『驚いたな。まさか意思疎通ができるようになるとは。そうだな、僕の事は「妖精さん」とでも呼ぶと良いよ。』
その自称「妖精さん」に出会ったのは、目黒の研究所で不審な女性から受け取った「DIO-system」を起動した直後だった。
とはいえ妖精さんが言うには、暫く前から『観ていた』との事。妙に頭がざわざわしたり、勘が鋭くなっていたりしたのは、どうやらそのせいだったらしい。正確には出会ったのではなく、DIOを通じて『意思疎通できるようになった』だそうだ。
細かいことは追々に。
ここに綴られるのは、怪しさギガオンの妖精さんと、それに取り憑かれた武内ナオキとが織り成すささやかな御伽噺である。
stage 0 Opening
1995年の冬。
その日は朝から何かがおかしかった。頭が妙にざわざわして、誰かから常に見られているような感覚。その為かどうかは判らないが、胸騒ぎと言うか、嫌な予感が消えなかった。どうやら嫌な予感の方は当たったようで、「緊急回線」からのメッセージが俺に届いた。
:EMERGENCY LINE:
「サキホド ケンキュウジョニテ ゲンインフメイノ
バクハツジコガ ハッセイシ キデンノ リョウシンハ
ナクナラレタ
シキュウ ケンキュウジョマデ コラレタシ」
すぐには信じられなかった。爆発事故? しかも原因不明?
メッセージの中にある「ケンキュウジョ」ってのは、多分オヤジ達が働いている目黒技研(正式名称「防衛庁科学技術研究局」)のことだろう。研究内容については聞いた事が無い。恐らく機密に関る何かだろうと思っていた。
俺は教授に断り研究室を出て、目黒にあるオヤジ達のラボに向かおうとした。だが、突如現れた悪魔の軍勢を率いる男によって東京が電撃的に占領され、身動きが取れなくなってしまった。
魔都と化した東京。悪魔による新しい秩序の下、目黒のラボに近づく事すらできないまま一年ほど経った頃、反悪魔組織「パルチザン」の噂を耳にした。
そもそもあのメッセージの送り主は誰だったのか。
事故が起きたタイミングと、悪魔が出現したタイミング。
あの事故については幾つもの疑問があった。
悪魔が関る事件を追っていれば何か手がかりがつかめるかもしれない。
悪魔から東京を開放すれば目黒のラボにも行けるかもしれない。
そう考えた俺はパルチザンに入隊することにした。
stage 1 A.D.1996 TOKYO
chapter 1 SHIBUYA ~ 渋谷開放作戦 ~
俺は入隊してすぐに、渋谷の街を悪魔達から開放する作戦に参加することになった。パルチザンの本拠地がある新宿の周りを、確固たる地盤にするための作戦だそうだ。
実行メンバーは「橘カオル」に「菊池トモハル」と俺、「武内ナオキ」の三人。まだ規模が小さいパルチザンとしては余り割ける戦力が無いとのこと。入ったばかりの俺に、貴重であるらしい通信用のヘッドセットを渡すとは。これは余程人材がいないのだろうか。聞けば渋谷の悪魔は烏合の衆らしいが、本当に大丈夫なのかと不安になった。
一緒に行くことになったカオルはパルチザンのリーダーで、冷静沈着な「切れる男」だ。刀を使った近接戦闘に長けている。
トモハルは一年前のあの日、行方不明になった妹を探していたところを悪魔に襲われたそうだ。そして危うい所をカオルに助けられ、そのままパルチザンに入隊したらしい。ボウガンが得意なお調子者だ。
渋谷に着くと、何体かの悪魔が散らばってうろついていた。確かに全く統率されていない様子。「外道スライム」あたりは知っていたが、奥に居る骸骨は初めて見た。カオルに聞けば「邪鬼ウストック」だと言う答えが返ってきた。たまに鋭い一撃を放ってくるので注意が必要との事。ついでにこの辺で最近見かける悪魔について、基本的なことを教えてもらった。
