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[22507] 【習作】機動戦士がんだむちーと【多重クロス】
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/23 17:09
*注
 本作品は、ちーたー氏の、Muv-Luv板にある「【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました」にかなり影響を受けております。ポイント制チートシステムは、ちーたー氏に倣っております。但し、ガンダム世界であり、完全なチートとするのではなく、色々と制限が加えられているところを表現してみたいと思っております。
 何卒ご寛恕の程、よろしく御願い申し上げます。


 --------------------

 人間にとって、自己の概念というものは希薄ではなく明確である。少なくとも、自分にとってはそうであると考えていた。しかし、現実、モニターを通して自分にとっては未来、または妄想であったはずの光景を見ていると、それが果たして本当のものであったかに疑いを持たざるを得ない。

「2039年2月のスーパーチューズデー、地球連邦次期首相にリカルド・マーセナス候補がアメリカ、オセアニア、太平洋および欧州諸州の支持をもって当選確実となりました」

「スメラギさん、マーセナス候補の当確はどのような幕開けでしょうか?」

「候補の掲げる、人口爆発に対する解答としての宇宙移民は……」

 テレビを消す。現在時間、西暦2039年2月14日水曜日。そしてテレビに映ったニュースの内容はここが、機動戦士ガンダム、少なくとも機動戦士ガンダムユニコーンに関連する世界であることを示している。

 消したモニターに文字が映る。丁寧なことに日本語で、しかも簡潔明瞭に要求を伝えてきてくれている。

『転生作業無事終了。ジェネレーションシステムは、候補者に人類種の政治的要因に基づく減少の抑制を要求します』

 ここは月。地球からすると不相応に巨大な衛星の北極、地軸点直下20kmにあるらしい。

「Warsのアレ、とは……はぁ」

 ため息をつくしかなかった。




 第01話


「で、いったいどのようにすればこの要求にこたえられるのだろう」

 誰も聞いていないということは確かそうだが、さすがにコンソールに話しかける趣味は無い。ただ、ここまで技術的に隔絶しているならば、何らかの反応があるかもしれない、と口に出してみる。無駄ではなかったようだ。コンソールに新たな文字が生じる。


『候補者に連絡。当システムは候補者に従属し、様々な点で援助を行い、改変を可能とするものです Y/N』

 どこのDOS時代のモニターだ、と思いながら、コンソール前のキーボードのYキーを押す。

『システムは減少が抑制された人口、改変された歴史の結節点、候補者が獲得した人員・資源を数値化・運用することで援助を行います』

 つまり、人口減を抑制すること、各作品の基本的な流れに影響を与えらること、何らかの方法で資源・人員をえることで、自分の勢力のパワーアップをしていくらしい。Yキーを押す。

『人口減抑制、歴史改変でGPを獲得。人員・資源の獲得でRPを獲得します。人員の場合は獲得した人員の重要度によって獲得値は変化し、資源であれば純粋重量に基づく獲得値となります。また、RPは一定のレートに基づき、GPとして運用可能です。GPのプラスマイナスの基準は史実どおりの人口推移か否か。候補者のミスにより減少が生じた場合には減点します。それらとは別に、システムの起動初期段階にあるため、SPを提供。SPに基づき、初期戦力を調整していただきます。SP獲得に関しては、初期戦力の調整以降も使用可能で、値は候補者の行動によって変化します。初期調整後は、様々なTPOで用いることが可能です』

 3種のポイントを運用はするが、現在考えるのはSPで良い、と。レートがわからないし、選択肢も今は不明だから考えようが無いな。


『現状はGP:0、RP:0です。SPは30000。SPを用いて獲得できるのは以下の項目です。質問があれば音声にてどうぞ』

 表記が終わると同時にコンソール右上に30000の数字が、中央にリストが広がる。項目が色々分かれているな。身体強化、勢力伸張、部隊確保などなど、様々な項目が並ぶ。どうやら、大項目を選択すると小項目が選択できるようになるらしい。

「既にこちらが持っているものを減少させる場合、SPの獲得は可能か?」

 疑問は音声で、ということなので早速やってみた。たとえば、自分の持っているフランス語知識をペイに出せば、何かもらえるかもしれないと思ったのだ。身についた能力を失うのはコレまでの経験からするともったいなく思えるが、こんな場所に追い込まれたのであればなりふりはかまっていられない。

『良質問と判断、ポイントプラスします。可能です』

 ポイント欄を見ると1000ポイントの加算。どうやら、話すだけ話した方がいいみたいだ。

「良質問だ、なんてお知らせはいらない。なぜ私を選んだ?」

『知識がそれなりにあり、ある程度の識見を持った人間から無作為に抽出した結果です』

「趣味志向は問題ないと?」

『システムの目的達成に困難、もしくは障害となるような趣味の場合は当然抵触します』

「だろうな。この、大項目リスト欄外に、カーソルが反応を起こしている部分があるがそれは?」

 ピッ、という音と共にポイントが数万……7万2千へと上昇した。どうやら、いいところをついたようだ。

『本システムは候補者が「機動戦士ガンダム」として認識する作品世界に存在しますが、作品世界内の自由度だけで目的達成が困難な場合を考慮し、候補者の既知の世界に関する項目も支援対象として含めています』

「つまり、ガンダム世界だけで対応が不可能な場合は、他の作品から戦力をもってこい、と?」

『可能です。ただしその選択肢を選択される場合にはいくつかの制限がつきます』

「たとえば作品数が限定されるだとかもってこれる戦力に限定がついたり、ポイント数の制限に基づいたりする、というわけだな」

『その通りです』

 良い解答だったらしく、ポイントがまた増える。

「質問。私の場合、すばやくこの状況になれたが、他の候補者が存在した可能性がある。他の候補者に関する情報を閲覧することは可能か?」

『詳しい情報は無理ですが、書面でならば可能です』

「この世界に対してシステムが介入を決断した理由は?」

『人類種は介入が無い場合、所定の歴史を進み、最終的にはターンタイプにより原始時代に戻ります。その後、技術的優位にあるムーンレイスとの接触し、技術的向上を享受、旧世紀、数次の産業革命以上に産業は発展いたします。しかし、工業面での発達は精神面での発達を無し得ません。充分な時間、かつて中世期に経験した諸科学の発展経路を経なかった人類は、精神的にはかなり遅れたまま、宇宙に進出することになります。これは、システム的に種族の自滅傾向を増す以外の可能性を示さないため、修正を要すると判断しました』

「つまり、どのような産業的発展があろうと、人文・社会科学に対して注目を払わないため精神的発展が阻害されると。そしてそのような精神的発展無き発展は種族維持に悪影響であるというのだな」

『その通りです』

「しかし、ターンタイプによる原始時代化を経たとしても、人文諸科学の発展は可能では?」

『いいえ。技術的向上はマウンテンサイクルなどの発掘により進んでいますが、旧世紀、近代期人類の精神的発達の基礎である、人権概念が充分に発達しません。外宇宙に存する知性体との接触において、人権概念―――それに類する観念の発達は、銀河、超銀河的に種が拡散する際に必要となります』

「宇宙に存在する他の文明においても似たような考え方があると?君―――便宜的な言い方だが―――には、そのような認識や知識があると?」

『申し訳ありません。本システムに許された候補者に対する情報提供に関する制限条項に抵触します』

 ため息を吐く。どうやら、このシステムとやらは確かに、誰か―――『誰』という呼び方は正確ではないかもしれないが―――によるものらしい。

「了解した。では何故、ターンタイプによる原始時代化の時点ではなく、ここに私を送り込んだのか?―――大体答えの予想がついてきたが」

『システムは、精神科学の低廉化傾向が人類種に発生したのは』

 システムがそこまでコンソールに文字を映した段階で私はいった。

「宇宙世紀0079年に起こった一年戦争における、大量の一般市民の死亡」

『その通りです。なぜ候補者はそう判断しましたか?』

 面白い。システムという癖に質問をぶつけてきた。

「作品の歴史を見ても、極端な人口減少の主たる要因は一年戦争にあることは確かだ。それに一年戦争で戦死した人口を考えると、青年および壮年層のかなりの人口が減少しているだろうことが予測できる。また、一年戦争での連邦軍の受けた被害は、将校・下士官においてもっとも大きかったもの、と推測できる。まぁ、これはMSや航空機、艦船に配属される人員を考えると妥当な推測かもしれないが」

 システムは沈黙したまま。どうやら先を話せと促しているらしい。

「連邦軍がいくら巨大とはいっても、一週間戦争で死亡した人員で、恐らく数年分の正規将校・下士官を失っている。その損害を埋めた上にさらに巨大な艦隊戦力を一年戦争では構築し、それをソロモン、ア・バオア・クーで失い、戦後も0083年のコンペイトウ奇襲やグリプス戦役、ネオ・ジオン抗争で失い続けている。となると、将校に任用可能な知識階級に属する青壮年層が払拭した可能性があり、戦争さえ無ければ、その層が育成したであろう後発の人材が育たなくなった可能性につながるからだ。それに、システムを作成した存在は、少なくとも2045年当たりまでの人類の精神的発達は、許容範囲に収まるものと認識しているらしいね」

『理知的です。納得しました。後半の質問に関しては制限条項に抵触します。申し訳ありません』

 ポイント欄の数字が良い感じで増え、25万ポイントで止まった。どうやら、この考えはシステムを充分以上、納得させたらしい。

「そうなると、一年戦争での介入が基本となるし、基本、一年戦争での介入に基づき、グリプス戦役やネオジオン抗争を戦うことになる。しかし、ここで問題になるのが連邦政府の一部が起こしたラプラス事件だ」

 さらに切り込んでみる。最初に見た映像がリカルド・マーセナス次期連邦大統領の選挙戦のニュースだったことは偶然ではないし、一年戦争での介入を基本とするなら、どんなに早くても俺が送られるのは50年代のはずだ。宇宙世紀開始以前に送られる必要は無い。

「システムは、そこまで考えて私の転送をこの時代にセッティングしたと私は考えるのだが、いかがだろう?」

『正解です。あの事件の直接的影響は少ないものですが、今後100年の地球連邦政府―――少なくとも、宇宙に関する行政に強い影響力を持つ、連邦移民問題評議会の基本姿勢を固めた点は間違いありません。候補者がどのような行動をとるかは候補者の自由意志に属しますが、候補者が事件への介入を考慮する可能性を考え、このような設定としました』

「そこで質問。これまでの候補者に介入したものと介入しなかったものがいるならば、それらについてのデータがほしい」

『了解しました。先ほどの質問の答えにもありましたとおり、書面で提供いたします』

 そこまで考えたところで、時間を確認する。熱が入りすぎたようで、開始から2,3時間ほど経過しているようだ。そこで気づく。

「さらに質問。この初期設定に時間制限はあるか?」

『肯定。残り時間は16時間45分32秒です。表示しますか?』

 ほっとした。20時間の中で考えるらしい。この時間に関する質問で、ポイントはさらに上昇。どうやら、いわないままで時間きっかりに切るつもりだったらしい。シビアなことだ。質問を続ける。

「出現時期が宇宙世紀開始以前ということは、年齢に関する問題は?」

『初期設定として不老項目が既にあります。そのため、転送された段階でのあなたの年齢、地球時間換算で満28年4ヶ月23日のまま、基本的には推移します』

 確かにコンソールを確認すると、自分の写真の下に「不老」との表示がある。

「初期設定として私が持っているものはそれ以外にはどんなものがある?」

『当システムを収めるこの基地に対する命令権、基地の基本的保守に用いられるバイオロイド兵の生産・命令権、および、黒歴史に存在する全機械文明に関するデータです』

 なんというチート。苦笑した。となるとMSの開発に関しては問題がなさそうだ。いやいや、チェックは怠るべきではない。開発項目をチェックしていくと、どうやら、全データとはいいつつも、自由に投入できるのは宇宙世紀以外の作品に関するMSのみらしい。他のMSや技術に関しては、ポイントを消費した上で製造年代に達していなければならないらしい。解除にはポイントが必要。

 さらに気づく。宇宙世紀とくればビーム・爆発での即死がデフォルト。となれば、自分の設定についても確認しておかなければならない。

 自分に関する項目を開くと、結構すごいことになっている。不死を項目につける場合には15万ポイントの消費。死亡後1年での復活が5万ポイントを下限として、1日後まで累積で拡大する、と。さらに、MSの攻撃に対しての不死、などの限定項目が10万で、現在自分の持っている32万ポイントを考えると、出せない範囲ではない。ただ、ずっとこの外見で介入するわけにもいかないので、変装や年齢変更の項目を見ると、こちらも3万ポイントずつと割高だ。不死設定に年齢変更で18万は痛い。これについては、他の初期設定の余剰ポイントを当てはめるしかないか。

「連れて行く面子が問題だな」
 
 仲間・勢力の項目を見ると、宇宙世紀以外のガンダム登場人物が無条件選択可能で、強いキャラに分類される(たとえばドモン・カッシュなど)ものたちが、10000ポイントを上限として設定されている。これに、他作品のキャラクターを選択可能にすると5000ポイントごとに作品が拡張され、一人ずつにポイントを支払うようだ。

 意外に安いようにも思えるが、宇宙世紀のMSとたとえばコズミック・イラのMSでは操作系統が違う。コーディネイター専用OS下や、モビルトレースシステムでの運用から通常MSへの機種転換には、別途ポイントが必要になる。さらに、初期保有MSや艦船のことも考えると頭が痛い。また、自身でデザインしたキャラクターを生成することも可能だ。こちらは、生成時点で持つ能力や、成長性などの項目があり、項目ごとに設定する形になっている。

「この基地の使用権についてだが、詳しく」

『MSの生産ラインが現在4本、艦船のドックが8空いています。拡張にはRPを要します。RPは、この基地の外郭にある直径10km、深さ6kmのプラントへ、適当な小惑星や工業製品を安置していただければ、工業用ナノマシンにより分解、資源として備蓄されRPへ変換されます』

「資源収集については自動化は可能か?それに、基地の運用や保守に必要な人員についてはどうだ?」

『保守・運用に関する人員については、初期設定項目にあるバイオロイド兵に委任しています。候補者はプラントへ資源を供給する必要があります。資源収集に関しては、適当な宇宙用艦船をバイオロイドに委任することで自動化可能です。バイオロイドの増員に関しては、RPを要します』

 やはり、資源をもとにして動く以上、かなりのRPを介入が本格化する0079年、つまり85年後までに用意しておく必要があるらしい。これから宇宙開拓時代に入ることになれば、コロニー建設用の資材との競合を起こす可能性もある。

 あれから数時間、悩みながらポイントの配分を行ってみた。

 悩みに悩んだが、結局、一年戦争が始まるまでにMSを使用した本格的介入は不可能そうだという結論に達したので、MS開発に関する制限こそ取っ払ったが、初期戦力として保有するのはペガサス級強襲揚陸艦(グレイファントム・タイプ)1隻と、現在、地球連邦で運用されている共通規格の汎用宇宙輸送船を5隻と、資源回収用のモビルポッドとした。MSはポイントでいくらか取得作品の拡大を行ったが獲得はせず、『重装機兵ヴァルケン』よりパワードスーツ、『ハイッシャー』を12機、獲得した。基本、一年戦争が始まるまでは特殊部隊によるか、政治的介入が基本となると考えたので、MSは基本、不要だと思う。ハイッシャーは小銃弾程度しか弾けないし、武装も短砲身20mm機関砲だが、これから長く使うことになりそうだ。

 グレイファントムとハイッシャーで使ったポイント、26000。モビルポッドと輸送船で10000ポイント。資源回収を加速させたいが、まず基地機能の拡大が必要だろう。これから長い期間については、MSの必要性は薄い。小惑星やデプリ群を集め、RP化する作業が中心になるだろう。

 まだ満足な月面恒久都市も出来ていないこの時代、これから半世紀の時間を掛けて、月はおよそ30億の人口を養う、巨大な植民地になっていく。その月面開発計画にまぎれ、この基地の表面部を都市に偽装することまでは考えた。しかし、月面は制限が多いのでは、と思い立つ。

「月面は連邦から見られていることが多いと思うのだが、この基地そのものの場所を移動させることは可能か?たとえば、火星などに」

『可能です。現在の本基地をそのままポーテーションすることが出来ます。ただし、その場合、本基地が現在存在する月面極冠部には、巨大なクレーターが出来ますが』

「たとえば、火星の極冠に移動した場合は?」

『火星極冠部、同緯度同経度の地底には巨大なドライアイスの塊が存在します。基地機能維持にかなりの労力を必要としますが』

「火星の他の部分へのポーテーションは可能か?」

『可能ですが、さらにポイントを消費します』

「RPへの変換は、この基地内のプラントに物体を持ち込む必要があるのだな?」

『はい。ただし、基地機能の拡大をしていただければ、許容限度のある小プラントであれば、他の基地に構築することが可能です』

 仕方が無い。色々面倒臭いことになりそうだが、基地機能の拡大が出来るまでは、こそこそとはいまわるしかないわけか。この後、木星、金星、水星と土星についても確認したが、

 そこで、資源収集基地を火星の衛星、フォボスとダイモスに設けた。RPに換算するためにはこの基地まで運ぶ必要があるが、宇宙開拓時代を迎えるコレからを考えると、RP欲しさに小惑星を次々にナノマシン・プールに放り込むことは、月を監視する連邦政府の監視網を考えると難しいのではないかと思ったのだ。月が監視されている以上、派手な形で小惑星を持ってくると、政府側の疑念を呼ぶことになる。

 ナノマシンの解説の項目を良く見ていくと、ナノマシンは陽子クラスまで物体を分解した上で、RPか別の物質に変換する方式を取っているらしい。つまり、純然たる重さが重要なのだ。たとえば小惑星10tを放り込んだ場合、同重量の資源、もしくは同レートのRPに変換される。RP、ナノマシンはプラントによる管理を受けているらしいので、プラントの性能をRPやGPを消費してあげていくことで、効率が改善されるらしいこともわかった。

 そこまで考えてからはっとなったが、外側から見て難しいなら、内部拡張で搬出される土砂をプールに放り込むのも手だと考えた。それに、内部を拡張し、別クレーターなどと地下で連結させてしまえば、搬入した総量をごまかせる可能性もある。地軸点を中心にいくつかの恒久都市を連結させるタイプを模索するのも手だし、他の恒久都市開発の際に出た土砂を引き受けることで、RPを獲得できる可能性もある。

 火星基地の設営に50000ポイント。残り約24万ポイント……おかしいな、30万ポイントほどある。

「ポイントが上昇しているが、これは?」

『初期設定内での会話もポイント換算の対象です。これまでの方は、地球圏以外の場所というと、火星か木星にしか目を向けなかったものですが、候補者は他の太陽系天体への可能性を模索しました。また、小規模プラントの可能性について、前もって想定した方は少数です』

 どうやら、疑問はすべて口に出したほうが良いようだ。

 次に人員のチェック。基本的に呼んだキャラクターには基本項目として不老設定がつくとのこと。ただし、これについては候補者―――つまり私だ―――が判断を下した段階で加齢することも可能だという。よかった。どこの無双キャラを量産することになるかと思った。

 さて、宇宙世紀の人材が使えないとなれば他作品、つまり平成ガンダムのキャラクターがまず候補になるが、そこまで考えたところで頭を抱えた。
 平成ガンダム最大の特徴と私が思っている大問題。それは……


 『登場するキャラクターの能力とコミュニケーション能力が反比例しすぎている』


 たとえばGガンダム。主要キャラクター中、一番の常識人といえばレイン・ミカムラ嬢が思い浮かぶが、ライジングガンダムの操縦は別としても、一介のエンジニア・設計者にとどまる。特に彼女の場合、その技術はモビルトレースシステムを導入したMFだから、運用を考えた場合、KYで熱血で人の話しを聞かない(キャラクターとして見ている分には、島本キャラは本当に面白いが、付き合うとなると別だ)彼を使う必要が出る。

 システムによると、採用キャラクターは基本的に私に従ってくれるらしいが、『従う』ことが『理解した上で』、『いうことを聞』いてくれたり、『思った通りの行動』をするかどうかは別問題だ(そのことを指摘するとポイントになった。少し悲しくなった)。

 悩みに悩んだ挙句、まずカトル・ラバーバ・ウィナー氏を獲得。経済感覚に優れているし、ゲリラ戦の経験も豊富。小隊戦闘も(平成ガンダムのキャラクターにしては珍しく)上手いし、オプション項目の「ウィナー家」をオンにしたら、実際にアラブに富豪としてウィナー家が出現した。ちなみに某主人公や「ごひ」氏などに対する印象を口にしたところ、苦笑しながら同意してくれた。素晴しい少年だ。ポイントに余裕が出来たら、マグナアック隊を呼ぼう。彼には合計5000ポイント以上の価値が絶対にある。

 次に特殊部隊運用が基本となるので、5000ポイントで作品拡大を行い、総員合計25000ポイントを使用し、ホテル・モスクワのタイ支部遊撃隊と、の方々にお出で願った。原作でのバラライカ女史の状態が任務の際に問題になる可能性を考え、ポイントを別途消費してアフガンでイスラム過激派に捕虜となる前の段階まで肉体を戻したところ、本人含め遊撃隊全員に狂喜乱舞されてしまった。が、同時に護衛として呼び出していたロベルタ嬢と遭遇した瞬間にCQCを始めていた。

 と、ここまでは順調だったが、やはりMSパイロットが悩みだな……カトル氏はMSよりも経済面で役に立ってくれそうだし……





[22507] 第02話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/16 04:40


 MSパイロットについて悩むが、結論が出ない。キラ・ヤマトやアスラン・ザラのようなキャラクターは確かに欲しいところだが、基本的に従ってくれるとはいえ、彼ら自身が問題だと私は考えている。

 先ほどの話にも出ていたが、所謂黒歴史にコズミック・イラが含まれ、話の流れ上、文系科学の崩壊後になるらしいコズミック・イラ世界を考えると、彼ら自身の精神的成長を考えなければならない。はっきりいって、彼らの精神的成長の度合いは、いいところ工業専門学校生というものでしかないし、そもそも原作も、16歳で戦争に放り込まれている。彼ら自身に罪はないが、精神的に幼いのだ。

 だからといってあの世界では大人の方にも問題がありすぎる。ウズミ・アスハなど、娘の言を世間知らずと斬り捨てておきながら、理想と共に焼死した。別に自殺するなら勝手にしろといいたいが、国と国民全体を巻き込んでいる点は為政者失格といわざるを得ない。むしろ、連合に属しつつもオーブ独自の政策を模索すべきだったのではなかろうか。

 そこまで考えて、能力や成長性に問題がないなら、単に呼び出すだけではなく、彼らに学習する時間を与えた方が良いのではないかと考えた。その疑問をぶつけてみる。

『採用されたキャラクターの能力拡張はポイント消費で可能になります。その場合、現在表示されているリストでは、採用されたキャラクターの、そもそもの能力で区分していますので1万ポイントが上限として設定されていますが、成長の可能性を付与すると、最大3倍になりますが、宜しいでしょうか?』

 なるほど、元のキャラクターの能力が高いのであれば、成長することまで含んでしまえば、85年という時間で超級チート電影弾な存在になってしまう。現在、カトル氏にウィナー家などを込みで15000、ラグーンの方々に30000だから、これが3倍となると135000まで拡大する。これは痛い。だが、別世界からチートキャラを呼び込むのだし、これからポイントを獲得していくとなると、このレートはある意味納得できる。

 ……Spを残して必要に応じて呼び込むとかできないだろうか。

「質問だが、SPを残した場合はどうなる?」

『SPは自動的にGPに1:1で換算されます。但し、GP、RPはレート変動の可能性があります』

 3倍にまでポイントが高まるが、レートの変動まで考えるとなるとまだSPの方がいいということになる、か。残りポイントはここまでの会話によるポイント獲得も含め270000ほど、カトル氏などに成長性を付与すれば、元ポイントの45000にプラスして9万必要になるから、実質残りは18万、か。

 カトルの経済観念も棄てがたいし、ラグーンの方々には大活躍してもらいたいので躊躇無く成長性を付与し、9万ポイントを消費。技術情報と採用作品を見直し、ブラスレイターを選択。さすがにラグーンの方々でも銃弾が当たれば危ない。仮面ライダーも考えたが、御丁寧なことに一シリーズごとにポイントが必要なので選択肢には入れなかった。リアルバイオハザードやるならそれもアリなのかもしれないが。ああ……でも伊丹刑事のアポロガイストは結構好きだったんだがなぁ……

 ナノマシンには、作品ごとの機能を追加設定出来るらしいので、ブラスレイター生産技術はこれからのMSにも役立ってくれるだろう。NT-Dとか使いたい。

 そこまで考えたところで思いついた。MSの巨大化・高機能化が頭打ちになり、F-91あたりでダウンサイジングしたのは、現実世界ではプラモメーカーの思惑だったが、機体が巨大になりすぎると慣性の問題で搭乗者にかかるGの負担が大きくなることが最大の理由だ。逆に考えれば、Gの問題をどうにかしてしまえば、強化人間相手でさえ無双が可能ということになる。サイコミュを採用したのも、機体の追従性を上げる以外に、人間そのままの動きをさせることで、Gの負荷を人間が受けやすいものに変えるという意味合いもある。搭乗者の肉体強化を薬物に頼らないで行えるというのは有難い。

 となると、内政チートが主となるだろう行動の初期段階では、それこそ却ってガンダム以外の人物の方が役に立つかもしれないし、基本戦争は数の暴力の世界だから、無双を実現させるのは戦争が始まってからでも遅くないし、むしろ独自の戦力の構築と、単機平均の能力向上の方がいいか。

 ある程度の結論が出たのでブラスレイターよりヘルマン、ゲルト、マレクの三名を採用。成長性を付与し、特にゲルトについては他者がデモニアックに見えるナノマシンの不備を解除した。これで6万。

 MSパイロットについてはSEEDよりアストレイ三人娘を、また00より初代ロックオン氏を採用。グレイファントムの艦長としてナタル・バジルールを採用した。成長性をプラスして合計10万。

 残った5万ポイント(会話でまた増えていた)を肉体年齢変更の機能と作品の拡大、技術情報に用い、準備は整った。


 それでは、介入を始めて行こう。



 第02話:ラプラスの匣



 2046年1月1日。正式に宇宙世紀0001年となるこの日、以前からの予定通り、眼下に広がるスタンフォード・トーラス型コロニー、ラプラスにて、地球連邦首相リカルド・マーセナスの演説が始まろうとしていた。

