正式にはなんというのか不勉強で、申し訳ないことですが
つまりは↓のような文体の練習作です。
(更新は不定期です)
序章
黒狼、という名前の青年がおりました。
彼はごくごく平凡な“仙人”でありました。
そんな黒狼くんでしたが、たった一つ普通ではない事が有りました。
彼は西王母様の血族だったのです。
西王母様は尊称を九霊太妙瑶地金母元君(長いですな)。最高位の女神にして、全ての女仙を統括
する偉大なお方でございます。
王母様の宮殿「瑶地」は基本的に(蟠桃宴という宴会の時以外)男子禁制であり、これは世界の
支配者である玉皇上帝(天帝)陛下とて、例外ではありません。
黒狼くんの母上は西王母の娘として生まれましたが。仙人となる才能、つまり仙骨を持たず、天
人のような長い寿命も持たなかったため、赤子の時に人界へ里子に出されました。
彼女が成長し産まれたのが黒狼くん、つまり彼は西王母様のお孫様なのです。
仙骨を持って産まれた黒狼くんは、星宿に導かれるかのように、ある仙人に見出され、紆余曲折
の末その仙人に弟子入りし、長い修行の末に昇仙(仙人になること)を果たしたのです。
さて、孫に甘い西王母様は、特例として黒狼くんに「瑶地出入り」を許しました。
マダームからギャル(ついでにロリ)まで揃い踏みの瑶地、なんとも羨ましい話です。いはやは
もっとも色々と気苦労も多いそうですが。
「黒狼!!」
声を掛けられ、微笑を浮かべ振り向いた黒狼くんは、おもわず絶句いたしました。
眼前で屈託無く笑う幼い少女は、(畏れ多い事に)自身の祖母である王母様の第四公主、瑶姫様。
つまり彼の「叔母」を見やり――
手の平で顔を覆い、深いため息を吐きます。
「瑶姫様、たとえ私が貴方様の甥っ子であろうと。そんなはしたない格好で男の前に出てはいけま
せんよ」
大方、瑶地の守護獣である開明獣の子供か、王母様の騎獣である白虎の子供、あるいはその両方
と、取っ組み合いでもしていたのでしょう。
朝方女官が綺麗に結い上げた髪は解け、顔のてっぺんからから足まで土まみれ。
おまけに、身につけた上等な衣服は裂けてボロボロ、凹凸の無い肢体を惜しげも無く、陽光の下に露
にしておりました。
「いいじゃないか、あたしのおしめを替えてくれたのは黒狼なんだし」
「…瑶姫様」
黒狼くんが押し殺した声と共に揺姫様を睨みます。
「む~、最近の黒狼は玄女か二姐のようだ」
ふてくされた仕草も可愛らしいですね。
とはいえ先日、九天玄女様と第二公主様に「甘やかしすぎだ」と釘を刺されたのばかりの黒狼くん。
王母様の片腕である玄女様と、よく似た性格の第二公主様は…怒らせなくてもコワイ。
恐い、怖い、強いお方たちです。
「もう帰ってしまうのか?」
「ええ、すでに用事は済んでおりますので。本来この瑶地は男子禁制、あまり長居はできません」
「ちぇ、剣術の稽古に付き合って欲しかったのに」
それも先日叱られたのです「瑶姫が武術ばかりで他の稽古事を怠ける」と…
「なぁ稽古が駄目でも、何か面白い話を聞かせてくれないか?」
「読書でもなさったら如何です?」
「眠くなるから嫌だ」
屈託無く笑う。駄目だこりゃ……
「(仕方ないか。つくづく、私はこの幼い「叔母」に甘い。)わかりました、では開明獣の所でなら」
「やった!!」
「さてその前に――疾ッ!!」
術を使いぼろぼろの衣服を直し、汚れを落とします。これぐらいなら長々と口訣(呪文)を唱え
る必要は無いようです。
「あ、ありがとう」
「さぁ一気に飛びますよ、しっかり捕まって」
瑶姫様を抱き上げると、黒狼くんは空を駆けます。
瑶姫様が黒狼くんの腕の中で歓声を上げています、まだ自力では飛べない瑶姫様には、ただ飛ぶ
だけでもおもしろいのでしょう。
短い空の旅を終え、瑶地の端っこ、開明獣の守る門までやって参りました。
開明獣は人頭獣身の獣、その知能は高く、聡明で謎かけなどを好む霊獣でございます。
皆さんが良くご存知のスフィンクスとは違い人は食しません。因みにメスでございます。
二人は門の楼閣の上に腰掛け、取り止めの無い話を始めます。
「さて、これはまだ私が修行中だった時の話なのですが……」
この冒険談を聞かせたのが、後にとんでもない事件に発展するのですが……この時の黒狼くんに
はそれを知る術はございませんでした。
嗚呼後悔は先に立たず――
ね?結構気苦労が多いでしょう?それでも羨ましいって?
まぁそれはそうですね……
この作品は以下のような作品の影響を受けています
「火輪」「央華封神」「チキチキ美少女神仙伝シリーズ」「崑崙秘話シリーズ」