慎重に進撃を開始。まずはこちらの拠点に最も近いスライムを目標に。スライムが相手ということで、俺達に経験を積ませるためカオルは静観。
まずはトモハルがボウガンで牽制し、俺がナイフでトドメ。かなり緊張していたが、拍子抜けするほどあっさりと、無傷で最初の戦闘を終えることができた。奴の屍骸の下から、箱に入ったきずぐすりが出てきた。落ちていた道具を拾おうとでもしていたのだろうか。
近くに居たもう一匹のスライムも同様に処理し、続けて接近してくるウストックに対処。無造作に近づいてきた敵に対して、カオルが先制して体勢を崩し、トモハルがボウガンで追い討ちをかけ、弱ったところを俺がトドメ。こんな骸骨にボウガンでダメージを与えるとは、実はトモハルは凄いヤツかもしれないと思った。不思議なことにウストックがむき出しの「まほうびん」を落とした。こういうことも稀にあるらしい。肋骨辺りに挟んでいたのか。
ウストックに集中しすぎたせいか、三体目のスライムの接近に気付けず、トモハルが近寄りざまの一撃をもらった。幸いそれほどの痛手にはならなかったようだ。最早手馴れたもので、トモハルと協力して屠ることに成功。屍骸の中から宝石トパーズが出てきた。謎だ。
あとはカオルの指示に従って、一匹ずつおびき寄せての繰り返し。全て片付く頃には連携もかなり良くなっていた。
敵拠点を守っていたのは「闘鬼ウェンディゴ」。マッチョで半裸と言う非常に近寄りがたい格好だったが、問題なく倒せた。ウェンディゴは姿形が人間に似ているので、攻撃が鈍るかと心配したが、不思議とすんなり倒すことができた。そもそもこちらを殺す気満々の鬼に、手加減とか考える余裕は全く無かったというのも大きかっただろう。
作戦行動中は妙に勘が冴え渡っていた。悪魔との戦闘など初めてなのに、何となく相手の動きが読めたり、相手のどこにナイフを突き立てればいいのかが分かったり。自分でも不思議な感覚だった。戦闘後カオルとトモハルにも褒められた。初めてとは思えない動きだったと。
更に次の作戦までは間があるので、俺の両親の手がかりを探すため目黒のラボに行くなら付き合うとまで言ってくれた。本当に気持ちの良いやつらだ。この借りはいつかきちんと返さねば。
chapter 2 MEGURO ~ “ 目黒技研” 突入作戦 ~
道中特にトラブルもなく目黒技研に到着した。研究所の周囲を悪魔が囲んでいる。
トモハルが斥候の真似事(本人談)をしてきたところ、近くにスライムと「邪霊ゾンビ」、駅の向こうにウストック二体とウェンディゴ一体、そしてラボを守るように「妖鬼モムノフ」一体と、ポツンと外れてウェンディゴがもう一体。どこが真似事だ、完璧に本職じゃないかと、ちょっとだけ見直した。
こちらは三人、敵は多数。だがカオルに従って闘えば負ける気がしなかった。渋谷でのカオルの指示は的確そのもの。こういうのを名指揮官と言うのか。実際カオルもこの戦力なら勝てると踏んだらしく、表の悪魔を排除してラボに突入することになった。
邪霊ゾンビ。マヒの状態異常を引き起こす魔法「パラルー」を使用するかなり鬱陶しい悪魔だ。マヒで足止めされたくなかったら、いつも以上に慎重に間合いを計る必要がある。ここでは、敢えて気にせず突っ込む方針を採用した。状態異常の危険度は周囲の状況によって大きく左右されるのだそうだ。
奥のモムノフは強敵。大昔の武者の亡霊と言ったところか? だが、一般に拠点を防衛している悪魔が積極的に動いてくる可能性は低いので、あまり警戒する必要は無いとのこと。
作戦決定後、いよいよ進撃開始。目の前のスライムを鎧袖一触。