 そのラプラスを照らす2枚の凹面鏡の内、天頂方向にあるその一枚に、静かに近づく宇宙作業艇があった。

「OKです、艇長。予定通り、周囲の警備艇は俺らをGEの社員と思ってます」

 野卑なラテン系の男は、宇宙服に包まれた手を動かし、了解のサインを送った。予定通りだ。あとは凹面鏡のコントロールセンターに、このプログラムをインストー……

 そこまで考えたところで作業艇が大きく揺れた。

「な、どうした!?」

『わかりません!何かに押さえつけられたようで……なんだこれ!ギャ……』

 叫び声と共にくぐもった音が生じたかと思えば、同時に響く破砕音。何かわからないが、予定外の事態のようだ。

「クソ、ばれた!?誰でも良い!各自、プラグラムの入ったMOを持って船外に出ろ!たどり着いた奴がプログラムを……」

 そこまでしゃべった瞬間、作業員用の出入口が―――それを保持する鋼材の側で連続した爆発が生じた。扉がゆっくりと動く。既に室内が真空のため、空気が外に漏れ出るような事態は起こらない。

「な、な……」

 鋼材がゆっくりと上に動く。不自然な動き。どうやら、突入をしようとしているらしい。

「構えろ!撃つと同時に外に出る!サイアム、ジョスト、裏に回れ!カールとホセは船底から出ろ!」

 リーダーと思しき人物は、宇宙用の無反動機関銃の銃口を扉に向け、やけに大きな宇宙服らしきものの腹が見えた段階で射撃を開始した。

 高音が響き、跳弾が発生。跳弾は船内の鋼材に跳ね返り一人を殺す。

「銃が……なんだあれは!?」

 ようやく退かされた扉の向こうには、3mほどの鋼鉄の人形がいる。そいつがゆっくりと腕についた銃らしきものを向け……

 撃った。




 サイアム・カラスは17歳だった。出身は旧ヨルダン・ハシュミテ王国。現在は中東連合となっている地だ。地球連邦が成立し、エネルギーの調達先を核融合発電と太陽光発電に切り替えると、中東の石油資源は内燃機関用の燃料以外の役割を持たなくなった。

 2030年代初頭に、安価な電気自動車が整備され、バッテリー技術の革新が始まる。そして止めを刺したのが、月面極冠部に大採掘基地を構える日系企業グラン・パシフィック社だ(日本名、太洋重工グループ)。月面から産出された新資源、『動力鉱石』を一手に賄うこの企業は、大型化が不可能なこの鉱石エンジンを以て自動車産業に乗り込んだ。大型化が不可能で、軍用、船舶用エンジンこそ作られていないが、電気自動車の普及に大きな役割を果たした。

 それはいい。問題は、船舶用、航空機用しか需要が無くなった石油資源が、中東に恐ろしい勢いで不況をもたらしたことだ。その上、同時並行で進んだメタンの燃料化が、その残されたシェアさえも現在進行形で食いつぶしており、石油中心のモノカルチャー経済だったこの地域の貧困化を進めてしまったことだ。

 20世紀より続く、石油依存の体制が覆されたことは、産油国の政治的地位を押し下げた。他にも色々な理由があるが、サイアムがここでテロリストの仲間入りを果たしていたのは、その不況が理由で家族を養えなくなったからだ。

 楽な仕事。

 ディスク一枚を、秘密裏にコンピューターに差し込むだけ。

 シャトルに乗って、作業艇に乗って、10分ぐらいの宇宙遊泳。

 そんな言葉に乗せられて来た場所は、今、マズルフラッシュのクラッカーで祝われるパーティー会場となった。

「サイアム、先に行け!俺が援護する」

 ジョスト。いやな男だ。ガラス越しの顔は震えている。恐らく、自分をおとりにするつもり。ため息を吐いたサイアムは、ジョストをつかむと船底にある出入り口から放り投げた。

 無音。だが、ジョストの宇宙服の胸にコイン大の穴が空き、赤黒い液体と白っぽい何かを吐き出し、慣性に従って地球の方へ向かっていく。サイアムはそちらに顔を向けていたが、ジョストの体には目が向いていなかった。地球。青い星。美しかった。何か別のモノ、宇宙飛ぶ巨人が見えたような気がしたかと思った瞬間、体を強く引き上げられた。

『サイアムとやらはお前か』

 振動音声か接触回線かはわからないが、目の前の鉄板―――パワードスーツ『ハイッシャー』―――からの声にサイアムはうなずいた。

「そうだ……アンタらは……」

『持って行け』

 コンテナを押し付けられ、宇宙服とワイヤーで結ばれたかと思った瞬間、そのまま地球とは逆方向に投げられた。




『終わったよ』

 サラミス級宇宙警備艇のブリッジで、推移を見守っていたところに通信が入った。

「ありがとう、ミス」

『その呼び方はやめな、といったろう?』

 じとり、といやな汗が伝う。後ろに宇宙服を着ずにメイド服で立つロベルタ嬢の反応が怖い。

「ありがとうございます、ソフィーヤ・イリノスカヤ」

『駄目だ』

 ああ、声が怖い。怒りつつある。ブリッジ要員としての訓練を受け、コンソールを操作していたはずの遊撃隊の方々が何かを期待する目で私を見ている。ブロックサインでさっさと要求どおりにしてくれと訴えかけている。助けを求めるようにセカンドチームを率いて待機していたボリス軍曹の方を見ると、沈痛な面持ちで顔を振った。君たち、そんな厳つい顔をしているんだからもうちょっと……

『トーニェィ……早く』

 トーニェィ。私の名前はトオルなのだが。伝えた瞬間、トーリーと呼び始め、愛称としてトーニェィとなった。ロシア語はわからない。 

「ありがとう、ソフィー姉さん」

『オーチン・ハラショー。ポイントたまったんだろう?帰ったらボリスの件、考えておいてくれよ』

 横を振り向く。こんなテロを防ぐことに何の意味があるかと問われたときに、ポイント制の話をうっかり漏らしてしまったのだ。まだ彼女一人でとどまっているが。最初に切り出されたのが、彼女の忠実な副官、ボリス軍曹を入隊時の姿に戻すこと―――うん、彼女は絶対にショタコンの気がある。年齢変更機能の話しをしたら10代に戻ってみろとか要求されたし。

「本人の同意が絶対条件です。考慮はします」

『説得は任しときな』

 ボリス軍曹が嫌そうな顔をしてこちらを見ているが、知ったことではなかった。モニターの表示を式典会場へ切り替える。







 マーセナス首相の演説は佳境に入っていた。ここはアメリカ州ニューヨーク市にある旧国連本部ビル。マーセナス内閣の閣僚が忙しく、宇宙への引越し準備を進める中、息子にして2期目の内閣では副首相を勤めるジョルジュ・マーセナスがモニターを見つめていた。

「何をしている、何故何もおきない……」

 押し殺した声は室内で忙しく動く職員たちには届いていないようだ。もし届いたとしても何を行っているかわからなかったろう。それに、意味が理解できたとしても信じられるかが微妙だ。

 息子が父の命を狙うなど、そもそも考えもしないからだ。

 それに、少なくともジョルジュ・マーセナスは表面上、父を助け、将来を嘱望される政治家だった。正義感にあふれ、しかし、父ほどリベラルではなく、どちらかというと保守的で、革新的な成果こそ残さないが、堅実な手腕を振るうと評されていた。

 しかし、その保守性こそが問題だった。

 どこをどう繕っても、現在、移民問題評議会が行おうとしている宇宙移民計画は、棄民政策以外の何物でも無いからだ。

 確かに地球に居住する人口が80億になんなんとしている現在、地球上では中国、インド、アフリカという人口爆発の温床をどうにかしなくてはならなかった。特に、独裁政権続きで統制経済を敷いていた中国は、連邦発足と共に組み入れられた変動相場制で経済の大混乱を引き起こしている。人口を現在の26億から最低限20億、宇宙に移し、生活の場を整える必要がある。

 問題は、そうした発展途上国出身者に、先進国が営々と築いてきた地球連邦という国家への参画を、全面的に認めて良いかという点だ。

 人は決して平等ではない。他より先に工業化を果たした国家群として、先進国はその経済力の多くを、発展途上国への援助と、途上国が無計画に行う工業化による環境汚染対策に費やしてきた。今回の宇宙移民政策も、このまま地球に納まっていたのでは大規模な虐殺か戦争以外に選択肢が無いからだ。

 無計画に人口を増やし、食糧問題を発生させた上に解決能力もなし。それなのに虐殺も戦争も無しに新しい生きる大地を与え、生活の場を整えるというのに、無条件で参画まで認めるという。それにくわえて、新しい生物学的なんとやらが生じた場合には、優先的に権利を譲るというのだ。

 噴飯物も良いところだった。これまでとこれからの経済力はまだ良い。一見無駄に思えても、資本の循環は新たな利益を生み出すからだ。だが、何の義務も果たしていないのに無条件で参政権を与えるだけでも腹立たしいのに、何の評価基準もない「新人類」とやらが生まれれば築いてきたものさえ差し出せと父はいう。



 ジョルジュ・マーセナスは決して無能ではない。むしろ有能だった。但し、父親ほど人間に対する信頼は無い。そしてそれは政治家には必須の条件だった。

 式典のクライマックス、連邦憲章を刻印した巨石のお披露目だ。もう駄目だ、終わりだ。計画は失敗したのだ。クソ、こんな演説さえなければ、閣内をまとめて絶対にあんな条項をいれることなど認めないのに。

 そして序幕された時、彼は別の意味で驚くこととなる。




 この日、地球連邦憲章が公布された。

 問題となる条項、連邦憲章第7章、第15条には以下の様に記されている。

「第七章
  地球連邦政府は、大きな期待と希望を込めて、人類の未来のため、以下の項目を準備することとする。

  第十五条
  一、地球圏外の緊急事態に備え、地球連邦政府は研究と準備を拡充するものとする。
  二、軌道植民地、天体植民地は各行政区分の人口が一定段階に達した段階で、連邦議会への代議員派遣権を得る」

 2048年、リカルド・マーセナス内閣が、二期目の任期を終える際、建設する軌道植民地の名称を「サイド」とし、各サイドの人口が5億を突破した段階で、1億あたり1名の代議員を連邦議会下院に派遣するもの、と定められた。また、月面など(まだこの段階では月面しか想定されていないが)の恒久都市の場合は、一市または複数市で構成される行政区の人口が1億を越した時点で、5000万人につき1名を上院に派遣するものと定められた。

 歴史はこれを、リカルド・マーセナスの偉大な業績として記している。





 問題なくラプラスの箱の入れ替えは終わったようだ。ほっと胸をなでおろす。しかし、これは驚きだった。
 小説ガンダムユニコーンの中では父親を殺し、それをマーセナスの家系が持つ罪として描いていたが、内側を見てみれば却って、ジョルジュの言い分が理に適っているのだ。

 法律の制定は、立法権を持った―――法律で与えられているものが行う必要がある。これが大原則だ。憲章のような理想でも、それが独善で成されたものであれば、後の時代には悪影響しか与えない。ラプラスの箱の最大の問題点は、記された内容でも、公開されなかった希望でもない。立法権限のないものが、適正な法的手続きを踏まずに法律に類するものを作成し、それを理想と共に公表しようとした上に、記された文言が抽象極まりないものであることなのだ。


 ニュータイプが出てきました。オールドタイプは政治的な権利が制限されます。文句は許しません。でも誰をニュータイプとするかの基準については知りません。てへ。自己申告?自称?なんでもOKです。


 ラプラスの箱が言う内容は結局これに尽きる。『善人ほど馬鹿を見る』の典型例だ。絶対にこういうことを言い出す奴がいる。

「お前はオールド、俺はニュー!」

 素晴しい。レイシズムはヒトラーで懲りていると思うのだが。ジョルジュ・マーセナスが新しいレイシズムの温床となりかねない思想を危険視するのも当然だろう。
 それに、これを閣議も通さず、演説の場で強行しようというなら、リカルド・マーセナスは死を持ってそれを購うべきだ、という論理に問題はない。それに、続く分離主義者との戦争は結局は連邦政府を一枚岩にまとめる結果となった。悪い結果ではないし、スペースコロニーなどという巨大な建築物を数百も宇宙に浮かべるなら、絶対に必要だ。


 夢見がちで馬鹿で考え無しで放蕩を尽くす父親の面倒を見るのに疲れ果てた息子が父親を殺傷。


 どこかの新聞の三面記事でも飾りそうな事件を宇宙規模に拡大するとこうなった。ただそれだけの話だった。
 

 今回の事件、サイアム・カラス―――後のサイアム・ビストにはラプラスの箱の原本(もう意味はほとんど無くなってしまったが)と、ジョルジュ・マーセナスの作った暗殺計画を立証する書類をプレゼントしておいた。ここまでやってやれば原作どおり、ビスト財団とアナハイムを作ってくれるだろう。

 地球圏を引っ張る経済的な力は、強く、そして多くあれば良いと私は思っている。

 原作を見ると、基本的にZ以降、MSを作っている企業はアナハイムだけ。戦争があり、効率的な経済体制として、軍需を独占させたというのはわかるが、それが肥大化して企業独裁ともいえる体制になるのは問題だ。0096年に、連邦政府相手にして甥っ子に手を出す趣味の悪いババアがコロニーレーザーをハッピートリガーでぶっ放せたのも、箱の力だけではないのだ。諸産業を一社に独占され支配された最終形態なのだ。

 となれば、アメリカが大好きで戦争を以てしても世界に広めんとしている自由主義経済こそ対策になるだろう。

 ライバル企業がいなければ、サービスは向上しないのだ。

 ということでこの6年、RP獲得にいそしみ、得た資源をポイント化するだけではなく資源としても売り飛ばし、『重装機兵ヴァルケン』に関する技術をオンにしたことで月の地下に発生した『動力鉱石』を用いて自動車産業になぐりこんでみました。

 いやぁ、自動車って儲かりますね。系列企業が労せず出来るし。うちの会社―――日系企業太洋重工ことGP社はエンジンのみ供給してますが、それだけでもあっという間にでかくなることが出来ました。カトル君、あなた凄過ぎです。

 勿論、降って湧いたような新しい資源に皆様興味津々ですが、月面極冠部の開発基地『N1』は5.45mm弾が何故か大好きな遊撃隊の皆様に守られ無事です。パワードスーツ隊も頑張ってくれていますし、政治的にもRPをGP変換して獲得した新キャラクターにして現在、連邦下院議員一期目を勤めていただいていますアイリーン・カナーバ閣下が大活躍。新党結成まで行くのかな?

 ……いや説得大変でしたよ?不老項目に加齢設定くわえる際に、プライベートでの年齢コントロールを要求されたり、コントロール権について交渉までしてくるんですから。やはり女性なので適当な時間をおいて老化と若化を行うことに(ポイント余分に必要でした)。

 ただ、思ったより戦力の拡張が難しいのが難点。RPの変換レートが高いのだ。キャラクターを成長性込みまで含んで獲得すると最大3万ポイントかかるし、MSの場合、黒歴史上の実機を呼び出すにも高いポイントがかかる。その上、新技術を盛り込もうとすると追加でポイントが発生するのだ。勿論、実用化を早めようと考えた場合にもポイントは必要になる。

 現在のレートは100tで1Rp。10Rpで1Gpだから、30000GPで新キャラにお出で願うには、3000万トンのリソースが必要……確かに、GP狙いで歴史変更掛けた方が有利だな。このレートが決して不利なものではないこともわかっているのだ。直径5km程度の小惑星で、質量は120億tにもなる。小惑星1個で12億RPになるわけだから。

 くそぅ、ここまで月という立地条件が問題になるとは……。火星の基地でも地下採掘の分しかポイント化出来ない限定がついているし……いや、急ぐのは禁物だ。みみっちく元素変換で稼ごう。大企業になれば「火星基地建設!」とか無理も無いし。

 ただ、技術革新の項目にワープ技術などの項目があったので、後々、どうにかなりそうなのが救いだが……


 
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 とりあえず続きをでっち上げてみました。





[22507] 第03話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/18 06:59
 宇宙世紀成立以後、その後の歴史は少々の変動を入れられたものの、概ね史実どおりの展開となった。

 月の衛星軌道との兼ね合いで安定しているラグランジュポイントL5、L4にそれぞれサイド1(ザーン)、サイド2(ハッテ)の建設が、UC0010年、開始された。目標設置コロニー数各250基、農業・居住用コロニーとして島3開放型を建設し、コロニー1基当たり1000万人を限度として移住させる。

 建設に伴い、エネルギー源としてヘリウム3を用いる超大型核融合炉を建設し、ヘリウムの確保ため、木星へ派遣する船団の運営組織として木星公社を設立。収集船や、宇宙用船舶の造船は初期こそ地球で行うが、効率と運用を考慮し、月面での建造が行われることとなり、この収集船の建造は、恒久都市『N1』にて行われることとなった。

 0016年、サイド1に24基のコロニーが建設された段階を以て連邦移民局が設立、人口の多い中国より移民が開始されると発表されたが、これに対し中国が反発。0017-22まで続く「居住権戦争」が開始される。全世界対中国(後に中国の強い影響下にあるアフリカ諸国も参戦した)のこの戦争は、地球に対する居住権という新しい特権の存在を人類に意識させたが、史実どおり、0021年に終結。連邦は「地球からの紛争の根絶」を宣言した。

 0027年、地下拡張工事に手間取る極冠恒久都市「N1」を尻目に、静かの海に建設されたフォン=ブラウン市が完成。入植が開始される。0032年までに「N1」、「グラナダ」を初めとする16の都市が完成。月面の総人口は30億に達した。

 0034年、L2にサイド3(ムンゾ)、L5にサイド4(ムーア)が建造開始。サイド3には、工業用コロニーの試験として島3閉鎖型が導入された。しかし、工業生産に伴い発生する空気中の微粒子回収の目処が立たず、居住人口が、開放型に比べ圧倒的に低下(1基当たり100-200万人)。居住人口を制限しても3年に1度、空気の全面的入れ替えと、微粒子回収フィルターの全交換を必要とするためコロニー維持費が増大。居住民に対し、重い空気税が課せられる。

 0045年、サイド3を中心に地球を聖地とし、地球人口の低減による環境回復を求めるエレズムが広まる。背景に、地球からの大気輸入の際、地球側が加工費用の一部として汚染除去費を繰り込んでいたことがある。「地球の大気=安全な大気」との印象が強い民衆にとり、汚染除去費は代金のつり上げと映ったようだ。

 また、この都市、ルナ2が地球圏へ曳航され月軌道上で資源採掘を開始。思想家ジオン・ズム・ダイクンがサイド国家主義思想「コントリズム」を提唱し、重い空気税に悩むサイド3にて爆発的に広まることとなった。同じ年、サイド5(ルウム)、6(リーア)が建設を開始。



 そして歴史の改変が始まる。
 


 第03話

 0061年、アメリカ。

 ここは地球、アメリカ行政区マサチューセッツ州ケンブリッジ。あの有名なハーバード大学の構内である。連邦政府の設立以後、アメリカ政府の要人を輩出する大学から連邦政府の要人を輩出する学校へと移り変わったこの大学で、現在、タマーム・シャマランGSAS主任教授が、サイド3を中心に拡大するジオニズムの批判演説を行おうとしている。

 歴史どおりならば、この時、シャマラン氏は暗殺され、アースノイドはスペースノイドに対する対抗思想を持たないまま戦争に突入し、感情的対立の激発を招く。イデオロギー紛争の側面もある一年戦争では、やっぱりこの点もつぶしておきたい。

「しかし、ザビ家の暗躍って、この時から根深いねぇ」

「トール様。バラライカ女史より4人目の排除が終了したと連絡がありました」

 ロベルタの声に私はうなずいた。

 講堂。演説会場として開放されているこの大学の周囲は、連邦からの独立を唱えたサイド3に対するデモで埋まっている。本日演説を行うシャマラン教授は、宇宙の独立に対して温情的だからなおさらだ。ここでの演説も、大多数が独立を宣言したジオン・ダイクンへの応援演説と解されている。

 事の発端は、サイド3が行った、地球連邦への債権放棄要求だった。

 宇宙空間に平均800万人が住む大地を建設する。勿論多額の金が必要になる。連邦政府が当然、その建設費用の大半を出すのだが、コロニーの建設予定数が人口増加を考慮した場合、1000を越える可能性が示唆された段階で、建設費用の一部をコロニーに移住する住民に求めた。そこまでは良い。

 通常のコロニーの場合、1基の建設費用を800万人口で負担し、税としてそれを払う。収入としても外壁にある商工業区で生産される小規模工業製品や、農業産品で充分な利益を確保しているから、その運上利益で支払いもたやすい。1000万人で割るとなれば一人当たりの金額も小額だ。

 しかし、サイド3は工業コロニー、いや、工業サイドを志向した。人口は1基当たり大体150万人。しかしコロニーの建設費用は変わらないから、単純計算で5倍の費用を支払う必要がある。これでは、いくら工業製品が売れてもおっつかない。その上、工業用コロニーは維持費が高いのだ。

 結局、サイド3の財政はギリギリの段階で、連邦・月面都市連合からの資金援助と債権のモラトリアムでどうにかなっている。そこにジオン・ダイクンは債権放棄―――つまり、借金を無い物として扱い始めた。

 この暴挙は衝撃的な影響を地球圏の経済に与えた。サイド3には工業用コロニーが20基、それに開放型コロニーが25基ほどあり、人口は1億5千万から2億人程度(これはサイド当たり15億の人口を考えた移民計画からすると驚くほど少ない)で、当然債権の額も大きい。これが一斉に不渡りとなったため、サイド3に投資していたマネーファンドが軒並み倒産、取引の停止と相成った。

 そしてそれだけではなく、数年後に国家として独立するとまで言い放ち、認めたくないなら連邦議会下院への議員派遣権を要求したのだ。連邦憲章第15条の必要条件は5億を突破することを明記しているにもかかわらず。債権放棄による地球経済への打撃にくわえこの要求。ジオン支持、ないし協調派として知られるシャマラン氏は地球の裏切り者となったのだ。

 しかし、本当の意味でシャマラン氏を知るものは、この日の演説が急進の度合いを強めるジオンに対する批判演説となる事を知っている。それは、批判される当のジオン・ズム・ダイクンこそが良く知っている。知っているからこそ―――排除するのだ。暗殺という手で。

「暗殺を手配したのは?」

「尋問の結果、デギン氏のザビ家ではないようです。デギン氏は意外にハト派ですから……」

「ジオン・ダイクンその人の命令」

「その可能性はあります」

 メイドではなく秘書の服装になっているロベルタはうなずいた。

「もろ左翼の内ゲバ」

「身も蓋もない結論だね、トール」

 ロベルタの反対側、空席となっていた席に着いた若い連邦軍士官が言った。階級は少尉。

「でも、現実そうではないですか?ヤン・ウェンリー少尉」





 苦々しげにモニターを見つめる年老いた女性。ローゼルシアは車椅子を苛立たしげに揺らせながら、隣に立つ男へ怒鳴った。隣に立つ男も表情は硬い。いや、むしろ女性よりも苛立たしげに息を吐き出すと、豪奢なソファへ音髙く座り込んだ。

「ジンバ、本当に送ったのだろうな」

 問われた男、ジンバ・ラルはあわててうなずいた。確かに彼の―――使えるべきと定められている男、ジオン・ズム・ダイクンの言うとおり、タマーム・シャマランへ暗殺の手を伸ばしたのは彼だ。ダイクン自身、自分の説であるコントリズムを疑ってはいない。理想としては正しいと信じてもいるし、この時代に即した考えであるとの確信も抱いている。

 問題は、ジオン共和国―――サイド3に、それを可能とするだけの経済力がない点にこそあった。

 工業用コロニーは維持費が高い。独立を訴えかけるにしろ、サイド3自治政府の抱える債務について、連邦とのある程度の妥協が必要と考えるデギンを抑え、独立宣言を出したものの、債務放棄まで訴えたために経済封鎖を返され、サイド3政府は青息吐息となった。

 工業用コロニーなど無くとも、月面恒久都市の抱える工場群で代替製品の生産は可能だからだ。特に、無酸素生産設備を持つ月面極冠都市『N1』は、ここぞとばかりに販路を拡大させていた。

 サイド3の自給自足は、現在抱えている連邦への債務を変換することでようやく一息つけるのだ。その間に木星との航路を開通させ、無酸素生産設備に必要な核融合炉を持つ必要がある。太陽光発電では発電量が限られるし、化学工業の無酸素化には大規模な発電設備がいるからだ。

「シャマランめ……。地球に残った、残り続ける人類など、天から降る業火に焼かれ、死滅する運命にあると何故気づかん!?」

 周囲の人間は目をあわさない。サイド3で絶大な支持を受ける宇宙の革命家は、結局の所こういうものだった。




『地球連邦の行政圏に属す皆さん、私は本学教授、タマーム・シャマランです』

「はじまったな」

 連邦軍本部が置かれているニューヤーク市―――数年以内に現在、南米に建設が進められている新基地、ジャブローへ移転の予定だが―――の参謀本部ビルに、集まった壮年の軍人たちがテレビを注視している。

 参謀本部作戦課長、シドニー・シトレ中将。第一機動艦隊司令、ヨハン・レビル中将、同艦隊所属『タイタン』艦長マクファティ・ティアンム大佐、彼ら二人をまとめる第一機動艦隊第一戦隊司令、アレクサンドル・ビュコック少将。恐らくは10年後の連邦軍の中枢を担う軍人たちだ。

「こんな放送になんの意味があります?申し訳ありませんが、小官は訓練計画の策定もありますので退室させていただきたいのですが」

「落ち着きたまえ、ティアンム大佐」

 シトレ中将は言った。

「連邦宇宙軍の拡大整備計画が議会を通過し、10個艦隊を作るとなれば、基幹部隊の第一艦隊の訓練計画をつくるのも当然の措置だろう。だがな、我々から見てどれだけ暴論であろうと、コントリズムを提唱し、それが支持を受けている以上、次に来る戦争はイデオロギー色の強い物になる。戦うときの論破は必要だ」

 レビル中将は頬を掻いた。主席卒業を初等教育から士官学校まで続け、40歳代の中将という破格の出世を果たしたこの軍人は、年に似合わぬ老人めいた口調で言った。

「シトレ閣下、何を考えておいでです?」

「なに、中将。似たような事が歴史にあったと思ってな。ほら、私のところにいた歴史好きの」

 レビルはうなずいた。

「ああ、ヤン少尉ですな。戦史の成績が良い……私の従卒だったときには世話になりました」

「あれに影響されてか、事件が起こると似たような歴史的出来事とやらを気にするようになったのだ」

「つまり?」

 ビュコックが先を促すように言った。

「第二次世界大戦の旧ドイツ。まさにジオンと思わんかね」

 全員がうなずく。

「だとしたら、我々に対する彼らの戦い方は、ドイツに類するものだと私は思うのだよ」

 シトレは引き出しから書類を取り出した。






[22507] 第04話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/18 07:00


 タマーム・シャマランの提唱した天体植民地論はジオンのコントリズムを押しのける強さこそ無かったが、着実にスペースノイド、アースノイド関係無しに広まっていった。特に、火星を地球と同じ居住環境にしようとするテラフォーミングの提唱は大きな魅力を持っていた。そもそも、スペースノイドの不満の大部分は、彼らが吸う空気そのものに税金がかかる、この一点にこそ存在したからである。

