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[22683] 【習作】オリジナル中華“風”仙人モノ【第三者が一人称で語る作風】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2010/10/23 08:00
正式にはなんというのか不勉強で、申し訳ないことですが
つまりは↓のような文体の練習作です。

(更新は不定期です)



序章

 黒狼、という名前の青年がおりました。
 彼はごくごく平凡な“仙人”でありました。
 そんな黒狼くんでしたが、たった一つ普通ではない事が有りました。
 彼は西王母様の血族だったのです。
 西王母様は尊称を九霊太妙瑶地金母元君(長いですな)。最高位の女神にして、全ての女仙を統括
する偉大なお方でございます。
 王母様の宮殿「瑶地」は基本的に(蟠桃宴という宴会の時以外)男子禁制であり、これは世界の
支配者である玉皇上帝(天帝)陛下とて、例外ではありません。
 黒狼くんの母上は西王母の娘として生まれましたが。仙人となる才能、つまり仙骨を持たず、天
人のような長い寿命も持たなかったため、赤子の時に人界へ里子に出されました。
 彼女が成長し産まれたのが黒狼くん、つまり彼は西王母様のお孫様なのです。
 仙骨を持って産まれた黒狼くんは、星宿に導かれるかのように、ある仙人に見出され、紆余曲折
の末その仙人に弟子入りし、長い修行の末に昇仙(仙人になること)を果たしたのです。

 さて、孫に甘い西王母様は、特例として黒狼くんに「瑶地出入り」を許しました。
 マダームからギャル(ついでにロリ)まで揃い踏みの瑶地、なんとも羨ましい話です。いはやは
 もっとも色々と気苦労も多いそうですが。


「黒狼!!」
 声を掛けられ、微笑を浮かべ振り向いた黒狼くんは、おもわず絶句いたしました。
 眼前で屈託無く笑う幼い少女は、(畏れ多い事に)自身の祖母である王母様の第四公主、瑶姫様。
 つまり彼の「叔母」を見やり――
 手の平で顔を覆い、深いため息を吐きます。
「瑶姫様、たとえ私が貴方様の甥っ子であろうと。そんなはしたない格好で男の前に出てはいけま
せんよ」
 大方、瑶地の守護獣である開明獣の子供か、王母様の騎獣である白虎の子供、あるいはその両方
と、取っ組み合いでもしていたのでしょう。
 朝方女官が綺麗に結い上げた髪は解け、顔のてっぺんからから足まで土まみれ。
 おまけに、身につけた上等な衣服は裂けてボロボロ、凹凸の無い肢体を惜しげも無く、陽光の下に露
にしておりました。
「いいじゃないか、あたしのおしめを替えてくれたのは黒狼なんだし」
「…瑶姫様」
 黒狼くんが押し殺した声と共に揺姫様を睨みます。
「む~、最近の黒狼は玄女か二姐のようだ」
 ふてくされた仕草も可愛らしいですね。
 とはいえ先日、九天玄女様と第二公主様に「甘やかしすぎだ」と釘を刺されたのばかりの黒狼くん。
 王母様の片腕である玄女様と、よく似た性格の第二公主様は…怒らせなくてもコワイ。
 恐い、怖い、強いお方たちです。
「もう帰ってしまうのか?」
「ええ、すでに用事は済んでおりますので。本来この瑶地は男子禁制、あまり長居はできません」
「ちぇ、剣術の稽古に付き合って欲しかったのに」
 それも先日叱られたのです「瑶姫が武術ばかりで他の稽古事を怠ける」と…
「なぁ稽古が駄目でも、何か面白い話を聞かせてくれないか?」
「読書でもなさったら如何です?」
「眠くなるから嫌だ」
 屈託無く笑う。駄目だこりゃ……
「(仕方ないか。つくづく、私はこの幼い「叔母」に甘い。)わかりました、では開明獣の所でなら」
「やった!!」
「さてその前に――疾ッ!!」
 術を使いぼろぼろの衣服を直し、汚れを落とします。これぐらいなら長々と口訣(呪文)を唱え
る必要は無いようです。
「あ、ありがとう」
「さぁ一気に飛びますよ、しっかり捕まって」
 瑶姫様を抱き上げると、黒狼くんは空を駆けます。
 瑶姫様が黒狼くんの腕の中で歓声を上げています、まだ自力では飛べない瑶姫様には、ただ飛ぶ
だけでもおもしろいのでしょう。
 短い空の旅を終え、瑶地の端っこ、開明獣の守る門までやって参りました。
 開明獣は人頭獣身の獣、その知能は高く、聡明で謎かけなどを好む霊獣でございます。
 皆さんが良くご存知のスフィンクスとは違い人は食しません。因みにメスでございます。
 二人は門の楼閣の上に腰掛け、取り止めの無い話を始めます。
「さて、これはまだ私が修行中だった時の話なのですが……」
 この冒険談を聞かせたのが、後にとんでもない事件に発展するのですが……この時の黒狼くんに
はそれを知る術はございませんでした。
 嗚呼後悔は先に立たず――