予想通り近寄ってきたゾンビに、「パラルー」を撃たれたが不発。魔法へのレジストなんてどうしたら良いか全くわからなかったが、運が良かったと言うことか。もっとも、カオルが言うにはそうそう当たるものではないらしい。
ゾンビの動きが止まったところで、一斉に反撃を開始。ゾンビは物理面に関しては、妙に耐久力が高いがそれ以外はからっきし。その耐久力も、三人がかりでギリギリ削りきれるレベルだった。
その後も寄ってきたウストック達を、上手く間合いを外して一匹ずつ処理しながら前進。橋に陣取っていたウェンディゴは、相手の射程外からトモハルが一方的に削って俺がトドメ。これまでの壁役で手傷を負っていたカオルは、この隙に近くの泉で傷を癒していた。こういった体力・魔力を回復させる水が湧き出す泉は各地に存在し、それを上手くおさえることが戦いのカギなのだそうだ。
ラボへの入り口を守っていた妖鬼モムノフも確かに強かったが、連携の取れた俺達の敵ではなかった。
ここでトモハルは次の作戦の準備のために本拠地へ。ラボ内にも悪魔が居ることは予想できたが、元々好意でついてきてくれた連中だ。これ以上を望むのは我侭ってもんだろう。「無理すんじゃねーぞ!」と言って去っていくトモハルに感謝しつつ、カオルと二人でラボに侵入した。
何故かトモハルがボウガンを置いていった。謎だ。
chapter 3 LAVORATORY 1F ~ 防衛庁科学技術研究局 ~
当然内部にも悪魔の群れがいたわけで。オヤジたちの事で気が急いていたのか「何でこんなところにまで」とか言ってしまった。はずい。
トモハルが別行動のため、かなり厳しい戦いになることが予想された。
とりあえず正面にある泉を確保するべく駆け寄ろうとしたら、「迂闊に泉に隣接すると悪魔に先に占拠され易い」と注意された。俺の位置からは同じく正面に見えている邪鬼ウストックも微妙に間合いの外。どうしたものかと迷っていると、カオルが「ウストックを無視して隣の部屋へ向かう」と言い出した。
「カオルは攻撃できる位置なのに何故しないのか」と尋ねたら、「弱らせ過ぎると、相手が逃げ出して面倒になる」と言う答えが。「一息に倒せないなら、むしろ先攻のほうが攻撃を受けるリスクが高まる」とも。更にはわざと素手で攻撃して、相手の攻撃を誘う戦法すらあるそうだ。俺には思いもよらない考え方だった。
ともかく、カオルの言葉を信じて睨み合いの状態を解消。ウストックの間合いのギリギリ内側をかすめつつ隣の部屋に向かうと、案の定ヤツがこちらに仕掛けてきた。
「釣り」は成功。相手の攻撃を受けきって、反撃で削り、追撃で一気に落とす。大したダメージも無く、進軍もスムーズで一石二鳥。先制攻撃だけが策ではないと思い知らされた。
俺が一人でウストックを始末している間に、カオルは隣の部屋にいたゾンビを釣り上げていた。パラルーは見事に回避したらしい。信用されるのは嬉しいが、息つく間もない連戦はちょっと勘弁して欲しい。
釣り上げたゾンビは、本来二人だけでは一息に倒しきれないので、「少しだけ削って攻撃を誘う」予定だった。しかしカオルの一撃がかなり会心の手応えだったらしく、指示されるまま一気に畳み掛けたら倒せてしまった。機に乗じる事の重要性を学んだ。
これまで俺は全ての敵にトドメを刺してきており、カオルに「突破力だけなら既に俺より上かもしれないな」と褒められた。けど、カオルの凄さは腕力だけじゃない。もっと色々なことを学ばねば。
入り口の二部屋の探索を終えた俺達は、最初の部屋にあった扉に向かった。特に施錠されていたわけでも無く簡単に開いたのだが、扉の直ぐ向こうにいた「魔獣タンキ」二匹と鉢合わせに。向こうはすかさず遠距離攻撃を打ち込んできた。