 火星、準惑星ケレスのテラフォーミングにより、地球と同じ環境の惑星を手に入れる。コロニーは惑星居住環境整備のための、100年単位の仮住まい―――

 無酸素生産設備の全人類圏に対する拡大と、コロニーの通商・農業環境によるクローズド・サイクル整備。木星船団によるヘリウム3の安定供給と、月面の工業都市化。コロニーは基本、農業を基幹産業として人類の胃袋を担う。完全無重力環境を要する工業製品は、少数の工業用コロニーで。

 コントリズムに対する直接的批判ではないが、安易に地球を否定せず、人類種そのものの延命のために地球・宇宙を一体とする一大経済圏の確立と棲み分けの提唱は、第二次コロニー建設計画の縮小と、サイド3の債権放棄要求で、次代の投資先を見出せない経済界からは歓迎された。

 さらに、ジオン・ダイクンのニュータイプ思想に含まれる全体主義的・人種差別的傾向の批判と、多様な価値観を衝突無く並存させるための、人類そのものの分布の拡大化。

 コントリズムとエレズムにより、地球に済む事こそ罪悪とする考え方が否定された点を以てすれば、確かにシャマランの考え方―――火星のテラフォーミングを提唱した事から「マーズィム」と呼ばれる事になる―――は、コントリズムとエレズム、結合してジオニズムとなる思想に対する、対抗思想足り得た。

 この理論の優れたところは、決してコントリズムと対立し得ない点にある。コントリズムによるサイド国家主義を否定せず、むしろ拡大の方向を取る事で、安易に地球を聖地化し、「重力に縛られたものたち」としてアースノイドを差別する視点を放棄させるのみならず、アースノイドとスペースノイドと言う区分そのものに対し批判をくわえている点にあった。

 しかし、ジオンが真に危険視したのは、ニュータイプ思想に対する批判そのものであった。元々棄民政策で地球を追われた事に対して成立した思想がジオニズムである。逆差別の理論的な後ろ盾を宇宙に脱した新人類の発生―――それが起こり得るものかどうかは提唱したジオン本人ですらわかっていなかったが―――に求めたジオニズムの根幹理論たるニュータイプ思想は、実は、コントリズムとエレズムが論駁されてしまえば、ジオニズム唯一のよりどころになるものであったからだ。

 ジオンがシャマランを危険視した最大の理由がここにある。結局のところ、彼らはレイシズムにより権力を得ようとしているのだから、それが否定されてしまえば、彼らはナチスと同じでしかないのだ。早晩、誰かがその事に気づいてしまう。気づかれれば終わりなのだ。

 そもそも、旧世紀に発達した哲学においてさえ、個と言うものが確立してしまえば、理解すなわち協調ではないのだから個人間の自由の激突が生ずるのはホッブスが指摘する通り当然の帰結であり、避けるのであればロックやルソーの言うとおり、一定のルールによってそれを制限する他はない。勿論、言葉によらない完全なる理解とやらが実現し、それが効力を持つならば激突の生ずる確率は減少するかもしれない。

 しかし、そもそも何事にも例外と言うものはつきものなのだ。

 さて、歴史を続けよう。

 0062年、シャマラン演説で示されたマーズィム――シャマランは自身の考えをシャマラニズムと名づけようとする幇間学者に対して喧嘩を売っていた―――にのっとり、火星のテラフォーミングに対する研究が開始。太洋重工グループがいち早く参加を表明。火星軌道上に太陽光反射ミラーを設営。第一段階のテラフォーミングとして、火星極冠部のドライアイスと大氷塊を融解させ、火星大気の組成変化を安定化させ、気温上昇の準備を図る事が計画される。

 0067年、地球連邦議会、サイド3より提出の債務放棄要求に対し、4度目の否決を上下両院で行う。各サイドからは空気税の税率低下のため、債務のモラトリアムを含む実質債務の切り下げが要求案として出されたが、足並みが揃わず部分的な導入にとどまった。同年、ムンゾ・月面通商協定締結。月面極冠都市連合(人口4億、中心都市『N1』)とサイド3は、工業製品の共通規格化と産品の販路交渉を継続して行い、サイド3工業の一定程度の向上までは、サイド3に関税交渉での優先権を与える事を締結。



 そして0068年、すべての幕が上がる。



 第03話



「ジオン・ズム・ダイクンの暗殺、ですか」

「暗殺と言うより、頭おかしくなった結果、体に負担かかりすぎたんだと思う」

 サイド3、1バンチ。ズム・シティは混乱のさなかにある。重大発表と銘打った議会にて、演説中にジオン氏が胸を押さえて倒れた。10分後に死亡が確認され、15分後には死体はザビ家の率いる保安隊によって隔離された。ここ数日、演説の草稿片手に3徹ほどしていたらしいから、かなり体に負担がかかっていたらしい。

 しかし、民衆は連邦による暗殺の可能性に思考が行きついた結果、暴力的なデモが眼下の中央広場前では繰り返されている。さながら、ベトナム反米デモか、日米安保反対といったところだ。

「坊ちゃま」

 私は顔をしかめた。ジオンに潜入し、身分を得るために孤児院経営を片手間にする月の大富豪、ミューゼル家の長男、という肩書きで10歳の少年の姿となった私は、現在、飲んだくれから復活させて保護者代わりに行動させている父セヴァスティアンと共にサイド3に入国した。服装はどこの軍装本からパクって来たのか正直問い詰めたくなる、ヒットラー・ユーゲントばりの茶色開襟シャツ+半ズボンにサスペンダー。

 この姿を見てからと言うもの、バラライカ女史は14歳の姿に(スチェッキン片手に脅された)なり「ソフィーお姉ちゃん」の称号を強要。割を食ったボリス軍曹も13歳の紅顔の美少年へ変化させられ護衛についている。さらにロベルタ嬢はガルシア君の面影に引きずられたか「坊ちゃま」の呼称を復活させて悦に入っている。

 危険だ。

「ロベルタ、姉さん「たち」は?」

 そう、家族と呼べる―――いつそう言う設定になったかは自分でも不思議なのだが―――人々が増えてしまったのだ。元々、父親キャラクターで子供がチートっていう家族いないかなーと思って、銀英伝からミューゼル家ご一行にお出で願ったのだが、さすがに父親がアル中じゃだめだろうと母親クラリベル女史を呼び出したところ父親復活。家族が円満化してしまった。

 参謀兼艦隊指揮官として有能だろうなぁ、とまだ5歳だがラインハルト氏には期待大なのだが、たまに悩ましげな目を向けてくるのは怖い。多分頭の中で銀河帝国つくろうとか考えているんじゃなかろうか(後で話したところ、忠犬キルヒアイス氏を呼び出してほしいそうだった。ムリだよ!ある意味オベ公より質悪いよあの人!)。

 結果、同年の10歳の「姉」としてアンネローゼ様が御降臨されたわけだが、彼女、原作でも見せた優しさを惜しげも無く発揮。ポイントこそねだらないものの、太洋重工の持っているお金なら孤児院なんて簡単よね、とようやく社会問題として生じつつある福祉関係に関して突っ込み始めた。

 女性に逆らえないよね、私たちの世代って。ポイントじゃなくて稼いだお金だから良いけど。

 危険だ。

 と悲しく思ったところ、月面で意外にも現地人採用の受け皿になる。さすがに要員すべてをバイオロイド兵で賄うわけにも行かないし、ポイントでキャラクターを呼び込むのもポイント的に無理があったのだ。おかげで、忠誠心には問題がない人材供給源となりつつある。ポイントもかなりたまってきたけど、戦争が始まるとなると色々溜め込んでおきたいのだ。ちびちびと増員も増強もしているけど。

 そして、あれよあれよという間に、孤児院開設から1年余りで貧困層の多くなってきたサイド3へ拡大したところ、一人の10歳の女の子が入ってきた。名簿の名前を見て驚きましたよ。

「トール!ここにいた!」

 ロングヘアーの黒髪をなびかせながら、気の強そうな14、5歳の女性がホテルの部屋に入ってきた。後ろから『待ちなっ!』と声質と内容の相反するモモ声が追いかけてくる。

「ねぇ、ごっ」

 危険だ。

 言葉にならないままヘッドロックを決められた。後ろから追いかけてきたらしいブロンドウェーブが顔にかかるかと思った瞬間、女性の声で「ごっ」と女性の口から出たとは思えない内容と共に、首を決められたまま振り回され、そして床をころがされた。顔を上げると黒髪と金髪のCQC。何の冗談だ。

「シーマ!アンタいい度胸してるじゃないかい!」

「ああ!?クソ姉、其処に直れ!」

 初の原作キャラ遭遇がシーマ様とは……。私、紫ババアとは距離を置きたいんだがなぁ……。とか思っている間にも、ブラックラグーンでのレヴィVSロベルタばりの乱闘は続く。ああっ、カーペットが……

「お、面白い事やってるじゃないの」

「あ、張さん」

 ロングマフラーにコート姿の東洋人が開いたままのドアをノックして入ってくる。シーマは不思議そうな顔を、バラライカは露骨に顔をしかめた。

「終わったよ。ローゼルシアは予定通り暗殺した。まぁ、あの御兄弟から離れないからちぃとばかり骨だったが。アストライアとかいうのの監視はエラ張った女がやってるが、ま、シロウトだな。シェンホアを置いておいたからいつでも接触できる。あと「お父さん」から伝言だ。銀髪から会食に誘われたと。お前さんを士官待遇の副官として置かせることに同意したそうだ。なにやった?」

「まぁ、色々と。ありがとうございます。それで、二人は?」

 張維新は口元をゆがめて言った。

「何処から見てもクソッタレな爺と予定通りに港の荷物に入ったよ。あとはマス家とやらがどうにかするだろう。なぁバラライカ。若くなるってどういう感じだ?俺からするとあの暑苦しい青春時代に戻るなんて考えもしたくないが」

「女にとっちゃあ夢心地だよ、ベイヴ。トール、あんたこいつにもいっちょやってくれよ。サングラス外すとかわ……」

 私は首を振った。張さんの目が怖い。

 危険だ。

「姉さん、何度も言っていますが年齢変更に関しては本人の同意が必要です。勿論私から御願いする場合もありますが」

「願いなよ」

「……張さん助けて」

「はぁ、素がこんな性格だとはな。ロアナプラから離れてこっち、宇宙くんだりまでくりゃ人も変わるってか?ダッヂが見たら目ぇ回すぞ」

 泣きたくなった。

 うん、危険だ。



 さて。ここまでくれば原作どおりで進行させて問題はないだろう。予定外だったのは動力鉱石エンジンの大型化が意外に進み、ザク程度の出力(900Kw)であれば出せるエンジンが出来てしまった事で、MSの核動力が動力鉱石化する可能性が出てきたところだ。核爆発が起こらないから良いんじゃね、と思ったら、現状動力鉱石は月でしか産出しないから、月面争奪戦なんて言うものの信憑性が増してしまったのだ。

 思想的にやばいところまで追い込まれているジオンは、眼下の光景を見るまでもなく連邦との対決姿勢を強めていくだろうから、もはやギレンとキシリアを暗殺するだけで事は済まない。メディアを抑えるサスロ・ザビも命を助ける事を考えたが、事態が複雑化しそうなのでやめた。むしろ暗殺の証拠を握ってドズル、ガルマに提示して正統ジオン結成フラグを作った方が良いと判断したのだ。

 戦争が不可避で、もし動力鉱石エンジンしかMSの動力足り得ないとするなら、戦争は月の争奪戦になる。これはまずい。何がまずいって?月の争奪戦なんてやらかされた日には、私たちの存在がばれる可能性が高くなるからだ。

 なので、M&Y(ミノフスキー・イヨネスコ)学会に緊急出資し、常温小型核融合炉の開発にペイをしました。いや、動力鉱石エンジンが月面企業のスタンダードになって以来、やっぱり学会に対する産業界からの援助は減り、ミノフスキー粒子の発見こそしたものの、やばい事になるところでした。

 次の問題はシャアの性格矯正なんですが……やっぱり、マザコンは元から断つべきなんでしょう。キシリアの動き次第で、こちらも対応策を考えて行きますか。

 その後、ジンバ・ラルの暴走でアナハイムが史実どおり、反ザビ家のダイクン派に援助を仕掛けるが、キシリア機関がこれを暗殺。キシリアの手が間近に迫っている事をあらためて実感したマス家は、ヤシマ家の勧めどおり、サイド5、テキサス・コロニーに落ち着いた。





 テキサス・コロニーに落ち着く可能性が高かったため、ヤシマ家が競売に取り掛かった段階でテキサス・コロニーに遊撃隊を配置する事が出来ました。これで、なんとかあの兄弟と接触できそうです。でも、手土産必要だよね。

 ということで私、トール・ミューゼル14歳は0072年のズム・シティの隔離塔を歩いております。三合会の皆様方にはお役に立っていただきました。まぁ、やっとギレン閣下と接触できてジオンに食い込めたので、私的には満足です。強面の東洋人メイドが頷きを返し、周囲を見回す。三年かかりましたよ、この塔に勤務する全員を手のもので固めるのに。

 さて、気張ってまいりましょう。息を整えて入室すると、ベッドに力なく横たわる女性に声をかけた。 

「アストライア・トア・ダイクン夫人ですね」

「……あなたは?」

 手を振り、体を起こす必要がない事を伝える。

「トール・ガラハウと言います。親衛隊に所属しています」

「……そう、ザビ家の方々はお元気?」

 悲しい女性だな。こんな時にまで心配とは。でも、ここでこうしていることが息子と娘の安全に直結しているから、母親としては満足なのかもしれない。でも、無理をしてでもここに二人をとどめておくべきだったと改めて思う。ジンバ・ラルはサイド3が危険だと思ったらしいが、馬鹿なことだ。却って安全なのに。サイド3にいる限り、ザビ家は彼らの安全を保障しなきゃいけない。それぐらい思いついてよさそうなものだけど。

「ええ、殺しても死なないぐらいには」

 そんな言葉は久しぶりに聞いたのだろう。アストライアは力なく笑った。

「まだお若いのに士官ですの?」

「ええ、実家が月の大富豪でして。金で地位を買ってみました。存外、自由なものです」

 窓の近くに寄り添って立つ。下を見ると、決まったパターンで歩く警護の軍人が見えた。軍帽を取り、上を見る。顔に大きな火傷の跡らしきもの。あらら、ゲルトさんまで来てらっしゃる。

「時に夫人、懐かしい人に会いたくありませんか?」

「もう、私はここから出る事は無いのよ」

 首を振った。

「薬、飲まないようにしていただけますか。出来れば微量ずつどこかにこぼしてもらいたい。私のところから何人かお世話のメイドが入っています。まず、それらが来たとき以外には絶対飲まないでください。印は……まぁ、全員似たようなピアスかイヤリングつけてますので区別簡単だと思いますけど」

「どうして?」

「微量ですが、毒が」

 アストライアは力なく笑った。

「入っていてもいなくても変わらないわよ。私、ここから出る事もない……」

「二人、ルウムにまで来ています。あなたの代わりの御遺体も御用意できますので、死んで出て行く事になります。夫人、出来れば同意してもらいたいのです。まぁ、同意なくとも実行するつもりではありますが」

 言葉を重ねたが、信じてはもらえないようだ。やっぱり連れ出すところまで行かないと信じてもらえないことを悲しく思う。もう少し信じてくれても……いや、一番近いところにいたのが陰謀好きの爺(ジンバ)にババア×2(キリシア、ローゼルシア)ときている。人間不信も仕方ないわ。

「楽しみにさせてもらうわ。こんなおばさんに親切にしてくれるのだから、うんと言わないとばちがあたりそう」

 トールは口元にのみ笑みを浮かべた。

「お任せください。真夏の夜の夢と思っていただいて結構です。まずはお体を直してください」


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 うまくチートを出せないのが悩み。戦争始まるまで我慢か……



[22507] 第05話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/20 02:35

 宇宙世紀0073年。

 トール・ガラハウ15歳の春である。現在、私がいるのはザビ家主催の夜会。美々しく着飾った男女が詰め、談笑している姿がそこら中で見られるが、あまり良い感じはしない。ある一角を避けている事が丸わかりだからだ。

 鈍い傷跡の大男、赤毛のドレス女、タキシード姿の銀髪デコ。ザビ家三兄弟である。

 私は微苦笑とため息を漏らすと、その三人に近寄った。

「これはガラハウ家のご子息。良くパーティーにいらっしゃいました」

 うわっ、本当にうちの姉さんと同じ声だよ。顔を紫色のマスクで隠してこそいないものの、どうみても20台には見えない女性、キシリア・ザビが口を開いた。色々と邪魔をさせてもらっているから、あまり受けは良くないようだ。アストライアの脱出も、ギレンに話を通していたからこそ認めてもらったが、最後まで邪魔をする事を忘れなかった女傑だ。怖い怖い。何が怖いって?思い通りにならないとわかった瞬間、すべてを吹っ飛ばそうとするんだもん。

「いやぁ、キシリア様。その節は御面倒をおかけいたしました。考えもせずに花火をぶっ放そうと考える狐のお相手はそろそろ御免こうむりたいのですけど。うちの兄さんと姉さんたちが大喜び過ぎます。傍目から見ていると相手がかわいそうでかわいそうで」

 キシリアの唇が引きつる。既にキシリア機関―――秘密警察とテロリストを足して割らない存在―――は三合会と遊撃隊相手に実行部隊が殲滅されているため、史実では起こったグラナダ市長暗殺事件やキャスバル暗殺未遂(本物のシャア・アズナブルが巻き添えを食った事件)が起こっていない。もっとも、歴史の強制力か何かは知らないが、アストライアと涙の再会を果たしたのに、キャスバルはジオン入国を決意。入学許可証に身分証明書を残らずキャスバルに奪われた本物のシャア・アズナブルは、月の連絡ターミナルでホームレスに落ち込んでいたところを保護。現在は別名のエドワウ・マスとして太洋重工デプリ回収グループで働いている。

 あれか、母親の言葉で充分だし、やっぱり子供にはショックだろうと、死去直前に撮影しておいた、いっちゃったトロツキーなジオンの姿を見せなかったのがヤバかったのだろうか。だけどなぁ、あれはトラウマものでセイラさん夢に見そうだしなぁ。地球に飛ばされてララァとあったあたりで仕掛けるのも手かもしれない。

 サイド3内部も例外ではない。アストライアをローゼルシアの死後確保していたのもキシリアだが、こちらは最終的にローゼルシア邸すべてが爆弾で吹っ飛んだ。張さん曰く、「すまん、火が強すぎた」らしいが、コロニー外壁にまで影響がありそうだったのはさすがに肝が冷えた事を記しておこう。

 現在、張兄さんとソフィー姉さんはポイント獲得を争うかのようにニュータイプ研究所に襲撃の力点を移し始めている。そのため、このごろニュースでサイド6の医療施設が襲われる報道が絶えない。頭が痛い事に、とある研究所を襲撃したところ、合計13体の受精卵を確認。既に培養が進んでおり、全員女の子で、胎児から0歳児程度まで、中には10歳児程度まで成長していた個体もあり、このまま誕生させる他は無かったなんてことがこの前あった。

 書類を確認するとエルピー・プル型の『量産型』がプロトタイプと合わせ合計12体。女性体なのは人間として安定しているのが女性で、後々薬物で調整するのが好都合だからだそうだ。そしてそのプロトタイプとしてセレイン・イクスペリ型が1体。システム・セイレーネとか冗談じゃない。

 襲撃を受け続けて人工ニュータイプの確保(この時代はまだ、デザイン・ベイビーぐらいの認識だが)に目処が立たなくなったのは良いが、その代りに既存のニュータイプの確保と彼・彼女らの機密保持が固くなってしまった。おかげでクスコ・アルやマリオン・ウェルチなどの所在が不明。さっさと確保してあげたいところだ。それに今回はっきりしたが、モノアイガンダムズまで含まれるとなると痛い子アイン・レヴィ君もどこかにいるはずだ。


「人の財布に手を突っ込むのが大好きな様ね、坊や」

「怖がりなおかげで、なんでもかんでも手を突っ込まざるを得ない人とはあんまりお付き合いしたくないのですが」

「キシリア、よせ」

 ギレンが話に割って入った。

「ガラハウ君、キシリアのお遊びの相手と言うには、少々花火が大きすぎるような気がするのだが」

「それも楽しい暇つぶしなんですが」

 ギレンは鼻で笑う。どうやら、私の行為を、結局他の有象無象と同じくザビ家の権力目当てのものらしいとでも思ったらしい。キシリアのお遊びに茶々を入れていれば、対立するギレンとの友好関係を築きやすくなるとでも思っていた、とでも考えたのだろう。

「我々はもう、友人ではないかね?」

「友人と言うなら愛称で呼びたいものです。でも、閣下。あんまり本音を表に出さず、他人に推測をさせるのは、処世術としては上手くありますが、役に立つかどうかは微妙ですよ。経験から言わせていただきますと」

 ギレンの表情が凍る。どうやら、他の違いには気づいてもらえたようだ。

 ギレン・ザビは優秀な政治家だ。彼はジオニズムに染まったジオン国民を束ねるために、ジオンを演じ続けた。コロニーに毒ガスを注入し、それを地球に落とし、自分についてくるもののみを優良種と称し、逆らうものを悪と断じ斬り捨てた。実際のところ、死の直前のジオンを見ていれば、ギレンの唱えた優生人種生存説は、ジオンの説の当然の帰結になるだろう事は簡単に推測がつく。

 どこかで似た話を聞いた事があると思っていたら、ジオンが自分をイエスになぞらえ、息子キャスバルの誕生を聖誕に擬したと言う記載を見てから、彼らは結局のところ、モーセになりそこなったのだろうと今では思うようになった。考えてみれば、ハマーンもシャアも、ギレンのなりそこないなのだ。

 そして、彼らは結局のところ偽者だ、十戒を与える神を持たないのだから。

 さらに喜劇的なのは、ダイクン派とザビ派との争いはイデオロギー上の対立のはずだろうに、『ザビ家』、『ダイクン家』などで争う王朝対立の側面が出まくっているところだ。本来なら、思想の善悪をもって対決すべきところだし、そもそもニュータイプとして革新した人類が古い血族意識に囚われるなど噴飯もいいところ。だからこそ、ギレンがジオン以上のジオニズム主義者である事が疑いをもてなくなって来ると、その批判はジオン暗殺と独裁に絞られるようになった。

「君は、其処までふかく切り込んで来るのか」

「正直なところ、あなたの理想は如何でも良いです。協力する事で、ジオン内で私が動ける事によって生ずる利益の方に興味があります」

 ギレンの表情は変わらない。

「君の利益とは何かね?」

「興味・関心を満たすこと、ですかね。知り合いも多いので、彼らの生業も確保したいところですし」

 ふと見ると、ドズルが照れくさそうな顔で壮年の紳士に話しかけているのが見えた。

「ギレン閣下、弟さんにぞんざいな口調をかましてもよろしいでしょうか?」

 ギレンの表情が訝しげになるが、うなずいた。

「ドズル閣下!ゼナ様に言いつけますよ!」

 びくりと背を伸ばすと相手をしていた紳士と共にこちらへやってきた。怒り心頭と言ったところの顔が、となりの兄の顔を見ておどけた不気味な顔に変化する。妙になよなよしい声で隣の紳士を紹介してくれた。マハラジャ・カーン少将。今度アクシズ建設の責任者として赴任するらしく、本国に残す家族の世話を申し出ていたらしい。世話。娘愛人としてよこせが世話。

「はは、冗談がきつすぎるぞ、トール」

「いえ、冗談で済めば御の字です、閣下」

 いきなりきつい言葉を飛ばしたが、実はドズル閣下との仲は悪くない。「戦争は(ry」など、色々と基本的な考えで合うところがあることがわかると、親衛隊所属にもかかわらず色々と連れ歩いてくれるので、結構軍の内部にも顔が利くようになった。勿論、秘密裏に始められているMSの開発計画で、月の大富豪出身と言う経歴を生かして性能の良い新型動力鉱石エンジンを供給してあげていることもプラスに働いている。

「紹介いただけますか、閣下」

「おう、マハラジャどの。こちらはトール・ガラハウ大尉相当官。兄貴の副官を勤めてくれている。月面『N1』出身でな。色々と月との交渉では便宜を図ってもらっているのだ」

 心労で疲れ果てているのだろうか、沈痛そうな面持ちをこちらに向けてくる。だが、相手が14,5の少年とわかると表情を緩めた。この人も人が良すぎる。背景を洗っていてわかったのだが、この人、著名な宇宙貿易商として、ジオンの『研究』に出資していたのがそもそものかかわりらしい。宇宙を航行する貿易商、しかも会社社長と言う事で、ここにいる誰よりも連邦政府の実力を承知している。

 だからこそ、友人の作ったジオンと言う国家と、巨大な連邦との間でなんとかジオンを保とうと四苦八苦する事になるし、自分の存在がダイクン派とザビ家の対立になりかねないと判断すると、娘を犠牲にすることもやむをえないと判断した。戦争のない時代の首相とかには最適の人だろうなぁと思う。ギレンも、そこを考えてアクシズに赴任させたのじゃあなかろうか。

「本日は娘たちも連れてきておりましてな。エレーネ、ハマーン。御挨拶しなさい」

 後ろに控えていた二人の女性―――一人は18歳ぐらいの、もう一人は10歳ぐらいか。小さい方の女の子がハマーン閣下だろう。これがあの有名な『萌えハマーン』かとしげしげと見つめると、こちらを見つめて笑い返してきた。いい子だなぁ。こんな子がああなるんだからやっぱりシャアは死ぬべきかな、などと考えてしまう。

「何を見ているの?宇宙?なにか爆発っぽいのがたくさん見えるよ?」

 恐ろしい子!この子、やっぱりニュータイプの素質アリまくりだ……なんて事を考えていると、即座に反応したのが紫ババア。マハラジャに近づこうと動くが、機先を制して話しかけてみた。

