砲を装備してきた。

かなりの数の戦車級を寄せ付けない様に立ち回っているしか出来ない。

「ノーブル22、弾薬が切れるそうだ」
「補給コンテナは近くにない、弾薬を節約しろ!」

レーダーを見ると、第1、第2大隊の間をBETA群が厚い層を作っている様だ。

『ノーブル02より、大隊へ!!要塞級出現、くりかぇーー」

通信が途切れる。第2中隊のマーカーが次々に赤い波に飲み込まれていく。

『ノーブル16です、光線級を確認しました。要塞級の影に入って攻撃出来ません』
『こちらスパルタン03、我々が行く』

「ノーブル03、05、35、36へ。第2中隊が抑えきれない。そちらを頼む」
「ノーブル03了解、小隊聞いたな。行くぞ」

光線級の射程に入っている為に短距離跳躍で前進する。
こちら側はBETAの増援によってレーダー照射を受ける事は無かった。

「いいな、レーザー照射を受けないようBETAを減らしすぎるな」

そんな事を言われても、殆ど正面はBETAだらけで、まるで海のように思えた。
トリガーを殆ど引きっぱなしになっていた。

「ノーブル05!!後ろだ」
「っ!?」

要撃級が後ろへ回り込まれていた。
転回するのが間に合わないっ……。
一瞬の間があった後、衝撃が走った。

「くぅぅぅう!!!」

何かにぶつかって止まる。
電源が落ちて真っ暗だった。
何も聞こえない、見えない状態になっている。

「ノーブル03、こちらノーブル05、誰でもいい!!聞こえないか?!」

無線は沈黙を保ったままだった。
周りはBETAだらけ、その中を出るしかないのか。
ベイルアウト……、ダメだ、うんともすんとも言わない。

強化外骨格は、生きているようだが、一か八か……。

このままでいるよりはいいかもしれない。

「まず、ここを出る。次に近くの機体に回収してもらう」

知らず知らずのうちに独り言が出ている。
これでいこう。
……大丈夫、きっとうまくいく。

その時機体が揺れた。
何かに引き摺られているようだ。

どうする、今出たらまずいんじゃないのか!?
明かりが灯った。
再起動の文字が浮かび上がり、外の様子が網膜へ浮かび上がって来る。

機体は仰向けで空が見える。

「なんだあれは?!」
「わかりません。光線級のレーザーが直撃している様ですが未だに健在の模様です!!」

なっ、あれってG弾じゃないのか。
まさかもうこんなに早い段階で使用されるなんて。

無線は、ダメだ。まだ沈黙を保ったままだ。
自分の機体はBETAではなく撃震に引き摺られている。

自分の機体はほとんど機体ステータス表示が真っ赤になっている。
機体を動かせない。

見えていた空がふと見えなくなった。
仄暗い中に青く壁が光っている様に見える。
ここは、ハイヴ内なのか?

同じに見える壁が続いている。
佐藤中尉は何か感じ取ったんだろうか。
小隊を率いている様だ。

G弾はハイヴも相当抉ってしまうはずだ。
かなり潜らないといけないだろう。

閃光が走る。
突撃砲を撃っているようだ。BETAと遭遇したんだろう。
どれだけの規模なのだろうか、無事にくぐり抜けてほしい。

そして、見えていた景色も光も消え、何にも分からなくなった。


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