こちらの間合いの外からチャージを仕掛け、一撃加えたら即離脱。素早い動きにこちらの反撃が間に合わない、非常に手強い相手だ。
今まで通りに間合いを計ってもこちらが一方的にやられるだけなので、まずは距離を詰めることを最優先。部屋の入り口を塞いでいる相手はカオルに任せて、もう一匹の壁向こうからの遠距離攻撃(どうやってるんだ?)を上手く俺の方に誘導し、カオルの負担を軽減。最後に疲弊したカオルと入れ替わり、俺がトドメを刺した。
足を止めての殴り合いで多くの手傷を負ったカオルだったが、俺と交代して直ぐに手前の泉で補給。即座に取って返し、既に満身創痍だった俺と再度交代し、もう一匹のタンキを相手取る。俺は入れ替わりで奥の部屋の泉へ。泉のありがたさが身に染みた戦いだった。そもそも無闇な突撃を敢行したのは、この泉が見えたからということもあったらしい。
復帰した俺にタンキを任せて、カオルは更に奥にあった扉を開放。近くに潜んでいたウストックと交戦を開始した。妙に強いウストックで、カオルの一撃を受けてもそう簡単に崩れない。更に奥の部屋から二匹のスライムが突入してきて乱戦になった。このスライム達は、どうやら奥の部屋に見える謎のジェネレータから湧き出したもののようだ。
カオルはウストックを削った後、一端泉まで後退。俺に「丁度良い相手だから一対多の経験も積んでおけ」と言った。
戦場全体を見ることを心がけながら、相手の位置に注意して慎重に対処。だが予想に反して軽く片付けてしまい、ウストックはともかく、スライムの相手は余り鍛錬にならなかった。「本当に成長したな」とカオルが苦笑い。対悪魔戦にもかなり慣れてきた。
二階への階段を守っていたのは、やはり妙に強いウストックとモムノフの鬼族タッグ。まず飛び出してきたウストックを仕留めた。ただ、拠点を防衛しているので動かないだろうと予想して油断していたのがまずかった。こちらの隙をつくような飛び出しで、カオルが痛恨の一撃を喰らってしまい危険な状態に。幸いモムノフの方は一向に移動する気配が無かった。好きなタイミングで戦闘を仕掛けられるならなにも問題は無い。一方的に攻撃を加えて二階への階段を確保した。
その後、例のジェネレータを破壊しつつ考えた。そもそも人がいない研究所で、主電源が落ちていない事自体が不可解ではある。
……まさか外に居た悪魔が中に入ったのではなく、この研究所から生まれた悪魔が外に出て行ってたのか?
いや、これは根拠の全く無い、単なる思いつきに過ぎない。何にせよ一刻も早くラボを封印するため、カオルは地下の動力施設へ。俺は事故の手がかりを求めて、モムノフが守っていた二階の調査に就くことに。
正直心細いなんてレベルではないが、カオルの信頼には応えたいと思った。
chapter 4 LAVORATORY 2F ~ DEJA VU ~
オヤジ達は一体ここで何の研究をしていたのか。どうにもロクなもんだとは思えなかった。まさか今起きている悪魔がらみの混乱もオヤジ達が……。
思い悩みながら歩いていると、甲高い鳴き声が聞こえた。姿は見えないが聞き覚えのある声。魔獣タンキだ。もしかしたら侵入者発見的な何かだったのかもしれない。状況次第では勝てない相手ではないが、一人では苦戦しそうだ。
正面に現れたのは邪鬼ウストック二体。成長した俺にとっては、たまに繰り出す鋭い一撃さえ受けなければ、苦もなくあしらえる相手。ただ、手前に見えている泉を相手に取られると少し苦しい戦いになるだろう。距離的に、何も考えずに泉に向かって近寄ると、タッチの差で敵に占拠されそうだった。