「二人ともおきれいですね?僕はトール・ガラハウと言います。ギレン閣下の副官なんてしていますが、やっているのは話し相手とお茶の用意がせいぜいです」
 
 その会話に望みを見つけたのだろうか、ドズルが話に割り込んできた。

「いや、こいつは頑張ってくれていてな!我が軍の……」

「ドズル!」

 ギレンが怒鳴る。そりゃそうだ。こんなところで最高機密のMSの事なんぞバラされた日には取り返しがつかなくなる。どこに連邦の耳があるかわからないのに。

 けれど、これはいい機会だ。ギレンに近づくと裾を引き、二人で話が出来る距離まで引き寄せた。ここぞとばかりにドズル、キシリアが近づくが、仕方がない。

「マハラジャ閣下はアクシズに赴任の予定でしたよね?」

「……君がそれを何処で聞いたのかは聞かないことにしておこう」

 ありがとうございます、と一礼してから続けた。

「ダイクン派を抑えるためにもマハラジャ閣下をアクシズに飛ばすのは問題ありませんが、家族を人質とするように受け止められては却って逆効果と思います。私の方で閣下の御家族を引き受けたいのですが宜しいですか?」

「それで君に何の得がある?君の事だ、何らかの目的があるのだろう?」

 喰えない人だ、本当に。提案に裏があると見抜いてくれているし、しかも外していないんだから。まぁ、いきなり現れた軍人の配属先を知った上でこんな提案していれば当然そう思うだろうが。さて、なんてごまかそう。

「キシリア閣下に一撃くわえたいのが本音です。あの人、このごろニュータイプだと目をつけた人間を片っ端から研究所送りにしてヤバい研究をかましてくれているので、一部問題になっているんですよ。内務省から上がっていませんか?最近、マハルやタイガーバウムといった貧民が多いコロニーで、行方不明者が多発している件です」

「あれがキシリアのせいだと?」

 私はうなずいた。

「ええ、もっとも、デコイやダミーも含んでいますから結構な件数になります。内務省からの報告の数が、閣下が問題になるほどあがっていないようでしたら……内務省にキシリア閣下のシンパがいる事になります」

 ギレンはため息を吐いた。

「まだ不足だな。内務省の件など、とうに承知しているはずだろう?今になって君がキシリアに手を出す理由にはならん。マハラジャの家族になにか思い入れでもあるのか?」

「否定はしません。かわいいですし。ただ、うちの孤児院が数回襲撃未遂を受けているので、これを機会に、とも考えています。実はアンネ姉さんとシーマ姉さんからの突き上げがありまして」

 うそではない。ただ、この時キシリア機関の相手をしたのがホテル・モスクワ遊撃隊ではなく三合会の方々であるため穏当だっただけだ。遊撃隊を投入していたら恐ろしい事態になっていたに違いない。その上、最近は孤児院のあぶれものやシーマ姉さんの運送会社が元となって結成されたPMCガラハウ社(史実のシーマ艦隊)までそれに加わった。これまで活動範囲ではなかった宇宙空間や港湾部でのドンパチまで対応できる。そして孤児院出身のシーマ姉さんがこれを聞いたらどういうことになることやら。

 ギレンは腹を揺らした。この人にしては珍しい。

「君にも苦手なものがあるか。いいだろう。だが、いくらかの面で見返りは期待したい」

「具体的には?」

「02がエンジンの小型化に手間取っている。君のところでも考えてもらいたい。それに、あまりやりすぎるな。ニュータイプはキシリアのおもちゃにしておけ。あ奴に面倒な事を起こされては適わん。それに、防諜をしているのはあ奴だ」

 うなずいた。だが、これでは今度はこちらが支払いすぎだ。しかし怖いなこの人。ニュータイプ関連での争いって見抜いているよ。

「じゃあ、後一つ」

「言ってみたまえ」

「マハラジャ閣下の下にはユーリ・ケラーネ中佐を」

 ギレンはうなずいた。よし、これでアクシズでの反乱フラグが消えそうだ。エンツォの奴には地上で苦労してもらおう。さて、ここでの用事は済んだ。次の仕事に向かおう。




 移動するエレカの中でここ数年の自分を改めて振り返ってみた。
 
 第二次コロニー建設計画の縮小は行われたが、計画そのものは継続し、0070年、サイド7に4基のコロニーを置くことに成功している。続く第3次コロニー建設計画は、サイド7の拡張と共に、火星、木星に居住用コロニーを建設する事で合意している。

 史実は、コロニーの建設ラッシュで生じていたバブルがサイド3の債務放棄要求ではじけたために計画は縮小・停止されたのだが、この歴史では月面極冠都市(0071年に恒久都市『N2』~『N4』が完成したため、名称は『Nシスターズ』に変更)が出資を行っているため、規模こそ縮小されたが継続している。この規模縮小は、60年代後半から開始された、連邦宇宙軍整備計画に予算を取られたためだ。このため、だんだんと景気は冷え込んできている。

 MSの開発は史実どおりに進み、現在、MS-02が開発中だが、やはりエンジンの大きさと出力の問題で開発が難航している。核融合炉を搭載した場合、エンジンサイズが巨大になりすぎ、動力鉱石エンジンを搭載した場合は出力が所定の値を満たさないのだ。ギレンの今回の申し出は、ザクの出力を出せるエンジンを供給するいい機会になるだろう。

 火星のテラフォーミング技術は、やはり学会からの批判にさらされたが、なんとか実用の目処がつけられそうだ。惑星の核に対するダイナモの発動こそムリだが、火星の住環境を整え、月面と同じく恒久都市を建設するには銃分らしい。こうした、テラフォーミグに対する熱の高まり具合は、準備段階としてのコントリズムに対する支持にもなってきており、各サイドの自治共和国化は意外に早く済みそうだ。

 これらの事態に伴い、マーズィムの主張する通りにサイド3の経済も回復しつつある。工業用コロニーの設置予定がサイド7にされたものの、現状で完結した無重力環境で工業生産を行えるのはサイド3の値がやはり大きい。サイド3は月面との交渉で得た資源を、これら工業製品の生産に振り分けて貿易収支を黒字化した事で、民生が一時的に安定化し、特に他サイドとの緊張関係に終止符が打たれたことはいい変化だった。

 しかし、最近、貿易収支が黒字化したにもかかわらず、民生が次第に傾いてきている。特に問題となっているのは民生用品の価格が少しずつ上がっているところだ。これはつまり、本来民生用品に用いられるはずの資源が別の用途に用いられている事を示唆している。

 まだムサイやチベの設計が終わっていないはずなのに、ダーク・コロニーでもつかっているのか?MSの生産用設備の拡大は確認しているし、今は低出力ジェネレーターを装備したモビルワーカーMW-01、02の生産が開始されたと言うが、月面が購入しているから収支は出しているはずなのに……

 ゲルトたちに頼んでダーク・コロニーに潜入してもらう必要があるかもしれないな。こういったときに金属と融合する事で情報を得たり、強化や支配を行えるブラスレイターは有用だよね。ノーマルスーツ無しで宇宙に出れるところもいい。

 そんなことを考えているうちに車が目的地についたようだ。





「失礼します、トール・ガラハウ大尉相当官。参りました」

「良く来られた。好きなところに掛けたまえ」

 老年の男性、デギン・ソド・ザビ公王は言った。

「あの3人の様子は如何だね」

「いつもどおりかと。ドズル閣下とキシリア閣下はマハラジャ閣下に御執心のようです」

 デギンは荒々しく鼻を鳴らした。

「あのバカどもめ。下手にマハラジャに手を出せばどうなる事かぐらい想像がつこうに」
 
「一番落ち着いておられたのはギレン閣下ですよ」

「あいつの場合、手を出さん方が却って不気味だ。手を出さんことそのものが手を出している事になる。まったく、独裁者が不気味に薄ら笑いを浮かべながら立っていればあらぬ事を考える奴が出てくるぐらい想像できんのか」

「そこのところも承知の上でやっていると思われますが」

「なおさら性質が悪い。デラーズなど狂信に近いのだぞ?」
 
 なるほど。やはりこの人、良く見ていらっしゃる。息子二人に娘一人がどれもタイプの違う暴走機関車ともなれば嫌でもそうならざるを得ない。それに、キャスバルに焚き付けられたとはいえ、ガルマにもその気があるし。

 デギンはそんな私の胸中を別の意味に受け取ったようだ。

「やはり、起こるか」

「ええ、間違いなく」

 私は立つと窓際によった。窓と言ってもスクリーンで、画面上には大きく月の裏側が映し出されている。月の裏側にあるL2ポイントからは、月にさえぎられて地球は一年に2ヶ月しか見えない。

「開発中の03が実用段階に達し、改良型が出来、数量が確保できれば。必ず」 




[22507] 第06話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/21 09:52

 宇宙世紀0078年2月。開戦の一年前である。
 本来ならこの年、ミノフスキー博士が連邦への亡命を企てて失敗するのだが、この歴史ではそんな事はなく、ミノフスキー博士が無事、連邦(というか、フォン・ブラウン市のアナハイム社へ)に亡命しました。

 キシリア機関をいじめすぎたおかげで、どうやらキシリア機関、亡命計画を入手するのが遅れてしまったようで、月で起こるはずだったシャア(ジオンの軍籍簿にはこの名前で登録されているので以後、この名前で)と黒い三連星VS連邦のプロトガンキャノン隊との戦闘は起こっていません。けれど、連邦に入っているシトレ大将からの連絡によると、ア・バオア・クー宙域でのMS-04の試験飛行の映像だけではなく、様々な映像データ(グフまであった)が、やっぱり諜報部によって漏れているとの事。バランスを取るのが難しくなってくる可能性が出てきました。

 ジオンの外交政策はマーズィムの目玉である火星のテラフォーミングが、第一段階の太陽光反射ミラーの設営および、技術者の居住コロニー設置工事に入った事でなぜか安定化しています。どうやら、ジオニズムはともかくコントリズムの提唱国として、貴重な無重力工業製品の産出サイドとしてジオンの立場が地球圏の中で安定化して来た事によるものらしく、完全に連邦よりなサイド2ハッテとはまだ険悪ですが、それ以外のサイドとは(特に歴史どおりサイド6とは)友好関係が生まれてきました。

 これを受けてギレン閣下は優生人類生存説の発表を控えてくれました。来るべき戦争においての兵員供給源として、友好的なサイドからの義勇兵を受け入れる準備を命令しています。おかげで、それら義勇兵の訓練を担当する事になったデラーズ大佐の親衛第二艦隊はおおわらわです。

 かくいう私はといいますと、年齢が20になり、MSの操縦もベテラン・パイロット並にこなせるようになった事で、ギレン親衛隊のMS部隊の隊長を拝命しました。ギレン閣下いわく、「前線に出る事は無いが、新型MSの戦力化を優先して行え」との事でした。

 目前に迫った一年戦争を前にしたジオン公国軍の戦力は、史実と比べて後方戦力が充実化してはいますが、主力艦艇であるグワジン、ザンジバル、ムサイ、チベなどの各艦はおおよそ史実どおりの戦力です。これは、戦力の拡充を行えなかったというよりも、これらの艦艇を格納していたダーク・コロニーの許容量の問題でした。

 けれど、これらの戦闘艦艇を支援する輸送船舶の方はかなり層が厚くなっています。一年戦争時、これらの支援艦艇は合計208隻、パプワ級が80隻ほど、パゾク級が100隻ほど、他がヨーツンヘイムに代表される貨客船改装型でしたが、これにくわえて箱型輸送船(準コロンブス級)が50隻ほど加わっています。

 MSの方は、MS-04が予定通りツィマッド社のEMS-04ヅダとのトライアルに勝利しました。改良発展型のMS-05、ザクⅠが公国軍制式MSとして生産されていましたが、昨年から改良型のザクⅡへと生産の主力が変更されています。

 さて、ジオン軍のMS生産が開始された事で、私たちの勢力もそろそろ本格的な戦争参加準備を整えるべく、戦力の整備を開始しています。親衛隊第4大隊が私、トール・ガラハウ中佐の率いる部隊ですが、ギレン閣下の言うとおり、この部隊は完全に新型MSの試験運用部隊として用いる事にしました。

 具体的には第一中隊にプロトタイプグフ、プロトタイプドムを配備。コロニー内に設営した地球環境そのままの演習場で実験を行い、ここでの実験結果はジオニック、ツィマッド両社にフィードバックされます。特にペイロードが多く発展の余地があるドムは、宇宙空間運用型(リック・ドム)が既に試験段階です。残り二個中隊ではザクⅡの武装強化案を現在進めています。



 第06話


 あまり、技術的な発展を無視したMS投入をして戦争を混乱させたくない、というのが本音です。しかし、目の前に広がる『N1』地下の開発ブロックでは、現在の技術段階を考えると恐ろしい形の部隊が出来つつあります。

「中佐!」

 声をかけてきたのはアサギ・コードウェル少尉。既にギレン閣下から「親衛隊の第4大隊とお前の私兵(PMCガラハウ社)は好きにして良い」、というお墨付きも戴いていますし、連邦軍の作戦本部長にまで昇進したシトレ大将閣下からは、第17独立部隊という名前で軍籍を頂きました。混乱するので、両軍共に階級は同じと言い渡してあります。

「どうしました?アサギさん」

「プラズマ・リアクターの出力向上に成功しました!これで、ゲシュペンストシリーズはすべて再現可能です!ご機嫌に動いてくれるMSですよ!」

 MSではなくPTなんですがね。こちらもうれしくなってくるくらい、明るい声。やっぱりこのアストレイ三人娘には癒される気持ちがします。なでなでもふもふするとセクハラですが。技術者兼パイロットで、しかもそんなレアな組み合わせを持つ人が三人いるのは、正直とても有難い。この3人に扱えるMSということは、当然、訓練次第でオールドタイプも戦果を挙げられるMSということになります。開発に際しても、視点の持ち方がそれぞれ異なりますから問題点の洗い出しも早い。三人寄れば文殊の知恵、とは良く言ったものです。

 真面目な話。ジオニズム最大の欠陥と私が考えているニュータイプの特別視を排除するためには、ニュータイプをオールドタイプが打ち破る必要がある、と思っています。確かに人の革新というものは非常に魅力的な考え方ですが、それは内面や思想の段階で成されるべきで、決して敵MSの撃墜で証明されてはならないからです。それでは、ニュータイプに対する認識は、カーディアス・ビストの言うとおり、単なる撃墜王でしかありません。

 かといって、ニュータイプを打ち破ったのが別のニュータイプや強化人間、果てはデザインベイビー・コーディネイター、別の生き物イノベイド、被爆者イノベイターではもっとたまりません。先天的にそうなるのは論外ですし、後天的にそうなるのは改造人間と変わりません。「特殊な力を持っている者」を否定するためには、「持ってない者」がやるしかないのです。とかなんとか考えたところで、結局のところ人外設定なんて付け加えるのがむかついていただけだったと思いなおし、反省しました。ちくしょう。チートならチートと言い切ったほうがすっきりするのに。


 ああ、だからみんなGガンダムは好きなんだ。


 さてそんなわけで、誰にでも汎用可能なもの―――技術で、しかも人体に手をくわえないで行う制限を自分に課してみました。これも縛りプレイ?まぁ、それはさておき。

 まず機体の高性能化が必要になるわけですが、単純にMSでそれをやろうとなると技術的に模倣されかねませんし、鹵獲された場合、ある程度の道筋をつけてしまうことになります。ある程度の道筋をMSでつけてしまえば、最悪、一年戦争はともかく、グリプスやネオジオン抗争での流れが読めなくなります。気づいたらティターンズがジェガン使い、エゥーゴがガンイージ、ネオ・ジオンがバタラだとぅ!?なんて目も当てられません。

 となると、MSとは別系統の技術でそれを実現する必要があるため、私が手を出したのがPT、パーソナルトルーパーでした。

 ある程度までMSと同じ技術(エンジン周りが核融合炉)であるものの、介入を行い、特にニュータイプ同士の戦闘に割り込むとなると、MSとは隔絶した性能、別個の開発経路が必要になります。これをあくまでMSという枠内でやろうとすれば、最低限、スモークラスの機体を投入する必要がありますが、縮退炉なんて渡せません。

 ということで、私たちの部隊―――月面に本拠地がありますのでルナ・ジェネレーションズ(略称LG)と名づけてみました。液化ガスかよ、とか言う突っ込みは無しの方向で―――は、PTを運用することとしました。ゲシュペンストでも、運用環境の広さや取りまわし、それに「究極キック」が可能な運動・装甲などの性能を考えれば、グリプス戦あたりまで活躍できると考えています。

 ただ、顔がジム系統なので連邦側での運用しか出来ませんが……ジオン側でやるときは如何しよう?

 そのため、アサギさんの報告で次にやる事はジオン側で介入する際に用いるPTの開発、ということになりました。あ、ジュリさん?なんでしょう。

「中佐、宜しいですか?連邦のヤン・ウェンリー大佐がいらっしゃいましたが……」

「あ、すいません。時間ですね」

 忙しくなってきました。ちなみに、彼女ら三人を最初に呼んだ動機の一つが、眼鏡っ子好きなのはここだけの秘密です。考えてみたら眼鏡キャラって使える人多くないか。うん、参考にしよう。



「すいません、遅れました」

「いや、好きにさせてもらっています」

 副官のグリーンヒル中尉と共に、紅茶を楽しんでいたらしい魔術師が言った。グリーンヒル中尉の表情を見るに、どうやら、お邪魔をしてしまったらしい。

「こちらの工廠からのサラミス級の受け取りがそろそろ始まりますので、それにあわせてきましたが、どうしました?」

「いえ、連邦軍が考えるジオン軍の迎撃作戦がどうなっているかを確認したかったのです。さすがに連邦の目もありますので、シトレ閣下との電話だけではどうにも行きませんので」

 なるほど、と魔術師はうなずいた。

「現在、地球のジャブロー工廠などで建造・格納されているサラミス、マゼラン両級には90mm対空砲の増設工事が始まっていますよ。連邦軍の頭の固い人たちも、既にある戦訓を使う分には文句が無いようですし」

「じゃあ、MSの認識も?」

「ええ、ゴップ大将でしたら、専門は軍政や兵站ですので難しかったと思いますが、シトレ閣下の音頭とりなので、ビュコック中将から『占領の出来る飛行機』やら『歩兵+戦闘機』なんて言葉を出してもらいました。一部パトロール艦隊ではコンバット・ボックス陣形の訓練も始まっていますから、被害は抑えられると思いますが、レーダーが使用不能なのはやはり、まずいですね。ジオンの状況は如何でしょう」

 私はうなずいて、親衛隊士官として知る情報を開陳した。

「公国軍のムサイですが、オプション装備として艦体後方のスペースに、対空砲付のMSの追加搭載用カーゴが増設できるようになっています。可動式の90mm対空砲が両舷12基、MSの搭載量は8機増えます。MSの生産量自体は来年までに月産400機程度にまで増えるでしょうし、極冠都市連合は占領を避けるために部品単位、もしくは政治的にまずければ完品で大体月に50-100機は供出させられると思います。グラナダが占領下に置かれれば、数はやはり増えます」

 魔術師はうなずいた。

「難しいですね。コロニー落とし、仕掛けますか?」

「恐らく。サイド2自治政府の外交態度が改まらない限りは歴史どおりに行われると思います。これについては如何し様もありませんでした。せめて、サイド1、4、5が最初の攻撃目標から外されたことと、これら3サイドの自治政府が中立宣言を出しますので、戦域と人的被害が制限できるのは有難いところです」

「サイド6はどうでしょう。サイド5は連邦側とジオン側に真っ二つに分かれていますが」

「正直、ルウム戦役は歴史どおり起こると思います。シトレ閣下が第一軌道艦隊の増強をしましたし、新型砲艦の配備を進めましたから、ジャブローから打ち上げられる艦艇と合わせれば、ギリギリで阻止、もしくは一部構造体の落下になると思います。落下場所が問題ですが……。ただ、サイド建設の際に、コロニー8基単位で小行政区をつくるようにさせましたから、最悪、十数基ほどの損害でどうにかなると思っています。サイド6は?」

 ええと、と考えるそぶりを見せ、数秒逡巡したのちに魔術師は困ったようにフレデリカを見た。ため息と共にフレデリカが報告を開始する。

「ランク政権は当初の予定通り、もし開戦するなら開戦と同時に中立を宣言する旨、連邦に通達がありました。恐らくジオン側にも」

「ええ、来ています」

 やはり、サイド2に対する宣伝工作を強める必要があるな。小行政区ごとに仕掛けていって、首都島行政区を孤立させるような形に持っていけば被害が抑えられる可能性がある。その後いくつか確認事項をチェックした後、ヤン大佐は予定通り、『Nシスターズ』を離れました。






「坊ちゃん!」

 魔術師との話し合いから部屋を出ると、けたたましい野太い声が私を呼んだ。デトローフ・コッセル中尉だ。

「中尉……流石にこの年で坊ちゃんは……」

「あ、すいやせん坊ちゃん」

 謝るが、直っていない。

「どうしました?」

「いえ、艦隊の奴らを代表してお礼を言ってこいといわれやして。ほら、新型の」

 私はああ、とうなずいた。PMCガラハウ社は先月、正式にジオン軍へと組み入れられ、第二艦隊のデラーズ大佐の下で独立部隊となっている。編成はザンジバル級「マレーネ・ディートリッヒ」およびムサイ級3。PMC出身者たちは「ジオン海兵隊」という便宜的な名前を与えられているが、やはり傭兵上がりだけあって礼儀だとかには疎い。そこがデラーズ大佐はともかくとしても、その下の幕僚たちと仲が悪い結果となっている。

 扱いに困ったらしいデラーズ大佐が相談を持ちかけてきたので、独立部隊編成にして分けて運用する事を提案してみた。特に、戦争が始まれば扱いに苦慮するだろう月面自治都市群の駐留・警備の戦力として用い、私の第4大隊も使わせてもらうことを話すと喜んでくれた。よほど困っていたのだろう。けど大佐、それってこっちも望むところなんですよ。

 表情は硬いし厳格であるが、それ以外のところではかなりデラーズ大佐は人気がある。ジオン軍創設以前、ムンゾ自治共和国警備隊以来の軍人で、民兵たちをまとめてきた手腕は確かだ。ギレン閣下に対する狂信ぶりは流石にこまるが、それだけが欠点なら、所詮民兵上がりのジオン軍では出色の、軍人らしい軍人と言える。

「私の第4大隊も居候させてもらいます。サイド3に戻り次第、ムサイにはカーゴ連結作業に入ってもらいますのでよろしく御願いします」

 ムサイ級の欠点と考えている対空砲皆無という状況を変えるため、艦体後部、両舷のエンジンの間。Ms出撃ハッチの下のスペースに、対空砲およびMS格納庫となるカーゴを設計してみました。これで、MSが4機しか搭載できず、対空砲の無さを補おうと考えたのです。長距離航行に備えた推進剤タンクが格納スペースと選択できますので、ドズル閣下からは喜ばれました。

「わかりやした!シーマ様も喜びます!」

 そう、この決定を下したときのシーマ姉さんのあの勝ち誇った顔と来たら!テキサス・コロニーからキシリア機関相手に三合会と交代でサイド3に戻ったソフィー姉さんのやることが今から怖い。髪を切り落としてもろにアフガン時代演出していらっしゃるから相手が悲惨極まりない。姉さん、やりすぎてジオンの防諜までどうにかしないでください。まだキシリアさんには舞台があるんですから。




 自室に戻った私のところに、地球に派遣した部隊からの報告が入っていた。

「トーニェィ、確保したよ。結構暴れてくれたけどさ」

 モニターに映るのは遊撃隊の面々。そしてそれを率いるバラライカ女史だ。

「ソフィーヤ・ガラハウ少佐。どうでしたか?」

「ジオンに戻る事は同意した。ビデオは見せたけれど、反応は薄いね。元々父親に対しちゃ嫌ってるらしい……あんなビデオ見せて効果あるのかい?」

 そうだった。この時点でのシャアはララァとあったとはいえ、まだニュータイプに対する認識が固まっていない。父親の人品性格をともかくとして、思想の方を理想化しているから、人品性格疑わせるのは却って逆効果だったかもしれないな。本物のシャアを殺したことなどなんとも思っていないし。

 アレか、グリプス戦役の時のシャアの考え方は、ララァ、ナタリー、ハマーンと続けざまに女の子をノックアウトして言った経験の賜物とか言う気か。なんて迷惑な能力。女食って能力上げるとかどこの鬼畜王だよ。しかし、これまでの経緯を考えるとあの男が本当の意味で変わるためには、妊娠していたナタリー中尉の死が必要と言うことになる。

「……仕方ありませんね。効果あるかと思ったんですけど。その様子だと、私たちの勢力に関する情報を与えただけ失敗だったかもしれません。申し訳ありません」

 ナタリー云々はともかく、流石に原作の中でも重要キャラ。そうそうこちらの思惑通りには動いてくれないか。こりゃ、下手に原作の流れに手を出すこと考えるよりは、原作キャラとのかかわりが低い事件を中心に介入していって、介入せざるを得ない事件だけに限定していった方が、主目的の人口減抑制にはいいかもしれない。なんのかんのいって、シャアもブリティッシュ作戦やルウム戦役では虐殺をしていないわけだし。

 それに、アストライアの死がザビ家への憎悪の引き金になった、じゃあアストライアを助けて変わるかと言えば、ジオンの後継者を以て任じる彼の性格からすると、そもそも自分たちが身分を変え、当然受けるべき処遇から外されている時点で変わりようが無いのかもしれない。下手に才能あって頭張れる分、本当の意味で泥啜った経験が無いと。

 ……うわぁ。困った。こちらの体制整うまで、下手に関わるべきじゃないな。

「ありがとうございました。ソフィー姉さん。帰還してください。あ、インド人の少女はシャアさんと一緒ですか?」

「みたいだね。今、うちの奴らが宇宙港まで警備してる」

「了解しました。下手な監視は見破られますから、別途こちらで用意します。ご苦労様でした」





 色々様々な勢力が、これから始まる戦争で最大限の利益を得ようと蠢く中。果たして自分の取った行動が利益をもたらすものかを念じつつ―――未来を知ってい介入できるからとはいえ、その介入が自分の思うような結果をもたらすと決して言えないところがもどかしいですが―――

 宇宙世紀0079年1月3日。

「父上、本日7時20分を以て、我がジオン軍は地球連邦政府に対して宣戦を布告いたします。既にドズル指揮下の艦隊は、攻撃を仕掛ける手はずを整えております」

 かつて、アニメで何度も聞いた事があるセリフ。実際に聞くとやはり違う。ただ、聞いた事があるためか、事前に考えていたほど緊張する事は無かった。隣に立つセシリア・アイリーン秘書官長が涼しい顔をしているのが不思議だった。

 ギレンの野望でのムービーどおりのセリフが延々と続く中、色々と変更点が出ていることに胸をなでおろす。

 グラナダを占領したキシリアは、占領軍を残したままサイド2首都行政区を確保。確保したコロニーの移送準備を進める。サイド3、月近辺のパトロール艦隊を撃滅したドズル艦隊はサイド2でキシリア艦隊と合流。連邦軍の反撃に備える。