 ね?結構気苦労が多いでしょう?それでも羨ましいって?
 まぁそれはそうですね……



この作品は以下のような作品の影響を受けています

「火輪」「央華封神」「チキチキ美少女神仙伝シリーズ」「崑崙秘話シリーズ」



[22683] 第一回
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2010/10/23 08:14
 第四公主、瑶姫様の外見年齢は十歳ほど。とはいえ実年齢はとう百を越えております、ただ瑶姫
様は黒狼くんの母上とは違い“仙骨”を持っており、それとは別として天人として長い寿命(そし
てそれに見合った成長速度)を持っていますので、精神年齢は見た目と変りません。むしろ性格的
にやや幼い、と言えるでしょう。
 やんちゃでおてんば。身体を動かすのは好きだが、じっと座っているのは苦手。裁縫などの習い
事は非常に不得手。
 髪は童子のようにまとめ。身につけるの物も余計な装飾の無い上着に袴(つまりズボン)男の子
と見間違えてしまうような容貌。このまま成長すれば、女の園、瑶地ではさぞ人気が出ることでご
ざいましょう。
 さてその瑶姫様。何やら牀(ベッドのことです)の上に物を並べております。もはや時刻は夜だ
というのに、寝巻きに着替えず、若竹を思わせる碧色の質素な(とはいえ上質の絹製、金糸銀糸の
縫い取りが施されているのですが)格好をしています。
「仙丹よし。黒狼から貰った短刀よし。準備よし」
 並べていた者を一つ一つ確認し、それを小さな巾着に詰めています。明らかに許容量を越えてい
ますが、そこは仙界の物、普通の巾着では有りません。
 しかし、この様子は……おや?
「四姐、何してらっしゃるんです」
「ひっ!!」
 思わず悲鳴を上げ、とっさに巾着を後ろに隠した瑶姫様。恐る恐る振り返りますと、そこにはす
ぐ下の妹君、第五公主太真様が立っておりました。四姐とは、四番目のお姉さまという意味、つま
り瑶姫様のことです。
「太真か。脅かすなよ!!」
 胸を撫で下ろし、小声で怒鳴る瑶姫様。明らかに挙動不審。それを見逃す太真様ではありません。
「四姐、何をなさっていたのですか?」
 鋭いですな。見た目は八歳ほどの太真様ですが、精神年齢は瑶姫様と同じか、やや上といった感
じでしょうか?
「これぐらいでびっくりなさるなんて。なにか後ろめたいことをしていたのでしょう?」
「何でも無い――」
「姉妹で隠し事なんて……太真は悲しいです」
 本当に悲しそうにうなだれる太真様、おや眦に泪が…
「ちょ…泣くなよ!(仕方ないな…)内緒だぞ?」
 しぶしぶ瑶姫様が言うと、にっこり笑って太真様が頷きます。嘘泣き?
 とはいえ、とても嬉しそうな太真様、大人びているとは言え、やはり年頃の少女らしく「内緒話」
がお好きなようですね。
 瑶姫様は巾着から綺麗に磨かれた玉を取り出し、太真様に見せました。
「こないだ、黒狼が使っている門の場所を見つけたんだ」
 門とは、黒狼くんの住みか(師匠と同居中)と瑶地を繋いでいる、トンネルのような物です。
「あら、黒哥々いらっしゃっていたのですか?」
 哥々というのはお兄さん、というような意味で。厳密には甥っ子なのですが、親しい年長の男性
に、使うこともある呼び名です。
「うん」
「太真もお会いしたかったのに……姐々ばっかりずるい」
 ぶすっと太真様が膨れております。瑶姫様は「まずい、ここで機嫌を損ねると計画がおじゃんだ」
と思い、必死に言葉を取り繕います。
「明日もお母様に呼ばれているらしいから、明日会えるよ」
「それで、姐々は何をなさろうとしていたのですか?術具を盗ってまで」
「人聞きの悪い、借りただけだよ」
 小声で「無許可で」と付け加える瑶姫様。
「それいうの、世間一般では『盗る』というのですよ」
 まったく太真様の言う通りです。
「うるさいな。とにかく、ちょっと冒険してくるだけだからさ」
 そういって、逃げ出そうとした瑶姫様の服の裾を、がっしりと掴む太真様。にっこり微笑みとん
でもないことを言われました。
「じゃぁ太真も行きたいです」
「ええ!!」
 嫌そうな表情で叫ぶ瑶姫様。足手まといだ、と顔に出ております。
 しかしにこりと笑って太真様が言いました。
「内緒にして欲しいのでしょう?」
 瑶姫様、TKO負け。