まずは気のない振りしてとにかく一歩、そろりと二歩目で泉に近寄り、ダダッとダッシュで無事泉を占拠することができた。そのままウストック二体を相手取っていると、魔獣タンキが壁越しに攻撃を打ち込んできた。相変わらず不思議だ。
泉を確保し続ければ無視できるダメージだが、ここは敢えて壁から離れて逃げるウストックを追撃。戦場全体の状況を頭に入れつつ、タンキが壁のこちら側に来るように誘導を試みた。
この行動は図に当たり、丁度邪鬼どもを片付けた頃に魔獣タンキが姿を現した。泉に固執するとこちらの射程の外から一方的に攻撃されるので、相手に泉を取らせないよう位置取りに注意しつつ階段付近まで誘導。「弱らせ過ぎて相手が逃げ出す」ことを織り込んでの行動だ。
先手を譲った後、相手の隙を突いて退路を塞ぐようにして攻撃を仕掛け、それでも無理に逃げ出したところを後ろから追いすがって仕留めた。一対多の経験を活かして、戦場全体のイメージを頭の中に描けたことが大きいだろう。
かなり神経を使う戦いだったが、学んだことを活かして自分なりに巧く闘えたと少し感動。
その後、奥に見えた泉で少し補給し、ラボ内を順調に進んで遂に最奥に到達した。突っ込んできたゾンビを、机を盾にして圧倒。扉を守っていた妙に強いウストックとの戦いも、正攻法でギリギリ勝ちを拾うことができた。
ウストック戦で乱れた息を整え、緊張しながら最奥の扉を開くと、そこには赤いスーツの女が立っていた。
何故こんなところに一人で?
明らかに怪しい人物だったが独特の雰囲気があり、問われるがままに名前を答えていた。ちなみに彼女の名前はカレンと言うらしい。意味のわからないことを一方的にまくし立てた後、何かを押し付けてきた。
問い質そうとした瞬間、ヘッドセットを通じてカオルからの連絡が入った。どうやら地下との通信は困難らしく、内容がほとんど聞き取れなかった。切羽詰っている様子ではなさそうだったので、タイミング的に電源を落とすとかその類の連絡だろうと推測。慌てて制止したが、どうやら通じなかったらしく、すぐに主電源が落ちた。
気がつくと不審な女の姿も消えていた。一体何だと言うのか。
急いで撤退するべきなんだろうが、俺はコレが何なのかどうしても気になっていた。ひとまず受け取った携帯端末らしきものを起動。
<DIO>
アクマとの交渉、及び契約したアクマを生体エネルギー「マグネタイト」と引き換えに召喚するプログラム。
荒唐無稽だが、これが本物なら凄い話だ。どうやって試すか。
しばし思考を巡らせていた……。
『DIOを起動したか。これから色々忙しくなるね。』
「誰だ! 誰か居るのか!」
突如響いた声に、俺は肝を冷やす。2階には最早誰も居ないと思っていたのに。
慌てて周囲を警戒する。接近に全く気付かなかったのに、声はすぐ近くで聞こえた。危険だ。
『む、まさか僕の声が聞こえているのか?』
「どこにいる! 姿を隠していないで出て来い!」
油断なく辺りを見回す。周囲には動くものの気配が全く無い。声の聞こえる方向から居場所を割り出そうと考えたが。
この声は、まるで、俺の頭の中から……?
『驚いたな。まさか意思疎通ができるようになるとは。そうだな、僕の事は「妖精さん」とでも呼ぶと良いよ。』
沈思黙考。テレパシーという線もあるが、もっと碌でも無い考えが脳裏を過ぎる。
「……ちょっと待て。オマエはアレか。まさかとは思うが、俺の頭の中に居るのか?」
『どうやらそうらしい。DIOの機能を考えればこんなこともありうるのかもしれないね。』
コイツの言うことは良くわからない。良くわからないが……。
ダメだ。激しくダメだ。頭の中の「妖精さん」と会話する、20代も半ばの男。
『まあ何はともあれ、コンゴトモヨロシク。』