 既にサイド1、4、5、6からは中立を宣言する旨が届き、連邦軍の行動が許容範囲内であればこちらから攻撃を仕掛ける事はない。宇宙での優位が確保できた段階で、自治政府と交渉を開始してこちら側に引き込む。

 こうするのが一番良い、というところまで準備を完了して尚、この言葉がギレンから出るまで安心できなかった。まったく、不機嫌で無口な冷たい独裁者と言うものは本当に恐ろしい。常識が通用しない可能性もあるし、原作で無慈悲に虐殺をしているのだからなおさらだ。

 デギン公王は提出された作戦案に了承を与えた。






「地球連邦政府ならびに、地球に住むすべての者たちに告げる」

 宣戦布告演説が、始まった。



[22507] 第07話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/23 23:30
 わかっていても、やはり辛い。

 死んだ人間の数が歴史どおりとは段違いであっても、やはり眼前の光景は我慢ならない。

 コロニーに対して毒ガスを注入し、目の前で1000万の人間が死ぬ光景をガラス越しに見ているなど。

「予定通りに行けばあと3時間ほどでブースターの設置作業が終了します。」

 ここは戦艦グワデンの艦橋。司令席にはデラーズ少将が、脇の参謀長用の席に着かせてもらっているのが私、トール・ガラハウ大佐。別に親衛隊の参謀長になった訳ではないが、以前まで参謀長だったノイエン・ビッター大佐が昇進の上、第3突撃機動師団長になったため、空席のままなのだ。ここのところ、中堅士官以上の人材が少ない、ジオン軍の無理が出ている。

 目の前の虐殺の光景に嫌気がさしてきたため、ため息を吐いてタバコをくわえようと(すいません、私はヘビー・スモーカー)したら、後ろでジオン軍での副官を勤めている、ケン・ビーダーシュタット中尉が咳払いをした。いかんいかん。ここは「マレーネ・ディートリッヒ」じゃなかった。

「ガラハウ大佐、不謹慎だぞ」

「申し訳ありません、少将。少し精神を落ち着けようかと」

 予定通りならこのブースター設置作業はキシリアの管轄だったはずだ。それが彼女の部隊がいないため、親衛隊がこの作業を行う手はずとなっている。まったくあのオバハンは。ブースターの輸送船だけ先行とか何を考えているんだか。権力闘争は戦線が安定してからにしろと。

 デラーズはため息を吐いた。どうやら、大佐といってもまだ若いため、いくらか割り引いて考えてくれたようだ。場を和ませるために従卒にコーヒーの手配を命じ、私にもタバコをゆるすという意思表示のために、葉巻をわざわざくわえてくれた。細葉巻が良く似合う。

「大佐、連邦軍はどのように動くと思う」

「サイド2宙域での戦闘はないと考えて宜しいでしょう。現在、被害は首都島行政区のみでとどまっていますし、こちら側から戦火を拡大させない限り、大丈夫かと。ティアンムの第4艦隊は、恐らくレビルの第一連合艦隊、ビュコックの第二軌道艦隊との合流を考えるでしょう」

 視線で続きを促してくる。

「我々親衛隊はブースター設置作業を続け、先行して航路確保に当たっているガラハウ少佐の第4大隊にコロニーを引き渡すことを考えていれば良いと思います。ただ、他行政区所属コロニーにいる連邦の駐留部隊による、散発的な攻撃がないとは言い切れません。ガトー中尉始め、各小隊には警戒態勢を継続するよう命令を。ただ、推進剤の量もありますので、2交代制を」

「うむ。それが妥当だろうな」

 史実ではドズル指揮下の宇宙攻撃軍第302哨戒中隊隊長だったガトーは、所属をこの作戦では臨時に親衛隊に移し、グワデンのMS中隊長を務めている。中隊長なのに階級が中尉なところも、やはり士官不足の面が激しい。親衛隊は新型の高機動型ザクⅡの優先配備をさせていて、中でも第4大隊は試験結果もあって推進剤タンクを増設した(ゲルググMと同型のタンクを増設)R-1B型の配備をしている、ということになっている(実際は配備されたザクⅡにRP使ってでっち上げた)。懸念された稼働時間の減少がなくなっているが、Gのかかる時間が長時間化する事による疲労の面はどうしようもない。

「私が懸念しているのはむしろ、キシリア閣下の部隊が間に合うかどうかですが、何か連絡はありましたか?ギレン閣下はグラナダの制圧にとどめるよう命令されておりましたが、いじめすぎたので命令に従うか微妙なんですが」

 その言葉にデラーズを始めとした親衛隊士官が苦笑を浮かべる。目の前にいる男とキシリアの不仲は、ザビ家兄弟間のそれよりも強く激しいという風評が立っており(それは充分以上に事実だったが)、この時点で、本来キシリアの軍となるはずの突撃機動軍が編成されておらず、本土防衛軍第3、第4攻撃師団で編成される突撃第一軍団のみが彼女の戦力となっているのも、この男のおかげだともっぱらのうわさだった。

 その上、階級が少将である事、ジオン公国、宇宙攻撃軍の司令であるドズルが中将で、作戦の成否によっては大将になるかもしれないことも相俟って、史実よりもキシリアの地位は相対的に低下しており、もし緒戦で地球連邦に講和を押し付けられなかった場合、編成が予定されている地球攻撃軍の司令の地位を狙っている、とさらにうわさが派手になる始末だ。このうわさは既にデギン公王の耳にも達しており、地球連邦との講和にキシリアが何らかの妨害を行う可能性を示唆する将官も少なくない。

 もっとも、キシリアの地位を低下させたと言う事実は私にとっては有利に働いた。親衛隊での地歩を固める際にキシリアと仲が悪い事は、これ以上ないほど、親衛隊士官たちからの好意(そして宇宙攻撃軍内のギレン・ドズルに近い者たちからのそれも)を獲得することに役立った。シーマ姉さんの部隊の行儀の悪さなど何処吹く風だ。却って、扱いの難しい海兵隊を良く抑えていると高評価が出る始末。

 まぁ、そのおかげか扱いに困る出自の士官たちを押し付けられたり、キシリアの派閥からは蛇蝎のごとく忌み嫌われたし、機会あれば暗殺・失脚させてやろうと狙われているし、内偵の結果、キシリア直属の屍喰鬼隊が増強されているらしいとのこともわかっている。なかなか上手くいかないものだ。あのババア、絶対にコンティ大尉あたりをおくってきそうだな。

「心配はなかろう。月面での攻勢を強めて泥沼に嵌ることなぞ望んではおらんだろうし、月面までもが早々に中立を宣言した手前、下手にフォン・ブラウンやNシスターズに手を出せば、戦争継続上困る事になる。むしろ、月面に地歩を得た事で月面の利権を一手にした方が良い」

 あらら、この人ギレン至上主義者のテロリスト予備軍だと思っていたら意外に聡い。まぁ、でなければ重用されるはずもないか。

「私もそう思いますが、如何せん、読めません。ヒス起こす可能性もありますし」

「ふふ、大佐は心配性だな。しかし懸念はもっともだ。月面を一手に握る事の表面的な利益に惑わされないことを願う。いや……むしろ、Nシスターズには大佐の第4大隊が早々に駐留を決めたはずだろう。ギレン閣下に今の時点で下手に手を出すとは考えにくいな。問題でもあるのかね?」

 うわっ。この人本当に有能だ。あんまりNシスターズとの関係を探られたくないんだけどなぁ。

「キシリア閣下がサイド6を中立化させて、連邦との水面下のつながりを探しているのと同様、対抗手段が必要ですから。私はNシスターズを使おうと思っています。デラーズ閣下にもご懸念あると思いますが……」

 デラーズはうなずいた。

「うむ。奇麗事だけでは戦えんからな。大佐の手腕に期待する」

「ありがとうございます。一見ジオンの不利に動くように見えても、背景を考えてくだされば有難いです」



 第07話


「ままならんな」

 衛星軌道上、ジオン軍の進めるコロニー落としの落着阻止限界点ちかくに集結した連邦宇宙軍第4艦隊の旗艦「タイタン」の艦橋でマクファティ・ティアンム中将はそう、つぶやいた。

「ここまでシトレ閣下の言う通りに進むとは、な」

 サイド2パトロール艦隊から命からがら逃れてきた高速哨戒艇が伝えた、サイド2攻撃の状況を伝える映像を見つつ、ティアンムは自分の―――連邦軍のおかれた立場の危うさをいまさらながら実感する。

 レーダーや電子機器を無効化するミノフスキー粒子の存在。

 ミノフスキー粒子散布下で絶大な攻撃力を発揮する機動兵器、MSの活躍。

 他方にあり、我が方にない。新兵器とは存在それだけで優位、劣位を決定する。

「我々の置かれた立場は第二次世界大戦のイギリスか、ふん。ビュコック提督も言ってくれる」

 自分を教官として鍛えてくれた古参兵あがりの将官。あの人のいう内容は、経験して来たものの長さに比例―――いや、比例を遥かに超えて深い。国力に劣る勢力が一気呵成に勝敗を決しようとするなら、必ず新兵器と大量破壊兵器に手を出す。否定した自分の馬鹿さ加減が今思うと恨めしい。

 大量破壊兵器としてまず出てくるのが核だと思いますが、運搬など不可能でしょう?ミサイルを用いるならイージスシステムで撃墜される。航空機を使うなら、運搬途中で撃墜すればいいじゃないか。ゴップ大将の批判を、彼は一言で切り捨てた。

「ルナツー落せば解決するじゃろう」

 現実的にルナツーは連邦軍の根拠地で、これを地球上に落下させることはムリだ。しかし、ジオン軍は工業用コロニーのための資源用に、アステロイド・ベルトから多数の岩塊を運搬してきている。その一つを地球に向ければ良い。
 
 言われるまで誰も気がつかなかったと言うのが不思議なくらいに手軽な大量破壊兵器だった。充分な加速のついたそれは、核ミサイルや戦艦のビーム砲による速度減衰を無視して尚、その運動エネルギーだけで大気圏を突破しうる。そうすれば、どこに落ちても大被害は確実だ。

 地表に落ちれば落着の衝撃で巻き上がった土砂が大気圏を覆いつくし、太陽光をさえぎって地球は寒冷化する。地球上で行われている農業は大被害を受けるだろう。特に、先進諸国で農業を基幹産業とする北米・欧州・オーストラリア、そして中国とロシアの被害は確実だ。

 海に落ちれば落ちたで、北大西洋に落下した場合は工業の中心都市が連なる北米東海岸と欧州が被害を受け、戦力の拡充だけでなく民生にまで壊滅的な被害が生じる。これが太平洋に移っても、日本、オーストラリア、アメリカ西海岸と同じような被害が生ずるのだ。

 一番いいのは政情不安定で発展が宇宙世紀になっても遅れている、大西洋南部に落下しての、南米、アフリカに対する被害。しかし、何もしないでこれを求めるのは業腹だ。落着するコロニーの軌道を変えるため、シトレ本部長は艦政本部に命令して特務砲艦「ユグドラシル」級の建造を命令していた。ジャブローで建造されているそれが間に合うかどうかは、現状、かなり微妙なところなのだ。

「閣下、ジャブローのシトレ大将から連絡。レビル中将の第一連合艦隊は予定通り出航の見込み。砲艦については2隻、出撃可能との事です」

「核ミサイルの用意はどうなっている」

「レビル中将の指揮下、第2戦隊のワッケイン准将の部隊に搭載とのことです。艦隊戦には出すな、と」

 ティアンムはうなずいた。

「第一連合艦隊と私の第4艦隊が攻撃。もうすぐ中立を宣言した4サイドからのパトロール艦隊を糾合して、ビュコック中将が第二軌道艦隊にそれらを臨時編入するはずだったな。コンバットボックスによる防空はビュコック中将にお任せするとしよう。ああ、空母部隊はビュコック中将のところのヤン准将に預けろ」

 さて、吉と出るか凶と出るか。叶う事なら吉と出てほしいものだが、な。あの艦の性能が評判どおりである事を祈ろう。

 特務砲艦「ユグドラシル」。歴史上、同タイプの砲艦は、ジオン軍において「ヨルムンガンド」と称されたそれである。本来ならばこの時、親衛隊の指揮下に配されている第603技術試験隊によって作戦に参加する予定のそれは、キシリア少将の政治力低下と共にダミー・プロジェクトとしての役割を否定され、実験データはグラナダ、Nシスターズを通じて連邦に供与された。

 連邦に供与された理由は簡単で、MSの開発計画のダミーとして用いるなら、下手に試験などの手間を経るよりも、連邦の諜報ユニットの労力をそれに費やさせたほうが良い、と判断した(そう判断するよう誘導された)マ・クベ少将による。

 キシリア機関は多年にわたる親衛隊第4大隊との暗闘に疲れ果て、本来なら連邦への諜報や防諜に用いる人材を、第4大隊へのそれに使わざるを得なくなり―――そして用いた諜報部隊が第4大隊側の部隊によって漸減させられた挙句―――諜報能力を低下させた。それを補うように月面恒久都市を通じた親衛隊の諜報活動が活発化。キシリア機関は現在、その能力が制限されている。

 だからこそマ・クベ少将は親衛隊の誘導工作に引っかかり、「ヨルムンガンド」の情報を連邦へリークすることとしたのだ。勿論これには、MSさえあれば少しばかり諜報でへまをしたとしても充分補いがつくというキシリアの判断も入っている。本来ならばこのような消極的な判断を彼女がするはずは無いが、第4大隊との諜報戦は、予想以上に彼女に疲労を強いていた、といえるだろう。

 ともかくも、「ヨルムンガンド」は「ユグドラシル」と名前を変えて地球軌道上に進んでおり、同型艦の「レーヴァテイン」と共に、コロニー落着を阻止する砲撃戦力として鎮座していたのである。


 
 さて、ブリティッシュ作戦の天王山、コロニー落しを目前にかなり暇になってしまったので戦力の再確認をしておこう、とグワダン内の自室に引きこもってみたトール・ガラハウです。

 資源があれば機体の生産は可能なので、今までのポイント使用は基本、技術獲得に振り分けていました。ただ、技術獲得と言ってもレベル制限が課せられているらしく、たとえば新しい作品へのアクセス権を5000ポイントで得ても、その作品内の機体を生産するためには別途ポイントを要するシステムだったのです。

 そしてそのポイントは、人材獲得のポイントに匹敵するほど高額で、しかも戦力の強さに比例して高くなります。たとえばバンプレストオリジナルの場合、PT生産技術aをオンにしたところ、ゲシュペンストおよびヒュッケバインシリーズの生産が可能になりましたが、シリーズの異なる魔装機神やリオンシリーズの生産には別途ポイントを要すると言った有様(しかも、ブラックホールエンジン搭載機の生産は不可)。確かにゲシュちゃんの有用度は高いですが、量産にかかる資源の量もあわせて考えると、これは後々考えるとかなりつらくなりそうです。

 となると一騎当千の機体かぁ、と思って縮退炉をオンにしてBHエンジン搭載機とグランゾン狙おうと思っていたら、別途の技術が必要らしく、BHエンジン搭載機とターンタイプしかオンになりませんでした。しかも、ターンタイプは月光蝶の発動が不可。おい、ナノマシン技術にもポイント回せってか。でも、PT技術bをオンにしたら、相乗効果でグランゾンの生産が可能になった事はうれしかったです。

 今回ポイントを確認したところ、一週間戦争の半ばを過ぎた段階で、3サイドに対する攻撃が控えられた結果、24億の人口が生存し、これが240000ポイントと言う大量のポイント獲得につながりました。これは良いと言う事で早速、自分の生存性や技術の更なる拡大に振り分けてみました。しかし、自分に関するポイントの高いこと高いこと。合計130000ポイント使って「ジェリドぐらい(かませ犬程度の活躍が出来るってか)」ってどんな扱いだよ。どんだけ才能無いんだ俺。
 
 それに、機体や艦船の生産でRPを消費するシステムなのでGPをRPで補うのも、これからの戦力増を考えると頭が痛くなってきます。RPでの生産は割高ですが、ポイント消費での生産は生産期間が工廠で作るよりも短いのが有難い。突発的な戦力不足も考えると、これからはRPの残量にも頭を使う必要が出てきました。

 連邦側で活動するためにゲシュペンストを9機とジムシリーズのよさそうなのを揃え、第4大隊用に供与されたザクⅡにポイント消費をくわえて高機動型化するなどにRP使うと、結構な量になります。この辺は、最悪キシリアのお馬鹿とドンパチやるかもしれないと強化させたのが理由です。あのババアのことでしょうから、戦力よこせで抜かれる可能性も考えています。

 確かに出来る事と使える技術を考えたら、一年戦争でシャドウミラーっぽく戦える事はチートですが、なんか違うような気がしないでもない。でも、この後のルウム戦役のことも考えると、下手に人口減少が生じたら、その分GPより差っぴかれますなんてシステムが言い出したものだから、予備のGPも獲得しておかなきゃならない。うん、火星の採掘部隊を拡充しよう。

 そういえば、俺のやってる事って端から見たらシャドウミラーだよなぁ。うん、取っておこう。それに、スパロボJあたりの機体で無双も素晴しい。……まずい。あー、残りポイントが10万切った……できればマクロスにもアクセス欲しい所なのに。今回はこのあたりでやめておこう……

 しかし、色々と判った事もある。タマーム・シャマランの暗殺回避で30000だったのにシャアの巻き添え回避で100ポイント、と言うことは、改変を行った事件が、作品にどれほどの影響力をもっているかでポイントの高低が決まるということを意味しているのだろう。となると、ぽっと出のキャラ一人助けるよりは、影響力もってそうな人物を助けたほうが良いということになるので、年末辺りにレビル大将を救えばポイントを多くもらえそうだ。

 となると、ギレンの優生人類生存説を阻止して5000というのは、彼の考え方まで変えればポイントを多くもらえる可能性があると言う事にもなる。しかし、前回のシャアで明らかになった通り、それにギレン閣下相手に色々と苦労した事や、ポイントをもらえなかったエンツォ排除を考えると、影響が実際に出た時点でポイント化されること、原作に関わる重要度の高いキャラクターほど、介入の難易度が高く設定されている事がわかる。

 うむむ、シミュレーション・ゲーマーとしては燃える所なんだろうが、自分の安全かかっているので怖くて仕方ない。下手打って月面総攻撃とか洒落にならん。

 キャラの勢力加入で得られるポイントが、予想していたよりも少ないのがすこし腹立たしい。というかシーマ様2000って安すぎだろ。20000ぐらいよこせよ。あ、でも0083の流れ次第でもらえる量増えるかもしれない。

 
 はぁ、とにかく、原作が始まる10月あたりまでは、やっぱりチマチマ稼ぐのが基本なんだろうなぁ。そろそろ連邦での動きも活発化させていかないと。




[22507] 第08話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/22 14:42



 結果から提示してしまえば、第一次軌道会戦はジオン軍の辛勝に終わった。

 ブリティッシュ作戦の主目的であるジャブローへのコロニー落しは失敗した(コロニーは南大西洋アセンション島沖に落着。ギニア湾沿岸と南米ブラジル東岸部に大打撃を与えた)が、コロニー落下を阻止するために砲撃をコロニーに集中させた第一連合艦隊、第四艦隊はかなりの被害を受け、ルナツーへ後退した。

 しかし、ジオン軍側もコロニーの援護を行っていた部隊に被害が集中。特にキシリア率いる第一突撃軍団無しでの会戦を強要されたジオン艦隊は、ただでさえ劣勢な艦隊戦力が不足し、MSの投入によって押し切りはしたものの数の不足を機動によって補う必要に迫られたため、艦艇、MS共に推進剤不足を引き起こしたものが多く、連邦軍航空隊の反撃に満足な機動も行えないまま損傷を受ける部隊が続出した。

 キシリア率いる突撃第一軍団は、コロニーが阻止限界点前2時間の位置に迫り、連邦軍の主力と砲火を交えた辺りになってようやく姿を表す始末だった。

 勿論、この不手際はキシリアの責任問題に発展する動きを見せたが、連邦が即座に多数の艦艇を増援として地球の裏側からルナツーへ送り始めると、ギレン総帥府からのブリティッシュ作戦継続の命令が優先され、キシリアの責任問題は棚上げにされた。もっとも、ギレンやドズルが処罰を望んだとしても、デギン・ガルマがそれに口を挟んだだろう事は簡単に推測できたのだが。

 地球に向けて投下されたコロニー、サイド2、1バンチ「アイランド・イフィッシュ」は、軌道上に展開した連邦軍三個艦隊の砲撃、特に特務砲艦「ユグドラシル」の砲撃によって阻止限界点前で崩壊。3つに分解したコロニー片のうち、地球の重力に引かれたもっとも巨大なそれが大気圏へ突入した。それよりも小さい2片は、「ユグドラシル」級2隻の砲撃によってかろうじて阻止限界点前で破壊、大気圏内で燃え尽きる大きさにまで分解された後、大気圏で燃え尽きた。

 連邦軍がコロニーを破砕可能なほどの砲撃能力を持つ砲艦を投入した事実を知ったジオンは、第二次ブリティッシュ作戦を行う前に、この砲艦を破壊する必要に迫られ、サイド5でもっとも反ジオンを鮮明にしている11バンチコロニー、ワトホートを使っての二回目のコロニー落としの虚報をキシリア機関を通じ流布。出撃してくる連邦艦隊の殲滅を狙う。

 サイド5、ルウムへ向けて出撃したジオン軍への迎撃作戦。所謂、ルウム戦役の始まりである。


 第08話


 嫌な空気だ。

 最初に感じたその感想は、この会議の間中変わる事はなかった。ズム・シティ。公王官邸で開かれているルウムの処遇に関する会議は、ギレンのルウム攻撃の必要性に関する演説から始まった。

「ルウムは撃滅されねばなりません。少なくとも、我がジオンに対して反抗的な立場を取るバンチに対しては断固とした処置を取るべきです。また、その期間は早くなくてはなりません。ルウムにティアンム率いる第四艦隊が展開している現在、目に見える戦力としての連邦軍の存在が、ルウム各バンチの親ジオン派の勢力を弱めないとも限りませんので」

「またコロニーに毒ガスでも撒くつもりか、ギレン」

 デギンは静かに言った。しかし、すぐに声が激発する。

「無辜の住民を虐殺しても、開戦から既に億を越える民衆が死んでもまだ足りんか!?」

「死者は関係ありません。戦争は連邦が抗戦の意志を示し続ける限り、続きます」

 デギンは鼻を鳴らした。何を言っても無駄だと感じたのだろう。脇に控えていたガルマをつれて退室した。室内に残るのは将官連および親衛隊の私。正直、空気がかなり微妙だ。

「ガラハウ」

「はっ」

「今回は親衛隊からも戦力を出す。キシリア!」

 ギレンはキシリアをしかりつけるように怒鳴った。

「今回は遅参などと言う体たらくは認めん。ドズルと共に出撃せよ」

「……はい、兄上」

 うなずいたキシリアは早々と退室した。それを見たドズルも立ち上がる。指をこちらに向け、ついてくるように示す。私はギレンに一礼するとドズルと共に退室した。

「ガラハウ、どう見る」

「ショウ、とでも言いますか。誰かの目を気にしてらっしゃいます」

 ドズルはため息を吐いた。

「遠慮のない奴だ。まぁ、其処を兄貴も容れているのだろうがな。親衛隊からお前の艦隊を借りる事にした。月には前にお前から要請のあった士官たちを回す。Nシスターズは抑えてあるんだろうな」

「ええ。ですが、連邦とのパイプをつなげておくためには、あまり表立って動けません。私の部隊を動かす場合、N3の地下ブロックを本拠地に、月が地球から見て蝕に入った際に限定されます」

 ドズルはうなずいた。

「それはいい。ただ覚悟しておけ。お前、この戦役で手柄を立てられなければ、キシリアの指揮下で月で動く事になるぞ。今までの経緯から言って、それはまずいだろう」

 まずいなんて物ではない。アレだけキシリア機関を弄っておいて、指揮下で無事でいられると思う方がどうにかしている。

「お前の艦隊の配属は、レビルの艦隊を奇襲する特務大隊だ。シャアや黒い三連星などと同じ配属になる。部隊にほしい人材はいるか?正直、お前の協力がなくなるのは惜しい。軍人である以上、戦場に赴くのは当然だが、戦死しないように部下には配慮してやろうと思っている」

 ため息を吐いた後、言った。

「ガトー中尉とマツナガ大尉をいただけますか。機体はこちらで用意します」

 ドズルは大声で笑った。

「シンはやれん。俺の艦隊に必要不可欠だからな。ガトーはまわそう。代わりはどうだ?」

 まずはガトー確保、と。ただなぁ、ガトー中尉はおそらく、デラーズ閣下べったりになるだろうなぁ。

「それでは、ラル大尉か、シュマイザー少佐を」

 ドズルは呆れた様な顔でこちらを見てきた。

「貴様、本当に遠慮がないな。シュマイザーなどキシリアの所ではないか」

「遠慮して死にたくはありませんし、キシリア閣下から戦力を引き抜くのは、閣下が中将の指揮下に入っている今をおいてないかと」

 ドズルはにやりと笑った。コロニー落としで大失敗をやらかしたキシリアに対する、いい意趣返しだと思ったらしい。

「わかった。両名共にまわさせよう。お前のことだ、ラルもシュマイザーは部隊ごと引き抜け、と言うつもりだな」

「ありがとうございます。特務大隊の指揮艦には、姉の「マレーネ」を使いますので」

 ドズルはうなずき、そこでお開きとなった。





 ドズルと分かれた後、会議を終えたらしいギレンと合流し、公王官邸を離れて総帥府へ向かう。総帥府へ向かうエレカの中でギレンが話を向けてきた。

「ドズルから話は聞いたか」

「聞きました。今回活躍しない場合、キシリア閣下のおもちゃにされるそうで」

 ギレンは鼻で笑った。

「君の存在が妹を不快にさせているようなのでね。また、父に泣きつかれもしたし、月にキシリアが地歩を固めた以上、アレの下に一元化すると言うのは筋の通った話だ」

「聞いたところでは地球攻撃軍の椅子を狙っているようですが」

「君のおかげで突撃機動軍の編成が流れたからな。アレが3つ目の頭として出るためにはその椅子が必要となろう。元々は突撃機動軍を編成した上で、腹心のマ・クベをガルマを傀儡とした地球攻撃軍司令にすえるつもりだったようだ」

 ふん、今の言葉は考えどころ……入ってみるか。

「ルウムでの戦いの結果、講和は難しいと?」

「キシリアはなんとしてでも邪魔をするだろう。そんな状態で講和はムリだ。国内がまとまっていないからな。父上がいるとはいえ、突撃機動軍が編成されないなら本土防衛軍に手を伸ばそうとするだろう。君のおかげで、私はキシリアと激しい権力闘争をすることになる」