「でも黒哥々のお住まいは神崖山でしょう?とても歩いていける場所ではありませんわ」
 夜の宮殿をこそこそと歩くお二人、瑶姫様は周囲に気を配り、忍び足。しかし太真様はのんびり
とてとてと歩いています。
「静かにしろよ。小虎に頼めば良い」
「ああそうですね」
 小虎とは何者か?宮殿を抜け出したお二人は、まっすぐ庭園の一角を目指しております。
「お~い小虎」
 そこに寝ていたのは、大型犬ほどの体格の虎。美しい白い毛並みを持つ、まだ若い霊獣・白虎の
ようです。
「小虎?よろしいですか」
 太真様呼びかけると、うたたねしていた白虎が目を開けました。
「んあ?なんだい二人とも、こんな夜更けに」
 さすがに霊獣、人語を解す様です。
「おい小虎、なんであたし呼んでも起きなかったのに、太真だと起きるんだよ」
「四姐、たまたまですわ。たまたま」
 お姉様を軽くあしらう太真様。瑶姫様は膨れております。
「あのね黒哥々に会いに行きたいの、つれてってくれません?」
 白虎の小虎はあくびすると、再び眠る構えに入ってしまいました。
「もう小虎」
「冗談言っちゃいけないよ二人とも。そんなことに手を貸したら、僕が玄女様にきつ~いお叱りを
受けるじゃないか」
「なぁなぁ、あたしとお前の仲だろう。あたしに免じて」
 とっ組み合いをやらかした仲では、とても説得力がありませんよ。
「だめだめ。内緒にしてあげるから。手水を済ましておやすみなさい」
「なんだよ子供扱いして!!」
 いや子供ですから。見た目も、言動も、やることなすこと全部……
 何やら思案していた太真様が、口を開きます。顔に浮かぶは、やわらかな微笑。
「ねぇ小虎」
 猫撫で声で呼びかける太真さま、小虎の咽下をくすぐりながら、囁きます。
「あちらにはマタタビがいっぱい生えてるのよ」
 マタタビは猫(科の動物)にとっては麻薬も同然。たとえ霊獣といえど例外はありません。小虎
の髭がぴくぴくと動きます。
「哥々に頼んで秘蔵のマタタビ酒を出してもらいましょうか?ねぇ四姐」
 そして虎は酒が大好物……あらよだれが。
「う、うん。そうだなあたしと太真が頼めばイチコロだし」
 なんだかちょっぴり妹が怖い瑶姫様、ぎこちなく返事をします。
「しょうがないなぁ。二人だけで行かせたら危ないし、僕が護衛に付いて行ってやるよ」
 しぶしぶ言う小虎。しかしマタタビの誘惑に負けたのは明白です。
「わぁ!!ありがとう小虎」
 抱きつく太真様。う~むこのお年でこの手練手管、末恐ろしい。



 黒狼くんの住まいは神崖山竹林洞。
 洞主は黒狼くんの師匠である、麗虎元君緋桜様。
 虎から昇仙されたお方で、人の形を取れば、妙齢の美女に変化なさいますが、性格はおおざっぱ
で、傍若無人、無類の酒好きで食道楽、囲碁を趣味としますが弱く、負けると当り散らす……と手
の付け様がない一面が、多々あるご婦人でございます。
 このように人間以外の物(生物とは限りません)が、年を経て仙人となることは、そう珍しくあ
りません。その際かつての性癖が残るのも同様に、珍しくありません。
 本来、仙人となった黒狼くんは独立し、師匠の下を離れるのが普通です。
 しかし生活能力ゼロの上、問題児の緋桜様を放置も出来ず(公共の迷惑であります)、洞府に留ま
り、弟弟子ができるのを待ちながら、今までと変らぬ生活(師匠の世話と尻拭い)を送っているの
です。
 どうも黒狼くんは「女難の相」があるようですな。リア充爆発しろ!おっと失礼。


 さて神崖山は人界に在るものの、神仙が住むにふさわしい深山。名前が示す通り、切り立った崖
のような山、麓には虎が多く生息しており、近くの邑の住人達も近寄ることは有りません。

 そこへふよふよと小虎の背に乗った少女が二人やってきました。
「ねぇ小虎、もっと早く飛べないのか」
「瑶姫、無茶を言わないでほしいよ」
「あら、そんなに重いかしら?」
「一人ならともかく二人はちょっと」
 まだ若い小虎には、少女二人は少々重量オーバーのご様子。
「失礼ね、女の子にもてないぞ?」
「ほっといて欲しいな」
 麗虎元君の庵は山腹。小虎は慎重に降下していきます。その時ふと崖の下を見た小虎はぎょっと
しました。折り重なる様に人間が二人、打ち捨てられているのではありませんか!!しかもその背
格好には見覚えがあります。
 小虎は崖の下に向かって急降下しました。背に乗るお二人が、急加速に悲鳴を上げます。
「うわっ!!おい小虎何事だ」
「しゃべると舌噛むよ、黙っていて」


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