 なるほど、これでやっと得心がいった。ギレンの本音としてはルウム戦役での戦勝で講和をしたいが、ザビ家の状態を考えると必ずキシリアが邪魔をし、現状キシリアをデギン公王が守る形になっている以上、講和はムリになる。講和を一番望んでいるのが公王であるにもかかわらず。

 こりゃあ、何とかしてデギンを排除しない限りジオン有利の講和の目はないわ。ギレンが死にでもしない限り。あれ、コレって千日手とか言わね?それに、この人は口に出していない事がある。ジオニズムの信奉者である以上、連邦との戦争は、連邦に地球上の全人口の強制宇宙移民を要求できるほどに圧倒的なものでなければならない。となれば、ブリティッシュ作戦が失敗し、ルウムで連邦の艦隊を殲滅したとしても、まだ不足だ。地球に進撃して資源を確保し、資源によって戦力を整えた後に再度ジャブロー攻略を行って城下の盟を誓わせる必要がある。


「別に、突撃機動軍を作ったとしても権力闘争は不可避ですよ、総帥。あまり恩に着せないでください」

「そこを口に出すところが、君を買う理由でもあるのだよ、ガラハウ大佐」

 ギレンは笑みを浮かべた。エレカの助手席に座るアイリーン女史が目を見開いているのがミラー越しに見える。おいおい、愛人にさえびっくりされるってどんだけ無表情なんだこの人。アレの時も無表情ってある意味終わってないか。というか、良く愛人になろうと思ったな、女史。

「最悪、君には月から手を引いてもらう可能性もある。ドズルからは?」

「ガトー中尉の親衛隊への転属と、私のところへのラル大尉とシュマイザー少佐の配属を認めてもらいました」

 ラルの名前を聞いた瞬間、ギレンの眉が顰められる。そりゃあのバカ爺の息子と聞けばそう思うのも無理ないな。

「大丈夫ですよ。父親と比べると月とスッポンです。下手に冷遇するよりは、抱え込んだほうが宜しいかと」

「……任せよう。君の方から要望はあるかね?私もキシリアは抑えておきたい」

 ふむ。改めて考えると、突撃機動軍がなくなったおかげで、表向き、キシリアが月面に縛られる必要性は少ない。地球攻撃軍が編成されるなら、むしろ地上に降りてもらった方がいい厄介払いになる。しかし、紫ババアが地上の全権を握った場合、08小隊のストーリーに介入しようとしたときなどに厄介になることこの上無しだ。そう言えば、サハリン家にはそれとなく援助して家庭崩壊しないようにしているが、流石に病気の影響か、このごろは精神的にヤバい状態になってきていると言う報告があったな。

「ギニアス・サハリン大佐ですが、私が今回昇進した場合、部下にもらえますか?」

「どうするつもりだね」

「ルウムで勝利を収めた場合、地球攻撃軍が編成されてキシリア閣下はそちらに向かうでしょうが、あのお方が私への憎悪を忘れるなんてありえませんので、少々姿をくらまして裏で動いてみようかと。その代理としてサハリン大佐のお名前をお借りしようと思いまして」

 ギレンは少し考え、うなずいた。

「良いだろう。ただ、結果を出しての話だ」

「勿論です」

 返事を確認すると、ギレンは思い出したように付け加えた。

「ガルマがむずかっている。ルウムに出たいようだ。同期のアズナブルとかいう中尉が参加するらしいのでな。気を抑えるために新型……いや、専用機の用意をしておいてくれ。君なら整えられるだろう」

「了解しました。しかし、ルウムの後になりますが」

「かまわん」


 さて、コロニー落としによる被害が南大西洋沿岸部だったおかげで、気温低下などの事態は南半球に限定された、というのはありがたい話で、おかげでまたもやポイントにつながりました。前回4万まで減少したポイントも一気に40万まで回復です。
 
 ただ、やっぱり後々の事を考えるとGPは確保しておきたい、ということで今回はあんまり派手に使っていません。XNガイストが開発可能になったから、使えばタイムスリップとか、他の世界にプラント設置して資源取り放題とか思いましたけど、開発GPが半端ないのであきらめました。死亡期間を短縮して死んでも即座に復活できるようにする事と、肉体強度をガンダムファイター並には出来ましたが、あんまり実感はありません。上がったの強度だけだし。

 アクシズとの連絡を考えて木星のエウロパにプラントを建設し、同時に火星・木星との連絡のためにパッシブジャンプゲートを作って見ました。これで、移動によるタイムロスが軽減できることは、こっちの行動をごまかすのに役立ちそうです。

 今回、有り難味を実感したのは重力制御技術a。ジオン側での機体としているR-3型に乗っても、まるでGを感じないので操縦が楽で楽で。これだけパイロットに対する負担が少ないなら、ジェネレーターの出力が少々低くても、推力さえ確保できれば無双が可能かもしれない。

 うん、目指せNT-D無双で頑張ってみましょう。



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 今回は短めです



[22507] 第09話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/23 08:33
ルウム戦役は史実とは違い、混戦模様の推移を示していた。

 サイド5、各コロニーの港部分の破壊に始まる作戦は、予定通りレビル率いる第一連合艦隊の一部を、みなと部分の破壊によってコロニー内に取り残された民衆の救援に振り向けさせ、レビル艦隊を拘束する事に成功した。

 ティアンム率いる第4艦隊はアレクサンドル・ビュコック中将の第二軌道艦隊の支援を受け、第一連合艦隊から振り分けられたワッケイン・カニンガムの部隊の指揮権がレビルからビュコックに委譲された事を受け、史実どおり二艦隊の間に行動の齟齬を生じさせる展開とはならなかった。

 しかし、連邦艦隊が宇宙に保有するほとんどの戦力をこの会戦に集中させたため、艦艇の数が多くなりすぎ、合流した上で連携して迎撃する、という展開にまでは至らっていない。元々そこまでの艦隊運動を想定していないし、闘志に不足ないレビル艦隊の各部隊が砲撃を重視した横列陣を採っていたのに対し(これは、一週間戦争に実質未参加だったレビル指揮下の連邦艦隊の突き上げの結果だった)、ブリティッシュ作戦でジオン軍との抗戦経験のある第4艦隊は、シトレの示唆どおり、箱型陣形を作って迎撃の準備を整えていた。

 史実どおりにいかなかったとは言え、三個艦隊を擁する連邦軍のうち、一個艦隊をサイド5に貼り付けた事は、連邦軍の戦力の三分の一を拘束する事に成功したわけで、戦力比1対4が、1対2.5となった点は評価されるべきであろう。また、史実ではサイド2の虐殺の影響で各コロニー港湾が親ジオン派の脱出であふれかえり、この際にアズナブル夫妻が巻き添えを食うなどの被害が生じていたが、サイド2の多数が生存しているこの歴史では、そのような事件は生じておらず、連邦派の暴徒に囲まれたマス家の中に、二人の姿が確認できる。

 連邦の暴徒に囲まれる中、本来ならば心臓に持病をもつテアボロ・マス氏の病死となるはずであったが、先進的なナノマシン医療を秘密裏に受けていた氏は、心臓病の原因である、大動脈内の動脈硬化部分がナノマシンによって修復されており、同時に連邦派の暴徒がテーマパークの略奪に夢中になっている間に三合会の皆さんとシェンホア相手に反撃を受けたため、病床についてはいるものの、無事な姿を娘、セイラ・マスと共に見せている。

 この後、戦局が落ち着き次第、先進医療を受けるためにNシスターズへの移動が予定されているため、彼の命はもう少しの間、永らえることだろう。

 それはともかくとして始まった第一次軌道会戦において、落下するコロニーに張り付くジオン艦隊と連邦艦隊との交戦は、ジオン軍の勝利に終わった。迎撃を主任務とした第二艦隊、第4艦隊は、ジオン軍のMSの投入により、コロニー迎撃を優先させて満足な防空隊形を取ることが出来なかったため、大きな被害をこうむったのだ。

 しかしジオン軍も、会戦後半の追撃段階において、第二艦隊と第4艦隊が、第一軌道艦隊に援護され始めると、第一軌道艦隊の採ったコンバットボックスによって形成された防空火網によってMSの追撃が封じられ、また予定と違ってキシリアの艦隊戦力がないために推進剤の不足も相俟って、満足な追撃を行うことが不可能になっていた。

 このため、追撃によって本来生ずるはずだった被害が抑えられ、連邦軍はいまだ、宇宙に大きな艦隊戦力を擁していたのである。




 第09話


 (アルテイシア……)

 シャア・アズナブル中尉―――キャスバル・レム・ダイクンは280mmザクバズーカの照準をコロニー・ミランダの港から外しつつ、テキサス・コロニー外壁からミラー越しにマス家のあった辺りに視線を向けていた。

「神の御加護があるというなら、お前はここにはいないはずだ。もしもいるのなら早く脱出しろ……今ならまだ方法がある。出来るはずだ、お前なら……」

「シャア中尉」

「ガラハウ大佐」

 シャアは視線を背後にたった異様なザクに向けた。既に一部エリート部隊に配備が始まっている高機動型ザクに近い。しかし、ザクと言うにはあまりに異形な姿だ。おそらく最新の改造型であるR-3型という奴らしい。新型のMMP-80、90mmマシンガンと大型ヒートサーベルを標準武装とし、現在はそれに加えて試作品らしい360mmジャイアント・バズを持ち、自分と同じようにコロニー・ベイの攻撃を行っていたようだ。

「どうした。……そういえば、君はテキサス・コロニーの出身だったな」

「大佐ほどのお方に知っていてもらえるとは……光栄です」

 トール・ガラハウ大佐。親衛隊でデラーズ少将とギレンの信頼を二分する若き軍人。大層なものだ。ザビ家に近づき地位を得るからには、どんなお追従を述べた奴かと思ってみれば、軽々と新型ザクを操り、こちらにも目を配ってくる。やりにくい……南米で出くわした奴らと何か関係があるのか?勘というわけではないが、気になって仕方がない。

「ギレン閣下もやりますな」

「御前会議の内容のリークかい?キシリア閣下にも仕事はしてもらわねばなくては。ブリテッシュ作戦のような事をされては適わん」

 発言の解釈に困る。ギレン総帥肝いりの親衛隊士官としてのお言葉か……果たして。いや、ガラハウ大佐はキシリアとの不仲が噂されて久しい。何故其処までキシリアを危険視するのかがわからないが、今の言葉を聞く限り、個人的な反感も充分以上に持っているらしい。

「帰還しましょう、大佐。次の任務があります」

「うむ。中尉も部下をまとめて帰還してくれ」

「大佐!」

 通信に新たな反応。大佐の部下、マユラ少尉のザクⅡだ。長距離移動用に推進剤タンクの増設を行っている。

「第12小行政区、各コロニー港湾部制圧完了です。被害無し。ただ、機材の不調を友軍に確認したので、アサギが支援に向かっています。予定に遅れはありません」

「ご苦労。不調機の所属は?」

「224小隊、デニム曹長です」

 はっとなった。ミランダ・ベイの破壊と妹に気を取られて、部下の向かった行政区の制圧状況についての確認を忘れていたのだ。もっとも、デニム曹長ほどのベテランなら大丈夫だと言うこともあったが、大佐ほどの士官を前にこれは失態だ。

「大佐……申し訳ありません」

「いや、中尉。気にはするな。……帰還信号だな、戻るぞ、中尉、少尉」

「はっ」

「了解です!」

 先行して大隊へ帰還するR-3型を尻目に、シャアはこの時点で接触して来た親衛隊の大物について考えていた。

 私の正体について知り、ジオンの息子である事について何かをしようと考えるならばキシリア閣下のはずだが……あの映像。接触して来た勢力はキシリア特有の血生臭さがなかった。いや、あざとさと言うべきか?あの女性にキシリア以上の臭さを感じたのは事実。となると、ザビ家に近い位置にザビ家以上に厄介な勢力がいる可能性があると言うことか……

 一番匂うのは前に立つこの男だ。年も私とそう変わらんのに、ガルマの坊ちゃんでも難しい大佐の地位にいる。しかもギレン直属の親衛隊で、だ。ジオン共和国保安隊出身の、後ろ暗い出自でもなさそうだし、かといって名家出身と言うわけでもない。月の大富豪らしいが、ガラハウなどという名を聞いたのはここ数年だ。

 いずれにせよ、気には掛けておかねばなるまい……



 何か、強烈なフラグが立ったような気がしてならないトール・ガラハウです。
 
 正直言うと、シャアとの初顔合わせにはあせった。テキサス・コロニーの被害状況を確認するためにベイの破壊後に機体を向けてみたら、ちょうどミランダのベイを破壊したシャアのザクと出くわした。ええい、当たり所が悪いとこういうものか!ニュータイプと遭遇なんてあまりいいもんじゃない。こいつら、接触するだけで何感じ取るか知れたもんじゃないからな……。

 しかし、敵側に回ってみると、連邦艦隊の強化が、装備面では最低限度に抑えたはずなのにかなりまずい事態になっていると実感した。やはり数は力か。少し、状況を整理してみる。

 コロニーの各港湾部を攻撃し、コロニー間の連絡網を破壊する陽動作戦は、レーザー通信網で送られてくるリアルタイムの状況によると、連邦艦隊の3割をこちらにひきつける効果をもたらしたようだ。もっとも、向かってきているのは占領用の強襲揚陸艦と護衛の巡洋艦、空母で、コンバットボックス戦術の要である戦艦はこちらに向かってきていない。

 コンバット・ボックスを形成するのは90mm機関砲を増設したサラミス、マゼラン両級の78年後期生産型(Block.5)で、ミノフスキー粒子散布下での実効性が薄れたミサイル用VLSの数を減らし、その浮いた重量を用いて増設を行っている。装備の変更であり、旧来の90mm機関砲が使えるため安価で1年ほどの間に改装がかなり進んでおり、連邦軍の光学防空網形成に大きな役割を担っている。

 超硬スチール合金製のザクの場合、ザクⅡでも射程距離内での直撃を受けた場合は危険で、スラスター部、背面部などの装甲の薄い部分に直撃すれば大破、もしくは撃墜は免れない。

 このため、ブリティッシュ作戦を戦ったMS隊を後方から観戦していた親衛隊は、連邦艦隊の採用したコンバット・ボックスに対し、外周よりの長距離実弾兵器の投入を行うことを提案し、今回、MS隊の武装は280mmザクバズーカが中心となっている。

 私たち、親衛隊の部隊の中には、ドム用の武装テストとして、一部360mmジャイアント・バズを装備している機体が含まれているが、ほとんどは高機動型ザクだ。これは、ジャイアント・バズの反動をザクの推力では殺しきれないからだ。


 機体を「マレーネ・ディートリッヒ」の後部ハッチに落ち着けると、ちょうど少し前に帰還したらしいガトー中尉が待っていた。私が後方から帰還するらしいので、着任の挨拶も含め、一言言いたかったらしい。

「大佐!大佐のような総帥の信任厚きお方と戦場を共に出来る事は、小官にとって無上の喜びであります」

 ガトーは敬礼と共にそう言い。出迎えてくれた。目ん玉はまともなのに言っている内容がアレなような気がしてならないが、とりあえず返事を返す。

「うん。中尉の武勲に期待させてもらう。海兵隊は荒々しく、肌に合わないと思うこともあるだろうが、腕は確かだ。姉の自慢の部隊だよ」

「はっ!」

 何とかして一年戦争中にガトーとシーマの間をどうにかしておかないと、4年後に痛い仕返しをもらいそうな気がしてならない。いや、ねぇ。核の炎で焼かれるのも嫌だし、ノイエさんに艦橋貫かれて宇宙に吸い出されるとか、はたまたソーラ・システムⅡで焼かれるとかマジ勘弁願いたい。

「しかし、今回初めて操縦させていただきましたが、流石大佐の部隊。良いMSです」

「ジオニックやツィマッドの新型を試験しているし、月面の工廠で独自に開発もしている。中尉が正式に配属となった暁には、私からも一機、贈らせてもらおう。デラーズ閣下は新型のドムに甚く御執心だったが、今度、見てみるか?発展形は宇宙でも運用可能になる予定だ」

「是非、御願いいたします!」

 ガトーの返事に頷きを返し、ザクを降りた三人娘に開発計画や運用についての報告を受けながら、私は艦橋に戻るために床を蹴り、移動した。それを傍目にしたガトーは眉を顰めた。眉をしかめたガトーに、小隊所属のカリウス軍曹が話しかけた。

「中尉、どうされましたか?」

「大佐は優れた御方だが、少々軽く見えかねないのが気になる。これは御諌めせねばなるまい……いや、コードウェル少尉らは優れたエンジニアを兼務していると聞く。内容も運用の件だが、やはり部下に女性ばかり三人と言うのが少し、気になるのでな」
 
 カリウスは笑った。

「考えすぎです、中尉。コードウェル少尉たちは、ザクの開発にも関わっていると聞いています。女性ではありますが、有能さは」

「うむ。私に見識がなかったようだな、カリウス。大佐が若すぎるので少々、勘違いをしてしまったらしい」

 野太い笑い声が後ろから響いた。

「ムリもねえさ、ガトー中尉。若のあんな姿見りゃ、勘違いもしかたねぇ。この艦のあるお方なんざぁ、のんぞんで勘違いしていると疑いたくなってくるほどさね」
 
 野卑な内容にガトーは眉をしかめた。

「貴官は?」

「デトローフ・コッセル。さっきまで直援のMS隊を率いてた。大尉だ」

 自分より階級が高い事を聞いてガトーはすぐさま直立不動となり、敬礼した。コッセルは笑いながらやめろやめろと手を振る。ガトーは不満そうだ。コッセルが答礼を返さなかったのが気に食わないらしい。

「ま、若も自重してくださるとうれしいがね。シーマ様がお冠だ」

「シーマ中佐が?あ、申し訳ありません大尉。しかし「若」とは……?」

 コッセルは頷いた。

「若はシーマ様の弟さんで出世頭、俺らのアタマだからな。シーマ様が中佐なのは、元々俺たちが傭兵出身だから、軍に入ったのが遅ぇのさ。若の口利きでこれだけのフネを任されちゃあいるが、ガッコウ出ほどお行儀は良くねぇ。腕はホンモンだがな。気ぃつけろ、若に何かあると飛んでくるぞ」

「大佐の姉君ですか」

 コッセルとガトー、カリウスの会話は、その後、報告のないのに痺れを切らせたシーマが艦内放送で呼び出すまで続いた。士官学校出以外の士官たちに対するガトーの目が、少しばかり、啓かれたようではあった。




 宇宙世紀0079年1月15日に始まるルウム戦役は、参加兵力こそ連邦、ジオン共に本来の歴史よりも多かったが、基本的な戦闘の推移そのものは歴史どおりに動いていた。ドズルの主力艦隊がティアンムの第4艦隊をひきつけている間に、キシリアの分遣艦隊がレビル率いる第2艦隊に対する突入を開始。ティアンムと砲撃戦を繰り広げる中で少しずつ戦力を抽出したドズル艦隊の一部がその後ろに続き、キシリア・ドズル艦隊と連邦第二艦隊が混戦状態となったところに特務大隊のMS部隊が突入を開始した。

「チィ、またか!」

 私は強化型ザクの後方から迫るビーム光を避けつつ、舌打ちをもらした。レビル将軍率いる艦隊に向けて突入を開始してから、後方のキシリア艦隊からの砲撃に、一部、どうみても私の機体に照準を合わせたような砲撃が混じるようになっていたからだ。また、キシリア派と思しきMS隊からは、微妙に連邦艦隊から斜線をずらし、本来なら今回の攻撃隊主要装備に含まれていないはずのMMP-78を向けてくるザクまでいる始末。

 ここまで嫌われているとはな。

 射線を明らかにこちらに向けたザクについては容赦なくガンカメラに収め、帰還後、どうにかしてやろうと思うが、遣り難くてしょうがない。なんとか外周部のサラミス4隻を撃沈する事が出来たが、下手に中に踏み込むと、キシリア派の部隊と連邦艦とのクロスファイアという笑うに笑えない事態になる。

 それでも、バズーカの弾薬が残っている段階で退けば、戦役の後に難癖をつけてくる可能性もある。そちらの場合も遣りにくい事この上ないため、適当に射耗した後、三人娘あてに後退命令を出すと、R-3型に取り付けてあったミラージュコロイドを、サラミスの影に隠れて展開させた。

 ちょうど死角になっていたようで、こちらにMMPを向けていたザクが周囲を確認している間に後退し、今度は「マレーネ」の艦の影でミラージュコロイドを解いた。着艦し、弾薬の補給を行わせる。

「面倒な事になったねぇ、トール」

 水分補給のため、整備兵からもらったパックからトニック飲料を吸っていたところに声がかかった。シーマ姉さんだった。汗にぬれた頭をがしがしとかき回してくる。かなり痛いが、本人はこれで頭をなでているつもりなのだ。それに、他人の目があるし、ソフィー姉さんやロベルタ嬢がいないからからまだおとなしい方。……あまり考えたくない。

「姉さんの方は問題なし?紫ババア、結構見境ないから」

「流石にアンタ一機に抑えとかないとばれるだろ。補給や何かで面倒かけてくるだろうが、コッセルの隊の方も問題なさそうだよ?」

「マレーネ・ディートリッヒ」搭載のMSは9機(最大12機)。本来ならシーマ姉さんとコッセルのR-1B型が1機ずつに、F型が6機で予備が1機、姉さんとコッセルとで2個小隊編成を取るところだが、今回は私たち第4大隊―――三人娘とガトー小隊―――が間借りをさせてもらっているので、シーマ姉さんは艦橋での指揮に専念してもらっている。

「悪目立ちするR-3に乗ってて良かったよ。下手にR-2や1B、果てはF型なんかに乗ってた日には、ジュリたちが巻き添えを食っていた可能性もある」

「だねぇ。まったく紫ババアは碌な事を考えでないよ。で、どうだい?もう一回行くかい?」

「戦況は?」

「さっき「アナンケ」が沈んだ。カニンガム准将の「ネレイド」は、ビュコックの爺さんの援護を受けて後退中。流石にボックス固められると、F型程度の装甲じゃどうにもならないね。外周のサラミス削るだけで精一杯さ」

「戦果はどれ位になります?」

「確認された撃沈は戦艦で25、巡洋艦で100程度。小型艇は掃討出来たそうだけど、補助艦―――特に空母を結構逃しているね。今回、奴ら戦闘機を1500ほど持ち込んだらしい」

 私はため息を吐いた。史実の連邦軍の被害が三分の二に抑えられている。やっぱり、ヤン大佐に言った通り、航空機の数が勝敗を決めたらしい。ただ、今回、被害を三分の一抑えるだけでも、史実より1200機多い航空機が必要だった。やはり、MSの優位性は硬いか。いや、対戦闘機戦がメインのセイバーフィッシュだからだ。もし対MS戦を考慮に入れた新型機でも出てくればどうなるか知れたもんじゃない。

「こっちの被害は?」

「戦艦グワシュ、グワバンが撃沈、巡洋艦は96隻のうち、71隻が大破、残りも中破がほとんどさ。あたしの「マレーネ」も左舷エンジンに被弾して、砲塔がいくつか吹っ飛んでる。ギリギリ大破だね」

 ため息を吐いた。やっぱり被害が多い。こりゃ、終わった後で絶対来るな。

「被害艦の所属はわかる?キシリア派の奴」

 そこまで言えば、シーマもわかったようだ。

「……なるほどねぇ、終わったあたりで戦力を要求してくるかい」

「多分。姉さん、「マレーネ」は譲らないけど、ムサイとザクは覚悟しておいて」

「あいよ」

 厄介な。本当に地球攻撃軍が編成されて、キシリアが地上に行く方がいいのかもしれない。多分その場合、オデッサにキシリアが入り、キャリフォルニアにはガルマが行く事になるんだろう。笑えねぇ。アフリカ方面軍は何処の勢力だったか。私がジオンを離れても、戦力を引き抜かれない、タフ・ネゴシエーターがほしいところだな、本当に。

 R-3のコクピットに戻ると、通信用のコンソールにシーマ姉さんが映った。

「ソフィーから連絡だよ。急ぎらしい。量通使っている」

「つないで」

 私は言った。量通とはSEED由来の技術、量子通信システムのことで、あの作品ではドラグーンシステムのコントロールに使われていたそれを、ミノフスキー粒子の影響を受けないところから、通信用として用いている。勿論、こんな技術など連邦、ジオン双方には流せない。

「当たりだよ、トーニェィ。お前さんが言う、フラナガン機関とやらの場所がわかりそうだ。目をつけてた候補者が、サイド6に移送されていることがわかった。ご丁寧にサイド4、月、サイド3、サイド6と色々と通過していてくれてねぇ。割り出しに時間かかっちまったけど、とりあえず、サイド6にある事は間違いない。既にいくつか候補を絞りにかかってるよ」

 やはり、か。今現在、フラナガン機関にいると思われるのはマリオン・ウェルチとクスコ・アル。木星船団の帰還が2月の中旬だから、そのあたりでシャリア・ブルが参加するのだろう。そして恐らく、ガルマが暗殺されたあたりでララァが加わり、私が手を加えていなければ、去年中にハマーンも其処に送られていたはずだ。

 どうする、潰すか……?

「トーニェィ、どうするのさ」

 うん、決めた。

「姉さん、まず研究所の所在と、誰が其処にいるかを調べてください。突入するかしないかの判断は後でしますが、恐らく、機会を定めて襲う事になると思います。被験者になっている人には申し訳ないんですが、平和的に接触できないか、とも考えています」

「つまんなーい」

 ……姉さん、年を考えて。自由に外見年齢を変えられるっからって、口調まで変化させなくても良いのに。任務ならともかく、これ、連絡ですよね?

「なに考えてんのさ」

「今はまとまっていませんので、後で。姉さん、忘れているかもしれませんが、今は会戦中です」

 そういうと、思い出したようににっこり笑い、こういった。

「まぁ、アフガンほど気張る必要ないでしょ。月で待ってるわ。ロベルタが夜泣きしてるよ?覚悟しとき」

「……了解しました。あんまり変な事を言わないでおいてくださいね」

 通信をきる。前線から送られてくる通信を確認すると、連邦艦隊は大きな被害を出しながらもルナツー方面への撤退を成功させたらしい。撤退する連邦軍からはぐれた部隊に対する掃討戦が始められているが、もっとも強気に参加しているのはやはりキシリアの部隊。逆に、私の部隊宛には負傷兵の救助命令が来ている。

 まぁ、そのあたりの判断はシーマ姉さんに任せるとして、実際、やっと所在が判明したフラナガン機関をどうするかだよな。

 フラナガン機関を潰すのはたやすい。けれども、下手に潰すとフラナガン機関の研究結果を下地にする、連邦のNT研究機関の目もなくなる。となれば、Zでのフォウ・ムラサメ、ロザミア・バダム。ギレンの野望のNT-001、レイラ・レイモンドやゼロ・ムラサメといったキーパーソンの登場の目をなくす事になる。

 人体実験にデザイン・ベイビーという生命倫理に真っ向から挑戦したような所業をしてくれているので私的には早速研究員ごと殲滅戦を仕掛けたいところだが、ストーリーに影響が出すぎるのだ。今の段階で潰せば、シャア・アズナブルの動向にどんな影響が出るか知れたもんじゃない。

「潰せんよなぁ、正直」

 かといって下手に残せば、それはそれで困った事になる。NT-Dやサイコミュは反則に近い兵器だ。ファンネル、ビットはドラグーンシステムで代替可能ではあるが、単純に兵器開発だけで済ませられる問題ではない。

「カトル君がどこまで押さえたか、だな」

 地球連邦に潜入し、ヘッジ・ファンドの巨頭として活躍してもらっているカトルには、この時点で地球に住んでいるはずの強化人間候補者について、写真付で捜索を御願いしている。開戦前、最後にもらった連絡では、名前がはっきりしているロザミア・バダムの所在が判明し、監視がつけられているそうだが、コロニー落としの落着点の変化がどのような影響を与えているのかがわからない。

 しかし、完全にナンバー制で管理されているムラサメ研究所所属の強化人間についての報告はまだなかった。以前に読んだガンダム小説で、フォウ・ムラサメの実名に関する名前と思しき「キョウ」の事は伝えてあるが、「キョウ」と写真だけで所在が判明すれば苦労はない。もっと悲惨なのがゼロ。こちらは、手がかりすらないのだ。

 とりあえず、フォウ・ムラサメが日本人らしきこと、強化人間候補者にはコロニー落としの影響が強い事がわかっているので、史実のコロニー落着地点近くの状況を確認するよう伝えたが、どうなっているのだろう。とかく、人手が足らないことが一番の問題だと再認識させられた。人間相手に行動できる人員が少なすぎる。


 こりゃ、本格的に、人海戦術取れるようにもしておくべきかもしれない。今回のポイントの使い道はその方向で行こう。




[22507] 第10話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/23 17:06

 ルウム戦役後の事態の流れは、それこそ歴史どおりに進んでいった。

 黒い三連星が「アナンケ」を撃沈し、レビル中将を確保し、デギン公王はレビルを通じて講和の可能性を探ろうと、ジオンの理想(デギン理解版)を語って懐柔しようと試みたが、キシリア機関と連邦へのスパイ、エルラン中将が救出部隊を送ったためにレビルは脱出。予定通り南極条約が締結される。

 南極条約のジオン側全権代表は、やはりマ・クベだったが、こちらもキシリアの内意を受けて、地球側に対して屈辱的とも言える講和内容を伝え、結局、条約締結交渉を難航させていた。

 とはいえ、ルウムでの被害は史実よりも少なく、いまだ1個艦隊分の戦力が稼動可能と言うこともあり、連邦軍の法に混乱は見られない。むしろ、現状確保しているルナツー近辺の宙域確保に邁進させる結果となり、連邦に送り込んだスパイが、ルナツーの改装工事が始まったらしいことを伝えてきている。

 さて、レビル演説による南極条約の不調を受けて、ジオン軍は予定通り2月に地球攻撃軍を設立。第一次降下部隊として、キシリア率いる大部隊が3月1日、東欧、オデッサへと降下した。目的は黒海沿岸部に埋蔵されている地下資源と、欧州攻略による大西洋へのアクセス権の確保だ。最終目的は、オデッサから西進し、連邦軍の主要軍港が集中するアイリッシュ海沿岸部を目指すことだ。

 3月1日、オデッサ地域へ向けた空挺堡として、バルハシ湖西部のバイコヌール宇宙基地を占領。これについては、既に2月7日に先発降下していた特殊部隊(どうやら、屍喰鬼部隊らしい)の活躍もあったようだ。但し、ロシアの気候がコロニー落としの落着点変更によって混乱していないため、MS試験部隊などの投入は見送られたらしい。

 3月2日、1日で師団級の戦力(後に第一機動師団となるが)から、主力の旅団級の部隊をオデッサ方面に送り出し、残余の部隊から抽出した戦力で、カスピ海沿岸部の占領を開始。3月7日、オデッサが陥落した。また、同日、地球攻撃軍総司令としてキシリアが、ユーラシア方面軍司令としてマ・クベがオデッサへ降下した。

 史実と違うのは、第二次降下部隊の投入先もオデッサ地方とされた点だ。地球降下作戦は、コロニー落とし、ルウムでの戦勝があったからこそ地球全体に満遍なく部隊を降下させる形になったが、今回、北半球はそれほどの被害を受けていない。南米近くにコロニーが落着したため、ジャブローの司令部こそ混乱しているが、直接的な被害を受けたアフリカ以外では、連邦軍はかなり、組織的な戦力を残している。

 このため、本来なら北米に投入されるはずだった第2、第3機動師団はオデッサへの増援、欧州での戦果拡張、北アフリカへの戦力投入を目的として投入され、それに引きずられる形で、北米へは第4機動師団、および混成第3、第4MS旅団が投入。アジア地域へは混成第8MS旅団の投入にとどまった。

 これが戦局にどのような影響を与えたかと言うと、欧州方面では連邦の主力との交戦に充分な戦力を得たジオン軍が攻勢を強めたものの、ドーバー沿岸部の確保を自派閥の人間で行おうと、南欧州で主力を勤めるはずだった、増援の第3突撃機動師団の投入時期を遅らせたため、ドーバー沿岸部を固められてしまい、失敗に終わった。欧州戦線は、史実どおりドーバー海峡を挟んでのにらみ合いが続く事になる。

 北米方面では変化がかなり顕著な物となった。被害が南半球に集中したため、この時点で歴史どおりなら、コロニー落下によって壊滅的な被害を受ける、北米の諸都市が無事である。また、当然それらの諸都市近郊の基地に駐留していた戦力も無事で、キャリフォルニアベース、ニューヨーク共に鉄壁の布陣で以て、迎撃の準備を整えようとしていた。

 このため、ジオン軍は戦力不足に陥り、早々にニューヨークか、キャリフォルニアかの選択を突きつけられる始末となった。結局、ジオンが保有していない戦力である海上戦力の接収を狙うため、海軍の基地が集中し、旧型艦船のモスボール基地も存在するキャリフォルニアに狙いを定めた。

 キャリフォルニア・ベースとは、旧アメリカ合衆国カリフォルニア州に存在した三つの大都市、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴに属する基地群の総称である。ニューヨークを狙うと見せかけるために戦力の一部を五大湖周辺に移動させたため、連邦、東アメリカ方面軍はそれへの対策に追われ、戦力を西海岸へ送る事が出来なかった。そこに、1個師団+2個旅団の戦力が襲い掛かったのである。

 オレゴン州方面から国道5号線に沿って南下する第4機動師団が旧州境のクラマス・モトック・フリモント国立森林公園で激戦を開始すると、第3混成旅団が国道15号線にそってラスベガスからの侵攻を開始。主力をモハビ国立保護区近辺で拘束する事に成功した。その間に、国道80号線に主力をおくと見せかけた第4旅団が、デスヴァレーを突破してフォート・エドワーズへ突入したのだ。この結果、戦線は崩壊し、キャリフォルニアベースは確保されてしまったのである。キャリフォルニアベースの陥落は3月24日、こちらもオデッサ同様、陥落した日にガルマ・ザビ大佐がアメリカ方面軍司令として降下している。

 アジア戦線はオーストラリア降下作戦がなくなったため、タイ平原に旅団級戦力が降下、陣地構築とゲリラ戦、特に、極東アジア最大の工業地域である。日本に対する資源輸送ルートの壊滅が主任務であったため、そもそも、あまり変化が生じていなかった。

 このような推移の下、ジオン軍は地上での第二段階攻勢のための戦力を蓄え、また同時に、連邦軍も反撃のための戦力を整えようと躍起になるのである。



 第10話


 少将に昇進した、トール・ガラハウです。デラーズ閣下と並ぶ親衛隊の二大巨頭となり、ルウム戦役で戦艦・巡洋艦5隻を撃沈したシャアほどではありませんが4隻を撃沈したことが評価されたようです。

 地位が一番低いとは言え、将軍となった事で獲得攻勢が強まっています。ドズル閣下はルナツー方面軍を抑える艦隊指揮官として登用したい、なんてことを言い出しましたし、キシリア閣下は新規編成のMS師団の師団長として地球に降下させろなんて事を言い出しています。アレか、自分の指揮下に組み込む事で戦死狙っているのか。

 高まる両者の要求に対してギレンは、とりあえず月面とサイド3の航路を防衛する親衛隊第二軍団の司令として、月面N3への駐留を行わせる事を決定。キシリアなどに対して援軍を送らせる様、月面駐留の行政官みたいな配置を負わせられました。

 キシリアの地球攻撃軍総司令への新補も相俟って、適当なところで中将に昇進して月面の統治を一手に行わせる旨、内諾を戴いていますが、結局、グラナダに関してはやっぱりキシリア派がどうにかするようです。この結果、本土方面での配置が、地位と役職とが大混乱となる結果となりました。配置を記すと。

 月面航路防衛任務
  ・主務司令部:親衛隊第二軍団 トール・ガラハウ少将
  ・Nシスターズ駐屯部隊 ウォルター・カーティス大佐
  ・技術開発試験隊 ギニアス・サハリン大佐
  ・グラナダ駐屯軍司令 ノルド・ランゲル少将

 なんてことになっています。ランゲル少将は私より先任でえらいはずなのに指揮下に組み込まれていますが、月面では私より偉く、しかも私のところからキシリアのところへ抜く戦力を選べる立場にいるという微妙なお立場。キシリアがいなくなったグラナダで会った際、盗聴器を丸外しした部屋での会談中、頭を深く下げてゴメンナサイしてくれました。

 この人も苦労しているな~。いや、これあからさまにキシリアの手だろ。司令がいい人過ぎると、下手に手を出す事が問題になる。責任者はランゲル少将だし。けれどさっきも見た通り、基地内にいる佐官級の士官が完全にキシリア閥で固められているから、実際はこいつらが命令を下してくるんだろう。

 どうやら、この配置、ギレン閣下も了承の上だそうだとアイリーン女史から連絡ありました。なるほど、キシリア閥の相手を全部こっちにやらせる事で、本国の方をどうにかしたいと。ダイクン派である事が鮮明になりすぎな本国防衛隊相手に忙しくて忙しくてと永遠の17歳はおっしゃいますが、いやアンタ、永遠の17歳の指揮下で戦うのと紫ババア相手に戦うのとのどっちが良いかなんてわかりきってるでしょうに。

 さて、地球攻撃軍の快進撃が続く中、ウォルター・カーティス大佐と言うタフ・ネゴシエーターを得る事が出来ましたので、そろそろこっちも独自に動いてみようかと思っています。彼がいれば数ヶ月ばかり留守にしても、月面の状況を現状維持してくれることは間違いないですし。

 ため息を吐くとこちらに微妙な視線を感じる。半分は笑いを含み、半分は心配そうに見てくれているのだが、そう思うなら助けてぇ、と言いたくなってくるのに、助けてくれないのがMy勢力クオリティとでも言うのでしょうか。



「お兄ちゃん」
「お兄様」
「お兄ちゃま」
「あにぃ」
「おにいたま」
「兄上様」
「アニキ」
「兄くん」
「兄君さま」
「兄チャマ」
「兄や」
「にいさま」



「「「「「「「「「「「「一緒にいてもいい?」」」」」」」」」」」」


 アレだ。萌えるとかそういうのなしに、心が痛い。何だろう、こう、羞恥心とかゴリゴリ削られていくような感じ。ここで「萌え」とか言う奴は一度精神病院行った方がいい。一瞬自分の耳ではなく精神を疑った。まだルウムでザクのコクピットの中にでもいるんじゃないかと思った。いや、望んだのだ。



 誰だ、プルシリーズに区別のためだとか言って、3歳児相手にシスプリ吹き込んだ奴。



 ランゲル少将との会談を終えてN3に帰還したところ、去年からずっと会えなかったため、久しぶり、ということで、港湾部でハマーンを指揮官とし、ロベルタ嬢の援護する「妹中隊」に確保され、会議室まで同行を求められてしまったのである。

 これから会議だから、と言う触れ込みで一回全員を部屋から追い出したのだが、中隊の兵員たるプルシリーズは三歳児。当然そんな理屈が通用するわけがない。追い出された瞬間に全員が泣きだし、扱いに困った(嘘付け)ロベルタがニコニコ笑いながら、「邪魔をしませんので部屋に入れてあげてくださいな」と言い出し、ハマーン隊長とセレイン副隊長がそれに同意した瞬間に負けが確定した。

 負けが確定した後も、何とか会議を真面目な―――こう言って悪ければ、シリアスな―――雰囲気にしようと後で時間を取る事をいいわけに追い出そうとしたところ、先ほどの呼びかけと相成ったのである(ちなみに出迎え最初の掛け声はあの迷セリフ「プルプルプルー」。×12の大合唱は耳を押さえる人と何か変なものを感じたらしい人が続出していた)。

 ちなみに、この後、この区別の方法を吹き込んだのが張さんである事が発覚。どうやら、香港時代に現地で放映していたソレにハマっていたらしく、折り良く十二人の幼児を獲得したので「ちょうどいいと思った。やってみたかった。後悔はしていない」そうだった。話した瞬間に、プルたちだけずるいと言い張って室内に同席していたハマーンとセレインからはゴミのように睨まれ、大人の男性たち(カーティス大佐ら)は気まずそうに目をそらし、ギニアスに至っては何かを開眼したかのようにノリス中佐と頷きあい、シーマ、バラライカの二人は何事かを話し始めた。スルースキルも限界のようですね。頑張ってください。4発ぐらい9mmマカロフ弾打ち込まれてもいい頃合ですよ?イエス・ロリータ、ノー・タッチとは言いますが、三歳児はロリとは言いません。ペドです。

 ソレはともかく、これからの月面部隊、LGの進む道を模索すべく、会議は始まった。経過は省略するが、決まった事は以下の通りである。会議そのものは2月3日に行われたが、ここでは其処での決定内容に基づく、3月1日までの内容も合わせておこう。

 まず、キシリアから早速、保有する艦隊戦力を差し出せという要求が来た。地上攻撃軍への増援投入の際、機動上の護衛に用いるとの事で、これについてはシーマ姉さんと話した通り、保有するムサイおよびザクⅡF型の提供で話が終わった。

 ルウム戦役で所属が一時期私の下になっていたガトー中尉の部隊は、シーマ艦隊が上記の理由で再編に入った事を受けて、正式にデラーズ艦隊に配属。それにあわせ、高機動型ザクを提供した。また、保有する高機動型ザク海兵隊仕様の各機も、若干の改修を施した後、唾をつけておきたい名パイロットたちに提供する予定だ。せっかく突撃機動軍が編成されないのだから、これを機会にキマイラ隊とか奪ってやろうと考えている。

 旧親衛隊第4大隊の開発していたグフ、ドム、ゲルググは運用データが揃ったため、これもキシリアに取られる事になった。もっとも、グフとドムは元々地上用だから、キシリアに提供する事は織り込み済みだったとも言える。強化型ザクことR-3型の運用結果はジオニック社グラナダ工廠に送られ、ゲルググの先行量産型が既に試作機として完成しつつあるが、エネルギーCAP技術が未完成のため、現状では新型のMMP-80マシンガンの装備が考えられている。

 このため、保有戦力は激減し、本土防衛軍から編入された突撃第5師団が月面防衛の戦力となるが、同師団を構成する第51、第52、第53Ms連隊のうち、2個連隊の指揮権がグラナダ部隊に握られているので実質、1個連隊級の戦力しか保持していない。しかも、艦艇が無しで。かなり危険な状態です。

 けれど、これで宇宙での動きは本年9月のV作戦発覚までなくなるため、RP使って戦力の更新を行うにはいい時期と判断し、まず、不足するMSの量を補うため、宇宙用としてMS-21Cドラッツェの提供を開始。構造が単純で量産性が良く、ルウム戦役での損傷機を用いて作っているので原料的にも不足はない。既に30機近くが組みあがり、とりあえずおいてある。時期を見て売り払おう。

 また、MSの開発計画が、親衛隊にかかると良好となるため、小惑星ペズンに建設が予定されていたMS工廠の建設が中止され、その分の資材がア・バオア・クーMS工廠に回されると共に、既存MSの改造計画、新型MSの開発計画も月を経由する事に決定した、とアイリーン女史から連絡が入り、早速ジオン軍に採用されたグフ・ドムの、ツィマッド、ジオニック両社の工業規格合一化に始まる統合整備計画の打診をしていたところ、早速の採用となった事で、リック・ドムの開発にも一部関係する事となった。

 とりあえず、リック・ドムについては後回しにし(可能だが、投入の時期は見極めたい)、グフ、ドムの改造案から提出してみた。具体的には、高速ホバーで移動するんだから、被弾覚悟だろということも相俟って、装甲厚を増したF型を提案。オデッサから北アフリカと言う砂漠地帯での運用を考え、ホバーの吸気口に砂塵防護フィルターを装備したトローペン、リック・ドムへの生産変更を容易にするための脚部設計の改良を提示し、ツィマッド社へ送付する。

 結果、設計が完了したリック・ドムの生産に許可が出たらしく、現在、ザクⅡに変わる宇宙用MSとして生産ラインの設定に取り掛かっており、大体5月ぐらいには生産が開始される予定だ。ザクⅡについても、F型を改修したFZ型へラインが変更され、既存のF型はFZ型に準じた改修を、準備が出来次第受ける事となる(F2型)。

 グフについてはプロトタイプ、および先行量産型が、地上での戦力不足を補うため早速投入されているが、指揮官用の機体として運用されるらしく、中距離戦闘能力を追加するよう、ノリス中佐から打診があった。このため、量産型として既に案が出ていたB型案を改定。固定武装の五連装マシンガンを廃し、シールド内部に連装90mmマシンガンを、シールドに着脱式の75mmガトリング砲を装備させる。またヒートロッドも初期設計案の、鞭状の熱および電撃による攻撃を行うタイプではなく、アンカータイプの電撃のみの方式に変更、簡素化した。これを装備に応じてB1-B3型と称する事とした。

 ドム・グフ以外の地上用MS、特に水中用MSについては、完全にキシリアが囲い込みを行っており、議題にはあがっていない。しかし、ドムの開発で協力したツィマッド社からはゴッグの、ツィマッド社を通じてMIP社と接触を持つことが出来、キシリアからあがってきたデータと、現在トライアルに入りつつあるズゴックのデータを提供する旨、連絡があった。部隊規模で用いるには充分な量が確保出来そうである。

 ルウムでの運用結果を下にジオニック社へ送った強化型ザクの運用データは予想通り新型MSゲルググへの開発を加速させ、MIP社もエネルギーCAP技術を追求してきた経緯からこれに参画しているが、肝心のCAP技術がまだ未成熟で、機体の設計が完了してもまだ終わっていない。

 武装はともかく、機体も優秀なため、ジオニック社に武装について既存の物を流用してはどうかと提案したところ、ギレンのOKが出れば、と言う話になり、その旨ギレンに伝えると「お前の部隊で使う分は好きにしろ」と言われてしまった。まぁ、宇宙用MSとしてリック・ドムが採用されるのが既定方針だし、ビーム兵器と言う売りもない段階でゲルググをどうにかしろよと言われても確かに前線では整備が混乱するためムリだろう。けれど、ザクやグフ、ドムのように動力パイプを露出させていないし、ジェネレーターも高出力のものがつけられているから、ビーム兵器が出た段階で腕部を交換すれば運用は可能だし、ゲルググベースにしておけば、一年戦争中に運用させるMSの出所隠すには最適……とかいう思惑もあったりする。

 なので、早速先行試作機をジオニックから搬入。5月辺りにゲルググMとして運用を開始する予定である。いやぁ、やっぱりシーマ艦隊はゲルググじゃないと。それに、ジオンのザク、グフ、ドム、ゲルググが出揃ったあたりで考えている事もあるので、ゲルググの登場は早めたかったのである。


 こうした決定内容を受け、月面の戦力拡充とジオン軍への戦力支援を、3月から9月まで続ける態勢を取ったところで、そろそろ自分のために動く番になった。

 地球降下作戦の最中、3月15日。月面恒久都市『N8』―――この都市はまだ連邦・ジオンともにクレーターとしか認識していないが―――より出航した民間用船舶が、地球軌道上へ移動を開始したのである。



 乗り込んでいるのはトール・ミューゼル連邦宇宙軍中佐である。
 



[22507] 設定集など(00-10話まで)
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/23 17:06
 ■主人公勢力まとめ
 初期戦力
 a)企業体
  ・太洋重工グループ:重工業/資源採掘業/運送業など
  ・月面極冠都市連合『Nシスターズ』
  ・ウィナー家(マネー・ヘッジファンド)

 b)特殊部隊
  ・三合会の皆さん
  ・遊撃隊の皆さん
  ・ブラスレイター三人組

 c)艦隊戦力
  ・グレイファントム級「トロッター」
   K28Rハイッシャー:12機

 ポイント変更推移表

 2039:初期SP442000
 ■技術項目
  ・年齢変更機能:30000
  ・重装機兵シリーズ:5000
  ・ブラスレイター:5000
  ・バンプレストオリジナル:5000

 ■獲得ユニット
  ・「グレイファントム」級強襲揚陸艦:1隻14000
  ・K28R「ハイッシャー」:12機合計12000
  ・火星基地:2基50000
  ・輸送船+モビルポッド:10000
  ・バイオロイド兵500名:5000

 ■キャラクター
  ・バラライカ(ブラックラグーン):10000+成長性など20000
  ・遊撃隊(ブラックラグーン):15000+成長性など30000
  ・ロベルタ(ブラックラグーン):5000+成長性10000
  ・カトル(ガンダムW):10000+ウィナー家5000+成長性など30000
  ・ゲルト・ヘルマン・マレク(ブラスレイター):合計27000+成長性54000
  ・アストレイ3人娘(SEED):合計15000+成長性30000
  ・ロックオン=ストラトス(00):10000+成長性20000
  ・ナタル=バジルール:5000+成長性10000


 2045:UC0001
 *ラプラス事件を改変!GP50000を入手!
 *RPの変換レートは100tです。(28000P変換)

 GP78000 → 3000
  ・三合会の方々(ブラックラグーン):合計15000+成長性30000
  ・張維新(ブラックラグーン):10000+成長性20000
  


 UC0060年代(03-04話)
 *タマーム・シャマラン暗殺を回避!GP30000を入手!
 *RPの変換レートは100tです。(925000P変換)
 ★タマーム・シャマラン氏は『俺ら連邦愚連隊』に登場しています。

 GP958000 → 423000
  ・ヤン=ウェンリーら4名:合計25000+成長性など50000
  ・ミューゼル一家:合計20000+成長性など40000
  ・第一 → 第二期モビルスーツ(F91以降)生産能力:50000
  ・プラント能力拡充:150000 → 資源効率が向上!火星プラントの変換限度が年2000Pから10000へ上昇しました
  ・ドック能力拡充:30000 地底船渠の能力向上により、最大16隻の同時建造が可能になります
  ・縮退炉製造技術:80000 ターンタイプの生産が可能になりました
  ・PT生産技術a:60000 パーソナルトルーパーの生産が可能になりました(バンプレスト)
  ・AS生産技術:30000 アサルトスーツの生産が可能になりました(重装機兵)



 UC0070年代前半(05話)
 *プルシリーズを救出しました!GP40000を入手!
 *グラナダ市長暗殺事件を回避しました!GP350を入手!
 *シャア・アズナブル(本物)が生存しています!GP100を入手!
 *セレイン・イクスペリを救出しました!GP3500を入手!
 *主人公勢力にシーマ・ガラハウが加入しました!GP2000を入手!
 *RPの変換レートは150tです(230000P変換)

 GP698950 → 448950
  ・プラント変換効率向上:50000 RPレートが100tへ戻ります(期限10年)
  ・第三期モビルスーツ(MMなど)生産能力:100000
  ・超空間航法技術a:50000 パッシブジャンプ(ゲート使用によるワープ)が可能になりました!
  ・超光速航行技術a:50000 光速を越す船舶を研究できます
  ・テラフォーミング技術a:50000 テラフォーミングに関する理論・技術を得ます
 

 UC0078年(06話)
 *ミノフスキー博士が生存しています!GP5000入手!
 *優生人類生存説が未発表です!GP5000入手!
 *火星のテラフォーミングが開始されました!GP50000入手!
 *主人公勢力にデトローフ・コッセルが加入しました!GP50入手!
 *RPの変換レートは100tです(257000P変換)


 GP766000 → 311000
  ・テラフォーミング技術b:50000 テラフォーミングに関わる建造物が建造可能になりました
  ・PT生産技術b:50000 カスタムタイプのPT、およびアーマードモジュールの生産が可能になりました
   → +縮退炉製造技術で、グランゾンの生産、および重力制御技術の開発が可能になりました!
  ・改造技術a:30000 生産可能な機体をチューンする事が出来ます
  ・バイオロイド兵能力向上:50000 歩兵戦闘が可能になりました!
  ・バイオロイド兵生産 5000名:50000
  ・不死設定a:50000 死亡後1年で復活できます!
  ・不死設定b:50000 死亡期間が短縮化されます。1年 → 6ヶ月
  ・パイロット能力Lv.1:50000 モンシア少尉ぐらいは活躍ができます!
  ・オリヴィエ・ポプランとウィスキー隊:合計20000+成長性40000
  ・フレデリカ・グリーンヒル:5000+成長性10000



 UC0079年1月第1週(07話)
 *一週間戦争での被害人口が、史実より24億人減少しました! GP240000入手!
 *主人公勢力にMS特務遊撃隊が加入しました!GP1500入手!
 *RPの変換レートは100tです(30000P変換)

 ★主人公の階級が大佐になりました
 ★主人公の部隊が旅団規模に拡大されました
 ★保有戦力が以下のように変更されました。
 c)艦隊戦力
  連邦側艦隊
  ・ペガサス級強襲揚陸艦「トロッター」
   PTX-001RV ゲシュペンスト・タイプRV×1
   (メガ・プラズマカッター、M90アサルトマシンガン、リープ・スラッシャー、スプリットミサイル)
   RPT-007 量産型ゲシュペンスト×8
   (プラズマカッター、ジェット・マグナム、M950マシンガン、M13ショットガン。後にビームライフル)

  ・搭載外
   RGM-79[G] 陸戦型ジム×6
   RGM-79N ジム・カスタム×8
   RX-81ST ジーライン・スタンダード×3
   MSA-003 ネモ×6 

  ジオン側艦隊
  ・ザンジバル級「マレーネ・ディートリッヒ」
   MS-06S 指揮官用ザクⅡ×1
   MS-06R-1M 高機動型ザクⅡ海兵隊仕様×1
   MS-06F ザクⅡ×6

  ・ムサイ初期型(カーゴ搭載型)×3(搭載機に+8)
   MS-06R-1M 高機動型ザクⅡ海兵隊仕様×9
   MS-06F ザクⅡ×21

  ・搭載外
   YMS-07A プロトタイプ・グフ×3
   YMS-09 プロトタイプ・ドム×3
   MS-06R-3 ゲルググ先行試作型×2

 GP582500 → 42500
  ・重力制御技術a:80000 保有する機動兵器は、設定に応じて10Gまでの慣性を無視して行動できます!
  ・PT生産技術c:80000 EG/VR型機動兵器の生産が可能です!(スパロボAなど)
   + 縮退炉建造技術で、XNガイストの開発が可能になりました!
  ・PT生産技術d:50000 異星人フューリーの兵器生産が可能です(スパロボJ)
   → オルゴン・クラウドの開発が可能になりました!
  ・改造技術b:50000 オプションパーツの生産が可能です(Gジェネ準拠)。
   → 改造技術cで、更なるパーツの生産が可能です!
  ・パイロット能力Lv.2:80000 ジェリドくらいは活躍できます
  ・改造手術a:50000 コーディネイターぐらいの肉体。酸素がないと死にます。
  ・プラント能力拡充:100000 火星プラントの変換効率が年20000Pになりました
   → プラントにパッシブジャンプゲートの設置が可能になりました!
  ・バイオロイド兵生産 5000名:50000


 UC0079年1月第2,3週(08話)
 *地球へのコロニー落としの被害軽減に成功しました!GP100000入手!
 *主人公勢力にランバ・ラル隊が加入しました!GP5000入手!
 *主人公勢力に闇夜のフェンリル隊が加入しました!GP3000入手!
 *キシリア・ザビの突撃機動軍が編成されません!GP50000入手!
 *RPの変換レートは100tです(160000P変換)


 GP405500 → 230500
  ・不死設定c:50000 死亡期間が短縮されます。 6ヶ月 → 1日(但し、強制的に月まで移動)
  ・改造手術b:50000 ガンダムファイターぐらいの肉体。酸素が無いと死ぬかどうかは試してみてください。
   ★改造手術で獲得したのは肉体の強さだけです。操縦や戦闘技術などは別扱いです。
  ・パッシブジャンプゲート設置:25000 月・火星間のワープが可能になります!
  ・プラント設置:50000 木星、衛星エウロパに基地が設営されました!月・火星・木星間のワープが可能です!


 UC0079年1月第3、4週(09話)
 *サイド5の被害が史実よりも少なくなっています!GP90000入手!
 *連邦軍の被害が抑えられています!GP20000入手!
 *ロドニー・カニンガン准将が生きています!GP1000入手!
 *ルウム戦役での活躍!ベイ三基破壊、パトロール艦2隻、巡洋艦4隻撃沈!GP4900入手!
 *テアボロ・マスが生きています!GP100入手!
 *RPの変換レートは100tです(50000P変換)

 GP396500 → 146500
  ・バイオロイド兵能力向上Lv.2:50000 艦艇・航空機系の運用が可能になりました。
  ・バイオロイド兵能力向上Lv.3:50000 人間に擬態する事が出来ます。
  ・バイオロイド兵能力向上Lv.4:50000 人間とのコミュニケーション能力を得ました。
  ・バイオロイド兵能力向上Lv.5:50000 MSなどの高精度精密機械の運用が可能になりました。
  ・バイオロイド兵生産 5000名:50000


 UC0079年2-3月(10話)
 *ニューヤークではなくニューヨークのままで、しかもニューヤークが占領されていません!GP60000入手!
 *オーストラリアにジオン軍が降下していません!GP30000入手!
 *主人公勢力にギニアス・サハリンが加入しました!GP2500
 *主人公勢力にノリス・パッカードが加入しました!GP3500
 *主人公勢力にウォルター・カーティスが加入しました!GP1000
 *プルシリーズの性格がシスター・プリンセスの影響を受けました!GP24000入手!
 *RPの変換レートは100tです(50000P変換)
 ★火星のテラフォーミングは順調に進行しています(0080年1月完了の見込み)
 ★保有戦力が以下のように変更されました。
 c)艦隊戦力
  連邦側艦隊
  ・ペガサス級強襲揚陸艦「トロッター」
   PTX-001RV ゲシュペンスト・タイプRV×1
   (メガ・プラズマカッター、M90アサルトマシンガン、リープ・スラッシャー、スプリットミサイル)
   RPT-007 量産型ゲシュペンスト×8
   (プラズマカッター、ジェット・マグナム、M950マシンガン、M13ショットガン。後にビームライフル)

  ・搭載外
   RGM-79[G] 陸戦型ジム×6
   RGM-79N ジム・カスタム×8
   RX-81ST ジーライン・スタンダード×3
   MSA-003 ネモ×6 

  ジオン側艦隊
  ・ザンジバル級「マレーネ・ディートリッヒ」
   MS-06S 指揮官用ザクⅡ×1
   MS-06R-3 ゲルググ先行試作型×1

  ・搭載外
   MS-21C ドラッツェ×32


 GP317500 → 142500
  ・オルゴン・クラウド適用:25000 動力源としてオルゴン・エクストラクターを生産できます
   → 派生技術の開発が可能になりました
  ・パイロット能力Lv.3:100000 ザビーネくらいは活躍できます。
  ・ナノマシン技術Lv.1:20000 医療用ナノマシンを生産できます
   → +バイオロイド兵生産技術で、強化人間復元技術を入手!強化人間を普通の人間に戻せます!
  ・ナノマシン技術Lv.2:30000 改造用ナノマシンを生産できます
   → +縮退炉生産技術で、ナノ・スキン装甲を全機体に適用可能です!
   → +作品拡張;ブラスレイターで、ブラスレイター製造技術を入手!



[22507] 第11話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/23 23:36
「失礼致します、トール・ミューゼル中佐、入ります」

「どうぞ」

 ジャブロー、連邦軍総司令部ビルの3階。現在、地球上で戦う連邦軍すべての司令部だ。3月16日に大気圏に突入した民間船舶は16日中にニューホンコンへ到達。連絡機を乗り継ぎ、オーストラリア経由で南米ジャブローに到着したのが17日で、早速この議場に呼ばれた。

 現在の私の立場は、ジオン軍親衛第二軍団長ではなく連邦軍特務作戦集団、第3集団長の中佐、と言うことになっている。そして、今回の報告も、この第三集団長としての報告だ。そして第三集団の任務は、敵ジオンの新兵器に関する調査だった。

 入室すると左胸に太いバーが連なる人間ばかり。一番奥に座るのが連邦軍作戦本部長のシドニー・シトレ大将。両側に座るのが連邦軍総司令、ヨハン・レビル大将と、幕僚・兵站総監ゴップ大将。そしてその二人の次に座るのが、第一軌道艦隊司令のビュコック中将と、連邦、欧州方面軍総司令のパウルス大将だ。

「報告します。トール・ミューゼル中佐、月面での任務を終え、無事、帰還いたしました」

「ご苦労」

 シトレは言った。周囲を見回す。

「中佐の任務は高度の秘匿性を要求されるため、今日、この日まで関係各員には伏せておいた事を了承してもらう。また、今日、この部屋で交わされる内容に関しては全員、秘匿を命ずる。漏れた場合はわかっているな」

 全員がうなずく。



 第11話



「それでは中佐、よろしく頼む」

「了解しました。まず最大の懸案として、連邦軍内部に存するジオンのスパイに関してですが、エルラン中将が最大の候補者です。いや、候補と言うのは不明瞭ですな、犯人であります」

 ゴップとレビルの目が見開かれる。エルランは二人にかなり近い立場にある。レビルの救出を指揮したのは、ほかならぬエルランではなかったのか。

「嘘だろう!?エルラン中将はレビル大将救出作戦の……」

「残念ながら、事実であります。エルラン中将がレビル大将救出作戦を遂行したのは、主にジオン側の内紛が理由であり、この戦争をレビル大将の演説を以て継続させることにありました」

 私は、ギレン、デギン、キシリアの三者に関する説明を彼らに行う。どうにも信じられないようだ。内部の権力闘争が原因で、せっかくの勝てる戦争の機会を失うなど、常識的に考えればありえない。

「常識的にはありえない事態ですが、独裁をもくろむ人間が複数存在するジオンにおいては、誰かによる独裁が完了するまでの戦争継続はむしろ自然であります。第三集団は、エルラン中将を即座に逮捕するのではなく、連邦軍が持つ、ジオン側への欺瞞作戦のための駒として用いる事を提案します」

 全員の顔が沈む。今の今まで連邦軍の首脳部に敵のスパイが存在していたことすら考えても見なかったのに、この中佐はそれを指摘するだけではなく、ジオン側に対する欺瞞作戦としてソレを用いよという。

「しかし、欺瞞作戦に用いるとはいえ、用いるためには犯行計画の整うまで彼を泳がせておく必要があるだろう?ソレまでの間にこちらの情報がジオン側に筒抜けになる事は避けたいのだがね」

 いち早く復活したゴップ大将が口を開いた。流石に軍政の大物だけあって、こうした政治的な問題に関しては対応が早い。

「ええ、ですが連邦軍の反抗計画が始まる前であれば、むしろエルラン中将が関わらない分野、部署での活動が主となります。飼い殺しにしておくことも可能かと思いますが、流石に詳細を私から申し上げるのは越権に過ぎます。直属の上司であるレビル大将が判断されるのが宜しいでしょう」

 レビルがうなずいた。

「了解した。しかし、本当かね?」

「ええ。彼がキシリア機関と通称される、ジオン軍、キシリア・ザビ地球攻撃軍司令の諜報部隊と接触を以ている事を確かめてあります。主に接触を行っているのは、副官のジュダック少佐ですが。スイス銀行の口座に入金があった事も確認しております」

 レビルはため息を吐くと席に深く身を沈めた。

「そうか、わかった。何とかしてみよう」

 シトレはうなずいた。

「それだけではあるまい、中佐。本題に入ってくれ」

 私はうなずくと、現在ジオン地上軍、宇宙軍が用いているMSの解説に入った。まだ実用化が行われていないMSについては省き、近々投入される予定のMSについては性能をかなりぼかして話すこととする。流石にゲルググについては話せないが、ザク、グフ、ドムについての情報が得られたことは、連邦軍首脳部に対して有能さを見せつけるいい機会だと判断したためだ。むしろ私の立場からすると、知らない方が問題が多いのだが。

「良くぞここまで調べ上げる事が出来たな……」

「私の秘蔵っ子でね。君らも知っている、ヤン少将の弟分だ。経歴に関しては絶対にタッチするな、と全員に伝えておく。任務に差しさわりが出るのでな。彼の身分は私とビュコック中将、ヤン少将が保証するし、開戦以前にはカナーバ下院議員やグリーンヒル上院議員とも接触して情報を伝えてきてくれている」

 ゴップが目を見開いた。カナーバ議員は、連邦創生期に財務大臣としてコロニー開発計画の予算捻出を行った、アイリーン・カナーバ議員の同名の孫娘だ(実は若返った当人なのだが)。グリーンヒル上院議員は元中将、早期退役して連邦政界に入り、軍の利権代表として活動している。ゴップ自身も、この戦争が終わり次第、グリーンヒルの援助で政界に打って出る予定だったのだ。しかも、グリーンヒルの娘と結婚が噂されているヤン少将の弟分では、下手に手を出せば政界に打って出る目がなくなる。このような経緯では文句をつけるどころではなかった。

 たいていの場合、55歳で、将官の場合、少将60歳中将62歳という風になるが、定年後や、早期退役制度を用いてに政界に打って出る将軍は意外に存在する。それらの道筋を現在つけているグリーンヒルの関係者とくれば、厚遇しないわけには行かない。

「いえ、懸念が少し出ただけです、シトレ閣下」

 差し出がましいが、口を挟んだ。ゴップに対してフォローの必要性を感じたのだ。

「当然の懸念と思います、閣下。むしろ、ありがとうございます」

 私はゴップに一礼した。兵站に関係する部署の人間と絶対に喧嘩してはならない。ソフィー姉さんから叩き込まれた、軍人としての条件の一つだ。ゴップも好印象を受けたようで、言葉を続けた。

「中佐の有能さは報告の内容に現れていると思うが」

「うむ。それだけではない。中佐の任務は、ジオン軍からの諜報結果を元にした、連邦軍用MSの模索にある。これについては、中佐の指揮の下、日本の太洋重工と協力して事に当たってもらっている。中佐、連邦軍用MSの開発計画の方はどうなっている?」

 私はうなずいた。

「既にレビル将軍の下でも、V作戦の名の下、MS開発計画が進行しておりますが、我が集団においても同様の計画を進めております。勿論、きちんとした開発段階を踏んで行われるV作戦が優先であることには間違いありませんが、代替計画、即座に実行可能なもの、として我が集団が進めておりますのがL計画です」

 コンソールを操作し、L計画で開発しているMSを映し出す。

「RRf-06、通称ザニーです。この機体は操作性の問題で開発が頓挫しかけていましたが、我が部隊の諜報によって、ジオン軍の用いている操縦システムの奪取に成功。ソレを取り入れて開発を終えております。現在、太洋重工の生産ラインで日産10機を目処に生産を行っております」

 おお、と歓声があがる。そうだろう。実用できるMSの生産が、既に始まっていたのだから。

「しかし、ジオン軍の用いている機体と比較した場合、現在彼らの主力として運用されているザクⅡF型とは互角に戦えますが、それ以外の新型機が出てきた場合には対応が出来ません。また、汎用型としての運用を前提に開発しておりますが、予算の問題から局地陸戦や宇宙戦、水中戦などの局地戦に対応が出来ません。この機体を投入するならば、気候的にも安定している欧州戦線が適当と考えられます。むしろ、局地戦に対応した機体に関しては、V作戦の実戦データを待ったほうが良いかと考えております」

 レビルがうなずいた。それに続いて全員もうなずく。

「よくやった、中佐。V作戦が間違っていなかったことの証拠になり、また、生産能力や、ノウハウの蓄積に役立ってくれるだろう。それに加え、部隊がMSの運用に習熟する良い機会ともなる。鹵獲した機体だけでは生産などに問題を抱えるだろうからな。いや、本当に良くやってくれた」
 
 レビルが立ち上がり、握手を求めてくる。私も、笑みを浮かべてソレに応じた。

「現在日本の山間部において実験、試験が行われており、獲得したデータは即座に送れる状況にしてありますので、V計画への転用も充分可能でしょう。また並行してMSの運用・整備マニュアルの整備や、武装の案も考えております」

 レビルがうれしそうにうなずく。パウルス大将も上機嫌だ。先ほどの言葉どおりなら、この新兵器はまず、彼の率いる欧州方面軍に配備されるだろうからだ。

「ただ問題もあります」

 そういうと、レビル、ゴップ、パウルスが身構えた。

「現在、MSの生産には太洋重工グループの協力を戴いておりますが、戦後を考えますと、太洋重工一社の独占市場になる恐れがあります。勿論、ジオンの国策会社であるジオニック社の存続問題や、月面のRX計画を主導してV作戦にも深く関与しているアナハイム・エレクトロニクス社の存在もありますし、一社独占とするには、市場の大きすぎる内容である事が、戦後の懸念としてあります。これが第一です」

 そこで、と続けた。

「特に、これまで連邦軍の軍需を担ってきたハービック、ヴィックウェリントン社にも軍需市場をそれなりに開放しなければ軍需面、政治面双方に悪い影響が出る可能性もあります。ヴィックウェリントンは艦艇という逃げ場がありますが、ハービックは悪くするとつぶれかねません。そこで、ハービックには大気圏内、圏外用のサブフライトシステムの開発を御願いしておきました。MSにしろ戦車などにしろ、現在主力のミデア型―――ハービックの製品の一つですが―――は大型輸送機として活用度が高くありますが、やはり運用は輸送機でしかなく、戦術的に用いるには、たとえばMSの空挺降下ぐらいでしょう。新市場を提供するためにも必要かと思います。また、大気圏内の飛行が可能な新型の船舶、戦術輸送機についても、ハービックに任せるべきかと愚考します」

 ゴップはうなずいた。若い軍人にしてはなかなか行き届いたものの見方をする、と思っている。軍需企業が多ければ多いほど、連邦軍の軍需を巡って接待攻勢をある程度しかけてくるし、それに乗っかる形で利権を要求することも出来るが、一社独占となった場合には立場が逆になる。それでは流石にまずいのだ。

「君の懸念ももっともだ。艦船関係については、ヴィックウェリントンと競合する他のメーカーにも打診の予定を考えておるのかね?」

 勿論です、とうなずく。

「サラミス級ですが、設計は連邦軍の艦政本部でありますので、MSの運用を考えた後期生産型からは、ある程度設計図を各社に流し、利益配分を考えるべきかと思います。MSの運用を前提にした案としては、即座に実行可能なものとしてこれを推薦いたします」

 コンソールに新たな画像が映し出される。サラミス級だ。

「まず、現行艦船の改装案です。サラミス級の前部砲塔、および内蔵VLSを排除し、MS運用施設を装着。但し、カタパルトなどの発進装備は排除してあります。改装と部品調達に時間がかかりますので。但し、艦底部を改装し、MS運用設備を装着。また、弾薬の誘爆を防ぐために現在装備されている90mm機関砲を排除。パルス・レーザー砲に転換します」

 ゴップ大将が手を上げた。

「それでは、今度は90mm機関砲弾が余りゃせんかね?」

「それは、MS用90mmマシンガンの弾薬として用います」

 ゴップはうなずいた。

「なるほど、よう考えている」

「新型のサラミスにおいては、両舷に突き出した第二、第三艦橋を撤去し、砲塔と近接防御用のロケットランチャーを配置。艦底部にMS運用施設をおき、砲戦力を強めます。しかし、我が軍の保有するMSが一定数量に達した場合、艦体前部は、MS運用施設としたほうが宜しいかと」

 全員がうなずき、改造案は早速各社に示される事となった。マゼランの改造案もあるにはあったが、むしろその強力な砲撃能力を生かすことを考えるべきで、MSの運用に関してはある程度オミットしてもかまわないのではないかと言う意見が出たため、一年戦争中は無しの方向で固まった。

 連邦軍のMS開発計画に光明をもたらし、ジオン軍のMSについて詳細な情報を提供したトール・ミューゼル中佐の名前は連邦軍最上層部にしっかりと記憶され、翌日、シトレ大将より内々に大佐への昇進が通達されるのである。



「トールさん!」

「カトル君」

 連邦軍の制服をきた15歳ぐらいの少年が、退室した私を出迎えてくれた。カトル・ラバーハ・ウィナー、ガンダムW5人組唯一の良心である。連邦軍ではカトル・ウィン少尉の名前で副官を務めてくれており、私がジオンに言っている間には、地球最大のマネーファンド、ウィナー家の当主として利鞘稼ぎにはたまたマネーロンダリングにと大活躍してくれている。

「久しぶりです」

「……本当に久しぶりだ、涙が出てきた」

 自分の素性を了解してくれている数少ない常識人である彼は、そのスマイルを以て姉二人を止められる数少ない人材である。いやぁ、やっぱり婦女子受けいいのね(字は正しいぞ?)。ジオン軍では1個師団級の戦力をもってはいるが、連邦軍ではまだ少ない。今回、シトレ大将からもらえる職権でどれだけの戦力をかき集められるかが鍵となるだろう。カトル君によると、まだ強化人間の捜索は終わっておらずとのこと。一応、フォウ・ムラサメの候補らしき女性は何人か見つけたが、果たしてそのうちの誰が、という事は判然としないらしい。

 少し時間が前後するが、またもやジオンへと戻る事になる4月末までの状況を記しておこう。

 地球降下作戦が始まって以来懸案となっていた占領地域拡大のうち、アフリカ方面は順調に占領地を拡大し、ケニアのナイロビ宇宙港や、連邦施設の存在するダカールなどを占領し、アフリカ制圧作戦の終了を高らかに4月2日、うたうことになる。

 これに対して、続いて4月5日より行われたアメリカ制圧作戦は、緒戦でニューヨークや五大湖方面を落せなかったことで泥沼の様相となっており、アメリカ南部諸州、メキシコ、中米に部隊を展開させ、パナマ運河を占領地に組みいれたことで大西洋・太平洋間の水上交通こそ遮断し、ニューオーリンズ、コーパス・クリスティ、タンピコを母港として大西洋潜水艦隊を発足させたものの、全域制圧は適わなかった。

 南部は旧ジョージア州以北への進撃を、オーガスタ基地駐屯の部隊に阻まれ、また4月15日から戦線にザニーの姿が確認されると、混乱が生じ始めた。また北部においても、ナッシュビル~セントルイス~デ・モイン~ミネアポリスの線を抜けず、大量の兵器、兵站物資を供給する五大湖沿岸部に対する攻撃は適わなかった。空挺攻撃も一時期検討されたが、被害が大きすぎるとして廃案となったのだ。

 太平洋戦線では史実どおりにハワイを占領する事は出来ず、4月下旬に行われた空挺降下作戦は、日本から師団規模で送られた大量のザニーによって頓挫。潜水艦隊による封鎖に移らざるを得なくなったが、ペイロード160tを誇るミデア型輸送機の前には、ハワイ以東への進撃を防ぐ効果しか期待できなくなってきていたのである。

 戦線は膠着し、MSの運用準備を連邦軍が進める中、ミューゼル大佐の特務第三集団は、戦力を整えつつあったのである。


 ということで、現在日本州樺太を基地として戦力整備を行っている、トール・ミューゼル大佐です。樺太は旧ロシアと日本の係争地だったこともあって、大規模開発が見送られていた地域だったんですが、地球連邦の成立と共に太洋重工が買収。全島を工場地域化し、従業員の居住設備なども整えています。

 その太洋重工樺太工場から南に進んだ、大泊に本部を置き、MSの戦力化を行うのが、現在の連邦軍での私の任務になります。

 まず、MSの使用する火器の開発と称し、連邦軍の戦車部隊からエイガー少尉を引き抜き、RTX-44型の180mmキャノン砲を開発中です。開発コードを突撃戦車として、現在の連邦軍にもまだ根強く残る、戦車閥に対応する準備も整えてあります。この点、レビル将軍を説得するのが手間でしたが、開発に要らぬ茶々を入れられるよりはまし、と言う事で何とか説得が出来ました。

 しかし、RTX-44の開発計画を引っ張った事で、まさかアリーヌ・ネイズン技術少尉まで来るとは思っていませんでした。ああ、勿論まだあのスパイな恋人とはあっていなかったので、スパイな恋人さん(予定)は諜報部へ押し付けておきました。まぁ、ザニーの内容は漏らしてやるから、と言ってあります。

 ……「永遠の(ry」との接触確率高くないか。既に接触したのがネイズン少尉で二人。絶対に接触予定なアイナさんを入れると三人。……おい、マリア・ニコルスとか出てこないよな。うん、後々を考えて、とりあえず探させてはおこう。格ゲーなのにダウン時以外ひるまないとかどんな無理ゲーだよ、サイコMk-Ⅲは洒落にならん。

 エイガー少尉とネイズン少尉で長距離系はどうにかなると判断したので、ジオンとの冷戦期に原型が作られていた機体としてRX-77-01型を原型に、中距離戦用MSとして量産型ガンキャノンの試作を行ってみた。この世界の歴史には、どうやらかなりORIZINの影響があるようで、スミス海での連邦VSジオンこそ起こらなかったものの、低出力のジェネレーターのために充分な性能を発揮できなかったことは確かなようだ。

 調べてみると、太洋重工が売り出していた動力鉱石エンジンを3基連結させたもの(合計690kw)をジェネレーターとしており、こんな中身で70tじゃ歩くのもつらい、とため息が出ざるを得なかった。しかし、それ以外の設計は変更する必要がないため、ジェネレーターを入れ替えるのみとした。ビームライフルよりは90mmマシンガンの方が使い勝手も良いだろう。

 それと会わせ、V作戦の方にもテコ入れを開始する。現在建造が進められているペガサス級の改装案をまとめ、テストベッドとして三番艦「トロッター」を月面秘密工廠にて建造と書類を調える。ホワイトベースの性能を確認すると、MSの搭載は最大16機、補用としてパーツ段階で4機を搭載できるようだ。

 それなのに劇中では最大6機ほど、という印象しかなかったし、ORIZINでも似たようなものだったな……こっちも考える必要あるか。

 と言う事で、色々とテストパイロットを集める手はずを整えみることとした。

 まず現在航空機パイロットとして戦っている人員のMS再訓練マニュアルの制作と銘打ち、宇宙軍から不死身の第四小隊を、地上軍からヤザン・ゲーブルとライラ・ミラ・ライラを抜き、再訓練の度合いを測る。全員がティターンズ入り確定なような気がするのはかなりつらいが、苦労人バニング大尉(昇進させた)に、彼ら五名の精神的なたたきなおしも含めて御願いするとしよう。ライラさんあたり、スイカバーの場面でカミーユの体借りるぐらいだから可能性あるかもしれない。

 今回のポイント使用は連邦での活動拠点となった樺太の地下部にプラントを設置。RPを使用できる態勢を整えたぐらい。しかも、樺太に設置すれば海水を放り込むだけでRP化可能と言うチート(木星のプラントもそれ目的なのだけど)。そろそろ、後半を考えて貯めておきたいのである。



[22507] 設定集など(11-20話まで)
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5
Date: 2010/10/24 00:00
 UC0079年3月(11話)
 *エルランのスパイ行為が早々にモロバレしました!GP20000入手!
 *A.E社の軍需独占排除フラグaを建設しました!GP40000入手!
 *ニューヨークがジオン軍の攻勢を退けました!GP20000入手!
 *アリーヌ・ネイズンが加入しました!GP100入手!
 *永遠の(ry ダブルコンボ発生!GP10000入手!
 *ザニーの開発頓挫を回避、量産に入りました!GP5000入手!
 *ゴップ大将が加入しました!GP500入手!
 ★ 今回、他の連邦から加入した人員はまだ主人公につくかが不明なのでポイント化されません
 ★ 主人公の連邦での階級が大佐になりました!
 *RPの変換レートは100tです(50000P変換)

 GP288100 → 238100
  ・プラント設置:50000 地球、樺太にプラントを設置しました!地球・月・火星・木星間のワープが可能です!


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